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【719】 |
さオ (2016年03月20日 11時32分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
俺「この黄色い花、なんていうの?」 奈央「えっと……確か、マリーゴールド、だったかな」 俺「そうなんだ。綺麗だね、なんか夏っぽくて」 奈央「確かに、この燃えてるみたいな色、いいですね」 奈央「個人的には、ひまわりのが好きだけど…」 俺「あ、そうなんだw」 夏の明るい夕日を浴びて、花壇の花達は元気に揺られていた。 そんなやりとりをして、また少し沈黙になりそうな時だった。 奈央「はーあ、もう少しで部活も終わっちゃうなぁ…」 奈央がため息を漏らすように、口にした。 俺「あー、確かに。でも、もう総体とかは終わった時期…だよね?」 奈央「そうですね…総体は負けちゃいました」 俺「大会って言ってたけど、何の大会?」 奈央「地区の、夏季大会です。ちっちゃいですけど…どうしても勝ちたくて」 奈央「最後に、みんなで何かを成し遂げたいなって……」 座り込んで、愛おしそうにボールを眺める奈央に、俺ははっとさせられた。 |
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【718】 |
さオ (2016年03月20日 11時31分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
奈央「あの、少し休憩しませんか」 奈央はそう言うと、家の表の方へと駆けて行った。 玄関の脇に水道があって、勢い良く蛇口をひねって水を飲み始めた。 水道の下にはバケツに入ったキュウリの束が置かれていた。 奈央「おばあちゃんかな、こんなとこにおいて」 奈央「いいや、水入れといちゃえ」 そう言って、バケツにじゃばじゃばと水を入れていく。 青々としたキュウリの群れが、気持ちよさそうに、 ぷかぷかと水の中に浸っていく。 奈央「どうせだから、水もあげちゃうか」 続けざまに、近くにあったひなびたジョウロに水を入れていく。 そして玄関付近の花壇に、ばーっと、何というか大雑把に、水を蒔いていく。 奈央「うん、これでいいかな」 そう言うと、奈央は少しだけ笑みを見せた。 俺はその様子を見て、少し感心して聞いてみた。 |
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【717】 |
さオ (2016年03月20日 11時30分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
奈央「…あの」 奈央がボールを追いかけながら、俺に質問してくる。 俺「…うん、何?」 奈央「ポジションはどこだったんですか」 俺「俺は、レフト。一応、エースだったんだよね…」 奈央は「へー…」と言いながら夢中でボールを追いかけていた。 俺「じゃあ、奈央…さんは?」 奈央「私も…レフトで、一応エース…」 俺「お、すごいね!」 奈央「いや、全然そんなんじゃないです…」 俺の言葉を聞いて、奈央は表情を曇らせた。 何か、まずいことでも言ったんだろうか。 こうして、しばらく二人で対人を続けた。 |
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【716】 |
さオ (2016年03月20日 11時29分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
奈央が、「はい!」と言ってレシーブをする。 ふわりと浮かんできたボールを、俺は両の手でキャッチし優しくトスを返す。 瞬間、少しだけ陰っていた空からにわかに光が溢れて、構える奈央を照らした。 俺は動揺して、打ち込まれたボールのレシーブを失敗した。 奈央「あ、ごめんなさい…」 俺「いや、今のは捕れた…こっちがごめん」 夏の夕暮れに、こうして対人をする… 俺は、大事な事を思い出していた。 中学の頃、体育館が満足に使えず、こうしてよく外で対人をすることがあった。 バレーを始めたばかりで、上手くなっていくのが本当に楽しかった。 夕暮れから、真っ暗になってボールが見えなくなるまで、仲間と無心にボールを追いかけまわした。 あれは、なんだっけ。夏の総体の前で、みんな燃えていたんだっけ。 奈央「どうかしました…?」 俺「あ、ごめん。なんでもない」 考え事にふけってしまったせいで、奈央が心配そうにこちらを見ていた。 奈央「たまに、上手く打てないことがあるんですよね…」 俺「ああ、強く打ち込もうとか、叩きつけるとか考えないほうがいいよ」 奈央「あ、はい!」 俺「手のひらでボールをしっかり捉えれば、力む必要はないから」 奈央「…なるほど。もう一回いいですか?」 俺「うん、全然いいよ」 この子、案外一生懸命なんだなぁって、 俺は思わず笑ってしまいそうだった。 |
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【715】 |
さオ (2016年03月20日 11時29分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
時たま吹き抜ける風が、木々のさざめきと共に少しだけ涼しさを運んでくれた。 家の表の方から、書道の帰りなのか子供たちのはしゃぐ声が聞こえた。 奈央「あの…」 俺「どうしたの?」 奈央「もし良かったら…ちょっとだけ対人、付き合ってもらえませんか」 奈央「壁打ちだけだと…やっぱりあれで」 俺「ああ…いいよ、全然オッケ」 対人というのは、バレーの基礎練の一つだ。 二人で向い合って、ボールをパスしあう。 奈央「いきます」 俺「よし、来い!」 奈央がボールを掲げ、俺の方に打ち込んでくる。 俺「お、なかなかイイ球打つね」 俺がレシーブを上げると、そのまま奈央からトスが返ってくる。 俺は「いくよ」と言ってそのままボールを打ち放つ。 バシン、と手のひらにミートして、気持よく奈央の元にボールが向かう。 久々にボールに触ったけれど、そこまで感覚は鈍っていないようだった。 |
