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【9919】 |
メルカトル (2017年04月07日 21時59分) |
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『消失!』 中西智明 本作の驚愕ポイントは3ヶ所。それらすべてに驚けるが、段々その度合いが減っていくのが少々残念なところではある。 もう少しうまく料理すればもっと見どころ満載の傑作に仕上がったであろうと思うと、やや複雑な心境にならざるを得ない。 或いは、どんでん返しの連続が存分に味わえたかもしれない、その意味では作者の力量がやや足りなかったのかとも思う。 消失のトリックは正直あまり誉められたものではない。と言うか、はっきり言って子供だましみたいなものかもしれない。 だが、この作品の肝はワン・アイディアの仕掛けにあるので、その点はあまり気にならなかった。 読者によっては「人を舐めるのもいい加減にしろ」みたいに感じるんだろうなと思うが、私は十分楽しめた。初読の際の記憶がすっぽり抜け落ちていたのがかえって幸いしたようだ。 |
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【9918】 |
メルカトル (2017年04月07日 21時57分) |
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『平成の名探偵 50人』 ガイドブック 新本格以降の探偵は大方掲載されている。 それも見開き2ページに亘って、ご丁寧にイラストまで載って、それぞれのプロフィールや関わった事件などが比較的詳細に紹介されている。 評論家にもよるが、意外と知られていないエピソードなども書かれていたりして、ガイドブックとしてはそれなりの水準を示しているようだ。しかし、中には明らかに手抜きと思われるような感じで、適当にお茶を濁しているものも見られるのは残念である。 またミステリに飽き足らず、漫画やアニメの探偵まで堂々と紹介されているのは、個人的には不要と感じた。 京極夏彦や清涼院流水らのインタビューも挟まれていたり、他のコーナーも充実していて、コスト・パフォーマンスは優れていると思う。 個人的には、メルカトル鮎のイラストが格好良かったことが最も嬉しかったが、『翼ある闇』で対決した木更津悠也が載っていなかったのが心残りだ。何しろ超絶推理を披露したのは彼なのだから。 |
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【9917】 |
メルカトル (2017年04月07日 21時55分) |
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『法月綸太郎の功績』 法月綸太郎 どの作品もとても丹念に書かれている印象を受ける。じっくり時間を掛けて、ちょっと捻くり回し過ぎのきらいがないでもないが。 しかし、プロットも実に丁寧に練られていると思うし、登場人物が少ないわりに意外性も盛り込んで、実に良く出来た短編集であろう。 個人的に気に入っているのは『=Yの悲劇』と『都市伝説パズル』かな。 さすがにクイーンを標榜しているだけあって、その作風はまさに蘇ったクイーンと言ってもいいだろう。この人は長編より短編のほうが切れ味があって、性に合っているのかもしれないね。 |
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【9916】 |
メルカトル (2017年04月07日 21時53分) |
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『おやすみラフマニノフ』 中山七里 ミステリとしてはかなり弱い、と言うより体裁はミステリに近い形をとっているが、その中身はクラシック音楽に身を預けた若者たちの青春群像劇であろうか。 だから、クラシックの演奏シーンになると俄然生き生きとしてくるのも良いのやら悪いのやら。確かに訳も分からず読んでいても、知らぬ間に感動している辺りは、さすがに描写が優れている故だろうと思う。 しかし完璧な密室からのチェロの消失と言う、魅力的な謎のトリックはいかにもチャチでとても褒められたものではない。 おそらく高得点を付けた方はミステリの部分以外の、小説としての魅力に対して評価されているものと思われる。それはそれで文句はないが、やはりミステリとして評価するとなれば、この程度の点数が妥当ではないだろうか。 ところで、舞台が名古屋だから須垣谷教授と言うのはちょっと安易な気もするが。まあ蛇足だけど。 |
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【9915】 |
メルカトル (2017年04月07日 21時51分) |
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『エル 全日本じゃんけんトーナメント』 清涼院流水 今年も極楽ドームで第13回全日本じゃんけんトーナメント、決勝ラウンドが行われようとしていた。 応募総数のべ3000万人の中から、予選を勝ち抜いた1024名が集結し、今まさに火ぶたが切って落とされるところである。 この中には優勝候補最有力の読心術者ミスター・トジック、過去のデータを解析し相手の出す手を予測するTVでもお馴染みの十津川教授、十代にしてゲームのシナリオライター、若き天才天草翔、そして主人公の木村彰一が一目惚れした名誉あるゼッケン番号1番の少女、京極のぞみなどがいた。 一方、その裏では大会主催者のエルが不穏な動きで暗躍し、大会を思うがままに操ろうとしていた・・・ 彰一の初戦の相手はゼッケン番号777番の水野守。彼は実はのちにJDCの探偵となるピラミッド水野である。 更に過去に、2大会連続で777番を引き当てたこれもJDC第一班の名探偵、龍宮城之介も参加していたというどうでもいいような逸話も残っているらしい。 ひたすらじゃんけん勝負を繰り広げていくという、一見単純なストーリーだが、プロットの妙で読者を飽きさせない工夫がなされていて、最後まで物語に入り込めるようにうまく作られている。 また、じゃんけんだけでなく、主人公を中心にある種の人生ドラマを描いており、その意味でも楽しめるエンターテインメント作品に仕上がっている。 本当は7点付けたかったが、ミステリではないしね、これくらいが妥当かもしれない。 だが、一人また一人とじゃんけんに敗れ去っていく様は、まさにサバイバルゲームの見本のようでもある。 |
