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【800】 |
Normad (2014年05月08日 22時31分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
数時間後、2人はマリアが乗ってきた軍用大型ソーラーカーの中に居た。 マリアが、連れてきた部下と共に提供してくれたのだ。 マリアは2人に、部下たちは有能だから連れて行きなさい、と言った。 既にマリアは、ランダーも含めたプラントの主要メンバーと会議を開き、今後どうするかを決めていた。 マリア自身も第55エリアに行くと言ったが、アキラはそれを押し止めた。 「危険だよ。君が居なくなったらIEMOはどうなるんだ。 それに、IEMOの中のユビと通じていた勢力を断罪しなくてはならない。 それは君にしか出来ない。」 その代わりに、ソーラーカーの後ろの方の座席にはガダメンツがふんぞり返って座っている。 2人は前方の席に座っていた。アルフィーネはガダメンツに厳しい。 ガダメンツの方を振り返ってみて言った。 「マスター、あの男を連れて行って本当に大丈夫なんですか?」 アキラは声をひそめてアルフィーネに言った。 「私は、自分が無力な存在になる事で、人の本質を引き出す事が出来ると確信したんだよ。 強い者の前では、人はなかなか本音を明かさないからね。 私はユビを認めるが故に、彼の前で張りつめすぎていたのかも知れない。 もう少し弱さを見せれば、彼の本質をもっと早くに看破できたのだろうな。 だが、ガダメンツには逆な意味で意外な純情さを見たよ。 彼は裏切りはすまい。それに。」 ここで、アキラは言葉を切りにっこりと笑った。 「彼には大きな借りがあるんだよ。もし、裏切られても後悔はしないさ。」 「それより、聞きたい事があるのだが。」 アキラは急に真剣な顔になった。 「なんでしょう?マスター。」 アルフィーネもつられて神妙な顔になる。 「君はいつの時点で、私が解ったんだ?」 「最初からです。だから、ウーズバンドとお呼びしました。 マスターとお呼びしては、他の人が怪しむと思って。」 アルフィーネはもじもじして言った。 「そうだな。ラテン語か。確かに今の時代、それが解る者はあまり居まいな。」 アキラは、改めてアルフィーネの機知に感銘した。 ウーズバンドはラテン語で主人という意味なのだ。 アキラは思う。 正直、君の意思とか知性というものが人間と同じものなのか、私にも判らない。 でも、それは人間同士でも同じ事。 同じ姿形をしていて、その組成さえ一緒であっても、人は他人の心を直接知る事はできない。 その心を窺い知る事が出来るのは、言葉とその行動のみ。 そういう意味では、君は完璧に人間だ。いや、人間以上に人間だった。 その上、君が私に教えてくれた事もある。人は、時に戦う事も必要だと言う事もその一つ。 いろいろな事から逃げてばかりいた私に、現実を正面から見据えて時に戦う事も必要だと教えてくれたんだよ、君は。 (続く) |
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【799】 |
Normad (2014年05月08日 22時29分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
12.エピローグ コントロール棟の職員たちが、少しずつ戻って来ていた。 その中にはランダーとヨウコの姿もある。 怪我をしたランダーを、ヨウコが肩を貸して歩いてきた。 アキラとアルフィーネが手を振ると、2人は頷いて救護設備へと向かった。 「ここの復旧はランダーに任せればいいな。」 アキラがそう言う。 「マスターはこれからどうするのですか。」 アルフィーネが尋ねる。 「第55エリアに向かう。 ユビ・シアンは自分の正体が明るみになった以上、間髪を入れずに反転攻勢に出るだろう。 残念ながらここのプラントはスレーブなので、レベル5の権限で第55エリアのプラントを コントロールする事は出来ないんだ。 彼を止めるためには直接出向く必要がある。」 アキラは難しい顔をして答える。 今まで以上に困難な旅になりそうだ。 その時、アルフィーネの携帯端末が鳴って、画面にマリアが映った。 マリアは、アルフィーネが無事な事を知って嬉しそうだ。 