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【9929】 |
メルカトル (2017年04月08日 22時15分) |
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『六花の勇者2』 山形石雄 いやー、面白いねえ。第一巻よりもストーリーに厚みを増しているし、意外な展開の連続に全く飽きが来ない作りになっている。 主人公のアドレットこそ今回は脇に回っているが、その代わりに最年長のリーダー的存在で女剣士のモーラを中心に物語は進行していく。モーラとその敵となる凶魔の統率者の一人である、テグネウの絡みがストーリーに深みを与えており、プロローグではいきなりまさかのショッキングなシーンが用意されていて、全く予断を許さない緊迫感を読者に強いることになる。 また読んでいて時折イマジネーションを掻き立てられるシーンがあったり、完全にファンタジーの世界なのに情景が浮かんで来たりして、この独自の世界観にのめり込めることは間違いない。 誰が偽の勇者なのか、まだその正体は明かされず、先への興味の一つとして残されているため、3も読まずにはいられない気分にさせられる。心憎いばかりの作者のたくらみである。 まあそうじゃなくても、面白いから続編の3も読むけどね。 |
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【9928】 |
メルカトル (2017年04月08日 22時14分) |
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『13階段』 高野和明 こういうのを力作と言うのだろうが、とにかく前半が重苦しすぎる。確かに勉強になるし為にもなる。しかしながら、後味がどうもスッキリしないのはどうしたものだろう。 最も印象深いのは、南郷が過去に携わった二つの死刑執行のシーンだった。これは読み応えがある、臨場感も感じられるし、リアリティもあり、まさに真に迫った描写力は素晴らしいと思う。 その後は一気にテンポアップし、実にサスペンスフルな展開が用意されている。でも、なぜか手放しで喜ぶ気にはなれないのが残念なところ。 やはり乱歩賞はどうも信用できない。審査員の満場一致で受賞が決定したらしいが、そんなに高レベルな作品だろうか。 何かこう納得がいかないもやもや感を残したまま、読了してしまった気がする。 |
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【9927】 |
メルカトル (2017年04月08日 22時12分) |
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『倒錯のロンド』 折原一 いかにも折原氏らしい作品。しかもまだ若い頃なので脂が乗っているのが筆の勢いで感じ取れる。 終盤で「これからどんでん返しが起こります」と宣言しているが、私にはそれ程のものかという印象だった。勿論叙述トリックが仕掛けられているのだが、これがそんなに鮮やかに決まっているとは言い難いと思う。 やられた感がないんだよね、ああそうなの、って感じで。 一番の謎は、この作品で作者が乱歩賞を受賞できる自信がどこから来ていたのかに尽きる。 どう考えても、こうした作風は乱歩賞にふさわしくないでしょう。 残念ながら、最終選考に残っただけでも大したものだと納得するしかないのではないだろうか。 まあでも、サクサク読めるし、それなりに楽しめるのは確か。ではあるが、ちょっと捻くりまわしすぎの感は否めない。 |
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【9926】 |
メルカトル (2017年04月08日 22時11分) |
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『毒を売る女』 島田荘司 これぞ粒ぞろいの作品集と言えるのではないだろうか。 ジャンルは本格となっているが、どちらかと言うとサスペンスに近い作品が多いと思う。うむ、本格じゃないね。 島田氏にしては珍しいショート・ショートも含まれており、これがまた気の利いた、良い感じの仕上がりである。新発見、じゃなくて再発見した思いがした。 でもさすがに20年以上も経つと内容は忘れている。 それでも古臭さを感じさせないのは、氏の巧みな筆力があってこそだろう。平均点が高いのも頷ける。 ある作品では私自身物凄く身につまされる内容で、ちょっとショックだった。個人的なことなのでどうでもいいけど。 |
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【9925】 |
メルカトル (2017年04月08日 22時09分) |
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『蓬莱洞の研究』 田中啓文 私立田中喜八学園に入学した比夏留はどういうわけか、吹奏楽部に入部するはずが民俗学研究会に入会することになる。 そこには頼りになり、武芸の心得のあるらしき女部長の伊豆宮や、男なのに女として育てられたポニーテールのよく似合う犬飼、大銀杏を結ったデブの白壁がおり、彼らは洞窟に関するいくつかの冒険を経験していく、といった3つの中編からなる学園もの。 読んでいてとても楽しい気分になるので、個人的には好きな作風だが、ミステリとしてはあまり評価できない。 相変わらずのダジャレ連発や、脱力系のバカミス的トリックはいかにも作者らしいが、読者によっては怒りすら覚えるかもしれない。 真面目に読むと腹が立つので、肩の力を抜いて楽しむ姿勢が必要である。伝奇の部分も眉唾ものが多いような気も。 私は第二話が好きだが、これはミステリですらない、どちらかと言うとファンタジーっぽい世界だと思う。 いろいろ批判もあろうが、これはこれで結構楽しい作品ではないだろうか。 |
