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【9859】 |
メルカトル (2017年04月01日 22時21分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『ネジ式ザゼツキー』 島田荘司 ファンタジー小説『タンジール蜜柑共和国への帰還』は、巨大な蜜柑の木の枝に家屋が立ち並び、通りができており、一つの小国として成り立っている。蜜柑をもぎるために妖精たちは羽根を羽ばたかせる、またその国には鼻や耳がない者もいるという、相当意味不明なものである。スウェーデンで教授をしている御手洗潔は、この小説から真実を抽出し、作者の帰るべき国を模索し、とんでもなく奇怪な殺人事件を解決に導くべく、推理を始める。 前半ではこれまでの「御手洗潔シリーズ」では見られなかった、御手洗自身の一人称を読むことができる。しかし、かつてのエキセントリックだった御手洗の姿はそこにはない、冷静で思慮深い学者然とした、それなりの年齢を重ねた落ち着いた御手洗に、なんだかしっくりこないものを感じる読者も多いのではないだろうか。 まあしかし、彼の天才ぶりは相変わらずで、この程度のからくりは大して頭脳を駆使する必要もなさそうだ。 全体的にはやや小粒な印象は受けるが、『タンジール蜜柑共和国への帰還』が思いのほか面白く、個人的にはこれがかなり気に入っている。 ミステリとしての興味は、いわゆるホワイダニットと言えるかもしれない。何故犯人は被害者の首を切り、ネジによって首と胴体を繋げるような真似をしたのか。そこには島荘がよく口にする「信念の犯罪」が執念とも言える理由をもって存在しているのだ。 |
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【9858】 |
メルカトル (2017年04月01日 22時19分) |
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『傀儡の糸』 亜木冬彦 終盤までは典型的なサイコサスペンス。主人公は精神科の女医だし、所轄の刑事二人がコツコツと地道に犯人を捜査するが、厳しい監視の中、犯人は若い女性ばかり4人を惨殺する。その手口はかなり残虐で片手の指と両足の指をすべて切断し、鼻や耳を切り取ったりもしている。そしてなぜか一本だけ指が現場から消失していた。 猟奇殺人鬼の仕業なのか、なぜそのような手間のかかることをしたのかなど、ミステリ的な興味も当然持たれる。 がしかし、終盤突如としてホラーに転じて、犯人が一体誰なのか判然といない上、様々な疑問点が未解決のまま幕を閉じてしまう。 ただ、なぜそれぞれの被害者の指が一本だけ消えていたのかという理由だけは、なるほどと思わされる。その点は無理のない結末だとは思うが、いかんせん、ミステリとしての解決がなされていないのでは、読者として不満が募るばかりである。 作者としてはミステリとホラーの融合みたいな線を狙ったのだろうが、両方が中途半端でイマイチだった。 |
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【9857】 |
メルカトル (2017年04月01日 22時17分) |
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『転校生』 森真沙子 主人公は父の仕事の都合で高校を転々とする、有本咲子。彼女が行く先々の高校で様々な奇妙な体験をするという、連作短編集である。全5話で第3話目まではホラーと言うよりもファンタジーに近い感じであろうか。しかも乱暴に言ってしまえば取るに足らない凡作である。ただし、あくまで私にとってと解釈していただけるとありがたい。 瞠目すべきは4話と5話。特に個人的に気に入っているのは4話の『図書室』だ。咲子は誰も借りないような、幻想小説や怪奇小説を図書室で借りるのだが、その前に必ず借りている人物がいる。3年前に借りているその謎の人物を巡っての、咲子の危うい冒険が今始まる、といった感じの内容。 簡単に書くと何となく陳腐な印象だが実際読んでみると分かるが、これがなんとも言えない雰囲気を持っていて、他が完全に霞むほど素晴らしい。 最終話も良いが長くなるのでここでは割愛させていただく。とにかくこの2話は別格だが、他が平凡な出来なので、均してこの点数に落ち着いた。 |
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【9856】 |
メルカトル (2017年04月01日 22時13分) |
