■ 9,999件の投稿があります。 |
【9819】 |
メルカトル (2017年03月26日 21時58分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『『クロック城』殺人事件』 北山猛邦 デビュー作だけあって、全体的に荒削りな印象を受けた。 設定が世紀末で人類が滅亡するという、例の予言のもとになされているので、警察組織は形骸化しており、その代わりということなのか、SEEMとか11人委員会とかが登場してきているが、意味が分からない。別にそれらの組織など絡ませる必然性は全くなかったと思う。がしかし、その中の各中心人物が妙に存在感を示しているので、何とも言いようがないが。 それはさておき、ストーリー的にはそれ程見るべき点はなさそうである。袋綴じされたメイントリックは、まあそれなりによく考えられているとは思うが、例のアニメのほうが先らしいので、それをヒントにしているとしたら、ちょっと噴飯ものではある。 そのトリック解明以降は、展開が二転三転し、それまでやや煩雑だった流れが突如として引き締まったものになり、面白さも倍増する感じがする。 首を切断した理由も納得というか、前代未聞であり、これには感心した。だが、殺害の動機はあまり納得のできないものとなっている。北山氏は大抵そんなものなので、今更どうこう言う必要もないけれど、そこさえ首肯できれば評価も少しは上がったとは思う。 まあ、こんなもんだろうね、メフィスト賞受賞作とは言っても。 |
|||
【9818】 |
メルカトル (2017年03月26日 21時56分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『青い館の崩壊 ブルー・ローズ殺人事件』 倉阪鬼一郎 主人公はゴーストハンターと名乗る吸血鬼。彼はあることから手に入れた自費出版らしき小説のタイトルや作家名などから、作者が目の前のブルー・ローズというマンションの管理人だと目星を付ける。そして、オペラグラスで観察を始めたところ、怪しげな挙動を目にし、さらには自らを名探偵と名乗るほどの推理力で、マンションで何が起きているのかを推理し始める、というストーリー。 執筆に一年費やしたと言っているが、この程度、森博嗣なら一ヵ月足らずで書き上げてしまうだろう。勿論、森博嗣はこんな下手なものは書かないけれど。 手掛かりはその小説の暗号だけで、さしたる伏線もないまま、ゴーストハンターは勝手に推理し、吸血鬼の仲間と共にマンションに乗り込む。まさに、作者のご都合主義全開で、読者は置いてけぼりに。と言うか、それ以前にミステリとしての体裁も保っていないので、ミステリとしてはもっと点数は低くてもいい。 そんな箸にも棒にもかからないような訳のわからん小説を、二度も読んだ私は、まるでクズのような人間である。いや、人間のクズと言ったほうがいいだろうか。 |
|||
【9817】 |
メルカトル (2017年03月26日 21時53分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『鬼頭家の惨劇』 折原一 ミステリとしては非常に弱い、ジャンル的にはサスペンスだろうか。でも、それなりに楽しめた。なんだか似たような作品があったような気もするが、気のせいなのか。 オチはどこにでも転がっている、使い古されたパターンだが、見抜けなかった。再読なのにね。やっぱり、読み直してみると分かるが、10年も前の作品だと、すっかり忘れている作品もあれば、ところどころ憶えているのもあったりする。その時の精神状態や、読んだ時の状況がかなり影響してくるものだと思うね。 本作は、結局何が書きたかったのかよく分からないが、取り敢えず氏独自の仄暗さや、シチュエーションを楽しめばいいのではなかろうか。 前に書かれている諸氏の評価が低いのは、折原という作家に対する期待の高さの表れなのだと解釈したい。 |
|||
【9816】 |
メルカトル (2017年03月26日 21時52分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『鬼の探偵小説』 田中啓文 ミステリの側面と、警察小説の側面と、伝奇小説の側面がいい塩梅に合成された連作短編集。乱暴に言ってしまえば、京極堂のいない「百鬼夜行シリーズ」的な。当然異論もあろうが、これはあくまで総合的に見た印象からの直観的感想である。 しかし、『探偵小説』はちょっと違うんじゃないかとは思う。いい意味で昔懐かしい探偵小説を期待される向きには、期待外れとなる可能性が高いだろう。ただ、個人的にはこの作風は非常に気に入っている。誰が何と言おうと、それは私の嗜好の問題だから仕方ないのである。 奇抜な死体装飾や不可思議な現象の数々に加えて、アメリカ帰りのエリートと冴えない主人公の、刑事同士の対決も見物だ。 田中氏得意のダジャレもほぼ封印して、気合の入った作品集に仕上がっていると思う。本当ならもう少し加点したいところだが、一般受けしそうにはないので、この点数に留めた。 |
|||
【9815】 |
メルカトル (2017年03月26日 21時50分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『緋色の囁き』 綾辻行人 相変わらず人間が描けていないなあ。と、冗談はさておき、そこはかとなく綾辻テイストが味わえるが、どうも全般的に回りくどい文章が目立つ気がする。勿体付け過ぎなんだよね。 『サスペリア』は程遠いが、やはり元祖はホラーだし、こちらはあくまでミステリだからやむを得ないのか。しかし、もう少し書き様もあったのではないかと思ってしまう、サスペンスもそれほど効いていないし、ホラー小説としてもなんだか中途半端。心理描写もなっていない、これではせっかくの構想が相当悪い方向に走ってしまっているではないか。 しかし、終盤の真相が明かされるシーンは俄かに生き返る感じで、それまでのまったりした展開は何だったのかと言いたくなってしまう。 まあ綾辻作品としては、テンポも良くないし、キレもないので、出来としてはよくない部類になるのかもしれないけれど、犯人の意外性と過去の事件と現在の事件を貫く一貫性に敬意を表してこの点数にしました。 |
|||
【9814】 |
