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【34】

RE:カンパチ・ベルガーZX

カンパチ (2015年09月13日 17時38分)
近頃読んだ本で、最高に傑作だった本。

まだ読みかけなんですけど。




バルザック著「役人の生理学(講談社学術文庫)」


<前書き>

1987年に新評論から初版が出て、その10年後にちくま文庫に入った、

バルザックの「役人の生理学」が,


この度、16年ぶりに講談社学術文庫の1冊として復活することとなった。


官僚制という近代社会の根幹をなす制度について、

それが誕生して間もない時期に、

バルザックが本質的な考察を巡らした重要な本なので、


永続的に増刷されて、

読者が恒常的に入手できる状態が最善、

と考えていたところだったので、


講談社学術文庫に入ったことは、

訳者として誠に欣快に耐えない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『第14章』  退職者

どこの省のどこの課にいようとも、

役人として働いている間、

人はただ一つのことを考え、

ただ一つのことを叫び続け、

ただ一つのロマンスを歌い続けている。


その歌詞というのはこうである。


「ああ、いつになったら定年になるんだろう!

 いつになったら役所をやめることができるんだろう!

 まだまだあと何年も働かなけりゃならない。

 でも、30年勤めあげたら、

 いよいよ田舎に引きこもって、のんびり暮らすんだ!」



定年まであと5年、あと2年、あと18か月といった連中は、

誰が見ても幸せそうな様子をしている。

おまけに、みんなが彼らに微笑みかける。

あの人たちはもうじきいなくなる!。

後進に道を譲ってくれるのだ!。


ところがいよいよその時がやってくると、

役人は、役者のように、

自分はまだまだ若く、力が体中にみなぎっているような気になる。


かつて自分が、

これほど的確な判断力を持ち合わせていたことはなかったような気がする。


もし、誰かがしびれを切らせて、

ついうっかりと定年退職のことを口に出したりすると、

彼らは大声で叫び、

必ずと言っていいほどこんなノクターンを歌う。


「こんな不当な仕打ちがあるだろうか!

 ここへきてやっと暮らしが楽になったばかりではないか。

 ようやく娘も嫁いだし(=片付いたし)、

 私には豊富な経験があるんだから、

 国家がこの知識を活用しない手はない!。

 人が何ものかモノにしかかると、

 とたんに追い出しにかかる。

 ただの一筆で、食い扶持の半分を持って行ってしまう。

 第一、これから、何をすればいいんだ?。

 60にもなって、何か手習いでも始めろというのか?」



≪続く≫

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【37】

RE:カンパチ・ベルガーZX  評価

カンパチ (2015年09月14日 22時56分)

【34】の≪続き≫


>『第14章』  退職者−2


役人は、昔、自分が、

もうろくした老人や、無能な人間たちをさんざん非難して、

連中のおかげで若い人たちが役人になれなくて困っていると毒づいたことを、

すっかり忘れてしまう。



大臣や人事院の総裁に陳情に出かけ、

泣き落としを使って、

ちょうど、死刑囚が護送車にしがみつくように、

自分の肘掛椅子にしがみつく。


だが、ついに退職しなければならぬ日がやってくる。


自分の書類箱、この部屋の空気、この書類の山、

どれもこれも、

ある時は嫌悪し、ある時は熱愛したものばかりだ。


いよいよこいつらともお別れだ。


「あんな亭主に一日中家にいられたら、あたしはどうなっちゃうのかしら」

と男の女房はため息を漏らす。


「一体、どうやってあの人に暇をつぶさせたらいいんだろう。

 細かいことにやけにうるさい人だし、何にでも手を出したがる人だから。

 おまけに神経質で変人ときてるのよ!」


女房の友達がいさめると、


「そんなこと言うけど、アンタはあの人を知らないのよ!」

と答える。


「とにかく、あの人は頭に何か詰め込んでおいてやらなくちゃいけない人間だから。

 それでもしばらくは、退職年金の計算かなんかで気がまぎれるでしょう。

 でも、そのあとは?」


一般に、55歳の女が、65歳の男を楽しませる術をいろいろと知っているなどということはめったにない。

そこで夫婦は、目を、

パッシー、ベルヴィル、パンタン、サン=ジェルマン、ヴェルサイユなどの、

郊外の村に向けることになる。


引退した役人は、疲れを知らぬ新聞の読み手となる。

題字から発行人の名前まで、すべてに目を通し、

広告を仔細に検討する。


これで3時間はつぶれる。


それから散歩に出かけ、やっとのことで夕食にたどり着く。


だが、いったん夕食まで来てしまえば、あとはもう安心。

晩には、トランプをしたり、人の家にお呼ばれしたりする。


引退した役人の多くは釣りに熱中する。

そういえば、これは役所の仕事とよく似たところがある。


中には、性格のあまりよくない連中もいて、

株に手を出したりするが、たいていは元手を失う。

だが、この連中はどこかの企業に再就職の口を見つけてくる。


引退して村の村長や助役になる者もいる。

彼らは、こうして、従来の役人的態度を続けることができるわけである。



≪続く≫ 
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