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【610】

無意味な世界、無価値な世界 062  評価

Normad (2014年04月30日 21時14分)

アルフィーネには現在から10年より前の記憶がない。

記憶そのものは細部まで明瞭であり、連続するイメージの1ドットさえ忘れずに記憶している。

しかし、10年前より前の記憶は存在せず、それ以前を思い出そうとすると
鏡面のように今が跳ね返って来るだけだ。

その記憶の始まりはエリアマスターであるアキラ・サイトウとの、マンツーマンの日々だった。

始まりの頃、彼女はまだ肉体を持って居なかった。

その頃の彼女の話し相手は、主にプラント内の数々のコンピュータ群であり
彼らとは高速なコミュニケーションを取ることが出来て、知りたい事は何でも教えてくれた。

そして、時折、アキラは彼女にミッションを与え、外部に連れ出しては外の世界のマシンとの
コミュニケーションを取らせた。

その殆どが、彼女にとってはシンプルな会話に当たったが、それはそれなりに面白い事だった。

中でも、キュービックダンスの採点マシンとしての役割は、何十人もの人の踊りを見ることによって
何か人の息吹というものを理解する事が出来たような気がした。

そして、それはアキラの狙いでもあった。

だが、彼女が一番楽しみにしていたのはアキラとの直接会話である。

彼は自由になる時間いっぱい、音声を使って「人とは何か」を彼女に丁寧に説いた。

まるで赤ん坊に語って聞かせるように。

彼女は、その低速な情報の流れそのものよりも、彼の会話のリズム、息遣いを心地よく感じた。

また、彼女は彼が良く使う「愛」という言葉にも注意を払った。

彼が使う愛という言葉は、多面体のようにいろいろな状況を映し出す。

弱い者は守らなければならない。美しい物は大切にしなければならない。人と人は信頼し合わなければならない...。

その言葉は「美」とか「信頼」とか「正義」とか言う、他の言葉と絡み合いながら
だんだんとおぼろげな姿を現す。

だが、彼はこうも言った。

「残念ながら愛という言葉は、人間にも良く解って居ないのだ。」



(続く)
【609】

無意味な世界、無価値な世界 061  評価

Normad (2014年04月30日 21時10分)

7.回想

アルフィーネはコントロール棟に戻ると、すぐさま指令室に居たユビ・シアンに詰め寄った。

「ユビ・シアン防衛ストラテジー部顧問。貴方は先ほどまでの間何をされてましたか。」

「何をって、僕の担当は戦略だからね。実務は君たちにまかせて現状分析を行って居たよ。」

ユビは顔色も変えずに、それが何か、と言った。

「ガダメンツ・ゴブ・シュタールは?」

アルフィーネは更に追及する。

問うてもしっぽは出すまい、と思いつつ牽制はしておかなければならない、という思いだった。

「ガダメンツ?ああ、僕の護衛か。
 彼には傭兵だった経験を生かしてもらうために、ある程度自由にプラント内をチェックして貰っている。
 呼び出す事は可能だが、奴がどうかしたのかい。」

ユビは怪訝そうな顔をして見せた。

心の中では、しくじったガダメンツを殴りつけたい衝動で一杯だった。

「大変な目にあったそうだな。だが、あの局面を切り抜けた機知は大したものだ。
 僕は君を防衛ストラテジー部へ推薦しようと思って居るよ。」

そんな胸の内をおくびにも出さずに、ユビはそう言った。

「それは辞退します。あの状況を良くご存じね。誰かに聞いたのかしら。」

アルフィーネは冷ややかに返す。

ユビも動ずることなくこう切り返した。

「僕も異常に気が付いて、心配で状況をスキャンしていたんだよ。
 監視カメラのトリックに引っかかったのは君らしくない失敗だったな。評価としてそこは減点だ。
 それに、またしても僕に高圧的な言動をしている事もな。」

アルフィーネは心の中で

「貴方が絡む事でなければ、あそこまで急ぐ事はなかったのだ。」と呟く。

「それは申し訳ありませんでした。」と謝罪してその場を立ち去ろうとした。

言葉で彼を追い詰める事はやはり無理だ、と思いながら。

その時、アルフィーネに声をかける者が居た。ハイダウエイだった。

「アルフィーネ君。君が何か不審な点を感じたのなら教えて貰えないだろうか。」

「ハイダウエイ監査官、決定的な事実は掴んでおりません。状況的なものです。
 まず、監視カメラに偽の画像を映し出す細工が出来たということは、このシステムを熟知している者が
 敵に居る事を示します。」

アルフィーネは更に続けた。

「また、現地のウィークディフェンスシステムとインタフェースを行う周波数の電波妨害を受けました。
 これも、周波数が敵に漏れている事を示します。
 内部で敵に通じてる人物が居るのかも知れない、という推測の根拠です。」

