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【9639】 |
メルカトル (2017年03月07日 22時27分) |
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『言霊たちの夜』 深水黎一郎 同音異義語、外国人から見た日本語の難しさ、ややこしさ、など「言葉」をテーマにした連作短編集。連作とは言っても、それぞれの短編が独立しており、有機的な繋がりはほとんどない。 それぞれまずまず面白いというか、ところどころ笑えるが、ほのぼのとしたそれではなく、どこかエキセントリックな笑いを誘うものである。 一応事件らしきものが起きたり、警察関係者が出てきたりと、それらしい面もあるがミステリではあるまい。あまり真剣に構えると肩透かしを食らうので、まあ興味本位で読んでみるつもりくらいが一番かもしれない。ひまつぶし程度の感覚で肩の力を抜いて読むべき作品。 |
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【9638】 |
メルカトル (2017年03月07日 22時26分) |
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『十三回忌』 小島正樹 第一から第三までの殺人の概要はよく分かるが、警察の捜査をやや端折り過ぎの感がある。警察関係者は幾人か登場するわりには、そちらからのアプローチが足りていないと思われる。 それぞれのトリックはなかなかの奇想が感じられるが、偶然に頼ったものがほとんどで、現実味は薄い。ただ、壁を隔てた死者の声の仕掛けは面白い。 全体として盛り上がりに欠けるきらいはあると思うが、本格の王道を行こうとする作者の姿勢は買える。しかし、なんと言うかワクワクやドキドキとは無縁だし、探偵の海老原もイマイチ魅力的とは思えない。その辺りも含めて、もう一息な感は否めない。 |
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【9637】 |
メルカトル (2017年03月07日 22時24分) |
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『ヒトでなし 金剛界の章』 京極夏彦 これはいったい何だろう。ミステリの要素はある、観念小説か、宗教小説、或いはクライムノベルなのか。 主人公の尾田は幼い娘を亡くし、職も追われ、家族と離れ、そしてヒトでなしになった。そんな彼に人○しという重罪を背負った人間や、人生における大きな苦難を抱えた人間たちが、次々に接触し救われていく。というか、憑き物が落ちる如く人が変わっていく様を描いている。 文体はいかにも京極らしく、執拗でありながら理解しやすい。それでも、おそらく一般読者を意識して、読みやすく書いていると思われる。目次には一話から十一話までとの表記があるが、長編である。そして無論続編が書かれるだろう。印象としてはまだまだ序章に過ぎないと思わせるからだ。はたして彼らの今後の物語はどう変遷していくのか、新たな登場人物は現れるのか、括目して次作を待ちたいと思う。 それにしても、ラストの清々しさは何とも言えない余韻を残す。それだけでも一読の価値はあるだろう。 |
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【9636】 |
メルカトル (2017年03月07日 22時20分) |
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『このミステリーがすごい!三つの迷宮』 アンソロジー 『リケジョ探偵の謎解きラボ』 喜多喜久 『ポセイドンの罰』 中山七里 『冬、来たる』 降田天 以上の三作品からなるアンソロジー。とは言え、別にこれと言ったテーマが与えられているわけではなく、勝手気ままに書かれたミステリ。 『リケジョ』と『ポセイドン』は本格物。『冬』は何とも言い難い不思議な作品。敢えて言えば、三姉妹の母が亡くなり葬儀の日に、突然現れた一番下の弟。幼くして失踪した彼は果たして本物なのか、というのがあらすじ。正体不明の人物が登場する辺りは、横溝を彷彿とさせるが、果たしてミステリと言って良いものかどうか判断が難しい。 喜多氏がミステリとしての出来は一番だと思われる。これまでにない密室トリックは、さすが理系の作者だけのことはある。 一方中山氏は船上での殺人を描いており、被害者以外すべて動機ありの容疑者という、いかにもありがちな設定。こちらはこの作者にしては凡作ではないだろうか。 |
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【9635】 |
メルカトル (2017年03月07日 22時18分) |
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『瓶詰の地獄』 夢野久作 もっと奇天烈な世界観を味わえるのかと思っていたが、意外と普通だった。いやまあ普通と言ってもそれなりに特異な物語が並んでいるのは確か。 中でも『一足お先に』が白眉だと私は思う。片足を失った主人公だが、さほどの悲壮感が漂っていないのが逆に怖い。病院内で起こる殺人事件を巡って、夢と現実の狭間を行き交う幻想味が印象的である。私が断念した『ドグラ・マグラ』を彷彿とさせるようだが、そこまで難解ではないと思われる。 年代の割には古臭さを感じさせず、現代でも十分通用するのではないかと感じる。 |
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【9634】 |
メルカトル (2017年03月07日 22時17分) |
