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【9619】 |
メルカトル (2017年03月05日 21時45分) |
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『どんでん返し』 笹沢佐保 全体的に小粒な印象。異色な感は強いが、タイトル通りのどんでん返しを期待すると裏切られる。かなり緩めの切り返しといった感じで、エッジの効いた反転とはならなかったのは少々残念。 だが、それぞれがどことなく小粋な雰囲気を醸し出しており、会話だけで成り立っているとは思えないような、ストーリー性の豊かさを感じる。 個人的にベストは『皮肉紳士』で、ダイイングメッセージを学術的に幾種もの解釈を披露しており、興味深く読めた。 |
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【9618】 |
メルカトル (2017年03月05日 21時44分) |
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『猫間地獄のわらべ歌』 幡大介 本格時代小説と本格ミステリがうまく融合された、なかなかの逸品。メタな趣向を盛り込むことにより、読者に「そんな馬鹿な」と言わせないように苦心している。一風変わった「読者への挑戦状」を挟むなど、サービス精神も旺盛で、読者を飽きさせないよう工夫しているのが涙ぐましい。 長編の中に独立した事件が三件含まれており、どれもバカミス的でありながらもよく考え抜かれたトリックを採用している。 密室、見立て、首なし死体、屋形船(館)の殺人など、興味を惹く要素がまさにてんこ盛り状態な本作である。 |
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【9617】 |
メルカトル (2017年03月05日 21時41分) |
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『保健室の先生は迷探偵!?』 篠原昌裕 まあ習作の域を出ていない気がする。 これは、伏線を拾い集めて推理を構築するといったパズラーとは全く違う。わずかな伏線をもとに真犯人を指摘しているが、他の人物でもおかしくはない程度の推理であり、ミステリとしても青春小説としてもいささか弱いと言わざるを得ない。 また、ラブコメディの一面も持ち合わせてはいるが、二人の主人公の心理描写が行き届いておらず、唐突な告白には内心えっと思ってしまった。 絵の中で殺人を犯すというアイディアは良かったが、それを生かせていないし、どこをとっても中途半端な出来と感じる。 |
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【9616】 |
メルカトル (2017年03月05日 21時39分) |
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『毒入りチョコレート事件』 アントニイ・バークリー 今時なら珍しくない多重解決モノだが、事件が一見単純に見えるところがミソじゃないのかね。シンプルな事件をどれだけ展開させてこねくり回せるのか、しかも6つもの解決法を提示して、さらには前者の推理を否定しつつ新たな解法を披露するという荒業は、さすがに名作と呼ばれるだけのことはあると感じる。 二人目まではやや疑問符付きだったけれど、それ以降はとてもよく考え抜かれていると思う。意外な犯人あり、人間関係の妙あり、巧妙な欺瞞ありと、様々な視点からの推理がみられる。 ラストのブラックな味わいも、思わず唸らされる。 |
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【9615】 |
メルカトル (2017年03月05日 21時38分) |
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『シャーロック・ノートII』 円居挽 舞台は探偵養成学校。第一章はカンニングの疑惑を解決、だがかなり物足りない。この時点で先行きにいささか不安を感じ始めるが、第二章である古典作品絡みの事件を描いており、これがなかなか良い出来と思われ、盛り返す。相当有名な作品なので問題ないのかもしれないが、未読だと意味の分からない点があるので、要注意。 第三章で再びカンニング事件を扱うことになり、ここが本作の一番の見どころではないかと感じる。お得意の学園裁判は検事役、弁護士役が入れ替わる辺り、ある作品を彷彿とさせる。 金田一耕助ならぬ金田一剛助や、鬼貫らも登場し趣向を凝らしており楽しめる。 ラノベかと思いきや、骨格のしっかりした本格ミステリだった。 |
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【9614】 |
メルカトル (2017年03月05日 21時35分) |