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『最後の子』 岸田理生 老練な文章、時折ハッとさせられるような、情景が目の前に浮かんでくる描写力、只者ではないと感じた。しかも、初出当時まだ30代だった作者は女性である。この事実には驚きを隠せない。 この短編集の一部を紹介すると、蛇が少女に憑依し、男と交わった後、卵を産み付け新たな生命体を誕生させようとする話。ある日突然あらゆる鏡が反乱を起こし、見る者映る物すべてを歪め一部を、或いは全部を消し去る話。睡眠が重い罪と制定された現代社会、ある男が睡眠除去手術を受けたにもかかわらず、眠ってしまったのちの顛末など。 いずれも奇想が光るものばかりではあるが、ほとんど捻りがなく、なんとなく進行していき、盛り上がらないままいつの間にか読み終わっていたという作品が多いのが残念ではある。 ホラーと言うよりも、怪奇小説と呼称した方がしっくりくる短編集で、インパクトという点ではかなり薄いので、おそらく一年以内に忘れてしまいそうな感触が残る。だから、20年という年月が経ているため全く中身を覚えていなかったのも致し方ないと言うものであろう。 |
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【9855】 |
メルカトル (2017年04月01日 22時11分) |
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『サマー・アポカリプス』 笠井潔 これはもう、超本格ミステリと言っても差し支えないのでは。よって、ミステリマニアは避けて通れない作品だと思う。勿論、無理強いはしない、なぜなら、全体の半分くらいが宗教の歴史や薀蓄が語られているのだから。しかし、だからこその重厚さであり、これなしではただの普通のミステリになってしまうね。 事件はヨハネ黙示録の見立て殺人となっているが、連続殺人事件ではあるものの、それほど複雑ではなく、トリックなどもそれほど凝ったものではない。しかし、後半の二転三転する展開はとても読み応えがある。 丁度400ページから、突如本格ミステリらしさを発揮して、それまでの宗教云々は一体何だったのかと思うほどである。それにしても、殺人の動機は小難しい小説のわりには至って普通なので、そこはやや拍子抜けの感がある。 一つ勉強になったのは黙示録の意味合い、なるほどそうだったのかと納得。 |
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【9854】 |
メルカトル (2017年04月01日 22時09分) |
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『田舎の事件』 倉坂鬼一郎 全十三話からなる短編集。いずれも無駄な描写を極力排して、非常にコンパクトにまとめられていて、とても読みやすく好感が持てる。 日本そばを極めた男が心機一転開いた店「無上庵」。そばの味をそのまま味わってもらうため、つゆを水にして他のメニューを一切なくした究極のそば屋は苦戦を強いられる。そこに現れた客は、普通のおばさん二人と若い女。果たして彼女らはそのそばをどう評価するのか、そしてその後彼を待ち受ける運命とは?という話。 自信満々で迎えたのど自慢のトリを務める彼は「長崎の鐘」を歌うが、なんと鐘一つ鳴らされて、とてつもないショックを受ける。だが、彼は上司に合格だったと嘘をつき、そこから彼の転落が始まる、という話。 といった感じの、いずれも舞台は田舎で、何気ないきっかけから狂気に取り憑かれた男たちが堕ちていく様を、ユーモアを交えて描かれた小気味よい作品集。 意味はよく分からないがなぜか全てが関西弁での会話となっており、おそらく舞台は関西地方のどこかであろうと思われる。 「事件」と銘打たれているが、どれも主人公の男が勝手に暴走し、他を巻き込むか、自らが堕ちるところまで堕ちていく過程を、何とも言えないリアルな感じで描いていて、面白いと同時に生々しい迫力のようなものがある。 まあミステリとは言えないかもしれないが、奇妙な魅力を持った作品であるのは間違いない。世に知られていない、隠れた名(迷?)作ではないかと思う。 |
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【9853】 |
