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【510】 |
Normad (2014年04月26日 16時14分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
2人は、広い部屋の更に奥にあったドアの向こうに案内された。 かなり広い部屋の壁に、3Dディスプレイがずらりと並んでいる。 そこには昔ながらの大きなデスクが置いてあり、一人の男がこれも昔ながらの安楽チェアに 深く腰掛けていた。 室長と呼ばれたその男は相応の容姿をしており、茶色の髪、灰色の瞳、年齢は3、40ぐらいで 柔和な顔つきである。 どうやら、年齢にふさわしくない過剰な整形をする趣味はなさそうだ。 「しばらくぶりだな。おっと、私の事は憶えているかね。まあ、君の事だから忘れる事はないと思うが。」 「勿論です、ランダー室長。良く憶えております。お見受けするところ...ご本人ですね。」 アルフィーネは無表情のまま、相手をスキャンするように見て答えた。 ランダー・アテンシュフォードはその言葉に少し眉をひそめたが、余裕を示すように微笑し皮肉で応える。 「君らしいな。私は影武者など作らんよ。君とは映像でしか会った事はないが、相変わらず美しい。 いつまでもその美しさを保てるといいのだがな。」 ランダーは座りたまえ、と2人を近くのソファに腰かけさせた。 その後は、お決まりの辞令を読みあげる。 読み上げた後、柔和な顔に厳しい表情を浮かべて言った。 「どうやらニーベルングの指環は、次のターゲットをこの第90エリアに定めたらしい。 既にかなりの工作員が集まりつつあるという分析結果も出ている。」 ここで彼は、その分析結果を3Dディスプレイの一つに映し出した。 通常の1か月間の人員流入のグラフと、ここ最近の1か月間のグラフが表れ、その差分を示していた。 第55エリアを脱出してきた人員が流れて来たらしいコメントがついている。 殆どが無職の一般入所者でその身元は保証されているが、明らかに増加の傾向がある。 ニーベルングの指環がそこに工作員を潜ませる事は、比較的簡単だろう。 「第55エリアが懐かしくて、酷似しているここに住みたいと言う者が多いそうだ。 確かに、サイトウはここのエリアマスターでもあった訳だからな。 奴ら、お殿様を慕ってやって来たと言うのか。茶番だな。」 ランダーはここで、ふん、と鼻を鳴らすと不快さを露わにして続けた。 「だが、今、ここのエリアマスター代理はこの私だ。エリア防衛の責任は全て私にかかる。 幸いにもIEMOは支援の人材を送って来てくれている。ここ1か月で1000名ほどな。」 (続く) |
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【509】 |
Normad (2014年04月26日 16時08分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
そういうやりとりをするうちに、2人はそれまであったものとは異なる扉の前に着いた。 いかにも重要そうな装甲扉である。 ここを力ずくで突破するのは困難だと宣言するような扉で、ここを開くための端末らしきものは 全く見当たらない。、 しかし、アルフィーネがとある場所で指をひらひらさせると音もなく扉は開いた。 一定のタイミングで、3次元バーチャルキーボードが現れるらしい。 彼女はこの手のセキュリティシステムを熟知していた。 3重の扉を抜けてしばらく歩いてから出たのは明るい太陽光の照明の中、多くの人が整然と座り 作業している場所だった。 オペレーションルームらしい。 部屋の奥に居た一人の女性が待っていたように席を立ち、近づいて来る。 黒い髪で黒い瞳、典型的なJ国の若い女性の顔立ち。優しい笑顔を浮かべていた。 「アルフィーネさんとウーズバンドさんね。 遠路ご苦労さまでした。私は事務官をやっておりますヨウコ・シノダです。」 ヨウコは軽く会釈をして続ける。 「室長が指令室でお待ちですので、こちらに来て貰えますか。」 (続く) |
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【508】 |
Normad (2014年04月26日 16時04分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
