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【9879】 |
メルカトル (2017年04月03日 21時58分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
『暗色コメディ』 連城三紀彦 4つの異なる異常なエピソードが並走し、最後に収束するという、いかにも私好みの連城三紀彦氏初期の傑作。どの物語も現実味の薄い、どう考えてもまともな解決とは程遠いものだけに、それらの謎が論理的に解明されるカタルシスは有り余るほど濃く味わい深い。特に自分をひき殺したはずのトラックが体を通り抜けて消えてしまう謎は、多少無理があるがなるほどと思った。 全体的にタイトルが示す通り、雰囲気は暗くコメディというにはあまりに陰鬱だが、その後の氏の作品と比較すると、実はこの作品が最も本格ミステリに近い形態を備えていると言えるだろう。 個人的には氏の代表作とされる『戻り川心中』よりもこちらのほうが好きだ。初めて読んだのもこの作品だったので、この路線で他の作品も行ってくれるのかと期待していたが、残念ながら少し違った方向へ走ってしまったようだ。だが、他の諸作品も決して悪くはないと思っている。特に『敗北への凱旋』や『夜よ鼠たちのために』などは独特の雰囲気がいいし、連城氏にしか書けない作品だと思う。 |
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【9878】 |
メルカトル (2017年04月03日 21時57分) |
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『クビキリサイクル』 西尾維新 戯言、戯言と言いながら、骨格は非常にしっかりとした本格ミステリだ。文体はライトノベルに近いせいか、各キャラが立っているのも好印象。13人もの主要登場人物にそれぞれ個性が感じられ、見事に描き分けられているのは、デビュー作にしては、と言うかだからこそと言うべきか、見事の一言に尽きる。 さらには、戯言に隠れて分かりづらいかもしれないが、凝りに凝ったプロットと読者を欺く欺瞞に満ちていて、素晴らしい作品に仕上がっていると思う。 首なし死体に絡むトリックも、これこそ前例のないもので、思わずタイトルのセンスに感心させられる。 ただ、後味だけは正直あまりよくない、というよりほろ苦い感じでラストを迎えるので、それだけが減点の対象であろうか。まあ私にとっては、ということなので、それほど気にならない読者のほうが多いとは思うけれど。 ああ、「いーちゃん、髪くくって」がクセになりそう。 当然、次に続く『クビシメロマンチスト』も刊行と同時に期待を込めて読んだわけだが、残念な結果に終わってしまった。西尾氏はもうあっちの方向へ行ってしまったので、いまさら何を言おうが仕方ないが、もう一度ミステリの世界に戻ってきてほしいと心から願うものである。 |
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【9877】 |
メルカトル (2017年04月03日 21時55分) |
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『贖罪の奏鳴曲』 中山七里 一部を除いて重苦しい雰囲気に覆われている。それもテーマがテーマだけに仕方ないのかもしれないが。 途中まではどこに重点を置いて読み進めればいいのかが判然とせず戸惑ったが(その辺りは解説を参照されたい)、終盤、一気に加速し俄かに焦点が鮮明に合いはじめ、全体像が明らかになる。その過程は『カエル男』に酷似している。まさに中山氏の本領発揮と言っていいだろう。 作者お得意の畳みかけるようなラストの逆転劇は、読者を酔わせること請け合い。 蛇足だが、個人的に第三章を頭に持ってきた方が読みやすく、スッキリするのではないかと思った。まあしかし、そんなことはどうでもよくて、これは相当な傑作だと言えるのではないだろうか。 やや読み難い部分もある気がするが、色々な意味で勉強にもなるし、なかなか強烈な余韻を残す作品であるのは間違いない。 |
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【9876】 |
メルカトル (2017年04月03日 21時53分) |
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『金沢W坂の殺人』 吉村達也 現場は金沢市のW坂、絞殺、撲殺、毒殺、刺殺とそれぞれ違う方法で死体となって発見された同じ大学へ通う学生たち。死亡推定時刻はほぼ同時刻であり、しかも一か所ではなく坂の途中の四か所で殺されたらしい。体力自慢の体育系の男子学生たちがなぜ抵抗の跡もなくあっけなく殺されたのか・・・この謎に挑むのはお馴染みサイコセラピスト、氷室想介である。 なかなか派手な殺人事件ではあるが、展開はいたって平凡で、大した捜査もせずに、犯人がわれてしまう。まあ、殺害方法はそれなりに納得は行くものの、動機がどうもねえ。犯人にとっては切実なのかもしれないが、読む側にはそれが今一つ伝わってこないので、心から首肯できないものがある。 それと、別にそれぞれ違う殺害方法を選ばなくてもよかったのではないかという、素朴な疑問も生まれてくるのだが、いかがなものだろう。 はっきり言って犯人の意外性は全くないし、ほとんどの読者が予想している通りだと思う。 ただ、個人的にW坂のイメージを今回再読するまで勘違いしていたようなので、そこが訂正されたのが唯一の救いだった。 |
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【9875】 |
メルカトル (2017年04月03日 21時51分) |
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『ペルソナ探偵』 黒田研二 作家を目指す6人の男女がチャットルーム「星の海」に集い、同人誌を作成し、毎号ごとにそれぞれの小説を発表していた。そのジャンルは多岐にわたり、ファンタジーやミステリ、文芸など様々。 本作ではその同人誌に載せられた短編3作品がまず作中作として掲載され、それらをもとに最終話の事件の謎を解明していくという、一見ややこしく思える構成となっている。 好み的には第一話が最も面白かった。第二話、第三話はまずまずの出来で、まあ飽きが来ない程度のほどほどの作品。無論、それらすべてがリンクしてくる最終話は別格ではあるのだが、捻り過ぎてどうにもすわりがよろしくない印象を受ける。 どんでん返しの連続と言っても、ジャブの繰り返しで、読者が受けるダメージは大したものではないと思う。だから、強烈なパンチを食らった感じではなく、軽く頬を掠める程度のものである。 全体としてはまずまずだが、一作ごとに作風を変えているのは、それなりに作り込まれている証左であるとは思う。だが、出来としてはごく普通の感じで、まあまあかな。 |
