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【9409】

RE:広島の神ってるっぷりは  評価

メルカトル (2016年10月27日 22時44分)

mixtraさん、こんばんは。


> 分かりませんね。互いに決め手を欠きながらの終盤、すし三昧の一振り。

膠着したゲームにありがちな一発で決まるパターンですね。
しかし、今年のシリーズは読みづらい。マツダでは広島の一方的な試合だっただけに、そのままの勢いで一気に決めに掛かるかと思いきや、遂に逆転してしまう不思議。
結局神ってるのは札幌では日ハムなのでした。


> ここ数年の日本シリーズはホームチーム優位の内弁慶な印象を持っています。

まさにその通りで。しかし切り札のジョンソンはもう使えないですし、益々目が離せないシリーズ終盤ではあります。
日ハムが王手を掛けましたが、マツダに帰ってからの広島の有利さは桁違いのですので、もうどちらが日本一になってもおかしくないですね。


> うーん。なるほど。これが全て当てはまったらフードファイターは皆糖尿病になってしまうでしょうから、その辺りが原因不明と言われている所以でしょうか。

関係ない話題ですが、大食い選手のみなさんは若いうちから胃腸を酷使して、関取のように早死にしたりはしないのでしょうか。
それとも、そんなやわな内臓ではないってことなんですかね。胃腸の弱い私には考えられないレベルですが。


> 間違い絵探しに近くなりそうで。

そういうことですね。違和感を覚えた個所を突き詰めていけば何とかなるというのは、最早推理ゲームとは違う次元の問題のような気もします。


> トイちゃん(漢字不明)、と呼ばれるCBCアナウンサー司会の番組…位しか出てきませんが

こちらの地方キーの番組なので。でも愛知県でも多分聴けると思います。まあ今やラジコで全国各地どこの番組でも聴ける時代ですが。


> 名古屋方言、やっぱり可愛げありますね。

ええっと、名古屋弁ではないと思います。ちょっと分かりませんが、おそらくこの辺りの方言だと思いますね。名古屋で「ばりかく」が通用するのか、一度試していただけませんか。


> 関西でマックは「マクド」という呼び方を強く主張しますが、「ビックマクド」は言わないという矛盾(?)。

語呂が悪いからじゃないですか、単純に。
言いづらいというか、ぴったりフィットしない感じがしますので。
でも関西弁は好きですよ。京都と大阪に住んでいましたからね。しかし、何年も住むと確実に関西弁に染まります。今はほぼ抜けましたが「なんでやねん」はたまに口を突いて出てきます。

一旦送信
【9408】

続きです。  評価

mixtra (2016年10月27日 03時45分)

>岡田投手は凄くいいピッチングしたと思います。

 ですね。ホントに紙一重で緊張感のある戦いがずっと続くので、野球観戦冥利につきます。とりあえず、当日先発でない限りラストは広島→黒田、日ハム→大谷で締めるのでしょうか。黒田投手は足が気になりますが。

>若者中心
>ハロウィーン

 そこが非難を浴びたりある段階から流行らない理由でしょうね。温度差が凄いです。ドンキではハロウィーンのグッズコーナーを広くとっている店舗もあれば全く知らん顔(せいぜい食品程度)と、足並みが揃いません。
 秋なんですから最初から行楽グッズや秋物衣類、食欲促進で行くべきだったのではないかと思います。

>表立って応援しましょう。

 表立ちます。
 以前はトラウマ級の家族仲決壊に至りましたが後悔なんてこれっぽっちもしていないので、誉めたい時はガンガン誉めます。今はまだ気さくにクサせる程中日愛が強いと自任していないので、多分誉め重視の意見になるかと思います。
 …板東英二以外(笑)

>FA選手は獲るきがあるんですか。全然そんな話は聞こえてきませんよ。

 調査しました。
 情報を下記に。西武・岸の話も。

●オーナーGOサイン(日刊スポーツ)

 中日森繁和監督(61)が25日、FA選手も含めて投手の積極補強に乗り出すことを宣言した。FA権保有者の投手で動向が注目されているのは西武岸、DeNA山口、ソフトバンク森福ら。「宣言してくれたらだけどな。みんながみんな(対象)ではないだろうけど」と語った。

