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【374】

幸せの有効期限

まきりと2 (2021年12月06日 07時29分)
その人に初めて会ったのは、白い部屋だった。


白い天井 白いシーツ 白衣の女性たち

何もかもが白い中で
初めて聞いた声に問い返す。

「…ちゃんと。ちゃんと産んであげられたんでしょうか」

「聞こえたでしょう?わからない?」

同性の医師の声は、くだらない質問をする未熟な母親への怒りを伝え、女は少し傷つきながら胸の内で反論を試みる。

違う。
そうじゃないよ、先生。

生まれてくる命が等しく大事なのは知っている。

それでも、聞きたくなるんだよ。

今日から、この子に私が出来ること。
その覚悟を自らに確かめずにはいられない。
これから母になろうとする、まだなっていない。
生まれたばかりの母の口から零れ出た言葉なのだから。



いつも、そう。もう何十年も前の記憶が、つい最近の事のように巻き戻る。

あの日、思った言葉が簡単に思い浮かぶのだ。



その後は、同じ場所にいても離れ離れで過ごしては面会のような親子の時間を差し挟み。


人の何倍もあると噂になる髪の量で一目瞭然であるにもかかわらず、厚いガラスの向こうに我が子を探す時間はもどかしく。


その人の、小さな小さな手。
止まってしまわないかと心配してしまう、小さな息使い。
共に過ごす時間が、私を母にする。



初めまして。
今日まで、身一つだった私の子。

あなたは、今日からあなたとして、この世界を生きて行く。

私は、きっと小さな失敗をたくさんすると思うけど、ずっとあなたのそばにいる。
絶対にあなたを護るから。
どんな時も、あなたの味方だよ。

だから、生まれたてのあなたと私で生きて行こう。

私はきっと、あなたを笑顔にしてみせよう。



新米ママに巻き戻るのは、もう何度目になるだろう。

きっと、これからも、何度でも。
繰り返し、思い出してくんだろな。

この世界でたったひとつの、たからものを抱いたまま。




正義の味方だったしょうぞうさん。


あなたの書かれた文を読み、誰かのために負けない自分でいる事が、羨ましいと感じたよ。

自分は思った事がない、思えた事がないとあらためて思う日々。

そんな私でも、一度だけ。
思えた日々がありました。

それは、母として生きた時間。


しょうぞうさんの自慢のお母さん。
お母さんにとっての、しょうぞうさんも、そうであるに違いない。


だってね?


寒い朝、遠い日々に巻き戻る瞬間が、重い足も心も軽くしてくれる。

それは生涯有効な母の御守りなのでした。

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【375】

家族とともに  評価

しょうぞう (2021年12月09日 10時04分)

まきりとさん、いつもありがとうございます。

私ね、正義の味方ではなく、正義の味方の「つもり」です。

そう思うことが、思えることが、自分のことを好きでいられる秘訣なのかな。
当時は全くそんなこと思っていませんでしたけど、最近、そういう風に考えるようになってきました。

何回も書いてますけど、私、カッコつけたがりなんですよ。
カッコつけるためには、ケンカでは負けられない。
つまり、カッコいいイコール、ケンカが強いという宇宙一単純な思考。

ほんとバカでしょ(笑)

みんなから、しょうぞうはケンカ強いって思われたら、いざというとき頼ってくれる。
そう思っていたんです。

だからね、どうしても負けたくなかったんです。
それが、私の唯一の拠り所だったから。

おふくろが自慢とか、あんまり思ったことというか、考えたことなかったんですよ。
でも私も親になって、色々考えるようになって、やっぱ一番の自慢かなぁって。
改めて思いました。

あっ、私ね、小っちゃい頃というか、小学校低学年くらいまでは、お父さん、お母さんって呼んでたんですよ。
でもふとね、やっぱ、ケンカ強いオトコはオヤジ、おふくろでしょって思って、それからはそう呼ぶようにしたんです。

相変わらずモーレツにバカでしょ(笑)

最初は二人とも、えっ?ってな感じになってましたけど、すぐに慣れました。
おそらく、今お父さんお母さんって言ったら、それこそ、えっ?ってなると思います(笑)

命を授かる瞬間、おそらくそれが、この世でもっとも嬉しく、幸せを感じる瞬間なのだと思います。

私たちは、結婚してから何年も子どもを授かることができませんでした。
なので、心の中では、本心は、もう完全に諦めていました。

妻が、もしかしたらって言ったときも、おそらく勘違いだろう、私と妻は、子どもを授かる星の下に生まれていない。
そう思ってました。

だからというわけではありませんが、あの、この世でもっとも嬉しく幸せを感じた瞬間が、今の私の生の活力です。

私は、自分でも怖いくらいに娘を溺愛し過ぎています。
私にとって、家族がほぼ全てです。
家族のためだったら、この命、微塵も惜しいとは思いません。

それが私の死生観。

そしてそれが、なにものにもかえがたい幸せを授かった、しょうぞうというオトコの生き方。
そう思っています。

そして私にとっても、この思いが、生涯有効な御守りなのかもしれません。

まきりとさん、あなたが書き綴られた、母としての喜びを、その強さを、そしてその思いを、同じ親として共感できるこの瞬間が、なにものにもかえがたい尊い時間であり、思いであり、ずっと忘れてはならない親としての「心」なんだろうなって思いました。
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