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【1236】 | 続・明暗 ドウコク! (2009年12月03日 22時18分) |
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メルカトルさん、こんばんは。 >デビュー作の『刺青殺人事件』や代表作『人形はなぜ殺される』『能面殺人事件』『わが一高時代の犯罪』 いずれも名前だけは聞いたことのある、有名な作品ですね。 勝手に社会派だとイメージしていた高木彬光氏ですが、 確かに読んでみる価値は、充分にありますね。 さて、前半と後半で作者の違う「死仮面」の場合、(内容にではなく、)その作者の違いに対して読後感は、 「ガッカリ」でした。 でも、「ガッカリ」どころではなく、怒りさえ覚えた作品があります。 それが、「続・明暗」です。 「明暗」は、夏目漱石の絶筆作品です。 大まかな内容は、夫が自分以外に心を寄せる女性がいるかもしれないと疑念を抱く妻と、 その夫とのギクシャクした関係、が中心です。 別に不倫や、大事件などが起こるわけではありません。 夫婦が会話をしていると、決まって最後には妻が、「だから貴方には、他に好きな人がいるのよ。」となり、 夫が「またか。」となる、至って退屈そのもの。 ところが、これが漱石の手にかかると、変貌するのです。 「○○は、〜〜と思った。 でも、××と思わぬわけでもない。 そう思ってしまうのは、結局は△△だからだ……。」 のような、精密で的確な心理描写が随所に繰り広げられ、その洞察に思わず唸らされます。 また、次の展開へのつなげ方も絶妙で、「次は何が起こるのだろう?」と、ついつい期待してしまうのです。 それがたとえ、多分日常的で些細な出来ごとであろう、と予想されても。 夏目漱石の真骨頂は、この心理描写の巧みさ、期待感の持続にある、と私は思うのです。 だから、作者の死により途中で終わってはいますが、それが十分に感じられる「明暗」を私は高く評価しています。 しかし、その完結編と銘打たれ、別の作者から成る「続・明暗」は……。 以下、明日に続けます。 |
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【1239】 |
メルカトル (2009年12月03日 23時07分) |
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これは 【1236】 に対する返信です。 | |||
ドウコク!さん、こんばんは。 >いずれも名前だけは聞いたことのある、有名な作品ですね。 勝手に社会派だとイメージしていた高木彬光氏ですが、 >確かに読んでみる価値は、充分にありますね。 高木彬光氏は勿論社会派の推理小説も書いていますが、あくまで本線は本格ミステリであると思っています。 そして氏の優れているところは、作品全体に妖気を漂わせながらも、本質は確りと本格ミステリに仕上がっている点だと思っています。 特に「神津恭介シリーズ」は長編、短編に関わらず、どれも高水準で、常に新しいトリックに挑戦し続けている姿勢は好感が持てますし、秀逸な作品が多く残されています。 >「明暗」は、夏目漱石の絶筆作品です。 ほう、ついに純文学の登場ですね。 ミステリ談義も大いにしたいですが、純文学を取り上げて語り合うのも、とても良い事だと思います。 >また、次の展開へのつなげ方も絶妙で、「次は何が起こるのだろう?」と、ついつい期待してしまうのです。 >それがたとえ、多分日常的で些細な出来ごとであろう、と予想されても。 ミステリに限らずどんなジャンルでも、次はどんな展開になるのだろうと期待感を持たせてくれる作品は、読者にとって至高の宝物ですよね。 私はそんな極上の時を過ごしたいが為に、毎日様々な作家の著作を読んでいるのかもしれません。 なかなかそんな作品には巡り合えませんけどね。 >夏目漱石の真骨頂は、この心理描写の巧みさ、期待感の持続にある、と私は思うのです。 いいですねえ、私は正直一作も読んだことがありませんが、その辺りが時代を超えて読み継がれる大きな要因の一つなのかもしれませんね。 いやー、それにしても夏目漱石ですか。 ドウコク!さんは幅広い読書経験をお持ちのようですね。 感服いたしました。 ではまた ^^ |
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