 同意した白井オーナーは「投手が足りないので、なんとか補強したいと。少し心細いということだった」とバックアップを約束した。今年は強力リリーバーと主力級野手の新助っ人勢に費用を割くため、予算は限られる。ただ、その中でも市場に出てきた選手に、手をこまねくつもりはない。

 さらにはトレードによる補強も頭に描く。「トレードはやるだろう。(選手数を)増やせないから1対1とか、向こうが多い1対2とかならな」と話し、具体的に動いていることもにおわせた。ヘッドコーチ時代よりも幅広い権限で、全面的に編成を取り仕切る新監督。投手強化のため、手段を選ばず動きまくる。
 

 岸はこの中であれば、獲得出来れば最高でしょうね。性格も中日の気質に迎合すると思います。
 そして小笠原投手(中日スポーツ)

●中日・小笠原慎之介投手(19)が、左肘に抱える遊離軟骨の除去(クリーニング)手術を11月初旬に受けることになった。ナゴヤ球場での秋季練習終盤に張りを訴え、沖縄での秋季キャンプ参加は見送り。来季を見据え、首脳陣と相談して即座に決断した。


 手術と復帰時期は来季に影響をのこさない、という事です。

 続いて打者。

●中日が国内フリーエージェント(FA)権の取得条件を満たしているソフトバンク・城所龍磨外野手(30)の獲得に向けて調査を進めていることが27日、分かった。交流戦歴代ワーストのチーム打率1割9分5厘を記録した貧打の解消へ、走攻守3拍子そろった地元・愛知出身のいぶし銀を徹底マークする。

 他には楽天を自由契約になりそうな岩崎達郎(←正確な苗字は表示不可)選手を復帰させるという話も。
 他にはシビアなニュース。

●国内フリーエージェント(FA)権を今季取得した中日・平田良介外野手(28)が球団の提示額次第では権利を行使し移籍する意思があることを示唆した。15日には大島洋平外野手(30)が同様の発言をしており、主力外野手2人の流出という最悪の事態となる可能性が浮上した。

 片方はともかく、両方は流石に厳しいでしょう…。

 以上です。
 また何か掴みましたら随時。
 
【9407】

RE:広島の神ってるっぷりは  評価

mixtra (2016年10月27日 03時44分)

 メルカトルさん、今晩は。
 みーまーの続き(8スレッド分)投函しました。更にもう一回続きを掲載して終了します。
 尚、一部語句の訂正(ピワド禁止ワードによるもの)
・人●し
・非●道的   以上二ヶ所。

 続きは明日投函できれば。
 尚、現在までにピックアップしている所は全体の3分の1位より前です。ラストのダイジェストは中盤の一部となります。

>野球は分かりませんね

 分かりませんね。互いに決め手を欠きながらの終盤、すし三昧の一振り。日ハムが、広島の逆(エルドレッド役)をやって勝ちました。

>広島は札幌に来てから急に打てなくなりましたね。

 ここ数年の日本シリーズはホームチーム優位の内弁慶な印象を持っています。一年だけ真逆の『外弁慶』があったかな。
 日ハムは機動力に活路を見出だしましたし、第5戦も走り回ると思いますので得点圏にランナーを貯める機会は日ハムの方が多いかもしれません。ただ、明日は一応広島、とみています。

>食事の量とバランス
>昔は贅沢病
>痩せた人はあまり縁のない病気?

 うーん。なるほど。これが全て当てはまったらフードファイターは皆糖尿病になってしまうでしょうから、その辺りが原因不明と言われている所以でしょうか。
 糖尿病ミステリ。

>直球勝負というより変化球にやられる番組み

 ほほー。メルカトルさんはオムニバス版の書評も書かれていましたが、映像ベースですと何回も観る事が前提となっているから地味なんですかね。本と映像の整合性もかなり大変そうですが、それが難しくなった結果がコレでしたら楽しみ方が限定されそうですね。間違い絵探しに近くなりそうで。
 更に以前の作品ではどこを突き詰めたか気になりますね。『安楽椅子探偵』というシリーズがあると聞いて、一度TSUTAYAでDVDを借りる予定でしたがずっとレンタル中で断念しました。