アルフィーネは、即座に画面のマリアに言った。 「スタインベック運用次官。私は、今からマスターと第55エリアに向かいます。許可をお願いします。」 マリアはわかった、わかったと手を振りながら言う。 「許可するわ。でも、まだ上司の私がすぐ近くまで来ているのよ。ちょっとは顔を見せなさい。」 そこにアキラが口を挟んだ。 「マリア、君、ここに来てるのか。珍しい事だな。 君は、指令用のディスプレイの中に住んでいるのだと思っている人も沢山居るのだが。」 マリアは、今まで内気でおとなしかったウーズバンドの姿をしたその少年が 生意気な軽口を叩くのに一瞬戸惑ったが、すぐに微笑んで答える。 「アキラ、戻って来たのね。 そうか。アルフィーネの願いが叶ったわけだ。 もう少しでそちらに到着するので、少しお話をしましょう。」 (続く) |
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【795】 |
Normad (2014年05月08日 21時22分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
ケンミンショーとBORDERを交互に見てるんですが。 ケンミンショー。 台湾札幌ラーメンって(笑) |
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【793】 |
Normad (2014年05月08日 19時29分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
その時、大きな野太い声が響いた。 「何いちゃいちゃしてるんだよ。」 2人がそちらの方を見ると、指令室の扉がいつの間にか開いており そこにはガダメンツが腕を組んで立っていた。 「お前ら、何をしやがったんだ。危うく俺もおっちんでしまう所だったわ。」 ガダメンツは不満そうだ。 「だから、行ってしまってと言った筈でしょう。」 アルフィーネは怒った顔をして言った。 邪魔しないでとでも言いたげだ。 「ガダメンツ、君には世話になったな。恩に着るよ。」 アキラがガダメンツに声をかける。 ガダメンツは、その少年をウーズバンドと呼んでいた時とのギャップに戸惑った。 「お前がもともとそんなだったら、助けてなんかやんねえよ。 あまりにひ弱かったから、馬鹿馬鹿しくなっただけよ。」 「それにな、ユビの奴のやり口には飽きた。お前らより、アイツを叩き潰す方が面白い。 もうわかっただろ、アイツがニーベルングの指環のボスだ。」 「そうだな。タリスマンは恐らく、彼が作った人口頭脳だろう。 内ではユビと同等の能力と考えを待つ人口頭脳が指揮し、外ではIEMOに入り込んだ自分自身が暗躍する。 IEMOが彼らをなかなか抑えきれない訳だ。 だが、ユビ・シアンがニーベルングの指環の本拠に収まる今こそが、逆にチャンスだ。」 アキラはそう言いきる。 アルフィーネは、そのアキラを頼もしげに見た。 (続く) |
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【792】 |
Normad (2014年05月08日 19時28分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
アキラは1年前の事を思い出している。 記憶は完全に蘇っていた。 「彼がなにやら画策している雰囲気は、感じ取っていたんだ。 だが、この手の策謀にかけては彼に適う者などいない。しっぽさえ掴めなかったよ。 計略を未然に防ぐ事は、難しいと思わざるを得なかった。私は、父のように自殺しようとさえ思った。 先に希望が持てないまま、抗争なんてしたくなかった。」 そう言いながら、アキラはアルフィーネの肩を抱いた。 懐かしい香りがする。 「ただ、君がいる。君だけは、彼に渡したくなかったんだ。 君が簡単に彼に屈する訳が無いことは分かっている。 現に君は彼の計略を躱し続けてきたね。 でも、私が彼の手に落ちたら、それを盾に君に要求して来るだろう。 そして、もともとの君の原型を作ったのは彼だ。 彼は、君を自分の思うままに改造する事を考えるに違いない。 それが我慢ならなかった。」 アルフィーネはそれを聞いて、ふと表情を曇らせ口を挟んだ。 