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『雨の日も神様と相撲を』 城平京 4ページ目、タイトルの前に記されている「少年少女青春伝奇」の文字がこの作品の概要をよく表している。つまり、青春小説であり伝奇小説だということ。ミステリは主題ではないので、おまけ程度と思って読んだほうが無難だろう。 主人公の少年はある村に転校してくるが、ここではカエルが神様であり、カエルの言葉を唯一理解できるのがもう一人の主人公の少女、真夏である。少年は小柄だが相撲の経験者で、彼は外来種のカエルを相撲で攻略する方法をトノサマガエルらに教示する。 少年は非常に大人びており、どこか達観しているところがあって感情移入しづらいのがやや残念な気もする。一方の真夏もあまり感情をあらわにしないタイプの上、大柄なため可愛げのない感じを受けるので、損をしていると思われる。ただし、この凸凹コンビのやり取りがちぐはぐであったり、少年が思ったことの半分も言えず、言葉を飲み込んだりする心理描写はなるほどと頷ける部分も多い。 ラストは爽やかすぎて青春小説として◎。 |
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【9613】 |
メルカトル (2017年03月05日 21時33分) |
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『D町怪奇物語』 木下半太 ホラー短編13からなる怪奇譚。 ホラーというよりむしろ怪談と言ったほうが正しいのかもしれない。まさか実話ではないだろうが、その奇想とも呼べる発想はやはり只者ではないと思わせるに十分な奇天烈さを持っている。 内容はバラエティに富み、しっかりとオチもできている。「世にも奇妙な物語」辺りの原作としてもしっくりきそうな物語が多いが、木下氏独自のテイストというか味わいが感じられ、一風変わった世界観を垣間見られる。 |
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【9612】 |
メルカトル (2017年03月05日 21時32分) |
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『OUT』 桐野夏生 様々な重荷を背負った女たちの暗い日常を赤裸々に描き、さらにその日常からこぼれ落ちていく様を乾いた筆致で綴った力作だと思う。だが、残念ながら私の肌には合わなかった。 中盤までは死体の解体を中心に、主婦たちの内面から生活様式までを描き切り、一方で警察の捜査も含めて追う側、追われる側両面からのクライムサスペンスとして見どころも多い。しかし、それ以降は意外というか行ってほしくない方向に向かってしまい、ラストはなんとなく付いていけないなと感じる結末に落ち着いており、個人的にはやや不満が残るものとなっている。 死体解体シーンは全くグロくない。と思う。また、途中から全く警察の追及が描かれなくなり、私などはそんなはずない、もっと早く真相に至るだろうと疑問に思ったりもした。その辺がないがしろにされているのはどうなんだろう。 |
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【9611】 |
メルカトル (2017年03月05日 21時30分) |
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『追憶の夜想曲』 中山七里 うーむ、これは7点以下は付けられないな。 法廷ミステリでありながら、根幹はまごうことなき本格ミステリだ。主人公、悪辣弁護士御子柴と検事岬(岬洋介の父親)の対決は読み応え十分だが、それよりも逆転裁判が現実のものとなったのちの結末が素晴らしい。 単純に思えた事件の顛末は意外性に満ちており、これほどまでにドラマチックな物語に昇華してしまう手腕はさすが中山氏といったところであろう。すべての登場人物にしっかりとした役割が与えられており、その意味でも大変密度の高いミステリに仕上がっているように思う。 探偵役は御子柴だが、彼はなんと○○○でもあるのが新しい。 とにかく完成度の高い本格ミステリであり、一気読みがお勧めだ。文庫化されたこの機会にぜひみなさんに読んでいただきたいものだ。 |
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【9610】 |
メルカトル (2017年03月04日 22時10分) |
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『火の粉』 雫井脩介 まあ、面白かったですよ。普通にサスペンスとして。 でもねえ、いわゆる怪しい隣人としての、武内の不気味さが今一つ伝わってこなかった気がするのも事実。あまりあからさまに異常性を暴き出してしまっては、サスペンス小説として機能しなくなるし、だからと言って単なるいい人の面だけを強調しても締まりがなくなってしまう。そのあたりのバランス感覚は優れていると言ってもいいだろう。 ドラマ化には大変向いていると思う。脚本次第では手に汗握る本格的なサスペンスドラマに仕上げることも可能かと。ユースケ・サンタマリアはどうなんだろう。ややおとなしすぎる感じがしないでもないが・・・やはり観てみないと分からないなあ。 |
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