>土曜の午後にラジオでミニコーナーを担当しているアイドル

 トイちゃん(漢字不明)、と呼ばれるCBCアナウンサー司会の番組…位しか出てきませんが、ラジオ自体もたまに聴きますので何処かで縁があるかも。

>飼っているウサギにばりかかれたから、ウサギはあまり好きじゃないとか言ってました。

 ははははは。
 名古屋方言、やっぱり可愛げありますね。ニュアンスが丸く受けとれます。

>「けった屋」
>それは言わないですね。

 関西でマックは「マクド」という呼び方を強く主張しますが、「ビックマクド」は言わないという矛盾(?)。いっその事、地方限定でオリジナル商品作って定着して欲しいです。「けった屋」には金鯱色やドラゴンズカラーのけったがレンタル出来るなど。

続きます
【9406】

みーまーの続き、入ります 8(終)  評価

mixtra (2016年10月26日 23時49分)

 「あの子の治療はアタシには無理。薬は出すから、毎日服用させなさい。後、御園を寝かせる朱鷺は電灯を点けたままにすること。それで多分、突発的に騒ぐことはない」
 確かに。昼間、少なくとも学校では発生しない。
 夜間限定なのはきっと、暗闇という環境にトラウマがあるからだろう。
 なるほどね、見に覚えがある
 「ところで、1つ世間話してあげる」
 妙な前置きだった。姿勢はそのままで、気負わない調子で話を切り出した。
 「君ら、殺人犯じゃないかって疑われているわよ」
 何かを噴き出しそうになったけど、平成を保って目尻の震えも押さえつけた。
 「それで、どちら様が疑いを」
 「そんなもの、探偵か警察くらいしかいないでしょ。」
 「それもそうですね。で、どっちですかそんな嘘八百を狂信している方は」
 「安楽椅子警察」
 それはただの職務怠慢だ。
 そのまま先生は、何事もなく話題の続きを接合する。
 「高校の同級生がスケバンじゃない女刑事やってるの。そいつに色々尋ねられた。変な奴でね、小学校の文集で探偵になりたいなんて夢見がちなことを書いてたよ」
 やれやれ、と余裕ぶってみた。
 「君らが疑われる理由なんて幾らでもあるよ。過去に犯罪に巻き込まれた人物は、自身が影響で行う可能性が増加する。精神科の先生と仲良しだ。人望がない。飼育委員だからだ。1つ嘘だけど」
 本当に1つなのかそれ。というか、どうして真似できるんだ。
 「まあ、アタシ個人の見解では、御園は怪しまれても仕方ないかな」
 「あんなに純粋で考えなしで幼稚で逃げ足遅いマユのどこを疑うというのですか」
 「貶めることで擁護してどうするの。それで今度、君らと個人的に話がしたいんだって」
 「取調室じゃないでしょうね」
 「留置場だったりして」
 「こっちとしては公的私的関係なく、お会いしたくないですね」
 微妙に嘘だけど。
 「それは君の自由だから、勿論断ればいいけど。なかなかに面白い奴だよ、少しだけ君に似てる」
 少しでも僕に似ている人か。……きっと性悪なんだろうなあ。
 「ただ違うのは、君は単なる嘘つきだけど、あいつは嘘と真実を編み込んで喋ることかな」
 「ほほー」
 賭けてもいい。性悪だ。
 最高潮のノイズとシャウトに乗じて椅子から腰をあげた。そこで、ふと感じた疑問を、オーディオを指差しながらぶつけてみた。
 「苦情とか来ないんですか、これ」
 先生は「べつにー」と軽い否定をする。
 「デスメタルお婆さんとかに大好評」
 大好評なのはいいけど、デスが婆さんに付属するのは些か問題な気がする。
 そろそろ退出しよう。
 薬を受け取ってから、マユを背負ってマンションに帰宅した。
 
 断章
九人目『モノオモイサツジン』
 
 三章『嘘と嘘』につづく
【9405】

みーまーの続き、入ります 7  評価

mixtra (2016年10月26日 23時46分)