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『密室蒐集家』 大山誠一郎 実に端正な造りの本格ミステリ短編集。タイトルから分かるように、密室にとことんこだわっており、さらにはトリックも考え抜かれたものばかりである。 余分なエピソードや登場人物の個性などをできる限り排除し、あくまで推理小説に固執した作者の執念すら感じる作品が並んでいる。しかも、意外な犯人という点ではまさに秀逸と言える。ハウダニット、ホワイダニットにもしっかり気を配っており、どこを取っても本格の名に恥じない、密室殺人のオンパレードとなっている。 探偵の密室蒐集家は時代を隔てても全く容姿が変わらない謎の人物で、事件の概要を聞いただけで、即解決して知らぬ間に去っているという、個性も何もあったものではない。そこが逆にインパクトを与える効果をあげているように思う。 |
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【9633】 |
メルカトル (2017年03月07日 22時15分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『記憶破断者』 小林泰三 前向性健忘症のため数十分で記憶を失う男田村二吉が、他人の記憶を書き換えることができる能力の持ち主雲英光男と対決する心理サスペンス。 なのだが、文章が軽すぎるため読みやすいのはいいが、重厚さや緊迫感に欠けるきらいがあるのはやや残念。グロさは必要ないが、もっとこう二人の手に汗握る心理戦が展開されると私的にはさらに満足できたと思う。それでも、今までに類を見ないタイプの小説であり、二吉が一々ノートを引っ張り出して、つい一時間前の記憶をたどっていく姿や、雲英が他人に触れて言葉を発するだけでその人物の記憶が改ざんされていく様は、なかなか新鮮で面白い。 全体的に平板で盛り上がりに欠けるのはちょっとつらいが、癖のある脇役たち、特に徳さんがいい味を出している。 結末もなんだか意外性があるようでいて、すっきりしない。やや消化不良気味な終わり方であった。 |
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【9632】 |
メルカトル (2017年03月07日 22時13分) |
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『幻の女』 ウィリアム・アイリッシュ どこをどう取っても優れたサスペンス小説、だと思う。 しかし、囚われの身となったヘンダースンが、「幻の女」の特徴や言動などを一切思い出せないというのがいかにも解せない。一晩一緒に過ごした女の容姿すら忘れ去ってしまっているのはやはりどうかしている気がするが。それを除けば、隅々まで神経の行き届いた、端正な名作なのではないだろうか。 後半、世界が反転する展開はおそらく当時としては、今でもそうだが、かなりセンセーショナルなものだったと思う。 ま、いずれにしてもこれだけ平均点が高いのも頷ける傑作に違いないだろう。 |
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【9631】 |
メルカトル (2017年03月07日 22時11分) |
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『便利屋サルコリ』 両角長彦 便利屋三人の活躍を描いたエンターテインメント小説。連作短編集+ショートショート。いかにも子供が喜びそうな内容だが、大人が読んでも痛快で面白いと思う。 便利屋と聞けば、当然日常の謎を思い浮かべる人が多いだろうが、主人公の三人は同じ探偵養成学校出身で、結構ハードなストーリーが目立つ。尚サルコリとは猿田、骨崎、リサコがその名の由来である。 全体的にやや薄っぺらい感じを受けるのだが、展開がスピーディでサクサク読めるので、作風としては今風と言えるだろう。 キャラも三人の便利屋に関しては際立っており、個性豊かな彼らの物語をぜひシリーズ化してもらいたいものである。 |
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【9630】 |
メルカトル (2017年03月06日 21時50分) |
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『ヨハネスブルグの天使たち』 宮内悠介 いかにもSF描いてますと言わんばかりの無味乾燥で、ぶつ切りの箇条書きのような文体が鼻につく。シーンの切り返しが一行、或いは二、三行ごとに行われているし、色んな意味で説明不足で話についていけない。さらに、聞いたことのないカタカナ表記が横溢しすぎて、とにかく読みづらいことこの上ない。 唯一、日本製の人型ロボットが空から大量に降ってくるという、なんとも言えない不可解なシーンだけがストーリーの中で浮き上がっており、印象に残るばかりである。あとはもう正直何を書いているのやら理解不能な代物で、しかもよくよく考えてみても読み物として面白くない。 前作『盤上の夜』がかなり良かったので読んでみたのだが、何度も挫折しそうになりながら、何とか読破したのはいいが、期待外れもいいところだった。しかもまさかの直木賞候補に選ばれたというのだから、世の中解らないものである。SFっていうのはこんなにつまらないものなのか。 SFファン熱狂・・・私はがっくり肩を落とすという図式(私にはSFを読む資格すらないのか)が成立するのだ。 以上、完全にこき下ろしておりますが、あくまで個人の感想であり、作者及び作品を中傷するものではありません。 |
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