この建造物にはプラントのコントロールシステムの端末が設置してあり、彼女は手慣れた手つきで 3次元バーチャルキーボードを操る。 その姿は青白く光る空間に手を差し伸べ、ひらひらと指を舞わせるパントマイムのようだ。 やがて近くのエレベータの入り口が開き、乗り込んだ2人を乗せた銀色の輝く円筒は 地下へと吸い込まれていった。 それから対ナノマシンウィルス用シャワーを浴びた後、幾度となくセキュリティチェックを受けながら 2人は地下の奥底へ進んで行く。 プラントの中は広大で地下通路は広く長いが、そこを走る車両は稀にしか来ない。ひたすら歩くだけだった。 すれ違う人々は誰も挨拶どころか、興味を示す者も居ない。 途中で受け取って右腕に巻いた入場タグが、時々赤く光る。 ここでは、職員同士のリレーションシップが管理されており、通常では会話しないはずの者同士が立ち止まって 話をすると、タグが赤く光った。 同様に、通常では用の無いはずの設備の近くでうろうろしていると、この入場タグが光る。 すたすたと先を急ぐアルフィーネについて行きながら、ウーズバンドは時折立ち止まっては入場タグを赤く光らせた。 彼女は歩きながら振り返り、時々注意をする。 「ウーズバンド、こういう施設は初めてではないですよね。必要な情報は部屋を与えられてから伝えますから 真っ直ぐに歩いて下さい。」 「アルフィーネさん、地上ではあんなに寄り道をしたのに、どうしてここではそんなに先を急ぐのですか。 僕はもう疲れました。それにお腹も空いたし。」 ウーズバンドは少し辛そうに訴える。 彼女は、立ち止まった彼の手を引き、先に進むようになだめた。 「もうひとつ先の棟が、今回の目的地のコントロール棟です。そこに行けば、これから滞在する部屋が与えられますから。 食事はその後すぐに摂れます。」 「僕らは招待されているんですよね。何故、いつもみんな冷淡なんだ。迎えの車が来てもいいじゃないか。」 「この前の時もお話しましたね。私たちは、ここに仕事に来た1スタッフに過ぎないのです。 あまり効率の悪い行動をすると、これからの仕事に差し支えますから、ここは頑張って下さいね。」 (続く) |
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【507】 |
Normad (2014年04月26日 15時58分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
3.再会 ソーラーカーを所定の場所に駐車させた2人は、第90エリア地熱エネルギープラントの上に立つ 僅かな地上建造物を眺めていた。 エリアでは人の居住区も含めて、殆どのものが地下に建造されている。 ナノマシンウィルスの脅威によるものとは言え、本来太陽の光によって育まれて来た筈の人間の生きる場所としては 暗く狭い場所である。 それは、人類が外の世界に拡大していく事を諦め、自らの内に閉じ籠る事を選択した事を暗示するような光景。 蟻が地熱エネルギーという餌に群がって地下に巣を作る、というような図式にも見えた。 「ニーベルングの指環」がエリアに対してテロ行為を行って行く理由の一つに このような人間の退廃を打破し地上に回帰するためという事が 挙げられている。 ただし、彼らが代替として示す人間の生活モデルは、従来の太陽光による発電の復旧と 農業による生活回帰というものであった。 ウーズバンドは荒涼とした地表を眺めてそんな事を思いだし、独り言の様に言った。 「人は、大昔のように農業で生きて行く事は出来ないのでしょうか。」 アルフィーネはその言葉を聞き、即座に回答した。 「それは可能ね。ただ、現在の農業の規模と生産効率を考えると、プラントの食品生産工場を廃した場合 この国の人口は ...。」 「あと43%減らす必要があるわ。人として必要なカロリーを満たすためにはね。」 彼女は事もなげにそう言うと、一つの建造物に向かって歩きだした。 (続く) |
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【506】 |
Normad (2014年04月26日 15時54分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
さって、今日も行くよん。 って、スロじゃねーぞ(笑) 第3章から。 先は長いのでいっぺんに載せると引かれちゃう。 って、もう引かれてるか(^^;) GO . |
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【505】 |
Normad (2014年04月26日 08時47分) |
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これは 【504】 に対する返信です。 | |||
おはよございます。 と、起きたのはいいけど、まだ眠い(_ _) ちょっと朝寝しよ。 その前に。 ☆ぽぽたん >もう20話まですすんでるのぉっ?! >だいぶ出遅れちゃった(-_-;) いやいやいやいや。 別に競走じゃないしぃ。 消したりもしないから(^^;) リタイアもあり(キリっ) 無理せずに。 じゃ、オヤスミ(笑) . |
