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【9959】 |
メルカトル (2017年04月13日 22時00分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『十八の夏』 光原百合 日本推理作家協会賞受賞作の『十八の夏』を含めた、4編からなる連作短編集。 とは言っても、それぞれ独立した物語であり、共通するのは花をモチーフにしているということだけ。 それも、特に花にこだわりを持って描かれているわけでもないので、まあ普通の短編集と言っても良いだろう。 しかし、それぞれの作品の出来はすこぶる良く、とても丁寧に描かれているし、特に各登場人物が性格や容姿に至るまで、かなり丹念に描かれているのも評価が高い。 私のイチオシはなんといっても表題作である。途中まではなんだかドライな恋愛小説だなとの印象だったが、突如としてその様相を変化させ、それまでのストーリーの裏側を読者をあざ笑うように晒していく。 見事な切り返し技である。これでは協会賞の受賞も納得せざるを得ないではないか。 他の短編は、私の見る限りでは恋愛小説が二編、ミステリが一編といった具合である。 どちらに強く傾くこともなく、うまく均衡を保っている。 ミステリも恋愛小説も両方読みたい人にはお薦めである。 |
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【9958】 |
メルカトル (2017年04月13日 21時59分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『扉守』 光原百合 広島の尾道がモデルの、潮の道が舞台の連作短編集。 これぞまさに珠玉の短編集と呼ぶに相応しい作品が並んでいる。 全てファンタジーだが、実に幻想味溢れる筆致で、どこか異世界にでも連れて行かれるような錯覚さえ覚える。 そして、読後に心温まるような、或いは心が洗われるような余韻を残す佳作が多いので、誰もが安心して読める作品集ではないだろうか。 個人的には第一話と最終話が特に印象深い。 もっぱらミステリ一辺倒の人も、色んなジャンルを読む人も、本書はお薦めできる逸品であろうと思う。 |
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【9957】 |
メルカトル (2017年04月13日 21時56分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『天に還る舟』 小島正樹 『火刑都市』で主役を務め、また吉敷竹史シリーズで脇を固めたりもしている中村刑事が探偵役の本格ミステリ。 物語の最後の辺りでは、吉敷もちょっとだけ友情出演?している。 ストーリーは、妻を伴って来た旅行先で、奇妙な自殺の話を耳にした中村刑事がその自殺に興味を抱き、調査に乗り出す。 その後、日中戦争から帰還した元軍人たちが次々と残忍な方法で殺されていき、その謎をたまたま知り合い助手となった海老原と共に捜査していくというもの。 不可能犯罪や、密室、アリバイなどのトリックは、おそらく小島氏が考案したものだと思われるが、どうも物理的トリックばかり並べられて、やや食傷気味になってしまう。 一方、残忍な殺害方法による殺人の動機は、島荘が考えたのではないだろうか。お得意の、社会派的見地からの動機であり、十分納得のいくものではあったが、やや押しつけがましさも感じた。 がしかし、本格ミステリとしてまずまずの出来だと思う。 |
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【9956】 |
メルカトル (2017年04月13日 21時54分) |
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『鬼面の研究』 栗本薫 嵐の山荘、予告殺人、見立て、首なし死体など、様々なミステリの要素を詰め込み過ぎているわりには、内容が希薄な気がするのは私だけではないだろう。 初読の際は全く感じなかったが、この人の文章は正直あまり上手くない。読みづらいというほどではないが、読みながら心に染み入るものが何らないため、感銘を受けるとか、感じ入るということがない。 また、最後には読者への挑戦まで挿入されているが、はっきり言って相当な想像力がないと真相にはたどり着けないかもしれない。 犯人はある程度想像できるが、それはあくまで犯人の候補が少ないために過ぎない。 ちょっと面白かったのが、犯人が最後の殺人で頭部を切断した理由である。でも、そううまい具合にいくかな、と疑問視せざるを得ない気もする。 |
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【9955】 |