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【9914】 |
メルカトル (2017年04月07日 21時49分) |
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『秘密室ボン』 清涼院流水 人公のメフィスト翔はいきなり秘密室(ひみっしつ)に閉じ込められて、脱出不可能な状態に追い込まれる。しかもなぜかタイムリミットが90分に設定されていて、その制限時間内に脱出しないと秘密室は爆発してしまう。 そこに密室の神と名乗る老人の声がして、ここから逃れるには、これから出す問題に正解しながら、そこからヒントを得なければならないと告げる。 と言う、目茶苦茶な設定だが、読者は嫌でも翔と共に脱出方法を模索せざるを得ない状況に陥ることになる。 だが、老人の出す問題は密室に関するものばかりだが、抽象的なものが多く脱出の手掛かりになりそうもない。どうすればこの難関を乗り越えられるのか? というわけだが、果たしてそのオチはいかにも拍子抜けするものであり、お世辞にも読者の期待に応えているとは言えない。 面白くないわけではないが、大方のミステリ読みには不満が残るであろう。駄作とまでは言わないが、見るべきところはあまりない。 |
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【9913】 |
メルカトル (2017年04月07日 21時48分) |
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『心霊写真』 吉村達也 7編からなるバラバラのジャンルの短編を、無理やり短編集にまとめた感じが見え見え。それもそのはず、ほとんどが小説宝石に掲載された作品を一冊に寄せ集めただけという、発想的にはいかにも貧弱な内容。 一応何作かは氷室が登場するが、全くシリーズとは無関係と思われる作品も半分くらいある。それらに氷室想介の「サイコカルテ」と称する注釈が書き加えられただけ、という感じ。 肝心の中身はホラーっぽいミステリ、本格物、倒叙物、サイコサスペンスなど様々で、よく言えばバラエティに富んでいる、悪く言えば節操がない。 氏にしてはかなりぎっしり詰めて書かれているので、他の作品に比べると若干読みづらかった気がする。その代わり、少しだけ重厚感が感じられる。 全体的にそこはかとなく異色な雰囲気が漂う作品集となっている。 |
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【9912】 |
メルカトル (2017年04月07日 21時46分) |
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『木乃伊男』 蘇部健一 これ、『秘密室ボン』と同じ密室本だったのね、改めてページを開くまで思い出せなかった。でも一応、内容はうろ覚えながら、ある程度は記憶に残ってはいた。が、こんなに贅沢にイラストを描いていあることは失念していた。 特にラストのイラストはとてもいい味だしていて、小説的にも好感の持てる終わり方だったと思う。 肝心の中身は、第一部は子供向けかと思わせるほど、噛んで含めるような描き方をしており、多少じれったい印象を受けた。 特筆すべきことは何もなく、どこを取ってもイマイチって感じで、何もかもが中途半端である。 鏡の迷路での殺人だが、トリックは反則技スレスレであまり評価は出来ない。 木乃伊男の正体に重点を置いているのか、密室殺人がメインなのか、はたまた絡み合う人間模様を中心に据えたかったのか、その辺りが判然としないため、どこかしら焦点がはっきり定まっていない中途半端な感じを受けた。 |
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【9911】 |
メルカトル (2017年04月07日 21時45分) |
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『「夜叉ヶ池殺人事件』 楠木誠一郎 泉鏡花が潔癖症なのは有名な話で、本作ではそのエピソードが存分に散りばめられていて、失礼ながらその都度笑いを誘わずにはいられない。それにしても、潔癖症というのも大変に精神的苦痛を伴うものだということがよく分かる。 何かを触った後にいちいち手を消毒したり、酒は煮えたぎるくらいの熱燗にしなければ気が済まないなど、結構厄介なもののようである。 物語の舞台は割烹旅館「湖畔亭」。ここで鏡花を囲む会で催された百物語が語り終えられた瞬間から殺人事件が始まる。 いきなりその参加者の一人が暗闇の中死体となって発見される。しかも、右腕が欠損した状態で。 その後次々と体の一部を切断された死体が現れる。一体何のために、それぞれの死体の右腕、左腕、右脚、左脚、胴体が持ち去られるのか・・・ 龍神伝説を絡ませて、明治という時代を感じさせる語り口調は、なかなかの力量を感じさせる。 だが肝心の死体の一部を切断する理由は、十分納得がいくものではなく、その点は残念な気もするが、穏やかな性格の泉鏡花と子犬を抱いたお調子者の編集者鯛之介との掛け合いは面白く、陰惨な殺人事件をうまく相殺している。無邪気な子犬もしっかりと活躍していて、その意味では前作とリンクしていて楽しく読める。 |
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【9910】 |
メルカトル (2017年04月07日 21時42分) |
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『探偵作家 江戸川乱歩の事件簿』 楠木誠一郎 作家江戸川乱歩と編集者横溝正史が探偵役を務め、しかも事件はメキシコミイラとすり替えられた、「美女」の全裸首なし死体。そして、マネキンの首とすげ替えられた生首という派手さで、いやが上にも気分は盛り上がらざるを得ない。 しかし、その期待感も事件が起きるところまでで、後の展開は終始緊張感を欠き、ダラダラした退屈な描写が続く。 せっかくのミステリ界の二大スターの顔合わせだが、それぞれの個性が全く描かれておらず、読み進むにしたがって不満が募る一方だ。 また、動機も弱く、わざわざ派手な事件を演出した理由がこれでは、全然納得がいかない。なんとなく手に取って読み返してみたが、読むんじゃなかったと後悔している。 |
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