 浩太君は微妙にびくつき、杏子ちゃんは無反応。杏子ちゃんが口を開き、疑問をぶつけてきた。
 「何であのおねえちゃんをそんなに庇うの?」
 「昔ね、今と似たようなことを聞かれた人がいた」
 「……?だれですか」
 「誰かの母親。子供の身代わりになって殺された人。その人は震えながら、それでも迷わずに、こう答えたんだ」
 一拍おいて、かつて耳にしたことをそのまま口にした。
 「母親だから、って」
 したくとも、虚偽にできない思い出。
 そして、それが、
 マユを庇う、僕の最たる理由でもある。
 
 これだけは嘘だけど、とも言いたくない。
 
 翌日、マユと一緒に病院に行き、診察が終わったマユは待合室の椅子に倒れるように座り込む。次に僕の番になった。
 病院内では扉一枚を隔てた先で、音量全開のヘヴィメタルが耳をつんざく。ただでさえ人口の少ない山里から離れた山の麓にある建物は、消毒の匂いが少ない。何故ならここは、心の病院だからだ。
 扉の中に入ると、清潔な白衣に青のミニスカート、スリッパは脱ぎ散らかして脚を遠慮なく伸ばしている、ポニーテールの女性がいた。
 「相変わらずだねぇ、あの子」
 それが第一声だった。
 「子供の頃から何一つ変化していない。あーでも、みーくんどこから、みーくんいるーに変わってたか。全然良い変化じゃないけど」
 手に持っていたカルテを机に放り出して欠伸をする。なんで僕が入ってきたらくつろぎ出すんだろうこの医者。茶飲み友達と間違えてないか。
 「で、当病院から無理矢理退院してくださった生意気な娘さんを連れて今更何の御用でございましょうね、『みーくん』」
 「その呼び名はマユ専用です」
 「はいはいバ力ップル」
 目元を擦り、背もたれを軋ませながらようやく、僕と向き合った。
 坂下恋日先生。三十路を越えた精神科医、独身。読書は漫画だけな大人。
 「それで、どういう心境の変化かしら。御園に自分の事を明かすなんて」
 「質疑応答は、最初の問いだけでいいですか?」
 「別にいいわよ。どうせ嘘しか言わないから」
 見抜かれていた。小学生からの付き合いにより、人格把握は完璧らしい。
 「マユが突然頭の痛い子になったんです。で、心配ですから先生に診てもらおうと思って連れてきました。それだけです」
 「夜中……御園と同姓してるの?」
 精神科医なら、頭という単語に注目してほしい。
 「ただ寝食を共同の居住区で行っているだけ」「を同棲というわね」
 「地球という限られた環境下の、更に国土の手狭な地域である日本の1国民として蜜柑もかくやかな倹約節約精神を発揮して空間を有効に共同活用する」「為に同棲しているわけね、はいはい」
 「……なんか怒ってます?」
 「とってもね」
 音楽に合わせてこめかみを指先で叩き、足の先で軽快に床を踏む。
 「嘘だけど」
 芸風を真似された。しかしそんな憤りに溢れる声では、その嘘自体が嘘くさかった。先生は暫く無言で眼を閉じ最後にやれやれと首を振って葛藤を終えた。
 「まあ、君の私生活はアタシいの管轄じゃないから何も言えない。爛れて腐り落ちてもね。けど、御園の精神状態に有効かは、首を捻らざるを得ない」
 そして本当に首を捻った。べきべきと小気味良い音がした。
 「あの子に君がいるってのは、良いことづくめとはまかり間違っても思い難いわね。肥料なんて投与しすぎればただの毒だし」
 「けど、らぶで満たされています」
 「ダウト」
 「正解」
 心にさえおもっていません、そんなこと。
 「それでマユのことですが」
 「人類皆嘘つき。特にアタシは別格。みーくんだけが真実」
 昔と代わり映えの無い文字の群れを吐き出し、諦めを語った。
【9404】

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mixtra (2016年10月26日 23時41分)

