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【759】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 65  評価

さオ (2016年03月27日 15時56分)




毎年手伝っているんだろうか、かなり慣れた様子だった。 

俺もホースを中継しつつ、隣のぶどう畑に足を踏み入れる。 


奈央「あ、そこ!」 


俺「へ?」 


奈央「ムカデ!ムカデがいるよ!」 


俺「うえええ!?」 



 
奈央「あっはっは!ウソウソ!ムカデなんていないよ」 

奈央は楽しそうに、大口を開けて笑った。 


俺「ひっでー。なんでそんな嘘つくのよ」 


奈央「ごめんごめんwでも本当にでることもあるから、気をつけてね」 


奈央はよっぽど面白かったのか、しばらくクックック、と笑うのを堪えられないようだった。 


数日前には何か落ち込んでいるようだったから、 

たとえからかわれても、奈央が楽しそうに笑っているのは何か安心した。 





【758】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 64  評価

さオ (2016年03月27日 15時55分)




パジャマであるスウェットから、とりあえずTシャツに着替えてタオルを持って外に出た。 

まだ午前中だというのに、茹だるような暑さだった。 

遠くの景色がグラグラと沸騰しているように揺らいで見えた。 

間違いなく、この夏一番の暑さだった。 


奈央は窓先の花に水をやって待っていた。 


「そんな恰好でいいの?」と俺の方を見てつぶやいた。 


俺「だめなの?」 


奈央「いいけど、焼けちゃうし虫に刺されるかもよ?」 


そう言われてみれば、奈央は長袖長ズボンで完全防備だった。 



 
俺「まあ、それくらいならいいかな。日焼けも虫も、大して気にならないし」 


奈央は「ふーん、じゃあいいか」と言って、水道からホースを引っ張っていった。 


俺「このホースを、そこの畑まで持っていくの?」 


奈央「そだよ。うちには潅水設備とかないからね。いっつもこうやってる」 


奈央「私が持ってくから、ホースが絡まらないように、そこで持ってて」 


俺「オッケー」 


そう言って、奈央はホースをするすると隣のぶどう畑まで伸ばしていく。 




【757】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 63  評価

さオ (2016年03月27日 15時54分)




おばさんはそう言って足早に玄関から出て行った。 


奈央「もう最悪…こんな暑いのに畑なんて出たくない」 


俺「畑に水やり?隣の?」 


奈央「うん、そう。水あげないといけないの」 



俺はよく分からなかったので、続けて質問する。 


俺「へーそうなんだ。あれってやっぱり、ぶどうか何かなの?」 


奈央「うん、そだよ。ぶどう」 


奈央「この辺はみんなぶどう農家ばっかり。毎年やってるよ」 




俺「へえ、ぶどうかぁ。すごいな、ぶどうなんて滅多に食べないよ」 


奈央「そうなの?やっぱり東京ってそういう感じなんだ」 

奈央「もうじき嫌って言うほど食べられると思うけどね」 


奈央はそう言ってにやにやと笑った。 


俺はそれがちょっと可愛いと思ってしまった。 



俺「なんだか面白そうじゃん。水やり手伝おうか?」 


奈央「え、マジ?手伝って手伝って!」 


俺がそう言うと、奈央は喜々として立ち上がった。 


奈央「それ食べ終わったら準備してすぐ外に来て!」 


そう言い残すと奈央は急いで階段を上がっていった。 




【756】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 62  評価

さオ (2016年03月27日 15時53分)




俺も暑かったので、特にそれには何も言わず、 

テレビを見ながらおにぎりに噛みつく。 


他愛のない朝のニュース。外からは、ミーンミーンと蝉の声がした。 

窓のすぐ前には、あのマリーゴールドがちらちらと咲いていた。 

元気そうに咲いているということは、 

奈央がさぼらずに水をやっているという事だろうか。 



おばさん「奈央、アンタ今日家にいるんでしょ?」 

ふと、居間にやってきたおばさんが奈央に話しかけた。 


奈央「多分いるけど。なんでー?」 


おばさん「今日おじいちゃんいないから。畑に水やっといてよ」 


奈央「ええー?この暑いのに?やだよぉ」 


俺はわけも分からず、おにぎりの手を止めて二人の会話を聞いていた。 


おばさん「じゃあこの炎天下でおばあちゃんにやらせるの?」 


おばさん「家にいるんだから、やっといて」 


奈央「えー、でもぉ」 


おばさん「お願いね、おじいちゃんも今日は多分夜まで帰ってこないから」 




【755】

中断4  評価

さオ (2016年03月25日 10時49分)




今日は一旦ここまでにします。 

見てくれている人ありがとうー 

また明日来ますね。 





あっし:


たぶん明日は、前置きなしでいきなり始めちゃうかも。


ねむい、寝よ。


今週は休みなしの週なので、今夜また行かないといけなくて。

そして、な、な、なんと! 来週も休めないwww決定orz.....