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【9874】 |
メルカトル (2017年04月03日 21時50分) |
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『六とん2』 蘇部健一 相変わらず点数低いですねえ。そんなに酷いかな。私はそれなりに楽しめたのでこの点数。 ただ、これは『六とん2』じゃないね、はっきり言って『動かぬ証拠2』+αって感じ。ジャンル的には少しだけ気の利いた『世にも奇妙な物語』的な。まあミステリとは言い難いが、オチはそこそこ考えられていると思う。 らしくないファンタジーで締めくくられているけれど、これはいらないかな。もっとはじけた、とんでもない短編を並べて欲しかった気がする。その辺りは残念だけど、みなさんが考えるほど悪くはない。おそらく、作者の名前とタイトル名で、平均点が下がっている面もあるのではないだろうか。 |
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【9873】 |
メルカトル (2017年04月02日 22時05分) |
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予想通り3連敗。 吉見はもはやごくごく普通のピッチャーになってしまいました。コントロールは悪くないですが、キレがいまいち。 ビシエドに2本出たのはよかったですが、まぐれっぽいですしね。 2年連続最下位の滑り出しとしてはこんなものでしょう。 何から何まで中途半端。何も抜きんでているものがありません。これでは最下位も当然かもしれません。 |
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【9872】 |
メルカトル (2017年04月02日 22時00分) |
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『狩野俊介の事件簿』 太田忠司 作者はあとがきで、殺人の起こらないミステリをたまには書いてみたかったと発言していたが、確かにその目論見は成功している。これは中学一年生で探偵助手を務める少年、狩野俊介の比較的身近に起こった事件を、彼やその周りの登場人物たちが知恵を出し合って解決してくという、4編からなる短編集である。 第一話と最終話はそれなりに好感が持てる作品だし、他もそれほど悪くはない。が、やや気になるのが語り手が探偵自身(所長の野上)という点である。どうも違和感が付きまとう、特に現役の警部に対しての上から目線の言葉遣いは、かなり居心地の悪さを感じた。 まあしかし、事件を解決するのが狩野少年ばかりでなく、石神探偵事務所の所長、野上だったり、行きつけの喫茶店「紅梅」のウエイトレス、アキが鋭いところを見せたりと、周囲に助けられながら成長していく少年の姿を描いている辺りも見どころの一つとなっている。 |
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【9871】 |
メルカトル (2017年04月02日 21時58分) |
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『すべてがFになる』 森博嗣 全く素晴らしい出来栄えの一言に尽きる。 花嫁姿の死体が登場するシーンは圧巻で、それこそ度肝を抜かれたし、密室のトリックもおそらく前例のない斬新なものだと思う。冒頭の西之園と真賀田教授との邂逅も、最終章の余韻を残す締めくくりなども見事だ。 しかし、褒めてばかりもいられないのが人情というものである。ここからは本作の、私なりの気になる点を列挙していこうと思う。 まず、犀川と萌絵ばかりでなく他の登場人物のほとんどに、人間味が感じられないこと。よって、誰にも感情移入する余地がない。 第二に若干読み難いこと、これはまあ私の責任によるところも大きいので、一概には断言できないが。 第三に肝心の密室トリックに関してだが、その状況はかなり無理があるのではないかとの疑問。共犯者でもいるのなら別だが、一人では○○をこなすのは難しい。 最後に、動機の問題。作者が敢えてぼかしたとは思えないので、作者自身にもはっきりとした動機が思い浮かばなかったのではないかとも思える。ただし、これは私の読解力が足らないせいかもしれないので、あまり大きな声では言えない。 これだけの欠点がありながらも、やはりこの作品は本格ミステリの本髄と言っても決して言い過ぎではないだろう。稀有な傑作であるのは間違いないと思う。 |
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【9870】 |
メルカトル (2017年04月02日 21時56分) |
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『19ボックス 新みすてり創世記』 清涼院流水 懲りずに流水。まさに分類不能の短編集、唯一本格っぽいのは第三話だけで、あとはなんだかよく分からない小説になっている。 第一話は、「不幸の手紙」ならぬ「不幸のMEMO」が高校のクラスの生徒や先生の間を行き来するという、サスペンスのようなホラーのような作品。 第二話は、XとYの電話でのやり取りの途中でいきなりZが登場して、話が混乱する妙な展開の何とも言いようのない作品。 第三話は若者である「木村彰一」が誕生日の朝起きたら、もう一人の「木村彰一」が隣で寝ていた。そして次の年の誕生日には同一人物が3人に増え、結局4人になってしまう中での「木村彰一」殺人事件を扱った、若干SFの要素を含んだミステリ。 第四話は、切腹することによって悟りを開こうとする「切腹探偵」ジョーカーと、彼を切腹の度に手術で救う天才外科医ドクターの物語。 作者曰く、それぞれの短編が少なからずリンクして、読み順を変えるごとに違った感触を味わえるとのことだが、正直あてにはならない。確かに各短編が複雑に絡み合ってはいるが、どこからどう読んでもあまり変わらない気がする。 氏の意気込みは理解できるが、気合が空回りしているのではないかと思えてならない。もう少しじっくり読み込めば、それなりの味が出てくるかもしれないが、それ程の作品ではないだろう、残念ながら。 |
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