メルカトル (2017年04月13日 21時52分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『猫丸先輩の推測』 倉知淳 うーん、まあ何と言うか実にのどかで、ほのぼのとした短編集。 連続殺人も息詰まるサスペンスも全く関係ない、会社から新入社員が花見の場所取りを命じられて、次々と妙な人間に遭遇する話とか、額に日の丸模様のある白黒のぶちの猫ちゃん、その名もヒノマルちゃんを捜索する話だとか、題材はどこか脱力系である。 が、さすがに猫丸先輩の推測は一本筋が通っていて、その立て板に水といった、妙に人を納得させてしまう独特の話術でもって、論理的な推理を披露する。 とにかく、これだけ楽しめる作品もそうはお目に掛かれないので、その意味でも貴重な短編集と言えるだろう。 そう、読んでいて面白いとかではなく、なんだか楽しいのである。 猫丸先輩は勿論だが、登場人物のキャラが素晴らしく立っているのも、思わず上手いと唸らされるし、極悪人が一人も出てこないので、後味もスッキリ、いい感じで終わっているのも好感が持てる。 |
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【9954】 |
メルカトル (2017年04月13日 21時50分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『甲賀忍法帖』 山田風太郎 伊賀対甲賀の忍者によるトーナメント戦、みたいなのを想像していたが、ちょっと違った。もっとこう、正式な取り組みによる試合かと思っていたので、やや拍子抜け。 まあ、そりゃそうだよね、忍者同士の戦いに正々堂々なんていう言葉はふさわしくないわ。 確かにそれぞれの人間業とは思えない、風変わりな技を駆使した殺し合いはなかなか面白い。 よってそれなりに読み応えはあるのだが、命を懸けた戦闘のわりには今一つ緊迫感みたいなものが足りない気がする。 ラストも、やや盛り上がりに欠けるのが、私にとっては不満の一つである。 読むのに時間が掛かったため(いろいろ忙しかったので)、面白さがストレートに伝わってこなかったのかもしれない。 でも、みなさんが高得点を付けているのが、私にはちょっと不思議な感じがした。 |
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【9953】 |
メルカトル (2017年04月13日 21時48分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『痾』 麻耶雄嵩 これは・・・やはり前二作を読んでいないと辛いかも。 特に『翼ある闇』は必ず先に読まないと、ネタバレしてますから。 一方、『夏と冬の奏鳴曲』の続編として書かれてはいるけれど、ストーリーそのものは独立している。がしかし、やはりところどころこちらを読んでいないと意味不明な部分が出てくるので、順序を踏んで読まれることをお勧めする。 とは言っても現在絶版中なので、入手は困難かも知れない。 内容は、とにかく主人公である烏有の孤独感がなんとも身につまされる。 苦しみ抜いて、最後には周りに誰もいなくなってしまう。残された希望は桐璃のみである。 そんな陰々滅滅とした、何とも救いのない物語である。 でも結局、三割くらいは訳が分からない、そんなミステリ的な小説。 そんな中、エピローグで『翼ある闇』でのメルカトルとリンクしている点が面白く、久しぶりに読んでみての収穫だった。 |
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【9952】 |
メルカトル (2017年04月12日 22時28分) |
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これは 【9951】 に対する返信です。 | |||
まるにさん、こんばんは。 >仕事の関係で兎に角移動が多く、今まで移動時間は睡眠にあててましたが、本を読むか!という気になりました。 大変ですね。本を読むのもいいですが、健康が一番ですので、睡眠は十分摂るようにしてしていただきたいと思います。 >映画にもなった『64(横山秀夫)』、挫折してストップしていたのを再開します。 横山秀夫、渋いですね。私は『64(ロクヨン)』は読んでおりませんが、唯一『第三の時効』だけは読みました。流石に傑作の名に恥じぬ作品だと思いました。 >それなりに楽しんで読めた記憶ですが、映画版の宮迫博之さんの演技に全て持って行かれました。 主演は宮迫さんだったんですね。『13階段』もまずまずでしたが、『幽霊人命救助隊』も面白いですよ。世間的にあまり知られていないようですが、これは傑作というか快作ではないかと。 『ジェノサイド』はかなり評判高いですね。あまり知りませんが、とにかくスケールの大きい冒険小説のようで。 私も以前から気になっている作品ではありますが、ミステリではないみたいなのでやや躊躇しています。 >島田荘司さん作品は今まで読んだ事がありませんでしたが、メルカトルさんの紹介文を見て、手にとってみたくなりました。 島荘読むなら、まずは『占星術殺人事件』ですね。これは間違いないと思いますよ。私が一番人に薦めた作品です。 ただし、『金田一少年の事件簿』を全巻読まれていたら、同じトリックを借用していますので、途中で真相が分かってしまう可能性が高いので要注意です。 >温泉宿に行きお互いのお薦めの小説を交換して読む、という催しを友達と年に一度程開催してます。 それは素晴らしいアイディアですね。気の置けない友達同士で、お薦め作品を紹介し合うのはとても有意義なことではないですか。 いやー本当に素晴らしい。私の周りにはそんな読書家がいませんので、もっぱら私が人に薦めるだけですよ。 でも、どんな名作でも合う合わないというのはありますからね、とにかく他人に本を薦めるのはとても難しいものだと思いますね。 >既出の『おやすみラフマニノフ』の前作品の『さよならドビュッシー』も、その集いで読みました(感想:ゾワッとした)。 『さよならドビュッシー』はいいですね。「このミス大賞」を受賞したわけも分かります。 中山七里を知ったのは『連続殺人鬼カエル男』ですが、それ以来氏のファンになりました。 氏の代名詞とも言える、どんでん返しが堪りませんね。 ところで、『ミステリの祭典』というサイトはご存じでしょうか。この部屋にも何度か名前が出ていますが、もしご存じなければ是非一度ご覧になっていただけると、結構参考になると思いますよ。 決して怪しいサイトではありませんし、わたしも「メルカトル」として参加しておりますので、安心して見ていただけると思います。 たまに予告なしにネタバレしていることがありますので、そこだけは注意が必要ですが。 >私ですが、ちょこちょこ色々な談話室に遊びに行かせていただいてるので、メルカトルさんもそこで目にしたのでしょう(^-^) そうですよね、確かに以前お見かけしたことがあったと記憶しています。 HNだけ憶えているというのもおかしなものですが、ここで再会できるとは夢にも思っていませんでした。書き込んでいただき、本当に嬉しかったですよ。 ではまた ^^ |
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【9951】 |
まるに (2017年04月12日 01時05分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
メルカトルさん、お部屋の皆様こんばんは。 丁寧なレスを下さり、ありがとうございますm(_ _)m 仕事の関係で兎に角移動が多く、今まで移動時間は睡眠にあててましたが、本を読むか!という気になりました。 映画にもなった『64(横山秀夫)』、挫折してストップしていたのを再開します。 NO.9928『13階段』高野和明 それなりに楽しんで読めた記憶ですが、映画版の宮迫博之さんの演技に全て持って行かれました。 ※作品の内容よりも役者に興味がいってしまった。 既出の『64』も、映画では佐藤浩市さん、ドラマではピエール瀧さんが演じてましたが、原作に忠実なのはドラマの方でしょうね。 …話が逸れました。 高野和明作品は『グレイブディッガー』『KNの悲劇』を読みましたが色んな分野に挑戦していて、楽しみな作家さんだなとの印象です。 代表作の『ジェノサイド』は未読ですので、こちらも手に取ってみたいと思います。 島田荘司さん作品は今まで読んだ事がありませんでしたが、メルカトルさんの紹介文を見て、手にとってみたくなりました。 ありがとうございます。 温泉宿に行きお互いのお薦めの小説を交換して読む、という催しを友達と年に一度程開催してます。 既出の『おやすみラフマニノフ』の前作品の『さよならドビュッシー』も、その集いで読みました(感想:ゾワッとした)。 そして今年(3月開催)、相方が持ってきた作品は『羆嵐(吉村昭)』でした…。 目にして「三毛別のヒグマの話じゃないか!」と叫んだ私もどうかと思いますが(笑) ミステリーの幅を広げたいなら、人からお薦めの本を教えてもらうのが一番だなと思いました。 私ですが、ちょこちょこ色々な談話室に遊びに行かせていただいてるので、メルカトルさんもそこで目にしたのでしょう(^-^) カウントダウンですね。 引き続き楽しみにしています。 |
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【9950】 |
メルカトル (2017年04月11日 22時21分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『天に昇った男』 島田荘司 まさに異色作という言葉がピッタリの作品。一応社会派とジャンル分けされているが、どちらかというとファンタジーに近い内容となっている。あのオチがなければ確かに社会派だが・・・ 冒頭の死刑執行のシーンは、真偽のほどは定かでないが、私にとっては十分にリアリティの感じられるものであり、その後の展開も意外ではあったが、そんなこともあるのだろうかと初読の際は思ったものである。 知○遅れの少女との恋、前科者に対する差別、死刑を生き延びた奇跡的な男のロマンなど、短いページ数のわりには様々な要素が盛り込まれており、充実した中身となっている。 なので、ミステリとしてよりも一つの物語として楽しめると思う。 そして読者を島田氏独自の世界へ誘う筆力は相変わらず素晴らしいものがあるのではないだろうか。 |
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