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【504】 |
ぽぽっち (2014年04月26日 01時55分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
工エエェェΣ(;゜Д゜ノ)ノェェエエ工!!! もう20話まですすんでるのぉっ?! だいぶ出遅れちゃった(-_-;) 携帯からじゃよく読めないんで、 ゆっくりと自分のペースで読ませてもらいます (ゆっくりしすぎると、読み終えた部分の内容を忘れちゃうことも多々あるんだけど^^;) では〜〜って、これからレス入れられるべか?(^ー^;) またね^^ |
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【503】 |
Normad (2014年04月26日 00時27分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
とりあえず2章で今日は終わり。 で、いつもやってるオヤスミの曲、クロスオーバーイレブンは しばらくお休みします。 もう出来てるものを貼り付けるだけなのに、なんだか疲れるわ(^^;) オヤスミなさい。 . |
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【502】 |
Normad (2014年04月25日 22時35分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
その後、この2人はJ国エリアに起きる様々なプラントのトラブル対応に、直接赴いて解決する旅をする事になる。 それは、主にテロ組織の攻勢が生み出すエリアの歪みを、戦闘乃至は戦闘に近いような激しい方法で叩き潰して行く 危険な旅だった。 アルフィーネはそれを事も無げにこなしていったが、ウーズバンドにとってそれは苦痛な日々であり、彼女の庇護に あって大きな怪我や、死の危険に晒される事はなかったが、いつも彼の心には暗い影が差していた。 彼女とてそれに気が付かない訳ではなかったが、彼女から彼を離してしまえば、もっと取り返しのつか無いことになる 予感がしていた。 恐らくは...彼と彼女の進む道には、アキラの意思を示す何かがある。 彼女は、確信はないまま辛抱強く、この少年と様々な経験を共有していく事しか解決方法はない、と思うしかなかった。 この方法が何らかの形で結論を生み出す保障は無い。 せめて、この子の寿命が尽きるまで、こうやって旅を続けて行こう。そう堅く心に決めて。 たどりついた救難設備は、あの日、あの場所と同じ雰囲気を持って居た。 それでも、少年の心には何も湧き起こるものはなかった。 アルフィーネは慎重にこの状況を分析し、ここに止まる事は何ら新しい何かを生み出す事はない事を確信した上で ソーラーカーに戻って、次の目的地点、第90エリア地熱エネルギープラントに向かう事を決断する。 そして、この場所でも何の手がかりも見つけられないとなると、次にどうすればいいだろう。 彼女はそう考えながらも、希望は失うまい、とそう思った。 (続く) |
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【501】 |
Normad (2014年04月25日 22時34分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
肉体的にも精神的にも別人である可能性が高いと判断した彼女は、落胆の余り彼を放棄しようとさえした。 ただ、何かが彼女を引き留めた。 これは偶然では有りえない。多分、アキラとこの子は、どこかで繋がっている。 そう感じた彼女は、彼にウーズバンドという名を付け、以降、彼を連れて行動するようになった。 隣接するエリアのIEMO支部から本部へと連絡を取った彼女は、取り調べの後IEMO本部直属の 地熱エネルギープラント運用要員に任命された。 早い話が、J国における地熱エネルギープラント運用のなんでも屋と言って良かった。 第55エリアマスターによってプラントの全てを教育されていた彼女は、極めて優秀なプラント運用要員で あったのである。 彼女は自身の配置転換手続きを澱みもなく完璧にこなし、しかも誰に気づかれもせず同行する少年を彼女の助手として IEMOの職員に採用させる離れ業を見せた。 この世に存在してなかった筈の彼のID登録も同時にである。 この彼女の人間離れした能力は、誰にも知られずに発揮されたが、ごく一部それに気づいた人物が居た。 その人物は、第55エリア陥落の事実に深く関わり、そして今後の2人の未来にも大きく影響して行く事になる。 (続く) |
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