一時間はその状態を維持した。マユはやっと安心してソファで寝付く。
 身震いする部屋の空気。床の冷たさは、冬の影を踏んだようだった。早々の退散を決め込み、何処で寝ようかと思案しながら部屋を後にしようとして、
 「あのー」
 浩太君の控えめな声が襖越しに配信されてきた。咆哮転換し、襖を開いて畳を足につける。低い天井から垂れ下がる紐を引っ張り、蛍光灯を起床させた。
 「その汚れ、どうしたんですか?」
 「二日酔いのままメリーゴーランドで夜明かしさ。それより、起こしちゃった?」
 「あ、へーきです。こーいうの慣れてますから」
 「慣れてる?」
 微妙な発言だった。二人にとっては失言だったのか、杏子ちゃんは「バ力こーた」とのんびり呟き、脇の肉をつねる。浩太君は眉根を寄せながらもへらへらと笑って追及から逃れようとした。まただ。又なにかが積み重なっていくような錯覚に囚われる。というかもう十中八九の確率で、子の子達に振りかかっていた災厄、厄災でもいい、それが見えはじめて、見終えはじめたと確信している。
 話題を逸らすかな。
 「しかしあれだね、あれだけ騒いでよく立ち退き勧告をされない…」
 ピン、ときた。
 頭に電球を装着して閃きを表したいくらいだ。
 違和感にようやく気付いた。自身の経験とは噛み合わないから、目前に晒されて尚正体を看破できなかった。それは状況の差異があったからこそ、僕らに施されなかった処置だ。
 「なんでだ?」
 簡単なことだ。この子達は、僕と会話している。つまり、口が塞がれていない。マユの狂騒が苦情や問題になってないとするなら、マンションの防音は完璧ということなのか。だけど更に、子の子達の足は不自由、手は自由気まま。壁を叩いて金切り声をあげて、全身全霊で騒ぎ続ければ、流石に隣室にまで響く筈だ。
 「うわ、穴だらけ」
 何て手際と対策の雑な犯行なんだ。先程のマユじゃないけど、僕も頭を掻きむしりたくなった。
 「あのさ、君達…」
 そこでまた言葉を途絶えさせる。あのさ君達、何で大人しくこの部屋にいるの。それを尋ねようとしたが、望ましくない何かが始まるような気がした。
 「ねえ、あの女」
 「あの女じゃなくて、お姉ちゃん」
 杏子ちゃんの言葉を、少しだけ語気を強めて改正を促した。
 「あのおねえちゃん、頭がおかしいんじゃないの?」
 実に含みのない、真実一路な評価だった。
 「あんず、そんな言い方は駄目だよ」
 そんな言い方が駄目なだけで、表現の行き着く先には問題ない、と。
 まあ、この子達もある程度付き合えば、理解してくれると思う。……いや、それより。
 「……頭は足りてるけど、建築に失敗したんだ。横槍を入れられてね」
 断りなく人の過去を語る趣味はないけど。
 どうしてか、このまま放置しておく気にもならず。
 他人に、少しだけ昔を晒した。
 「マユの両親は、僕らの目の前で殺されたよ」
 感情を込めずに発言した。というか、込められなかった。
 「その時に、僕とマユの螺子は緩んじゃったのかな。一目で分かる不具合はマユの方みたいだけどね。……やっぱり僕も、ちょっとね」
なぜなら僕はマユの行動を咎めない。罪悪さえ、感じない。
 そうであるように、心を眠らせている。
【9403】

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mixtra (2016年10月26日 23時37分)