メルカトル (2017年04月01日 22時08分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『ふたご』 吉村達也 がん細胞は不老不死であり、アポトーシス遺伝子の不在がその原因と考えられていること。パーフェクト・ツインズが誕生する理由を学識的見地から、やや曲解しながら作者なりに咀嚼、アプローチし結論付けていることなど、なかなか興味深い学術的情報を披露している辺りは吉村氏の新境地だったのではないかと思う。 本作は、ミステリとホラー、そして遺伝子工学の新たな地平を切り開く新説とがミックスされた、全く新しいタイプの小説である。ただし、ストーリーにそれ程の新味はなく、従来のホラーの形を借りてはいるが、いわゆる「双子トリック」の亜流的な作品かと思っていた私は大きな間違いをおかしていたようだ。 しかし、万一この書評を読んで、古書店でたまたま見つけてこれから読もうとしている方や、図書館で借りて読む気になった奇特な方がおられるかもしれないので、内容に関しては一切触れない。 ストーリーとは関係ないので、ついでに書いておくと、人間の聴覚は実際の音声の約20倍の大きさで聞こえるらしい。試しに口をすぼめて息をゆっくり吐き出してみるといい、意外に大きい音がすると感じるはずである。といったようなことも書かれており、いろいろ勉強にもなる作品だ。 |
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【9852】 |
メルカトル (2017年04月01日 22時06分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『仮面劇』 折原一 第一幕から第三幕までの三部構成で繰り広げられるサスペンス。取り敢えず全編を通して、トリカブトによる保険金殺人事件を扱ったものだが、それぞれ少しずつ味付けが異なっており、スパイスがピリッと効いてはいるものの、やや小粒な印象を受ける作品である。 まあ折原氏らしい仕掛けが各所に見られて、ファンにとってはそれなりに楽しめるとは思う。みなさん、結構厳しい採点になっているけれど、私はそれほど悪くない出来だと感じた。 勘のいい読者には真相を見破るのはそれほど難しくはないかも知れないが、二度目なのに、私は騙されるべきところでもれなく綺麗に騙された。それにしても結構あっと驚くような仕掛けが施されているのに、これほど内容を忘れてしまうものだろうか。普通、読んでいる途中で、ここはこうなって、あれはああで、という具合に部分的にも思い出してくるものだが。 まあいい、それだけ初読の時同様楽しめたわけなので、良しとしよう。 |
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【9851】 |
メルカトル (2017年03月31日 21時47分) |
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6対2で完敗か。 これで3連敗も見えたな。あまりネガティブなことばかり書きたくはないが、やはり打線が弱すぎる。 特にビシエド、最悪だなあ。 凡フライでも何でもとりあえず一塁まで走れよ。 もうなんか、最下位も見えてきたのか。 まあ、遠藤と京田は頑張ったかな。他は見所なかったねえ。大野はもっと力投しろよ。球が走ってないっての。 |
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【9850】 |
メルカトル (2017年03月31日 21時41分) |
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『リロ・グラ・シスタ』 詠坂雄二 外連味たっぷりで、文法的にやや疑問の残る、そしてどう考えても日常的に使わないだろうと突っ込みたくなるセリフ。迂遠で、圧倒的に説明不足な地の文。それらが終始繰り返されるので、これは私でなくても途中で放り投げたくなるというものだろう。 読者に迎合しろとは言わないが、売れたければせめて作家たる者、読み手のことも考えて執筆作業に従事していただきたいものである。そんな読者の事情を無視した書きっぷりが、せっかくの素材を台無しにしている気がする。 おそらく、作者がこれは最後まで気付かないだろうとほくそえみながら企んだ大胆な仕掛けは、1ページ目で既にミエミエだった。凡人の私でも気づいたのだから、ある程度ミステリを読んでいる人間ならば速攻で見抜かれてしまっただろう。言葉で表すなら「何を今更」ってことですかね。 メイントリックもなんだか既視感がありパッとしないし、解決編も有耶無耶に終わってしまった感じで、カタルシスの欠片もなかった。大体、自称なのか他称なのか知らないが、名探偵と言われているわりには、この主人公は大した活躍をしていない。そんな不満だらけの酷評は、期待の大きさの裏返しでもある。不本意ながら読むだけ時間の無駄だったと思う。 |
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