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【9889】 |
メルカトル (2017年04月04日 22時08分) |
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『永遠の0』 百田尚樹 とても素晴らしい作品、何が?それは読まなきゃ分からない。そこかしこに落涙ポイントが散見されるし、その上立派なエンターテインメントとしても成り立つという、まれにみる名作じゃないだろうか。 志願せずして特攻隊として亡くなった祖父の謎を、孫たちが彼を知る当時の仲間たちを訪ねて聴取するという構図は確かにミステリのようではあるが、あくまで文芸作品と捉えたい。 それにしても、本作は様々なことを勉強させられるし、また感動を与えてくれる、勿論嗚咽を堪えながら読まなければならないシーンも少なくない。戦争を体験することなく育った我々が読むべき作品であり、長きに亘って語り継がれるであろう作品でもある。 尚、文庫版の解説は、本好きで知られた今は亡き児玉清さんが担当しているのも、因縁浅からぬものがあるような気がする。 |
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【9888】 |
メルカトル (2017年04月04日 22時06分) |
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『軽井沢マジック』 二階堂黎人 コージーミステリはやはり肌に合わないと痛感させられた作品。 水乃サトルのキャラは嫌いではないし、さらにそのお姉さまはとても素敵だとは思う。本筋よりもむしろこの軽すぎる探偵の紹介や、お姉さまが大暴れするシーンのほうが面白い。よって、ミステリとしての面白さはイマイチとしか言いようがない。 何もかもが中途半端で、ライト感覚のユーモアミステリでもなければ、トリック重視の本格物でもない、新興宗教やトラベルミステリ的な要素も絡んでくるが、それも際立ったものが見当たらない。 一番注目していた、死体の眼球を抉り取った理由もなんだか納得できない感じで。 二階堂氏は蘭子の「〜ですわ」口調が鼻につくが、やはり二階堂蘭子シリーズのほうが読み応えがあっていいんじゃないかな。 |
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【9887】 |
メルカトル (2017年04月04日 22時04分) |
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『ラジオ・キラー』 セバスチャン・フィツェック 数々の難事件を解決に導いたベルリン警察のベテラン交渉人、イーラ。彼女は長女ザラの自殺に心を痛め、その日が彼女の最期になるはずだったが・・・しかし、皮肉にもラジオ局を乗っ取っての立てこもり事件に駆り出されることになってしまう。 事件の犯人はサイコな知能犯で、人質を盾に殺人ゲームを始めようとしていた。しかも彼の要求は事故で亡くなった恋人を連れて来いというものだった。 とまあ、なかなか派手な展開で、飽きることなく楽しませてくれる。主人公のイーラの心理描写もよく描き込まれている上に、各登場人物の造形がしっかりしているのは好感が持てる。 アマゾンではすこぶる評価が高いが、私にはそれ程でもなかった。確かにスピード感あふれるサスペンスは一読に値するとは思うが、この程度なら日本の作家のほうがよりきめ細やかに描くことができるだろう。ただ、翻訳物独特の雰囲気のようなものは勿論真似できるわけではないけれど。 後味は悪くなかった。果たしてアル中でシングルマザーの主人公がこの事件を通じて得たものは何か、その後彼女はどんな人生を歩んでいくのか、その辺りも想像をかき立てられる。 |
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【9886】 |
メルカトル (2017年04月04日 22時02分) |
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『ロートレック荘事件』 筒井康隆 なんだか違和感ありありの文章で、何か仕掛けがあるのかなと思いながら読み進んでいったのだが、これがいわゆる叙述トリックだと気付くのにちょっと時間が掛かった。その頃の私はまだ擦れていなくてあまりこのようなトリックに慣れていなかったため、あっさり騙された。しかし、やられたという感じは全く受けなかった。なので、良い意味でのカタルシスは生まれなかったのを覚えている。本来なら、そうだったのかと、膝を打つような軽いショックを受けても良さそうなものなのに、その辺がミステリ作家ではないゆえなのかとも思う。 事件そのものもありきたりであまり感心しないが、まあ短くて伏線を後から確認しやすいのが美点と言えるだろうか。 他はこれと言って褒めるべきところが見当たらないかな。 |
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【9885】 |
メルカトル (2017年04月04日 22時00分) |
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『パラサイト・イヴ』 瀬名秀明 若い頃、ある女性に薦めたところ、友人がとても怖い思いをしたとの理由で拒絶された、苦い思い出のある作品。 とは言っても、良いものはやはり何度読んでも面白い。そこら辺に転がっているホラーとはレベルが違う秀作である。 前半は専門用語が氾濫して、相当チンプンカンプンな部分も多かったが、それを補って余りあるアカデミックな香りと、じわじわ迫ってくる怖さがウリのひとつだと思う。さらには、それぞれの人物描写もしっかりしていて、その意味でも優れた作品と言えよう。 一転後半は怒涛のホラー&アクションの連続で、読者を引き付けて離さない魅力を持っている。ホラー小説大賞の審査員の一人、林真理子女史が徹夜して読破したというのも納得の出来である。 |
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【9884】 |
メルカトル (2017年04月04日 21時59分) |
