■ 266件の投稿があります。 |
< 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 17 16 15 14 13 【12】 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 > |
【116】 |
綺華 (2014年11月21日 19時59分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) しばらくは、手元に残ってた本の中でも一番難解な 「フィネガンズ・ウェイク」を読んで格好つけてた。 当然、内容はさっぱり頭に入ってこなかった。 余命三ヶ月だってのに、何をやってるんだろな。 読書に飽きた俺は近所のスーパーに行って、 グラス付きのウイスキーと氷を買った。 ミヤギも菓子パンやら何やらを買いこんでた。 それを見た俺は、なんか幸せな錯覚に陥ってさ。 実を言うと、俺には昔から憧れがあったんだよ。 同居してる子と部屋着のままスーパーに行って、 食材とかお酒を買って帰ってくる、って行為に。 羨ましいなー、って思いながらいつも見てた。 だから、たとえ監視が目的だろうと、若い女の子と 夜中のスーパーで買物するってのは楽しかったんだ。 むなしい幸せだろ? でも本当だから仕方ない。 |
|||
【115】 |
綺華 (2014年11月21日 19時58分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 今日は何をしても駄目な日なんだ、と俺は決めつけた。 好きなことでもして気分を紛らそうじゃないか。 それで明日になったら、また何をするか考えよう。 というわけで、欲望の赴くままに過ごそうと決めた俺だったが、 その上で、どうしても邪魔になるやつが部屋のすみにいるんだよな。 「私のことはいないと思ってくださって結構ですよ」 俺の気持ちを察したのか、ミヤギはそう言う。 だが、本人がいくらそう言っても、気になるものは気になる。 自分で言うのもなんだが、俺はかなり神経質なんだ。 同世代の女の子に見られてるのを意識しだすと、 行動のひとつひとつがおかしくなるんだよ。 「自然体っぽい格好よさ」を出そうとしちまうんだな。 気付くと髪を触ってるんだ。完全に自意識過剰だ。 |
|||
【114】 |
綺華 (2014年11月21日 19時57分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 弟の相変わらずの大活躍については勿論のこと、 お袋は、弟が連れてきた恋人の話までし始めた。 「とにかく美人なのよ」とお袋は二十回くらい言った。 「同じ人間とは思えないほど美人でね、その上性格も……」 まるでもう孫ができましたみたいな話ぶりでさ。 俺の話なんて全く聞こうとはしてねえんだよな。 実家に帰ろうという気持ちは、段々としぼんでいった。 最近では、その弟の素敵な恋人さんってのを、 しょっちゅう家に招いて夕食を一緒にするらしい。 その場に俺が混ざるのを想像しただけで死にたくなったね。 俺は適当なところで電話を切った。実家に帰るのは、やめた。 |
|||
【113】 |
綺華 (2014年11月21日 19時56分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 『どうしたの? 珍しいね、あんたからかけてくるなんて』 お袋の声を聞くのは、本当に久しぶりだった。 バイトと勉強が忙しくて電話をする暇がなかったからな。 「急で悪いけど、今から実家に帰っていいかな」。 俺はお袋にそう聞くつもりだったんだ。 で、家族の無償の愛とやらに包まれながら、 余生を穏やかに過ごそうと思ってたんだよ。 だが、こっちが何か言う前に、お袋はべらべらと喋り出した。 それは俺の二つ下の、弟の話だった。 お袋はことあるごとにあいつの話をしたがるんだよ。 というのも俺の弟、ちょっとした有名人なんだ。 野球をするために生まれてきたような男でさ、 一年の時から甲子園で投げてるんだよ。 テレビにもしょっちゅう出てるんだ。自慢の弟さ。 |
|||
【112】 |
綺華 (2014年11月21日 19時55分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) それでも俺は極力気にしていないふりをして、 「ふうん」と言いながら煙草に火を点けた。 三本くらい吸うと、体調が悪いせいか、 嫌な感じに頭が痛くなってきてたな。 でも吸い続けた。色んなことを忘れるために。 ミヤギは部屋のすみに戻っていった。 で、ノートにさらさらと何かを書いてたな。 気が付くと、いつの間にか日が落ちていた。 俺は自分の書いたリストに目を落とし、 幼馴染の項に取り消し線を引いた。 それからもう一度リストをじっくり眺めて、 電話を手に取り、ゆっくりボタンを押した。 |
|||
【111】 |
綺華 (2014年11月21日 19時55分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 俺がどんな反応を示したかって? そりゃ、がっつり傷ついたさ。がっつりな。 一番大切な記憶を台無しにされたんだからな。 情けない話なんだが、二十歳になっても、 俺の根っこの部分はどこまでもピュアと言うか ナイーヴというかセンシティヴというか、 ようするに子供の頃から成長していなかったんだな。 何かが変わったり、何かが終わっていく、 そういうことが、いまだに耐えらないんだよ。 成人男性のくせにカナリヤ並に敏感なんだ。 |
|||
【110】 |
綺華 (2014年11月21日 19時54分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 「その幼馴染さんですけど」とミヤギは告げる。 「十七歳で出産してるんです。で、高校を退学。 十八歳で結婚しますが、十九歳で離婚してます。 二十歳の現在は、一人で子育てしてますね。 ちなみに二年後、首吊り自殺することになってます。 いま会いにいくと、多分『お金貸せ』とか言われますよ。 あなたのこと、ほとんど覚えてませんし」 |
|||
【109】 |
綺華 (2014年11月21日 19時53分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 中学に入って新しい環境に馴染めず、 クラスで孤立した俺に唯一毎日話しかけきて、 「どうしたの?」って聞いてくれたのも幼馴染だった。 離れ離れになった後も、辛いことがあったとき、 俺が思い浮かべるのは幼馴染のことだった。 彼女がいなきゃ、今の俺は無かっただろうな。 まあ、無いなら無いでいいんだけどな。 とにかく俺は彼女に感謝していたんだ。 ここ数年まったく連絡はとっていなかったが、 もし彼女に何かあったら、真っ先に駆けつけようと思ってた。 どんな形でもいいから、彼女に恩返ししたいと思ってたんだ。 |
|||
【108】 |
綺華 (2014年11月21日 19時52分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) いつの間にか真後ろにミヤギがいて、 俺の書いたリストを眺めていた。 「それ、やめた方がいいですよ」 一つ目の項目を指差して、彼女は言った。 “幼馴染に会って礼を言う”。 「なぜ?」と俺はミヤギに訊ねた。 ――幼馴染について、ちょっと説明するか。 夢にも出てきたその子と俺は、四歳からの仲でさ。 彼女が転校するまでは、どこにいくにも一緒だったんだ。 |
|||
【107】 |
綺華 (2014年11月21日 19時51分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) やりたいことリスト。たとえば、こんな感じだ。 ・幼馴染に会って礼を言う ・親友と会って馬鹿話をする ・なるべく多くの時間を家族と過ごす ・知人全員に向けて遺書を書く ・大学には行かない ・アルバイトにも行かない まあ、全体的に平凡な発想だ。 誰に書かせても似たような感じになるだろうな。 |
|||
© P-WORLD