アルフィーネがそう言うと、ハイダウエイは更に尋ねた。

「ユビ・シアン顧問が疑わしいと思う根拠は?」

「これも漠然と、非常用シャッターによる封鎖の指令を出したのがユビ顧問だったという事を思いだしただけです。」

アルフィーネのこの言葉に、ユビは馬鹿馬鹿しいと呆れたように言った。

「それではランダーが指令を出したなら、ランダーが怪しいという事になるがね。」

アルフィーネは反論せず「貴方が指令を出したから怪しいのだ。」と心の中で思う。

いつからだろう、この男をこうまで疑うようになったのは。

アルフィーネは、第55エリアで暮らしていた日々の事を思い出していた。



(続く)
【608】

RE:お気楽何でもトピ  評価

Normad (2014年04月30日 21時09分)

さて、再開しますよ。

物語は丁度半分くらいですか。

ここでお約束の回想シーンが入ります。

相変わらず読みづらい難所(^^;)の連続ですが、自分自身もここ書いててシンドかった(笑)



ここに載せるのもなんかシンドいわ。

早く終わらせてお気楽部屋に戻りたい(-_-)


では、スタート。


.
【607】

RE:お気楽何でもトピ  評価

Normad (2014年04月30日 20時26分)

☆ぽぽたん

ばんわ。

>やっと読んでこられたよーヽ(^o^)丿

ご苦労さまですっ(キリっ)

>本にしたらそれほど長いSF小説でもないんだろうけど

そうだねー。

もし本にしたらだけど、200頁ぐらいかな。

>会話の部分が多いと楽だけど、
>説明書きの部分が無いと話が分からなくなっちゃうもんねー

ごめんねー、読みづらくて。

説明調で1文が長すぎるんだよね。

ま、生意気だけどこれがスタイルなんで(^^;)

そしてSFってこんな感じが多いんだよね。

星新一より小松左京に影響されてるんで(^^;)

>アルフィーネ対ユビ・シアン、ランダーの
>レベル5のコントロールキーをめぐる思惑争いかな?

おっ。

なかなか。

またも自分でネタバレだけど

アルフィーネ、ランダー VS ユビ

という構図かなー。

>まだ、×タリスマン ( テロ集団「ニーベルングの指環」のリーダー)の登場が無い
>これからが本格的ストーリーになっていくのかな?

またまた、自分でネタバレだけど(^^;)

タリスマンは一度も姿を現さないんだよ。

その理由は今後明らかになるねー。


って、なんかいっちょまえの作家になった気分で嬉しいわー。

ありがとね。



さって、これからご飯食べて、それから再開するよ。

じゃね。


.
【606】

RE:お気楽何でもトピ  評価

ぽぽっち (2014年04月30日 16時43分)

ノマちゃ〜〜ん、こんちw〜


やっと読んでこられたよーヽ(^o^)丿


本にしたらそれほど長いSF小説でもないんだろうけど、

横文字がたくさん入っててすんなり読めずに時間かかった^^;

会話の部分が多いと楽だけど、

説明書きの部分が無いと話が分からなくなっちゃうもんねー



今のところ

アルフィーネ対ユビ・シアン、ランダーの

レベル5のコントロールキーをめぐる思惑争いかな?


私、想像力乏しいから〜(^ー^;)

登場人物に自分なりの俳優さんのイメージを持てばもっと楽しいかもねー♪



アニメでも良いよね^^

文字じゃなくて動画になったらもっと迫力感がもてるね〜



まだ、×タリスマン ( テロ集団「ニーベルングの指環」のリーダー)の登場が無い

これからが本格的ストーリーになっていくのかな?

がんばってくださいね〜(^O^)/
【605】

RE:お気楽何でもトピ  評価

Normad (2014年04月29日 21時32分)

6章はここまで。

さて、酒でもかっくらって今日は寝るか。

またね。


.
【604】

無意味な世界、無価値な世界 060  評価

Normad (2014年04月29日 21時29分)

やがて、救護班を伴ったランダーが現れた。

戦闘能力を失った敵をひったてていく間、ランダーはアルフィーネが戦闘時に見せた動きを思い出して居た。

「やはり、アルフィーネはあの時の採点マシンなのだろうな。
 5m四方の空間をmm単位に体を動かす事を学習しているのだ。
 あのような動きはいとも容易い事なのだろう。見事なものだ。」


一方、戦況を後方で監視していたガダメンツは、ニーベルングの指環の戦力が壊滅したのを見届けると
素早く現場を脱出していた。

「ふん。結構面白いものが見れたぜ。観覧料は高くついたが、ここはあの女の能力を認めるしかないか。」

いまいましげに顔をしかめる。

「だが、ユビの野郎の言う通りにしたと言うのに、ウィークディフェンスシステムにやられてしまったではないか。
 オレが出張ってあの女を殺っても良かったんだが、ユビの野郎、オレの顔は絶対見せるなとうるさいからな。
 だが、この失敗はオレのせいではないぞ。ユビの奴の知力を、あの女が上回ったって事だ。少し愉快だぜ。」