それは言語化できない音質だった。
 獣の咆哮とは異なる、切り裂くように鋭利な絶叫。
 それは部屋の輪郭の歪みを感じ取れるほどの手応えがあった。
 「マユ?おい、マユ!」
 「いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい……」
 横になった姿勢のまま、延々と、怨々と呪詛を口ずさむ。マユの身体を起き上がらせると、それに呼応したように頭を抱え、頭皮を掻きむしり始めた。
 「おい、止めなって!」
 「いたい、頭がいたいぃぃぃぃぃ!」
 両方の意味で痛そうだなおい!
 血走った目で中空を睨み、食いしばった歯から白泡を吹き出す。
 骨と筋と血管が浮かび上がる細腕が僕の手を振りほどこうとする。髪を振り乱し、狂乱的な動作で暴れる。マユの手が僕の頬に当たり、そのまま爪で力任せに引き裂かれた。サッと熱の亀裂が走る。ミミズ腫れどころか出血を促しているらしい。
 「いたいいたいいたぃぃぃぃ!」
 「分かった、分かったから!落ち着いて!」
 僕の声など届きはしない。ただその存在を鬱陶しがっているだけ。
 それが僕と彼女の関係の本質であると、何処かで肯定していた。
 今度は眼球の周囲に爪を立て、自傷行為に走ろうとする。同年代の人間を凌駕する力で顔面を引き裂こうとするのを、なんとか押さえ込もうと手首を掴み、握り潰すほど力を込める。へし折ってもこの際構わないと考えたけど、そこに至ることはなかった。
 「う、うううううううううぅぅぅぅぅ」
 マユの身体が、突如折れた。身体は相も変わらず強張っていたけど、それは内から溢れる何かを抑えるために向いていた。唸り、発汗を全身から促す。
 「マユ?」
 マユの手を、半ば無意識に手放した。
 そしてそれを引き金としたように、
 その場で嘔吐した。
 四肢を引きつらせ、醜悪な音と共に胃液と中身をベッドに撒き散らす。僕の足や膝にも振りかかり、酸の効いた臭いが部屋に広まっていく。涙を流しながら吐き続けるマユの背中を撫でることもせず、ただ呆然と事の成り行きを眺めていた。
 何度もむせ返り、一旦停止してから嘔吐を再開させる。鼻からも流れて、息苦しそうに白眼を剥きながらそれでも吐き尽くすように前傾姿勢を崩さなかった。
 マユはそのまま顔を上げず、胃液の染み込んだシーツに伏せた。僕はそこでようやく、マユの身体を起こし、衰弱した顔を軽く拭いてから、そのまま抱き寄せた。
 「大丈夫だから」
 肩で息をするマユに、意味の無い言葉を掛けた。
 「ここには、僕とまーちゃんしかいないから。まーちゃんを苛める人達はやって来ない。ずっとずっと訪れない。だから、大丈夫」
 背中をさすると、またマユは少し嘔吐した。首筋にかかる生温い液体に鳥肌がたつ。けど不快とは感じないし、離す気も起きない。
 今度はマユが、僕の手首を掴んだ。
 手入れのされていない爪が血管に刺さり、そのまま動脈を突き破るのかと思った。
 「やめてよ」
 マユは誰かにそう言った。心当たりは、何人かいた。
 マユが見ていたもの。
 マユが感じていたもの。
 それはきっと、僕も共有している。
【9402】

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mixtra (2016年10月26日 23時34分)

 顎に手を当てて悩む振り。けど考える間でもなく、それは世間で言う病気オブハートだ。
 「PTSDの類だよな……」
 先生はその事を知っているんだろうか。マユは外来の定期検診にも行ってない筈だ。
 「寝惚けていたっていうのが、一番楽な結論なんだけどね……」
 しかし、それはあり得ない。夜中に起床して寝惚けるなどと言う技術をマユは持ち合わせていない。それに寝付きはいいが、寝起きはグダグダで叫ぶ余裕もない。
 「……知らなかったんですか?」
 浩太君の質問には、意外性が多く伴っていた。でも別に意の外になど何もない。何せ僕は御園マユのことなど何も知り得ない。
 「別に知りたくもないからね」
 何割が嘘か自分でも判別できない。二人は「はあ」だの「ふうん」だの気の抜けた返事だけだった。
 
 その後、二人に湯桶とタオルを用意して身体を拭いて貰いつつ、服を洗濯する。
 替えのタオルを用意して戻ってくると、浩太君が身体を拭いていた。本来なら、服で隠される脇や内股に残る、内出血の跡。
 「なんつうかさ……」
 かなり厄介な子達を連れてきたんじゃないか、まーちゃん。
 他人の詮索なんて好きじゃないけど、こういった些細な見聞の積み重ねによって深入りする可能性の高まりは否定できない。それは危うい。僕はこれでも人情派。ホントはどちらかというと刃傷派。嘘だけど。
 「マユにつけられた傷、じゃないと思うけど……」
 昨夜の一件からして、マユならば、例えば杏子ちゃんが徹底的な犯行意思を見せれば、即座に脚を翻し、横っ面に蹴りを一閃しているだろう。
 「……ほんと、意味不明な誘拐だよ」
 誘拐犯本人に至っては、既に興味の対象が僕にしかなさそうだ。そもそもマユは何故あの子達を誘拐したか、そうそう、それだよ。マユが目覚めた時まで覚えていたら、独占取材しよう。
 洗濯物の稼働音に耳を傾けながら、暫く天井を見て過ごした。人の顔のように見える染みとかはない清潔で潔白で味気ない景色しかないけれど脳味噌を駆動させるには丁度いい。
 御園マユの寝顔を思い浮かべる。
 一切の表情をなくした彫像の面。
 御園マユの寝姿を思い浮かべる。
 呼吸も停止させたように、夢中に身を委ねる姿。
 そんな静寂に満ちた彼女が叫び出すだなんて突拍子もないことを、