またしても、20連勤くらいしてしまうわけだ。 倒れなければwwwww


いとをかし。 ギャハハハ


 

【754】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 61  評価

さオ (2016年03月25日 10時47分)




それから数日後の朝、とんでもない暑さで目が覚めた。 

熱気と自分の汗で溺れるんじゃないか、と思うくらいの目覚めだった。 

間違いなく、ここに来てから一番の熱さだった。 


一階に降りると、一番におばさんに話しかけられた。 

おばさん「今日は暑いね〜今麦茶出すから待っててね」 


俺「本当に暑いですね…」 


おばさん「熱中症にならないように、気をつけてね」 


そう言われて差し出された麦茶を飲んだ。 




俺「今日は、おばあちゃん達は」 


おばさん「おばあちゃんなら、部屋にいるじゃない。おじいちゃんは出かけてる」 

おばさん「私そろそろ仕事にいくけど、そこにおにぎり作っといたから、食べてね」 

ありがとうございます、と答えて居間の方に行くと、 

壁に寄りかかってアイスを食べている奈央がいた。 


俺が「おはよう」と言うと、「おはよー」と気持ちの篭っていない声が返ってきた。 

俺は居間のテーブルに置かれていたおにぎりを食べながら、話しかけた。 




俺「今日は、部活は?」 


奈央「今日は休み」 


俺「あ、そうなんだ」 


奈央「宿題しないとなー」 


話しながらも、奈央の視線は終始テレビの方を向いていた。 


窓は開け放たれていて、すぐそばに扇風機が置かれている。 

ゴオオオオ、と轟音を放ち、明らかに強になっていた。 

他の家族は皆、強にはしない。おそらく、奈央の仕業だ。 



【753】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 60  評価

さオ (2016年03月25日 10時46分)




「もうすぐ夕飯になるよ」と言うと、「うん」とだけ答えてくれた。 

しかし、奈央が夕飯の場に顔を出すことはなかった。 

「あとで食べる」とだけ言い、家族の前に顔を出すことはなかった。 


俺はちょっと心配になったけど、女子高生なんてそんなもんだろうか、とも思った。 

高校の時、仲の良い女子は大勢いたが、付き合ったりもしなかった。 

(美香にはふられてしまったし) 


俺は家であの子たちがどんな感じかは知らない。 

学校ではみんなノリがよくて、ニコニコしていたけど、 

そりゃあみんな家に帰ったら「素」に戻るよな、って一人で納得していた。 




俺なんかが心配したところで、奈央もいい迷惑だろう。 


それに俺は浪人生の居候で、わけもわからず突然家に来た奴だ。 

そう考えれば、奈央は俺のことをだいぶ受容してくれているだろう。 

もっと、根本的に拒否する女の子だっているかもしれない。 


そう考えれば、奈央はかなり優しい子なんだろうな、とも思えた。 

それも全て、俺がバレーボールをやっていたから、かもしれないが。 




【752】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 59  評価

さオ (2016年03月25日 10時45分)



 
拾ったものの、これをどうしようか。 

奈央に見せた方がいいのだろうか、 

もしかしたら渡せなくて、奈央が自分で捨てたのかもしれない。 


渡せなかったとしても、自分で苦労して作ったものを捨てたりするだろうか… 

考えたら考えただけ、どうしたらいいものか、分からなくなった。 

とりあえず、そのままにしておくのもあれなので自分のポケットに突っ込んだ。 

これを持って帰ってどうしたらいいのか分からないが、そうするほかなかった。 


帰りはまだまだ陽が高い位置にあって、帰ったら勉強しないとな、と思った。 




 
その日の夜、俺は早々に勉強への集中力が枯渇し、 

おばさんと夕飯の手伝いなんかをしていたら、奈央が帰って来た。 


鍵を忘れたようで、インターホンを仕切りに鳴らしており、 

おばさんに「開けてあげてw」と言われて、俺は玄関のドアを開けた。 


俺が鍵を開けて、「おかえり」と言うと、「ただいま」とだけ言って 

すぐに階段へと向かっていく。 

お守りの事、言った方がいいのだろうか、なんて考えていたら、 

奈央は振り返って「今日はありがとうね」とだけ言って階段を上っていった。 


疲れているのか、表情はとても暗かった。 




【751】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 58  評価

さオ (2016年03月25日 10時44分)




試合が終わって、両校の応援や父兄が球場からなだれるように捌けていく。 


おばさんからもらったポカリはもうすっかり飲み干してしまったので、 

自販機でジュースでも買ってから帰ろうとした。 


球場脇にある自販機の前に歩いて行くと、何やら見覚えのあるものが落ちていた。 

ユニフォームの形をした…お守りだ。 




最初は目を疑ったが、それは間違いなく、 

先ほど見た奈央の作ったものだった。 


「どうしてこんなとこに落ちてんだ」と思って手にとった。 

お守りには、「NISHI」と背番号の数字が縫い付けてあった。 


結び紐が切れているという事もなく、ポケットからうっかり落としてしまったんだろうか。 

それか、まさか捨てたのか… 

先ほどまで全力で頑張っていたあの少年が、そんな事をするなんて信じられなかった。 





【750】

夢を捨てた俺に忘れない夏が来た 57  評価

さオ (2016年03月25日 10時43分)




その中心には、泣く野球少年達と、あのニシ君の姿。 

俺は心の中で「いいなぁ」と思った。 

あの春高バレーの決勝を見に行った時の感情と、よく似ていた。 

俺もできることなら、もう一度あの熱情の中に飛び込みたい。 


沢山の声援や光を一心に浴びて、仲間と抱き合って駆け跳ねて、 

勝ったら大喜びして、負けたら一緒に泣いて… 


俺の夢―それは、バレーをしたいのももちろんだが… 

多分、もう一度だけ、あのキラキラとした輝きと熱さの中に、飛び込みたかったんだ。 




やり遂げられなかったバレーボール、部活。 

例え途中で負けてしまっても、最後までやりきっていたら、 

仲間と一緒に走り抜けていたら… 


どんな景色が見えたんだろうか。 

俺はそれを知らなかったから、見てみたいと思った。 


ニシ君や、あの春高決勝で輝いていた選手たちのように… 

仲間と一緒に走り抜けた先には、一体どんな景色があるんだろう― 

そんなことを思った。 



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