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【714】 |
さオ (2016年03月20日 11時28分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
ジワジワジワ…という蝉の声が俺たちを包んで、少しだけ空間が間延びした。 奈央は、一心に壁打ちを続けた。 奈央「じゃあ…その、けっこう本気でやってたんですか」 俺「ん…まあね。春高出場とか、もっと言えば優勝とか…考えてたな」 奈央「すごい…え、でも。もうバレーは…?」 奈央の質問にちょっとだけドキッとしたものの、俺は続けた。 俺「まあ、色々あって…やめちゃったんだよね」 奈央「そうなんですか…」 俺「ん、まあね」 |
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【713】 |
さオ (2016年03月20日 11時27分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
俺「練習…かな?バレーするんだね」 奈央「ええ…まあ」 奈央はそう言うと、軽く頷いて再び壁打ちを始めた。 俺「3年生って聞いたけど、部活はまだ引退じゃないんだ」 奈央「…はい。最後の試合がまだあるんで」 練習の邪魔をされたくない、とでも言わんばかりに、 奈央は俺の質問に淡々と答えた。 俺「バレーって、楽しいよね」 俺のその一言にはっとしたように、奈央はこちらを見た。 奈央「え、バレーやってたんですか?」 俺「うん、ずっとやってたよ。すっごい好きだった」 奈央「そうなんですか…!そういえば、東京って…どんな高校だったんですか?」 先ほどまでの平板な顔色が一変して、奈央の表情が笑顔に変わっていた。 俺はそれに気付いて少し嬉しくなりながら、会話を続けた。 俺「うーん…まあまあ強かったかなぁ…○○高校っていう…」 奈央「あ、なんか聞いたことあります」 俺「そっか、それは嬉しいな」 |
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【712】 |
さオ (2016年03月20日 11時26分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
「なんだなんだ」と不思議に思って、窓から外を眺めてみても、 その音の正体は掴めなかった。 俺は仕方なく、起き抜けの怠い体で1階に降りていき、玄関から外へ出た。 夕方とはいえ、外に出ると熱気が一気に押し寄せてきて、心が折れそうだった。 とても近くで、ジワジワジワジワ…と蝉が鳴く声が聞こえた。 家のもう一つのドア(書道教室側)の前には沢山の自転車が止まっていて、 どうやら書道教室の時間になっていたらしい。 おばあちゃん、義父の母にあたる人がここで書道教室をしている、 というのは話に聞いていた。 もしかしたら、さっきの音はこの教室からだったのか?なんて思ったけど、 家の裏の方から「ばん!」とボールを叩く音が聞こえて、 俺はすぐに家の裏へと回った。 俺「あ……」 奈央「あ、どうも…」 そこには、家の裏手の斜面に向かって壁打ちをしている奈央がいた。 しかも、持っているボールは紛れもなくバレーボールだった。 俺はそれに気付いて、瞬時にドキッとしてしまった。 |
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【711】 |
さオ (2016年03月20日 11時25分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
あんまりに気持ちいいものだから、 俺はそのまま畳まれていた布団にもたれかかって横になった。 でも、こんな状況になっても浮かんでくるのはやっぱりバレーのことだった。 半分眠りに落ちていくフワフワとした頭のなかで、 コートを駆け巡ったあの日の光景とか、美香に言われたあの一言とか、 春高の決勝で羽ばたいていたあのエースのこととか、 色んな記憶が頭をよぎった。 そんな事を考えているうちに、俺はすっかり眠ってしまって、 目が覚めるとすっかり外は夕方の光景に様変わりしていた。 さっきまでの真っ白な陽の光ではなく、景色は若干オレンジがかっていた。 体中汗だくになっていて、俺はリュックに入っていた生ぬるい水を飲んだ。 そんな風にしてぼーっとしていると、窓から風が入ってきて風鈴が音を立てる。 ああ、やっぱり夢じゃなかったのか、なんてぼんやりと考えていると、 何やら「バン、バン」とボールを弾く音が外から聴こえた。 |
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【710】 |
さオ (2016年03月20日 11時24分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
奈央「じゃあね!」 おばさん「ちょっと奈央、夕飯はどうするの」 奈央「多分夕方には帰ってくるから、食べる!」 おばさん「気をつけて行くのよ!」 そして、バタン!と音がすると、窓の外でガシャ、と自転車を出す音が聞こえて、 奈央は勢い良く出かけていった。 俺は一連のその様子を見て、このクソ暑いのに元気だなーなんて思っていた。 「ごちそうさまでした」と言いながらスイカの器を台所まで運んでいき、 「あら、そのままで良かったのに」なんて言われながら「いえ」と会釈して、 再び自室である2階の部屋に戻った。 畳六畳ほどはあろうかという部屋に、整然とたたまれた布団が置いてあって、 その脇には小さな机が置かれていた。 扇風機なんかもおいてあって、窓からは山あいの緑の景色と青空が広がっていた。 扇風機のスイッチを入れて、心地良い風を浴びながらその景色を眺めると、 「夢みたいなところに来ちゃったなぁ」と思った。 おまけに、窓際に吊るされたくすんだ風鈴の「チリン」という音が、 その夢見心地になおさら拍車をかけるようだった。 |
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