 3日後、目の当たりにすることになった。
 
【9401】

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mixtra (2016年10月26日 23時32分)


 そして学校に二人で行く。
 マユは部屋を出ると同時に幼稚さを隠蔽する。彼女なりの処世術らしい。
 学校に到着すると、終日身じろぎせず眠りこけていた。
 
 放課後。配布された二種類のプリントの見出しを確認する。一枚は殺人事件の注意書き、もう一枚は修学旅行についての保護者向けの内容だった。
 今から約3週間後、僕らは修学旅行の日程が組まれている。行き先は九州だ。3泊4日の旅程で、1ヶ月程前、担任の上沼先生が投げやりに説明していた。それを聞いて、生徒会長の菅原道真は太宰府天満宮でどれくらいからかわれるんだろうなあとか僕は考えた。
 
 家に帰ってマユは「えろいことするぞ」と元気に宣言し、意気揚々とソファに跳びのってから、僕が着替えをバッグから取り出している間に夢の国に旅だった。
 そのまま寝ていたら身体を痛めそうなので、寝室に運ぶ。
 「いつ起きるんだろう……」
 恥ずかしながら、炊飯の技術は習得していない。僕は我慢できても、あの二人はどうにかしないと。私服に着替えてから、和室の襖をスライドした。
 「あ、おかえりなさい」
 挨拶が返ってきた。ここで、君達の家かよここはなどと、無粋な受け答えはせず「ただいま」と、礼節に基づいた。
 「あの、これ、ありがとうございます」
 浩太君が頭を垂れ、嬉しそうにはにかむ。今朝の毛布の礼だ。杏子ちゃんは、お友達である壁と向き合っていた。
 「あんず、お礼」
 兄が妹の袖を引っ張る。妹は、不満そうに眼を吊り上げる。
 「こーた、バ力じゃないの。こいつはゆーかいはんなんだよ。なんでお礼なんか言わないといけないのよ」
 仰るとおりである。至極単純且つ真っ当な正論。
 「おにいさんはぼくたちを誘拐なんかしてないじゃないか」
 これもまた正論だけど、こちらについては流すことを良しとできない内容だった。
 「いやいや、僕が誘拐したことにしてほしいんだけどね」
 その言葉に、二人共不可解そうな表情を向ける。
 「それにお礼はいいんだ。池田さんは朝にちゃんと言ってくれたから」
 「っ!」
 杏子ちゃんの瞼と口がぱくぱくする。
 「そうなの?」
 浩太君が顔を覗き込もうとするのを避けるように、杏子ちゃんは部屋の隅に逃避してしまう。自己嫌悪にでも陥っているのか、僅かに頬と耳が朱色に染まっている。
 「お腹は空いてる、よねやっぱり」
 浩太君が正直に頷く。恐怖が軽減されたのか、首降り運動が潤滑になっている。
 「もう少し待ってくれるかな。今おねえさん寝てるから、ちょっと待って起きなかったら弁当でも買ってくるよ。」
 「あのおねえさん、よく寝てますね」
 浩太君が苦笑する。
 「そりゃ災難だったね。まあ、今週末は大丈夫だと思うよ。僕がいるから」
 「おにいさん、ここに住むんですか?」
 「そういうことかな。新参ものだけど、今後ともよろしく」
 けど実際、この子達をどうすればいいのか。算段も、閃きもない。
 足枷を外して、それが仇となって逃亡されれば間抜けの極致だし。
 どうこの子達を処理して、平穏を迎えれば良いのか。
 「あの……」
 考えに沈んでいた僕に、浩太君の控えめな声がかかる。
 「おにいさんは、おねえさんの事どう思っているんですか?」
 なんだ?
 「いや……ちょっと怖いんで。騒ぐのもどうかなって思うし」
 まあ、誘拐犯だからね。今は僕が誘拐犯ってことになるけど。
 「ん?……騒ぐとな?」
 「なんていうか、夜中にすっごく大きな声で叫んだりします。けど……あ、毎日じゃなくて」
 「……ふーむ」