「あの人は、私の恋愛詩ミューレーション機能を使って私を操作すると言いました。」 アキラはにっこりと笑って、彼女の髪を撫でた。 「それは君を私が身受けした時に、既に発見していたんだよ。 しかも、それは君が自我を持つために必要な重要なファクターですらあった。 私は、彼が遊びで作ったという恋愛を発動させる機能ブロックを基に、いろいろ試行錯誤した。 その結果、君を発見したのさ。 だから、君は彼が作動させられると思いこんでいる恋愛機能の影響下には無い。 全ては、君の自我が感じたままの出来事だったのさ。君は...。」 彼はここで一旦言葉を切った。 「自由だ。」 「私は自分の身を守る事を考えた。 だが、普通の思考方法による防衛プログラムでは、絶対に彼に見破られる。 非論理的、非効率的なものなら、彼の予想の範疇を越えられるかも知れない、とそう思った。 私は、密かに自分を全く無知で無力な別人に変更する一連の医療プログラムを組み、あの日発動させた。 ユビは脳波解析の天才だから、徹底的にやらないと必ず見破られる。 そして、別人に生まれ変わった自分自身を脱出プログラムで救難カプセルに入れ 無人ソーラーカーでプラント周辺の救護施設に運ばせた。 自分を取り戻す事とレベル5のコントロールキーは、君に託す事にした。 君が私を見つけ出し、そして無知で無力でみすぼらしい私を君が愛してくれたなら。 そう、思ったのだよ。やはり病んでいたせいなのかな。 一か八かの、全く無謀な賭けだった。」 アキラは溜息をつく。 その後、アルフィーネを見て言った。 「でも、君はそうしてくれた。」 2人は見つめあった。 この1年間に起こった様々な事が脳裏に蘇る。 (続く) |
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【791】 |
Normad (2014年05月08日 19時27分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
指令室では、アキラがアルフィーネに用意した服を着せてやっていた。 アルフィーネの顔は、自動修復されて殆ど治っている。 アキラは着せ終えると、アルフィーネを腰かけさせ優しく語り掛けた。 「アルフィーネ、苦労かけたね。私は、やっぱり病んでいたようだ。 サイトウ家は、ずっと第55エリアとこのエリアのエリアマスターを引き継いで来たが 祖父も父も迷ってしまう事があったようだ。 そして、父は自殺してしまった。」 ここで彼は声を落とした。 愛する者や父の自殺。 それが彼の心に暗い影を落としている。 特にエリーゼの死は...。 彼女の葬儀の日、彼はこっそりと彼女の髪の毛を少し切り取った。 それが、今、アルフィーネの中で息づいている。 「プラントの責任者を務めていて思う事は、エリア内に暮らす人々の生活を守っていると言う自負と共に それが結局何なのだろうかという疑念なんだ。 受け継いできたプラントをきちんと運用して、人々に安楽な暮らしを提供する。それは良い。 だが、その先に何があるのかという疑問がいつも付きまとって居た。 ある意味、それはニーベルングの指環の思想とも通じてしまう。 そして、ニーベルングの指環の思想とは、ユビ・シアンの思想そのものなんだよ。」 ここで、アルフィーネは疑問を口にした。 「マスターは何故、あの人を追い出さなかったのですか。IEMO本部の意向のせいですか。」 アキラは首を横に振った。 「そんな事はないさ。いつでも解任は出来た。だが。」 アキラはふと寂しげな表情を見せて続ける。 「ユビと私では考え方に大きな隔たりがあるのは解っていた。 それでも彼を側近に置いていたのは、彼を尊敬して居たからだ。 彼には才能がある。 彼なら、私が描く事の出来ない人間の未来を描けるのかもしれない、と、そう思って居たのだよ。」 彼は目を閉じ、ふっと息を吐くと目を開いてアルフィーネに笑いかける。 「なによりも、彼が居なければ君が生まれる事もなかった。」 アルフィーネはコクリと頷くと、花開くような美しい表情で微笑んだ。 「少し時間をかけて見極めた上で、彼にレベル5のコントロールキーを引き継ぐ事も考えたのだよ。 だが、彼にはそのような悠長な事をしている時間がなかったようだ。」 (続く) |
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