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【9649】 |
メルカトル (2017年03月08日 22時19分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『正三角形は存在しない 霊能数学者・鳴神佐久に関するノート』 二宮敦人 女子高生の佳奈美はどうしても霊に遭遇したくて、クラスメートで霊能者の雄作とその兄でこれまた霊能者で大学生の佐久に近づく。それから様々な事件に巻き込まれるが、彼女の熱は冷めず、ますますのめり込んでいくことに・・・ 主人公はこの三人だが、他の登場人物も含めてとてもよく描き分けられており、それぞれの個性が際立っている。見方によっては連作短編にも取れるが、長編として捉えたほうがしっくりきそうだ。 文体は相変わらず安定していて、非常に読みやすく好感が持てる。第二章まではどこかライトなオカルト・ミステリかと思わせて、第三章でとんでもない展開に持っていく力技は見事だ。とにかく胸がいっぱいになり、読んでいてせつなさで心が震えるような体験をすることになった。この感覚は久しぶりなので、思わず高得点をあげてしまったのだった。 本作は取り敢えず私史上、二宮氏の最高傑作となった。とても素敵な作品だと思う。 |
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【9648】 |
メルカトル (2017年03月08日 22時17分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『猫色ケミストリー』 喜多喜久 いわゆる人格入れ替わり物で、ありがちなパターンではあるが、若い女性の人格が猫に入り込んでしまうところが目新しさなのだろう。 所々引き込まれるシーンがあるが、全体としては緩めでのんびりとした雰囲気で進行していく。主人公の人格である「僕」の肉体が病院のベッドで仮死状態のまま、母親に見守られつつ、その身体が消滅するように死に至ってしまうという無慈悲さに抗うことなく、あきらめの境地で自らの身体を見つめるシーンなどは結構印象深い。 ただ、作者の得意分野である化学合成に関する実験の場面などは、門外漢の私としてはいささか退屈ではあった。それと、せっかく猫が人格を持ったのだから、それ相応のハッとするような異色の物語に持っていってほしかったというのが正直な感想でもある。 |
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【9647】 |
メルカトル (2017年03月08日 22時16分) |
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『天使のナイフ』 薬丸岳 乱歩賞受賞作の中では、優れた作品だと思う。何人かの方が書かれているが、本格的な社会派ミステリでありながら、根底にエンターテインメントがしっかり息づいているのが素晴らしい。さらに言えば、重いテーマを扱っているにもかかわらず、ある種娯楽作として楽しめるように出来上がっているので、毛嫌いせずに読まれるのもよろしいかと思う。 ただ難点もあり、偶然にしても少年犯罪があまりに多発しているのは不自然であろう。それを除けば、単純に見えた主人公の妻の殺害事件が、意外に複雑な展開を見せる辺りのサスペンスや、少年法の是非を問うべき永遠のテーマなど、読みどころ満載である。 |
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【9646】 |
メルカトル (2017年03月08日 22時14分) |
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『黒猫の遊歩あるいは美学講義』 森晶麿 これは好き嫌いがはっきり分かれるタイプの作品であり、激しく読者を選ぶ作品だと思う。そんな私は正直好きになれなかった。嗜好の範疇から外れてしまっていたというべきだろうか。 その原因の一つは、文面が上滑りしてすんなり頭に入ってこないことが挙げられる。勿論それは自身の読解力のなさや脳細胞の死滅も大いに関係しているものと思われるのだが。読みづらいとかではなく、文体が肌に合わなかったという話なのだ。 内容的には、ケチをつけるわけではないが、謎そのものがあまり魅力的とは思えないこと、黒猫の謎解きが詩的過ぎていまいち理解できないというか納得できない感じが否めなかったのが、印象を悪くしている原因かもしれない。 ただ、アガサ・クリスティー賞に選出されたわけだから、選考委員のどこか琴線に触れる部分があったのは間違いないだろうゆえ、読む人が読めばやはり面白いのだろうと考えられる。 |
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【9645】 |
メルカトル (2017年03月08日 22時12分) |
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『掟上今日子の挑戦状』 西尾維新 基本に忠実に描かれた本格ミステリとの印象が強い。それは取りも直さず、西尾維新がまぎれもなくミステリ作家であるという証左に他ならない。本シリーズは年内に二作も上梓されるそうなので、なお一層の期待が持てそうだ。 だが、本作は設定もプロットもストーリーもぶっ飛んだものはないので、全体的にやや小ぢんまりとした感じは否めない。それと、ところどころにちょっとした疑問点が散見されるのが気になる。例えば第一話では、そもそも死者に対して義理も借りもないのに、わざわざアリバイまで作って偽装するのはなぜなんだろう。最終話のダイイングメッセージを残す理由も納得がいかない。まあこの場合、今日子さんの推理は大変面白かったが。 とは言え、相変わらず読者に対して良心的かつ、「忘却探偵」という特殊な設定ゆえの独特の世界観があって楽しませるエンターテインメントに仕上がっているのは間違いないだろう。 |
