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【9629】 |
メルカトル (2017年03月06日 21時48分) |
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『彼女が灰になる日まで』 浦賀和宏 序盤から中盤までは謎めいていてそれなりに楽しめたが、以降トーンダウンするというありがちなパターン。そしてラストはなんだかスッキリしないままフェイドアウトする感じが、らしいと言えばらしい。 しかしなあ、浦賀和宏という名前に特別ネームバリューがあるわけでもないのに、なんとなく買ってしまうのはなぜだろう。どこか惹かれるものがあるのは確かだろうが、過剰に期待させる何かを持っているのであろうか。 府中脳神経外科病院では、昏睡状態から目覚めてリハビリを終えた患者が、次々と自殺するという事件が起こる。これは単なる連鎖反応なのか、それともある霊能者の魂が乗り移るために起きるオカルト現象なのか。 この謎を追って、当事者の一人である主人公、フリーライターの桑原銀次郎は取材を始めるが・・・。 謎そのものは申し分ないと思うが、その処理の仕方がどうもうまくない感が否めない。どうにも消化不良気味な後味の悪さが残るのもいただけない。 |
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【9628】 |
メルカトル (2017年03月06日 21時46分) |
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『書楼弔堂 破曉』 京極夏彦 灯台のような三階建ての古書店、弔堂(とむらいどう)。目立つのになぜか風景に馴染んで認識しづらいのが特徴である。 時代は明治初期、幕末から明治にかけて活躍した著名人が今日も弔堂を訪れる。そして元僧侶の店の主が、「読まれぬ本を弔い、読んでくれる者の手元に届けて成仏させるが我が宿縁」などと説法の如きセリフで客を説き伏せる。それぞれの悩みを聞き、歩むべき道を示し、生きる意味を問う。 だが決して難解ではない。京極堂にどこか雰囲気が似通った、弔堂の主は本を通じて客に時に論戦を挑み、時に説法をする。ある意味では日常の謎を解くがごときシーンもあり、うっすらとではあるがミステリの要素も感じさせる。 読み終わった時、読者に何かを残す一冊だと思う。京極作品としては薄味かもしれないが、読んで損はないだろう。 |
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【9627】 |
メルカトル (2017年03月06日 21時43分) |
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『女王はかえらない』 降田天 トリックに関しては第二章の序盤でおおよそ想像がつく。だから最終章で二転三転しても特別驚かないし、上手く読者に驚愕を与えることに成功しているとは言い難い。第二章があまりに違和感があり過ぎて、もっとうまく騙してくれよと心中叫びたくなるのは私だけであるまい。 ただ、小学生女子の実態に関してはまずまずリアリティがあると思う。子供は大人が思っているより残酷なものだし、いじめとかスクールカーストを描いた作品としてはそれなりに評価できるのではないだろうか。 やや厳しいかもしれないが、このミス大賞受賞作としてそれ程突出しているとは思わないし、ミステリとしても詰めが甘いのかなという気がする。 |
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【9626】 |
メルカトル (2017年03月06日 21時39分) |
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『鵺の鳴く夜が明けるまで』 door ライトな文体に載って次々に登場する女子高生たち。そこにテンポよく殺人事件が絡み、さらには一風変わった名探偵が現れる。イラスト入りなのでイメージも湧きやすく、登場人物の色分けもしっかり頭の中で整理できる。 しかし、それでいて芯は本格ミステリの精神に貫かれており、軽いだけではないところを見せつける。今時珍しいオーソドックスなタイプの推理小説だと思う。表紙の柔らかな印象で先入観を抱いていると、意外なほどの正統さに戸惑いを覚えるかもしれない。 メイントリックに関しては、確かに解決編に示されているように数々の伏線がきっちり回収されている。特にあるシーンでは大いに違和感を覚えた。だが、過去の例に漏れず、いかんせんアンフェアぎりぎりといった感は否めず、真犯人を指摘されてもなるほどとしか言いようがなかった。 なお、事件の後日談が本編終了後に添付されていたり、二度のあとがきが書かれていたりと、まさに至れり尽くせりの一冊ではある。 |
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【9625】 |
メルカトル (2017年03月06日 21時36分) |
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『桐島教授の研究報告書』 喜多喜久 序盤は主人公の一人、芝村の理系大学の学生生活が面白おかしく描かれており、楽しく読むことができた。中盤はそれほど強烈な謎が出現するわけでもなく、やや中だるみの感があるが、理系出身の方にとっては興味深く読めるのではないだろうか。私は文系なので、やや専門用語などについていけない部分があり、少々退屈な思いを強いられた。 だが、それも謎解きの段階に入って格段にミステリらしさを発揮し始めるので、佳境になるほどヒートアップする。そして意外な犯人像や、意表を突く動機には驚かされるばかりである。 全般としては、氏の得意分野である化学、薬学をうまく生かして物語を紡いでおり、特徴がよく表れていると思う。芝村の恋愛感情なども絡めながら、エンターテインメント性も十分認められる気がする。 |
