■ 266件の投稿があります。 |
< 27 26 25 24 23 22 21 20 19 18 【17】 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 > |
【166】 |
綺華 (2014年11月21日 20時41分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 「一枚ずつ配って歩いた」と俺は答えた。 「一枚ずつ?」と男はいぶかしげに言った。 「ああ。一万円を三十枚、三十人に一枚ずつ。 本当は人にあげるつもりだったが、考えが変わった」 すると男はタガが外れたように笑い出したんだ。 それから、俺にこんな質問をしてきたんだよ。 「なあ、お前――まさか、本当に自分の寿命が 三十万だって言われて信じちゃったのか?」 |
|||
【165】 |
綺華 (2014年11月21日 20時40分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 監視員が男になったことによって、 俺はかなりリラックスできるようになった。 男はそんな俺の様子を見て、言う。 「女の子が傍にいると落ち着かねえだろ? なんかキリっとしたくなるよな。分かるぜ」 「そうだな。あんたの傍は落ち着くよ。 あんたになら、どう思われようと構わないから」 俺は『ピーナッツ』を読みながらそう答えた。 ミヤギの前では恥ずかしくて読む気になれなかった本。 そう、実を言うと、俺はスヌーピーが大好きなんだ。 「そうだろうな。……ああそうだ、ところでお前、 結局、寿命を売った金は何に使ったんだ?」 そう言うと、男は一人でくっくっと笑った。 |
|||
【164】 |
綺華 (2014年11月21日 20時39分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 「お前の寿命、最安値だったらしいな?」 男は露骨に俺をからかうような調子で言う。 「すげえすげえ。そんなやついるんだな」 「すげえだろ? なり方を教えてやろうか?」 俺が淡々と返すと、男はちょっと驚いたような顔をした。 「……へえ、お前、結構余裕あるみたいだな?」 「いや、しっかり今ので傷ついてる。強がりさ」 男は俺の発言が気に入ったらしく、 「お前みたいな奴、嫌いじゃないよ」と笑った。 |
|||
【163】 |
綺華 (2014年11月21日 20時39分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) ある日、俺が目を覚まして部屋のすみを見ると、 そこにいつもの子の姿はなくて、代わりに、 見知らぬ男がかったるそうに座っていた。 「……いつもの子は?」と俺はたずねた。 「休日だよ」と男は答えた。「今日は、俺が代理だ」 そうか、監視員にも休日とかあるんだな。 「へえ」と俺は言い、あらためて男の姿を眺めた。 露天商とかにいそうな感じの、うさんくさい男だった。 すげえ遠慮のない感じで存在感を撒き散らしてたな。 |
|||
【162】 |
綺華 (2014年11月21日 20時38分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 原っぱに腰を下ろして、俺は煙草を吸っていた。 隣では、ミヤギがスケッチブックに絵を描いていた。 「仕事しなくていいのか?」と声をかけると、 ミヤギは手を止めて俺の方を向いて、 「今のあなた、悪いことしなさそうですから」と言った。 「そうかねえ」と言うと、俺はミヤギのそばに行き、 彼女が線で画用紙を埋めていく様を眺めた。 なるほど、絵ってそうやって描くのか、と俺は感心していた。 「でも、そんなに上手くないな」と俺がからかうと、 「だから練習するんです」とミヤギは得意気に言った。 「今まで書いた奴、見せてくれ」と頼むと、 彼女はスケッチブックを閉じて鞄に入れ、 「さあ、そろそろ次に行きましょう」と俺を急かした。 |
|||
【161】 |
綺華 (2014年11月21日 20時37分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) そういうわけで、俺の自販機巡りの日々が始まった。 原付に乗って、田舎道をとことこ走る。 自販機を見かけるたびに何か買って、 ついでに安物の銀塩カメラで撮影する。 別に現像する気はないんだけど、何となくな。 そんな無益な行為を数日間繰り返した。 こんなくだらない趣味一つをとっても、 俺よりもっと本格的にやっている人が沢山いて、 その人たちには敵わないってことも知っている。 でも俺は一向に構わなかった。なんか生きてる感じがした。 俺のカブ110は幸いタンデム仕様だったので、 ミヤギを後ろに乗せて、色んなところをまわれた。 ようやくやりたいことが見つかって、天気にも恵まれて、 俺の生活は一気にのどかなものに変わった。 |
|||
【160】 |
綺華 (2014年11月21日 20時36分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 「でも、なんとなく分かる気はします」 「自販機になりたい気持ちが?」 「いえ、さすがにそこまでは理解不能ですけど。 自販機って、いつでもそこにいてくれますから。 金さえ払えば、いつでも温かいものくれますし。 割り切った関係とか、不変性とか、永遠性とか、 なんかそういうものを感じさせてくれますよね」 俺はちょっと感動さえしてしまった。 「すげえな。俺の言いたいことを端的に表してるよ」 「どうも」と彼女は嬉しくもなさそうに言った。 |
|||
【159】 |
綺華 (2014年11月21日 20時35分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 「あの、確認ですけど、自動販売機って、 コーヒーとかコーラとか売ってるあれですよね?」 「ああ。それ以外も。焼きおにぎり、たこ焼き、 アイスクリーム、ハンバーガー、アメリカンドッグ、 フライドポテト、コンビーフサンド、カップヌードル…… 自販機は実に様々なものを提供してくれる。 日本は自販機大国なんだよ。発祥も日本なんだ」 「んーと……個性的な趣味ですね」 なんとかミヤギはフォローを入れてくれる。 実際、くだらない趣味だ。見方によっては、 鉄道マニアを更に地味にしたような趣味。 くだらねー人生の象徴だよなあ、と自分で思う。 |
|||
【158】 |
綺華 (2014年11月21日 20時35分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 「どうしました?」 「……いや、実にくだらない事なんだけどさ。 好きなもの、一つだけあったことを思いだした」 「言ってみてください」 「俺、自動販売機が大好きなんだよ」 「はあ。……どこら辺が好きなんですか?」 「なんだろな。具体的には自分でも分からないんだが、 子供の頃、俺は自動販売機になりたかったんだ」 きょとんとした顔でミヤギは俺の顔を見つめる。 |
|||
【157】 |
綺華 (2014年11月21日 20時34分) |
||
これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) さらにミヤギは、こう言った。 「考える時は、外に出て歩くのが一番です。 お気に入りの服に着替えて、外に出ましょう」 いいこと言うじゃないか、と俺は思った。 段々とこの子は、俺に優しくなってきているように見える。 もしかすると、監視員は監視対象との接し方が決まっていて、 彼女はそれに従っているだけなのかもしれないが。 俺はミヤギのアドバイスに従って外を歩いた。 ものすごい日差しが強い日だったな。髪が焦げそうだった。 すぐに喉が渇いてきて、俺は自販機でコーラを買った。 「あ」、と俺は小さく声を漏らした。 |
|||
© P-WORLD