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【9644】 |
メルカトル (2017年03月08日 22時11分) |
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『東京結合人間』 白井智之 プロローグは手に汗握るほどグロい。そりゃもう、この先どうなるんだろうと心配になるほどえげつない。で、序盤は独自の特異な世界観を見せつけられて、なにこれ?と思いながらも、グイグイと引き込まれる。そして、なんだかんだで取り敢えず、一件落着的な感じですっきり。 さらにその後の展開が期待されるが、いわゆる孤島もので既視感アリアリ。どこかで読んだことある感が満載で、しかもやや退屈。結合人間やオネストマンといったネタが全然生かされていないではないかと憤慨してしまうのであった。 そしてエピローグ、ここに来てやっとなるほどと首肯できる解決が明示され、再度すっきり。 全体としては、グロ+まったり+異様な世界+ちょっと意外なラストといった感じ。 |
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【9643】 |
メルカトル (2017年03月08日 22時09分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『聖母』 秋吉理香子 一見幸せそうに見えるが、不妊治療に悩み苦しむ平凡な主婦、連続幼児猟奇殺人の犯人の行動と心理状態、それを追うベテランと若手女性の刑事。それぞれのパートで巧妙に構成された、読み応え十分なサスペンス。 グロさはないが、どこか安孫子武丸の『殺戮にいたる病』を彷彿とさせるプロットで、久々のらしいサスペンス作品と言えよう。 さらには、やられた感が半端ないラスト。この仕掛けを見破れる読者はそうはいないだろうが、しっかりと伏線は張られていてフェアプレーも好感が持てる。 |
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【9642】 |
メルカトル (2017年03月08日 22時08分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『一番線に謎が到着します 若き鉄道員・夏目壮太の日常』 二宮敦人 日常の謎と共に、私鉄の鉄道員の活躍を描いた佳作。 第一章は大切な原稿を失くした若い編集者が、遺失物係を慌てて訪ねてきたところから始まる。壮太はなぜ彼女が○○したのかに疑問を持ち、そこから裏の事情を推察し推理を重ねる。 第二章では、ポルターガイストやラップ音などの超常現象を描くが、ストーリーは意外な方向に展開し、果たして壮太はどう解決に導くのかが読みどころとなっている。 しかし何といっても白眉は第三章で、鉄道員と乗客が協力し困難に立ち向かっていく姿は、感動的といっても過言ではあるまい。もっとサスペンスフルに、或いはスケールの大きな物語に仕上げることもできたのだろうが、敢えてコンパクトにまとめ上げることにより、あくまでライトな読み物に徹した姿勢は二宮氏のスタンスを感じる。 また、ラストにちょっとしたサプライズがおまけとして付いてくる。 |
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【9641】 |
メルカトル (2017年03月08日 22時06分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『その可能性はすでに考えた』 井上真偽 冒頭、新興宗教団体が居住する広義での密室内での集団自殺、更にはその信者の首を切り落とすという、奇妙な連続首切り事件が発生する。そのシチュエーションの異様さに引き込まれるものの、面白いのはそこまで。後は奇蹟を現実のものにしたい探偵と、その事件の解決策を引っ提げて登場する刺客との対決が繰り返されるが、その構成はまるで劇画そのもの。本当に漫画化を意識したのかと思うほど、タッチは劇画風である。 多重解決のトリックはほとんどが機械トリックで、正直こじつけめいており、説得力に欠ける。アンチミステリと評する人も中にはいるようだが、決してそんなことはなく完全に本格の範疇内だろう。 もう少し期待していたのだが、やや裏切られた感は否定できない。謎が魅力的なだけに残念としか言いようがない。 |
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【9640】 |
メルカトル (2017年03月07日 22時29分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『ミステリー・アリーナ』 深水黎一郎 氾濫する叙述トリックを揶揄しているかのような皮肉さと、色物的なたくらみに満ちた、一気に読ませるリーダビリティを持った異色作。 徐々に明らかにされる問題編に対して、次々と回答される解決編。そのほとんどが様々な叙述トリックを利用したもので、明らかに怪しげな記述から、さりげないと言うかどうとでも取れるような曖昧な表現を突いたものまで、矛盾なく解決に結びつけようとする作者の苦労がしのばれる。その意味では確かに多重解決物の極北といってもいいだろう。 最後に解答者側の狙いが明らかにされるが、やや取って付けたような印象を受ける。さらに唐突な終わり方があっけなく感じたのが勿体ないなと思わないでもない。 |
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