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【14】

社長 6

SBX (2006年05月12日 15時07分)
 『社長 vol.6』

そうそう,思い出した。
あれは5月の花見のことだった。
(北海道では花見は,時期的に5月に行う)
俺や社長が属していたゼミも5月の連休後に花見を行った。

花見の場所は一応A市の名所でもあるK公園だった。
K公園はちょうど駅の裏側に位置していた。
大学からはちょうど市の裏側に当たり,交通の便が不便だった。
そのため,ジンギスカンをするための食料,飲み物, ガスボンベ,鍋など重くて持ちにくい物はすべて1年生の持ち物だった。
当然,社長も俺も持ちにくい物を持って,花見の公園までバスを乗り継いで行った。
しかし,社長と俺は,重いけれど帰りは楽になる飲み物と食料を運んだ。

花見を始めたのは,午後の1時頃。
平日の真昼間ということもあって,公園は我々の貸切状態だった。
教授を交え,真面目な花見は滞りなく進んでいった。
社長は時々,アンコールに答え,『カポ』をやっていた。そして,教授たちは普通に帰った。

事件が起きたのは,花見の帰りのことだった。
酔いの勢いに任せて,我々は歩いて帰ろうとしていた。
そして,駅の裏側に着いたときだった。
A市は駅の入り口が一つしかない。
駅の裏から大學に帰るには,遠回りの道を選ばなければならない。

しかし,我々には強い味方がいた。酔いである。
酔いの勢いで,駅の構内を横切ることを決意した。全員一致で。
線路は,10線以上ある。
幅は優に100mは超えている。
我々はゲリラの様に草むらに隠れ,辺りを見渡す。
駅員がいないのを確認し,我々は走った。
そして,駅を横切るのに成功した

かに見えた。

後ろを振り返ると社長が線路の上に転んでいる。
転んだ瞬間に口からアルコールの混じった汚物を噴出したようだ。
我々は,全員,駅を横切る時よりもスピードを上げて,その場から逃げた。
その後の社長の処遇については,我々は一切関知しない。

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【15】

社長 7  評価

SBX (2006年05月12日 15時10分)

 『社長 vol.7』

社長が魔法のカードを手に入れたのは,2年目の春のことであった。
「先輩先輩,実は魔法のカードを手に入れたんですよ。いっひっひっひ」
「このカードはですね,10万分物を貰えたり,10万円お金を引き出せる優れものの魔法のカードなんですよ」

まあ,要するにショッピングが10万,キャッシングが10万できるクレジットカードのことである。
『SE○BU』の『SA○SONカード』である。
彼は,借りたものは返さなければならないという民事の基本的事項を全く無視しているのである。
知ってはいるのである。
あえて,もう一度言うが,あえて無視しているのである。
そんな彼であるから,行く末は見えていた。

確か,後期の授業料の納期の頃だったと思う。
社長は仕送りをしてもらった金を全て飲み食いやお風呂に費やした。
そこで登場なのが,魔法のカードである。
「N2先輩,2万円貸してくださいよ。その2万円をSE○BUに返すとまた,新たに10万円が借りられるんですよ。いっひっひっひ。そうしたら,先輩には寿司を奢りますんで」
N2は言われるままに2万円を貸した。
当時の2万円は今の価値では,5万くらいになるだろうか?
そして,無人キャッシングの機械の前である。
「じゃ,借りた2万円をこうやって返してと・・・」
「するとですね,今までの借金がチャラになって,新たに10万円が借りられるんですよ」
「このボタンと暗証番号を押してと・・・」
「あれ,おかしいな。『貸し出しできません』と表示されてる・・・」
「もう一度やってみますね」

何べんやってもおんなじである。
借りられるわけ無いのである。
すでにキャッシングの限度まで行ってるのだから・・・
いまさら2万ぽっちで10万を新たに借りられるわけは無いのである。
しかし,魔法のカードと信じて疑わない社長は,何回もキャッシングのボタンと暗証番号のボタンを連打するのである。
哀れだ・・・
あまりにも哀れだ・・・
納得の行かない社長を連れて,寿司を奢ったのはN2であった。
そして,授業料の納期が目前に迫った社長は,ゼミの教授に頭を下げて授業料を借りたのだった。
教授への言い訳は,『親の生活が苦しくて仕送りしてもらえない』だった。
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