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【9924】 |
メルカトル (2017年04月08日 22時07分) |
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『脳男』 首藤瓜於 異様なタイトルから受ける、暗めのサイコ・サスペンス風の印象とは内容がかなり違っていた。 前半から中盤にかけては、感情のない男、鈴木一郎の脳内を様々な人の証言からえぐっていく、やや学術的な要素を含むサスペンスとなっているが、これはこれでなかなか興味深い。 後半は一転スピード感あふれるアクションシーン満載で、息もつかせぬ急展開に、手に汗握ること必至である。また、警部の茶屋、心を持たない男鈴木一郎、鈴木の人間性についての解明を任された真梨子を中心に、それぞれのキャラがいい味を出している。 思っていた以上に面白く、自分としてはかなり満足しているが、やはり好みが分かれるタイプの作品といえるかもしれない。 まあしかし、一読の価値はあると私は思う。 |
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【9923】 |
メルカトル (2017年04月08日 22時05分) |
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『六花の勇者3』 山形石雄 シリーズ第三弾はこれまで目立たなかった巨漢の少年騎士ゴルドフが、自らが仕える姫ナッシェタニアを救うために、命を懸けて戦う物語が中心となっている。 その戦闘シーンはすさまじく、ファンタジーならではの戦略や武器を駆使し、壮絶とも言える戦いを展開している。 このように書くと、いかにも単純な戦いのように思われるかもしれないが、その裏には敵味方入り乱れての心理戦が繰り広げられて、さらに緊迫感を高めるのに一役買っている。 ただ、あまりにもゴルドフのパートが長すぎて、他のキャラの出番が少ないのが少々不満ではある。がまあ、まだまだ先は長そうなので、今後他の勇者たちの活躍も存分に堪能できることだろう。 |
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【9922】 |
メルカトル (2017年04月08日 22時03分) |
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『キョウカンカク』 天祢涼 これはねえ、何を書いてもネタバレになってしまいそうなので、多くは語れない。本作に少しでも興味を持っていて、これから読もうと考えている人は、私の書評など無視して早速書店か図書館へ行きましょう。 まあ文体としてはいい意味でライトノベルに近い感覚である。 謎の焦点はいわゆるホワイダニットであるが、そこはそれ、特異な設定が用意されていて、一筋縄ではいかない。 探偵役、助手、警察官僚などそれぞれのキャラが生きているので、ややもすると中だるみになりそうなところをうまくフォローしている。 最後に、これはほんとにネタバレなるが、ヘイスティングスは所詮ヘイスティングスだということだ。 |
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【9921】 |
メルカトル (2017年04月08日 22時01分) |
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『機巧館のかぞえ唄』 はやみねかおる まあね、子供向けだから。でもその割には凝った構成にはなっている。あまり作中作の意味はないけれど。 第二部が短すぎて尺が足りなかったのか、第三部は全然本編と関係ないエピソードが放り込まれているのは、不自然というか、無理やり感が見え見え。 解決編は一瞬ハッとさせられるが、それ以外は特筆すべき点はない。 作中作には、島田荘司や綾辻行人、京極夏彦らしき人物がチラッと登場したり、古今東西の名作の題名が出てきたり、その他ミステリに関する何気ないネタが仕込まれていて、ニヤリとさせられる。 また本編以外に、あとがき、小ネタ解説、同作家による二度の解説など、付録が豪華で楽しめる。 |
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【9920】 |
メルカトル (2017年04月08日 21時59分) |
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『我らが隣人の犯罪』 宮部みゆき さすがは宮部女史、面目躍如の短編集。初読の際はあまりピンと来なかったが、今回読み直してみてその良さがある程度理解できた気がした。この人の作品としては比較的本格色の濃いものと言えそうである。 とにかく第一話から第三話までの出来が素晴らしい。どれもほぼ文句のつけようがないほどの完成度である。 第四話の死体をバラバラにした理由はありきたりで、新味はないが、それでも全体的にうまくまとまっていると思う。 ただ全編を通じて若干薄味な感じなのが悔やまれる点ではないだろうか。 |
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