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【9624】 |
メルカトル (2017年03月06日 21時34分) |
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『グランドマンション』 折原一 久しぶりに折原氏を読んだが、相変わらず安定した低空飛行ぶりに安心した。 昨今の溢れかえるような叙述トリックに慣れた体質には、いささか刺激が弱すぎたようだ。アッと驚くような目新しさもなければ、裏技的な技巧も感じられない。悪く言えば使い古された叙述ものを総ざらいしたような印象で、世界が反転するような鮮やかさには程遠い。 自他ともに認めるボンクラ(クソ読者)の私には、入り乱れる人間関係や前後する時系列がやや煩雑であったことを認めなければならない。それもグランドマンション1号館という限られた舞台の中での群像劇なので、多分に窮屈な感が否めない。 それでも、単行本刊行の際に新たに加筆された『リセット』と『エピローグ』で、それまでの事件をサラリと振り返りながら読者の頭脳を整理させて、すべての短編を上手く繋げようとする努力は涙ぐましいものがあると思う(ちょっと大袈裟)。 |
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【9623】 |
メルカトル (2017年03月06日 21時33分) |
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『ウェディング・ドレス』 黒田研二 一生懸命書いているのがよく伝わってくるし、文章も下手ではないと思う。ただいかんせん面白みに欠ける気がする。その割にのめり込めるのは、「僕」のパートと「私」のパートが読み進むにつれて齟齬を生じてくるためだろう。その据わりの悪さは何が原因なのか気になって、自然に読むスピードが速くなってしまう。つまり、作者の思うつぼってことだろう。 メイントリックに関しては、発想は大変ユニークで面白いが現実味は薄い。映像として浮かんでくるのを想像するに、どう考えても不自然さが拭えないと思うが。 全体として決して悪くはないけれど、いろんな要素を詰め込み過ぎて焦点がぼやけてしまっている気がしてならない。メフィスト賞受賞作として相応しいのかと問われれば、まあ何とも微妙なところ。 |
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【9622】 |
メルカトル (2017年03月06日 21時31分) |
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『ブラインド探偵(アイ)』 米田京 糖尿病により両目を失明し、全盲となった作者による連作短編集。 主人公の勇は事故で失った視覚を嗅覚や聴覚で補い、ヘルパーの弘子と二人三脚で様々な事件を解決に導く。 本書は視覚障害者の勇の生活ぶりや、障害ゆえの苦労がよく伝わってきて勉強にもなる。その意味では大変な良作だと思うし、健常者では書けない心理状態の描写なども見どころとなっている。 しかし、ミステリとしてはやはり弱いと言わざるを得ない。謎もトリックも単純なものだし、捻りも効いていない。ご自身はあとがきで「読者に損はさせない」と豪語しておられるが、そこまでの高評価は個人的にはできない。 |
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【9621】 |
メルカトル (2017年03月06日 21時29分) |
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『両性具有迷宮』 西澤保彦 半分以上が官能小説風で、しかも設定が荒唐無稽、一風変わったものが多い氏の作品の中でも特に異色な作風ではないだろうか。 ミステリとしての主題はホワイダニットだと思うけれど、その部分がやや曖昧な印象を受けた。なぜ首を絞めた後に、ナイフで滅多刺しにしたのか辺りの疑問点も、謎として残されたままだし。 あからさまな性描写に加えて、牧野修氏や柴田よしき氏、倉阪鬼一郎氏らを実名で登場させるなど、サービス精神に溢れた小説であるのは間違いない。しかし、良識派の読者は眉をひそめること請け合いである。 |
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【9620】 |
メルカトル (2017年03月05日 21時48分) |
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『コロシアム』 土橋真二郎 『バトルロワイアル』の亜流のようなものかと思ったら、一味違う面白さを見せてくれた。とは言え、たたき台にしていることは確かだろう。 「コロシアム」ではある高校の女子生徒のみ、各クラスから一名が選ばれ、計30人に拳銃と殺傷能力のあるナイフが与えられる。そして殺し合うことを強要されるのだが、ある方法によりクラスメートと連絡を取り合うことができることが分かり、各クラスでは選ばれた女子生徒を援護するのだが・・・ 中盤までは迫力不足とういか、緊迫感や臨場感が物足りなかったが、最終章のデスゲームで俄然盛り上がりを見せる。そしてラストでは意外な事実が発覚し、次巻以降に期待を持たせるような憎い結末を迎える。 まだ始まったばかりの印象だが、やはり3巻まで読まなければ収まりがつかないように上手く作られていると、妙に感心させられた。 |
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