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【9679】 |
メルカトル (2017年03月11日 21時50分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『撓田村事件 iの遠近法的倒錯』 小川勝巳 その名の通り、因習深い村で起きた連続猟奇殺人事件を扱った本格ミステリ。ちなみに、タイトルはしおなだむら事件と読む。 横溝正史の流れを汲む作品と言えるが、その冗長さとリーダビリティにおいて、まだまだ正史の域には達していないと感じる。 主題はホワイダニットとフーダニットだが、犯人の意外性はさほどない。なぜ殺人を犯したのか、というよりも、なぜ死体を切断したのかという理由については、ある程度納得のいくものではあった。全体を通して、ややメリハリがなく盛り上がりに欠けるきらいはあるが、横溝を標榜し、さらに独自の世界観を追求する姿勢は褒められるべきと思うが、それが必ずしも成功していると言えないところがつらい。 色々瑕疵があるものの、良作ではあると私は思う。 |
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【9678】 |
メルカトル (2017年03月11日 21時47分) |
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『ポケットにライ麦を』 アガサ・クリスティー 連続殺人はテンポ良く起こるが、その後話が拡散される感じがして、どうにも退屈さを抑えきれない。情けないことに、読みながらどうでも良くなってしまったことを告白しなければならない。 マープルが出てくる場面だけはちょっぴり引き締まるが、その他はなんとなく進行する感が否めない。見立て殺人の意味もイマイチ納得できないし、動機も犯人像も言ってしまえばありきたり。個人的にはとても傑作とは思えない。 ただ、ラストは哀切が漂い、涙を誘う。作品の締めくくりとしてはよく考えられているし、非常に印象深いと思う。 |
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【9677】 |
メルカトル (2017年03月11日 21時46分) |
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『インディアン・サマー騒動記』 沢村浩輔 何とも不思議な短編集である。まずそのタイトル、何が『インディアン・サマー』なのか、理解不能だ。と同時に、売れそうにないタイトルでかなり損をしていると思う。今回、文庫化に際して『夜の床屋』と改題されたのは大正解だろう。 そして、一応連作短編集の形をとっているが、それぞれが独立しており、「僕」という登場人物が共通しているだけで、ほかに関連性はないように見える。よく解釈すれば様々な作風が読めてお得感があると言える。ところが、エピローグで思ってもみなかったK点越えの着地を見せ、読者を驚かせる。すべてを読み終えて、日常の謎かと思えば本格、本格かと思えばファンタジーというように、万華鏡のように景色が変わっていく様は、ある意味戸惑いさえ覚える。 短編をかき集めて、あとから無理矢理取って付けたように関連付けたとの誹りを受ける可能性も大いにあるが、逆にその据わりの悪い後味が何とも言えない妙味を与えているように思えてならない。 |
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【9676】 |
メルカトル (2017年03月11日 21時44分) |
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『スタート!』 中山七里 自らの第三長編『災厄の季節』(のちに『連続殺人鬼カエル男』に改題し刊行)を原作として映画化、そのクランクインから一般公開までの、映画製作に賭ける男たちの真摯な格闘を描いたミステリ。 ミステリの要素は刺身のツマのようなものであり、おまけ程度で、ほぼ全編映画に携わる人々の姿を描いた娯楽作品と言える。したがって、あくまで映画マニアのための小説であり、ミステリファンが読むものではない。一応殺人も起こるが、若干意外な犯人以外はこれといったトリックもなく、ミステリとしてはとるに足らないものとなっているのは残念な限りであった。 かと言って、映画に関する薀蓄が披瀝されるわけでもなく、その意味でもいかにも物足りなさを感じる。 Amazonの評価はやはりあてにならないことを、改めて思い知らされた一作であった。 |
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【9675】 |
メルカトル (2017年03月11日 21時42分) |
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『旅のラゴス』 筒井康隆 時代設定も場所も不明だが、主人公のラゴスが地球上のさまざまな国を、一風変わった方法で旅する連作長編。 文体に臨場感があふれ、実に適切な語彙を選択しているため、読者は自然異国を旅して周り、行く先々で個性的な人物と出会うような疑似体験をすることになる。一つ一つのエピソードは短いが、何とも言えない雰囲気を漂わせ異国情緒を味わえる。 ラゴスはナイス・ガイではあるが、実際学究肌で、何十年も旅する間に一国の王に祭り上げられたり、大学の教授になったりと、まさに波乱の人生を送るのだ。そして最後に向かう先は・・・。 『壁抜け芸人』『たまご道』など奇想たっぷりのエピソードも楽しい作品だ。 |
