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【9829】 |
メルカトル (2017年03月28日 21時54分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『遠海事件』 詠坂雄二 待ちに待った文庫化、もうね、読めただけで幸せ。内容なんかどうでもいいのよ。 という訳にもいかないので、少しだけ感想を。 取り敢えず、佐藤誠というキャラが茫洋としていてつかみどころがない、これが逆にこの作品を異色で特別な物足らしめている気がする。彼を追い詰めた探偵がほんのわずかしか出てこないのが残念だが、全編を通してドキュメンタリータッチで緊迫感がある。文体は相変わらずクセがあって読みやすいとは言えないが、それもまたこの作品の味わいなのだろう。 主題はとにかくサブタイトルにあるように「佐藤誠はなぜ首を切断したのか?」に尽きる。一応の真相には賛否が分かれるかもしれないが、これぞ究極のホワイダニットと言っても過言ではないと思う。 さあ、みんな書店へ急ごう。そして本書をゲットするのだ。 |
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【9828】 |
メルカトル (2017年03月28日 21時53分) |
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『空中密室40メートルの謎』 浅川純 文庫本、改題名『浮かぶ密室』にて読了。 地上40メートル、クラブハウスを土台にして聳え立つゴルフ場のシンボル、帆船タワー。その屋上で烏に食い荒らされた白骨死体が発見される。虚空の密室とも言える謎に、TV局の朝の情報番組で結成された元刑事達による特捜班の面々が挑むというストーリー。 物語自体は単純なもので、犯人も途中から割れてしまうので、興味はいかにして密室状態の屋上に死体を移動できたのかという点と、何故犯人はそんな無謀な行動に出たのかという点に絞られる。 トリックは複雑で、一度読んだだけではとても理解不能だが、死体移動の理由は、犯人にとっては切実なのだろうと想像できる。 まあしかし、いかにも冗長で面白味が感じられない。一生懸命書いたのだろうが、はっきり言ってミステリの読者を相手にするにはまだまだと思われる。 どうでもいいが、電話の送受器を上げたり下ろしたりの描写が多すぎて鼻につく。大体送受器ってなんだろう、普通に受話器ではいけないのかね。 |
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【9827】 |
メルカトル (2017年03月28日 21時51分) |
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『バビロン空中庭園の殺人』 小森健太朗 内容は完全に忘れていて、全然期待していなかったのだが、想像以上に楽しめた。 古代バビロニアの空中庭園で起こった(実際の事件ではなく作者の創作)、セミラミス王女の消失の謎と、それを研究し論文として発表しようとしていた矢先に墜落死した大学教授の事件を追う、女探偵星野君江の活躍を描いた佳作。 主人公は私こと小森(高沢のり子)で、新連載で取り扱う上記の王女消失事件を巡って、四苦八苦する姿をいかにも作家らしい視点から描写しており、好感の持てるなかなかの作品に仕上がっていると思う。 大学内で起こったのは、屋上からの墜落死だが、いるはずの犯人の姿が消えてしまう、こちらもある種の人間消失トリックを扱っている。このトリックが結構秀逸で、読者の盲点を突く、あっと驚くものとなっている。 一方、王女の空中庭園からの消失は、オマケ程度で、はっきり言って子供だましのようなものである。これがもう少し納得できるトリックであればもっと高得点だったのだが、その点だけは残念だった。 |
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【9826】 |
メルカトル (2017年03月28日 21時48分) |
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『となり町戦争』 三崎亜記 ある日突然、僕は郵便受けに入れられた町の広報で、となり町との戦争が始まることを知った。曰く「となり町との戦争のお知らせ」、開戦日は9月1日、終戦予定日は3月31日とある。 そして何日か後に、町役場総務課となり町戦争係の香西という女性から電話で、僕を戦時特別偵察業務従事者に任命する旨を知らされる。僕は香西さんと協力し、与えられた任務を全うしようとするが・・・というなんだかよく分からないストーリーである。 正直、もっとアクションシーンがふんだんに盛り込まれているファンタジー小説を想像していたのだが、その意味では肩透かしを食らった。全編を通して、戦争の生々しい惨状を描写するでもなく、なんとなく戦争を実感できないまま物語は進行していく。 むしろ、僕と香西さんの交流が主に描かれており、戦争とは一体どういうものなのかという問いかけは二次的な副題となっているようだ。 そんな中でも、ユニークな人物が何人か登場し、ユーモアも忘れてはいない。しかし、町内での通り魔殺人や、僕の会社での出来事など、色々放り込みすぎて幾分まとまりがない感じを受ける。 終始なぜ隣の町と戦争を始めなければならないのか、という疑問に苛まれての読書になるのは間違いないが、これは文庫化に際して加筆したという、別章で多少は読者に説明されている。 だが、どうにもスッキリしない読後感であるのは否定できない。 |
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【9825】 |
メルカトル (2017年03月28日 21時46分) |
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『努力しないで作家になる方法』 鯨統一郎 ミステリ作家、鯨統一郎がその名を伊留香総一郎と変えて書き上げた、事実をもとにしたフィクションであり、思いの丈をすべてぶつけたような自伝的作品。 幼少の頃から、学生時代、会社勤めの時代を経て、プロの作家デビューにいたるまでの涙ぐましいまでの苦労とささやかな幸せ、妻との愛、生まれたばかりの子供に対する愛情などが赤裸々に描かれていて、その人となりが十分に伝わってくる秀作に仕上がっている。 作中には、子供の頃に見た映画やアニメ、小学校時代から読み始めた、純文学、SF、ファンタジー、ミステリ、時代小説にいたるまでの様々なジャンルの小説のタイトルや作家の名前が実名で登場する。他にもフォークシンガーや海外のポップ歌手、果ては野球選手まで出てくる。 これだけでは、さして食指は動かないと思っている方々に言いたいのは、本作は非常に面白い小説だということである。それはもう、時間が許せば一気読みしてしまいたくなるような面白さと言ったらいいのだろうか。 中には、私の涙腺を直撃する、涙なくしては読めないシーンもあり、また、もやし炒めだけという貧しい食卓を家族で囲むシーンなどもあったりして、読んでいるこちらまで切羽詰まった気持ちになるほど、波乱万丈の人生を送る主人公に、エールを送りたくなってしまう。 果たして伊留香総一郎はデビューできるのか・・・ 鯨統一郎を何冊も読んでいる人は勿論だが、むしろそんな作家知らないという人にこそ読んでもらいたい逸品である。 |