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『邪馬台国はどこですか?』 鯨統一郎 これは歴史好きには堪らない作品だね。私は特に日本史が好きとか得意とかではないので、そこまでは楽しめなかったけれど、それでもこの高得点。 本作には歴史ミステリのロマンが香っているねえ、どの短編も珍説、新説が盛りだくさんで、なるほど本当にそうなのかもしれないと思わず納得しそうになるものが多くて、興味深い。 個人的に一番気に入っているのは『謀反の動機はなんですか?』で、信長○○説がなんだかとても信憑性がありそうだし、意外性を買って一押し。でも、この説だと信長の性格まで通説とがらりと変わってくるので、やや無理があるかなとは思うが。 そして表題作は、これはまさに歴史のロマンが漂う佳作だろう。定説を覆してのまさかの邪馬台国東北説、しかし、それなりに土台がしっかりしているので、なるほどと頷ける点も多い。 まあとにかく、歴史好きには必須アイテムであるのは間違いない。 |
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【9883】 |
メルカトル (2017年04月03日 22時05分) |
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『りら荘事件』 鮎川哲也 これぞ本格推理小説の王道を行く傑作ではないだろうか。 書かれた年代を考えれば、数々のトリックやプロットは見事だと思う。まさに本格パズラーのお手本のような作品。 まあ今読めば細かいアラが見えてくるかもしれないが、当時(確か高校生の頃だったと思う)の私には十分新鮮な印象を持った。特にトランプを利用したトリックには感心した、これは読者の盲点を突くさすがの仕掛けだと思う。 ただ、何人かの方が指摘されているように、次々と殺人が起きているわりには、緊迫感が欠けるというのは否めない。 だがそれはそれとして、やはりこの作品は鮎川哲也の代表作だと私は思う。 |
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【9882】 |
メルカトル (2017年04月03日 22時04分) |
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『コズミック・ゼロ 日本絶滅計画』 清涼院流水 その年の大晦日も例年のように、大勢の初詣客で各寺社はにぎわっていた。そして年が明けると同時に、明治神宮、熱田神宮、川崎大師、伏見稲荷大社など10ヵ所の初詣客のほとんどが消された。その数およそ650万人。 更に正月休みが明けると、ラッシュアワー時のJR、私鉄の約3000万人の乗客が消された。 そして、時を待たずに今度は、東京、大阪、名古屋の3大都市がダムの爆破により水没した。 これは大規模なテロ行為なのか、或いは某国の工作員の仕業なのか、一体何の目的で・・・ といった、いきなりの怒涛の展開で始まる、この作者らしい荒唐無稽なパニック小説となっている。 単行本が刊行された際、あちらこちらでこれ以上ないほどこき下ろされた作品だが、それは全体を通してマクロな視点からパニックの状況を淡々と描写しており、ミクロの視点からの細かな描写がなされなかったため、リアリティに欠けるとの印象を持たれたからだろうと想像される。 確かに私もそう思うし、公平に見てそのそしりは免れないだろうけれど、私は本作が決して嫌いではないし、出来も悪くないと思う。少なくともお金と時間の無駄とは思わない。 そんなことを書いても、おそらく清涼院流水氏の作品を好意的に受け入れているのは、このサイトでは私以外ほとんどいないだろうから、誰も見向きもしないと思うが、面白いよ、本当に。それだけは言っておきたい。 |
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【9881】 |
メルカトル (2017年04月03日 22時02分) |
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『誰彼』 法月綸太郎 仮説を構築してはそれを崩壊させるの繰り返しで、読んでいていささか疲れるというか、飽きてしまう。でも、プロットやストーリーがかの名作『エジプト十字架の謎』に何となく似ていなくもないので、そこは気に入っている。 それにしても本作の法月綸太郎はあまり苦悩していない気がする。悩んで何ぼの名探偵なんだから、もっと苦しむ姿も見たかったかも。 ところでこのタイトル、一体どう読むのかと思っていたが、「たそがれ」とはねえ、なかなかセンスがいいね。 まあ、そこそこ面白かったし、楽しめた。みなさんが言うほどひどい作品だとはあまり思えない。 |
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【9880】 |
メルカトル (2017年04月03日 22時00分) |
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『七回死んだ男』 西澤保彦 まあ面白かった。しかしそれはあくまで、「遊び」或いは「実験」としての面白さであって、真摯に本格ミステリを標榜する読者には受け入れられ難いのではないかと思う。 ところが、本サイトでは非常に得点が高いので、これは私にはちょっとした驚きすら感じてしまう。どうやら本サイトだけではなく、他のサイトなどでもかなりの高評価なので、公平に見てそれだけの評価に値する作品なのであろう。ただ単に私がへそ曲がりなのか、それとも私に審美眼がないだけなのか、おそらくそのどちらかだと思う。 このSF的な設定は、それ程目新しいものではないので、それ自体は驚かないが、そこに「殺人」を絡ませたという点は目の付け所が良かったのではないだろうか。 蛇足というか、どうでもいいことだが、なぜこの作者は句点ばかりを用いて、読点をほとんど使わなかったのかが不思議だった「。」ばかりが目立って読みづらいだけだと思うのだが。 まあとにかく本作は西澤氏らしい、奇妙な味わいの作品であることは間違いないし、(私にとっては)意外にも本格ミステリファンにも十分受け入れられる変則的なミステリといえるようだ。 |
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