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【9674】 |
メルカトル (2017年03月11日 21時41分) |
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『交換殺人には向かない夜』 東川篤哉 ある邦画に「笑いは心のバロメーターやねん」的な台詞がある。つまり、よく笑っていられる時は心が健康な証拠、という意味だ。これを信じるなら、本作を読んで一度も笑えなかった私の心は、やはり病んでいるのかもしれない。特別笑いの沸点が高いわけでもないと思うが・・・それともこの作品は寒いギャグのオンパレードってことなのか。 本書の核となるトリックは、ご承知の通り既存している。しかも、随分前から。さらには、私には何となくこの仕掛けが予測できた。このボンクラの私が、である。まあ見抜けたからと言って、偉くもなんともないのだが、ちょっと拍子抜けなのだ。 後味も全体的な流れもどうもすっきりしない。これだけの高評価を得ているからには、何かあるのだろうが、私にはそれが見えてこない。期待していただけに残念だ。なんとなくすべてにおいて不発に終わった感が拭えない。 |
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【9673】 |
メルカトル (2017年03月11日 21時37分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『アルジャーノンに花束を』 ダニエル・キイス 期待していたほどではなかった。全編手記による一人称で構成されているが、これにより、個人的にはあまり感動できなかったという残念な結果に終わってしまった。 現在ドラマが放映されているが、以前にもユースケ・サンタマリア主演でドラマ化されている。その際、ユースケの好演も相まって大変面白かったため、当然原作も落涙必至の感動の物語と信じていたが、意外にもストーリーの起伏に乏しく、ドラマティックな展開とは言い難い、チャーリィの内面を生真面目に描いた固い印象の小説であった。 SFとは言っても、小難しい専門知識などは皆無で、その意味では読みやすく、万人向きなのだと思う。唯一最後の二行はやや心動かされるものがあった。 世界に名を轟かせる名作に、この程度の書評しかできない、また5点という低評価を与えてしまう私は、ミステリ以外の小説に対しての審美眼を全く持っていないと言わざるを得ないだろう。 |
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【9672】 |
メルカトル (2017年03月11日 21時35分) |
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『地球儀のスライス』 森博嗣 『まどろみ消去』の時も思ったが、どうも森博嗣の短編集はらしくない。こちらの期待しているというか、想像しているものとは全く別の代物である。 ジャンルはともかく面白ければそれでもいいが、正直面白みに欠けるため、どう考えても高評価は出来ない。 かろうじて『気さくなお人形、19歳』と『僕は秋子に借りがある』がなんとなくではあるが、心惹かれる部分がある以外、どれもこれも森博嗣にしか書けない作品とは程遠いと言わざるを得ない。残念ながら、私には凡作が並んでいるようにしか思えない。少なくとも、本書を高く評価するほどの読解力は持ち合わせていないのである。 勝手な意見だが、名前で高評価を得ているとすら感じてしまう。森氏のカリスマ性に惹かれる読者も少なくないだろうが、正当に見てこれはいただけない。 |
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【9671】 |
メルカトル (2017年03月11日 21時34分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『掟上今日子の推薦文』 西尾維新 前半のワクワク感と比べると、後半は若干トーンダウンの感がしないでもない。全体的にストーリーがあっさりしており、複雑系が好みの読者には物足りないかもしれないが、じっくり読み込むことによって、なかなかの味わい深さを堪能できる。 忘却の探偵、最速の探偵という特異なシチュエーションを物語に据えることにより、常に注意深さを要求されるので、作者側も丹念に描きこんでいる印象を受ける。 物語は登場人物が限られているため、自然予想される通りに進行するが、実はこれは織り込み済みで、そのためホワイダニット、ハウダニットに特化される。予定調和的な一面がかなり強いが、だからと言って本作が退屈であるとか、意外性に欠けるというわけでは決してない。 |
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【9670】 |
メルカトル (2017年03月10日 21時53分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『悪夢のエレベーター』 木下半太 本編より解説のほうが面白かった。いや、これもなかなかだとは思うが、コメディタッチというわりにはクスリともできなかった。まあそれよりも、パニックサスペンスとして、或いは反転ものとして読みどころありというべきか。 ただ、第一章から第二章へと繋がる展開はややくどい気がする。先が読めてしまうのはあまり感心しないね。 ラストは良い。思わず続きが気になってしまう心憎い締め方だ。と言うわけで、続編を読むべきかどうか思案中である。 |
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