 
【9400】

みーまーの続き、入ります 2  評価

mixtra (2016年10月26日 23時29分)

 
2章
 『両親と診察』
 
 早朝。マユのマンションを訪れていた。今日から同棲する為である。
 適当にバ力ップルしながらふたりでテレビを観ていると、画面は見慣れた光景を映し出していた。僕らの住んでいる街である。連続殺人事件というアリガチなテロップが、さも大仰そうに表れた。
 「昨日の夜も人が死んじゃったんだって」
 「物騒だねえ、でも人って毎日死んでるよねえ、こんな大々的に言わなくてもいいのにねえ」
 軽くとぼけておいた。昨日の時点で知っていたことだ。
 殺害されたのは、巡回していた自治会の会長。見廻りを終えて引き継ぎを行う際、僅か5分程度の間1人でいたところを殺害された。死因はオーソドックスに、刃物による刺殺。側頭部に穴が空いていたらしい。犯行時刻は夜8時頃、場所は小学校の近所だ。犯人の目撃談は皆無。そろそろ本当に、殺害犯が存在する人殺事件なのかと疑問視する住民まで出てきそうだ。半年前までは、人死にに縁遠い街だったのに。
 「ほんと、こわいなあ……マユ?」
 薄っぺらい僕の感想に、マユの反応は無かった。ただ、先刻までの笑顔を破棄して光も濁りもない瞳で、ブラウン管の写し出す映像を観ていた。
 「ねえ」
 突然、マユが僕を見上げた。無機質な瞳が、僕の眼を覗き込んでくる。
 「あれをやったの、みーくん?」
 何気無い口調の質問だった。根拠も脈絡もないのに、語尾の疑問が弱い。
 「いいや」と、僕は嘘をついた。
 「まーちゃん、人を殺すのが大嫌いなんだろ?」
 「うん。わたし、世界で一番嫌い」
 「もしもの話…僕が今の犯人だったらどうする?」
 「どうするって?」
 「いやほら、警察に突き出すとか、怖いキモい変態とか…」
 自分の発想の貧困さに呆れた。ただの悪口じゃねえか。
 「うーん……わかんね」
 マユは方言的な言い回しで反応し、首を捻る。
 「例えばみーくんは、今わたしが死んだらどうする?」
 「そういう事は絶対に考えないから分からない」
 「うん!とゆーことなのだ」
 なるほど、そういうことか!
 みなぎるマユの自信に感化されて理解する事にした。別に他意があった質問でもないし、これでいいのだ。
 それから退屈になる前に、和室の襖を控え目に開いた。
 二人は、部屋の隅に寄り添って横になっていた。浩太君が杏子ちゃんを庇うように、抱擁しながら眠っている。杏子ちゃんも、陽だまりの猫のように丸くなっていた。
 リビングから毛布を持ってきて二人の上に被せようとすると、杏子ちゃんが反応した。
 「ゆーかいはんのほどこしなんか、いらない……」
 施しとは、難しい言葉をご存知で。
 昨日の食事とは異なり、生理的欲求に訴えかけていない為か拒絶の意思を見せる。
 「残念だけど今は誘拐犯しか施ししてくれないから、素直に受け取っておくといいよ」と毛布を被せる。顔が半分隠れた杏子ちゃんが毛布越しのくぐもった声で「いらないっていってるじゃない」と気だるそうに抗議してきた。
 「君の意見を押し通した結果、お兄さんが風邪をひくかもしれない。それでもいい?」
 杏子ちゃんは押し黙り、瞳を縦横にさ迷わせ、最後には布団に潜り込んでしまった。消極的な肯定の態度と受け取り、そのまま部屋を後にしようとした。
 「ありがと……」
 虫の羽音よりも儚い声だった。
 「……昨日のことだから、こーたに言えっていわれたから……」
 言い訳っぽく、後付けをした。「どういたしまして」と口の中で呟き、部屋を出た。
 偽善的な振る舞いによる充足感を、今更のように思い出した。
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