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【9824】 |
メルカトル (2017年03月28日 21時45分) |
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『雪密室』 法月綸太郎 確かに法月綸太郎シリーズの中では、特に本格志向の高い作品と言える。まあしかし、ストーリーといい、プロットといい、どうにも突出したものが見当たらない。それに加え、既視感のあるトリックは単純明快さはいいけれど、あっと驚くような要素がない。 ただ、本作では法月親子、特に法月警視ががんばっているのは読んでいて楽しい。その他の登場人物は特に目立った者はいないが、要所で幼女の香織が意外にも重要な役割を果たしているのは、とてもいいアイディアというか、ナイスな人選だったと思う。 しかし、総体的には至って普通の出来との印象が強く、凡作とまでは言わないが、特記すべき事柄があまりない。 シリーズ第一作ということで、他に見られるような、綸太郎の苦悩も垣間見えないし、気楽に楽しめばいい作品じゃないかな。 |
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【9823】 |
メルカトル (2017年03月28日 21時43分) |
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『十字屋敷のピエロ』 東野圭吾 正直、どこが面白いのか分からない作品だった。どこをどう叩いても面白いとか楽しいとかの要素が見当たらない。感情移入する余地はないし、登場人物がまるで人形のように個性が感じられない。探偵役の人形師も、只のいい人って感じで、もっとこうアクの強さを押し出してもいいのにと思ってしまう。それが物語のアクセントになり得るのなら、当然個性的な探偵を用意すべきだろう。 トリックも使い古されたもので、全く魅力を感じないし、ピエロの視点も大して功を奏してはいないと私は思う。その上、ストーリーは平板で起伏に欠けるきらいがある。はっきり言えば読んでいて退屈なんだよね。 この作品をありがたがって面白いと言える人は、とても幸せな読者だと思う。決して皮肉ではなく本心である。このような作品にもどこかしら美点を見出して、高評価を与えることのできる優秀な読者に私も出来ればなりたかったが、自分に正直になるのなら、やはり点数はこんなものじゃないかと思うね。 結論としては、どこにも特筆すべき点がない平凡な作品ということ。 |
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【9822】 |
メルカトル (2017年03月28日 21時41分) |
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『芙路魅』 積木鏡介 密室本だけど、最早密室は関係なくなってしまっている。ミステリと言うよりも、ホラー色のほうが濃い。ホラー・サスペンスなのだろうか。 時系列がどうにもスッキリしないので、多少理解しづらい面はあるものの、徐々に全貌を現してくる一連の事件や因果関係は、暗くてじめじめした感触だが、読者を引っ張り込む力を持っている。総じて、何とも言いようのない魅力を持った作品に仕上がっているのではないかと思う。 短いページ数の割には、中身がギュッと詰まってそこかしこに読みどころが散見され、凡百のホラー小説とはまた違った面白さを味わえる、なかなかの怪作ではないだろうか。 ただ、もう少しまとまりが欲しかった気はする。二度読みすればもっとその世界観に浸れるのは間違いないはずだが。 |
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【9821】 |
メルカトル (2017年03月28日 21時39分) |
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『迷宮 Labynrinth』 倉坂鬼一郎 言いたくはないが、よく編集者がOKを出したなと思う。これは世に出してはいけないレベルの作品。帯にも作者への賛辞は書かれているが、作品に対しての推奨の言がなかったのも頷ける。 内容としては、ミステリ、ホラー、幻想小説の要素を盛り込んだだけの「がらくた」。探偵も推理も捜査もあったもんじゃない。 一応、不可能犯罪を謳われているが、その真相は一体どうなったのだろうか。犯人だけは分かったが、事件の顛末は一向に明かされないと思ったら、そのまま終わってしまった。この小説は一体何が言いたかったのかさっぱり分からない。 もし最後の一行がなかったら2点だったな。本来であれば、1点でもおかしくないが、私は温厚なので(笑)3点付けさせていただいた。 |
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【9820】 |
メルカトル (2017年03月26日 22時00分) |
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『絶叫城殺人事件』 有栖川有栖 どの短編もある程度の水準をクリアしており、良質の短編集と言える。平均して面白いので、あとは読み手の好み次第となろう。 個人的には、『黒鳥亭殺人事件』>『絶叫城殺人事件』>『月宮殿殺人事件』の順で評価したい。だがあくまで先にも述べたように好みの問題なので、他の作品が劣っているとは思わない。 土地勘のある大阪や京都が舞台となっている作品が多いので、その点私にとっては情景が浮かびやすかったし、親近感を覚えた。これも好感度がアップする要因となっている。 表題作はこれから読む方にとっては、おそらく想像していたものとは全く違った印象を受けることと思われる。だからと言って、それが悪い方向に向いてしまっているとは言い難い。短編にしては相当構想から練り上げられている感触である。 他の作品にも言えることだが、全体的にプロット、トリック、ストーリーとも充実した一冊となっていると思う。 |
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