次の瞬間ガダメンツは作戦が失敗したというのにニヤニヤと笑った。




(続く)
【603】

無意味な世界、無価値な世界 059  評価

Normad (2014年04月29日 21時27分)

観念したかのようなアルフィーネだったが、突然、取り囲むように地中から鉄製の盾が現れ
彼女はそこに身を隠した。

弾丸が弾かれて火花が散る。

次の瞬間、戦闘員達はどこからともなく現れた十数台もの黒い無人車のタックルを受け、薙ぎ払われていた。

彼女を取り囲むように固まっていた戦闘員たちは吹き飛び、地上に叩きつけられて苦悶している。

無人車は音もなく近づいてきた。射撃に集中していた戦闘員たちは気が付く術もなかったろう。

アルフィーネは気の毒そうに言った。

「タックルマシンよ。悪いわね。死にはしないけど、反撃レベルを対テロ犯に設定したから骨折はしてるわね。」

アルフィーネは、ウーズバンドを迎えに救難設備に向かう途中同じように地上に倒れている戦闘員達を見た。

タックルマシンと呼ばれた黒い無人車は、既にどこかに収納されて居なくなっている。

ウーズバンドはアルフィーネを見た途端、腰が抜けたようにへなへなと床に座り込んだ。

「アルフィーネさん。今日は、なんて言うか、相当どきどきしました。」

「ごめんなさい。いつものように行かなくて。でも、良かったわ。
 なんか嫌な予感がしたので、予定ポイントの3m上空に3次元バーチャルキーボードを設定してたのよ。
 あれは光学的なセンサーだから、電波の攪乱は効かないのよね。」

事もなげに言うアルフィーネの澄ました顔を見ながらウーズバンドは、そうかあの手をひらひらさせる動きは
3次元バーチャルキーボードを操作する動きだったんだ、とぼんやり思った。



(続く)
【602】

無意味な世界、無価値な世界 058  評価

Normad (2014年04月29日 21時23分)

その頃、ランダーは救護班の編成をじりじりとした気持ちで待っていた。

アルフィーネの事だから問題はあるまいと考えていたが、完全に敵の罠だったとは。

そして、あまりに手際の良すぎる敵の計略を怪しんだ。

私とヨウコが会っている間に、あの男が何かやったのだろうか。

ふと彼はそんな事を考え、何か酷く嫌な気持ちになった。

そして、アルフィーネとウーズバンドの2人をここで失ってしまったら、レベル5のコントロールキーに
関する手がかりが失われてしまう事を強く危惧した。

それを手に入れて、真のエリアマスターになる事が彼の野望である。

ランダーは、救護班の編成が終わった連絡を受けると、自ら赴くべく部屋を出た。


敵の射撃がいよいよ近距離になり、アルフィーネの躱す動作が激しくなっていく。

その中で、彼女の動作に奇妙な変化が表れた。

時折、ジャンプした際に手をひらひらさせるような動きをする。

それはまるで体全体の踊りに細やかな表現が加わったようだ。

そんな時、浴びせられた投光器の光の中独演会のように美しい舞を踊っていた彼女が、急にぴたりと動きを止めた。

ニーベルングの指環の精鋭部隊は彼女が観念したものと判断し、一歩踏み出して最後の斉射の準備をした。



(続く)
【601】

無意味な世界、無価値な世界 057  評価

Normad (2014年04月29日 21時20分)

アルフィーネは、銃撃を躱しながら頃合いを測っていた。

敵は一定距離を保っているから、躱しながらある地点まで誘導すれば逆転のチャンスはある。

アルフィーネが反撃の準備を始めた時、おやっ、と感じた。

システムとのインタフェースがうまく取れない。

何度交信しても同じところでシステムが沈黙する。

アルフィーネは、先に感じた良くない胸騒ぎの正体を知った。

電波妨害が入っているようだ。

インタフェースの使用周波数が敵に漏れている? 

彼女は、絶望的な状況の中で対応策を探し始めた。

ランダーの救護班が到着するまで、あと3分はかかる。

敵の接近とアルフィーネの反応速度から言って、3分は持ちそうもなかった。


ガダメンツはモニターで戦況を見ながら、何か面白くない気分になっていた。

多分、勝利は9分9厘自分の手にある。

しかし、このやり方は自分の好みの方法ではない。

特に女を大勢で包囲して葬るというのが気に入らなかった。

「ふん。女と言っても特別製だからな。確かに化け物だ。」

ガダメンツはそう独り言を言って、自分を納得させようとする。

それにしても見事な体捌きだ。

人間には神経線維の信号伝達速度の限界があって、到底あの距離から銃弾を受けて躱す事など出来ない。

だが、アルフィーネは楽々と躱している。

しかし、それにも限界がある筈だった。

一発でも、体のどこかを直撃すれば動きが止まるだろう。その時が最期だ。

いくらあの女でも全身を蜂の巣にされれば、活動を停止するだろう。

ガダメンツは不満な気持ちを飲み込んで、その時を待った。



(続く)
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