メルカトル (2017年03月26日 21時49分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『暗闇の囁き』 綾辻行人 うーん、悪くはないんだが普通だね。どこをとっても普通。これと言って突出した部分もなければ、特別アラも見当たらない。まあ雰囲気はそれなりのものを出している気はするけど。 亜希以外の兄弟は、そんなに異様な感じもしないし、不気味な存在感を醸し出しているふうでもない。その点、亜希はどこか不透明で、その生死さえ不明なので、最後までホラー作品としての一翼を担っていると思う。彼の存在がなければ、かなり平凡な作品になっていただろう。 途中、死体の髪が切られていたり、片方の眼球がくり抜かれたりして、内心「おっ」と思ったが、その真相にはやや脱力感が漂う。肩透かしを食らった感じである。 色々なジャンルを含有しているのもいいが、どうも中途半端に終わっているようで、やや消化不良気味の出来になってしまっていると思われるのは、少々残念である。 |
|||
【9813】 |
メルカトル (2017年03月26日 21時47分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『黄昏の囁き』 綾辻行人 ストーリーの流れは島荘を彷彿とさせる。だけど事件終息に向けてのアプローチの仕方は全然違う。そりゃそうだ、いくら師匠と仰ぐ島荘でも、その辺りはキッチリ線引きをしているということだろう。今や、綾辻氏が師と仰がれる立場になっているから、それでいいと思う。 序盤で大方の展開は読めてしまうのに、なかなか進展具合がスピーディでないため、じれったいというか、多少イラッと来る。特に、過去にあった出来事が小出しにされるため、どうにもスッキリしないねえ。 しかし、結局はそれを逆手にとって、叙述トリック風の仕掛けを施している辺りは、さすがに綾辻だと言わざるを得ない。それに加えて、犯人は実に意外な人物であり、サスペンスの括りの中にも、本格スピリットを忘れていないので、ジャンルを超えた異色作に仕上がっているのではないだろうか。 「囁きシリーズ」は全般的に、今邑彩女史辺りが書きそうな作風にも思える。似ているというのではなく、どこか共通するものを感じるというだけの話だけど。 |
|||
【9812】 |
メルカトル (2017年03月26日 21時45分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『殺人の駒音』 亜木冬彦 ミステリのパートを除いては、将棋を指すシーンや将棋を生業としているキャラたちのエピソードがいちいち面白いのだ。いっそのこと、殺人事件など取り除いて、エンターテインメント一本で作品を仕上げてしまったほうが良かったのではないかと思うほど、対局シーンなどが際立っている。それは確かに劇画的なタッチと言えるかもしれないが、普段将棋など全く指さない私でも自然に引き込まれるような臨場感あふれる描写であり、本当に素晴らしいと感じる。 一方、ミステリとしてはさして特筆すべき点はない、どちらかと言うと平凡な作品と言えよう。ただ、ミスリードも含めて、意外な犯人であるのは評価できる。しかし、新味はないし、殺人事件の話になると、急に面白味が半減してしまうので、せっかく娯楽小説として一級品であるだけに勿体ない気がする。 エピローグがまたいい味を出している。私が過去に読んだミステリの中でも、5本の指には間違いなく入る、素晴らしい締めくくり方ではないかと思う。 総括すれば、エンターテインメントとしては8点超え、ミステリとしては4点くらいな感じだろうか。しかし、約20年ぶりくらいに読んで良かったと素直に思った。また何年かしたら忘れてしまうだろうが、その時はまた読めばいいかなと思わせるような作品ではあった。 |
|||
【9811】 |
メルカトル (2017年03月26日 21時43分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『白い森の幽霊殺人』 本岡類 第一の殺人は雪だるまの中に埋め込まれた女子大生、しかも両足が切断されているという、なかなか猟奇的なものだが、第二、第三の事件は事故か殺人か判然としないという、いたって地味なものである。 ペンションのオーナーである邦彦は、巻き込まれるように探偵役を演じることになるのだが、その独自の捜査がいかにも地味で、なんだか一向に期待感が盛り上がってこない。他にはあまりこれと言って目立った人物が登場しないため、全体的に平板な感じを受けてしまう。地道な捜査により、次第に事件の全貌が明らかになっていくタイプのミステリが好みの読者には向いているだろうが、私にはどちらかというと嗜好が合っていないと感じた。 ただし、謎解きのシーンはそれなりに読み応えもあり、なぜ両足が切断されたのか、あるいはなぜ雪だるまに死体を隠したのか、といった理由には納得させられた。 よくよく考えてみると、結構面白い事件なのだが、ストーリーに派手さがないので、せっかくの逸材がかなり控えめな作品と言う印象になってしまっているのは残念である。 |
|||
【9810】 |
メルカトル (2017年03月25日 22時03分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『8の殺人』 安孫子武丸 まあ何と言うか、よくありがちなストーリーとプロットで、際立った特徴は見られないが、全般にユーモアが効いていて私には結構面白く感じられた。速水三兄弟の描き分けも上手く決まっていると思うし、他のキャラも性格や行動様式などがよく描かれている気がする。 トリックは目新しいというわけではないが、分かりやすく好感が持てる。また、死体を引きずった跡が残っていた理由などは非常によく考えられていて、デビュー作のわりにはそつなくまとめられているように思う。 いかにも新本格という作風だけど、我孫子氏独自の「色」をさりげなく押し出しており、その後の作品にも自然に継承されているのは、一応戦略として成功を収めてると言ってよいだろう。 余談だが、ノベルズの巻末に収められている島荘の『本格ミステリー宣言』に書かれている「予言」は見事に的中しており、今更ながらその慧眼に驚かされるばかりである。 |
|||
© P-WORLD