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【5926】

レモン応援プロジェクト

あちちち (2016年05月02日 08時57分)
レモン部屋の皆さん  く、こんにちは


ここ数日はお邪魔しようにもアレやらコレで来れませんでした謝

何やら賑やかな様子だったということで、
ここら辺で僕のエゴ極まりないものを貴トピ応援プロジェクトの一環として掲載してみようと思いますw

ご容赦あれ


他、咲さんをはじめ
先日書き捨てしたしょーもないレスに温かなお出迎えをいただき
感謝申し上げます⌒☆


                            あちちちち

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あちちち (2016年05月11日 08時50分)

第十二話   悪いのは 僕



 「雄一郎の… せいで転勤になるの?」

 美香が涙を拭いながら言った

 「う、うん  そうなんだ…」

 僕は組んだ両手をテーブルに置いて話を続けた

 「うちの会社は毎年10月になると、来年度への転勤希望を問われるんだ
 そこで、もう5年東京で勤務してるからそろそろ地元へ戻してほしい
 そう言ってたんだ」

 
 これは事実だ

 新天地として、東京に住むことは年々楽しさすら覚えてきているものの
 やはり地元への帰巣意識はどこかに残っていた

 が、よりによって毎年提示している希望が今回になって汲み取られるとは。。

 
 誠に皮肉

 そう思えてならなかった


 美香は相変わらず幼子のように泣いている



 重い空気が二人を包み込む

 なぜ地元に戻りたいか?

 そこまでは聞かれなかったし、言うこともなかった

 言えば二人の行く末は明るい未来を見られないだろう
 そう思ったからその先は言えなかった


 「お互いが離れているが故の別れ」

 僕は高校生から付き合っていた麻衣子とのことが
 まだ頭のどこかで悔やんでいたんだろう

 だから地元にさえ戻ることができれば何とかなると思っていた

 地元に戻れば連絡を取って時間、時期、曜日を気にせず話せる
 あの時 僕を裏切る形になってしまった事由が理解できる

 もしかしたら
 また恋人同士に戻れるかもしれない


 そんな漠然とした期待感があったからなのだ
 事実、過去2回に亘って麻衣子とはやり直している

 今までの別れが一過性で済んでいたから、僕は少し楽観的だったのかもしれない


 そういうこともあって10月に転勤の希望を上司から聞かれたときは
 例年より強く主張した
 それが響いたのとしか考えられない

 この転勤の内示は、僕のせいなんだ
 僕が

 悪いんだ
【6057】

RE:レモン応援プロジェクト  評価

あちちち (2016年05月11日 08時49分)

第十三話   サクラサク


 想像していたことだが、それからというもの二人の間で連絡を取るということが
 しだいに少なくっていった

 暦は3月に入り、僕は引っ越しするための部屋の整理や行事に追われ、
 加えて仕事を引き継ぐために定時を過ぎてしまうことが頻繁に起こるようになった



 もう何回目の送別会だろうか
 その日も会社の連中で酒を煽っていた

 ♪〜♪〜♪
 美香からのメールだ

 「今年は桜が早く咲きそうだから、今週末に見に行こう
  場所は上野がいいかな?」


 例年になく暖かい今年は、テレビなどでよく桜前線の話題で盛り上がっていたのを
 僕も知っていた

 不意に上京したときに咲いていた、四ツ谷駅付近にある一本の大きな桜の木を思い出した
 僕は北の町から来たので、桜前線を遡上したかっこうになり当時、四季に対する違和感を抱いていたことが
 鮮明に甦ってきた


 今年は2回桜を見ることになるんだな
 僕は週末に会う約束をするメールを美香に送り、また飲み会の席に戻った



 上野駅に着くと思ったとおり花見客で溢れていた
 皆一様に買い物袋やら敷物、カメラなんかを抱えている

 
 相変わらず東京の花見は田舎とは全然違うなぁ
 と辺りを見渡していると

 「お待たせ!」
 と少し息を切らした美香に声をかけられた

 その瞬間、僕は心を奪われた



 人ごみの雑踏の中で まるでそこだけスポットライトが当たっているかのように
 美香が輝いて見えた


 来ていたのは真っ白なワンピース

 いつだったか僕が
 「好みの服装はねぇ やっぱりワンピかな」

 と言ってたっけ

 それを覚えていたらしい

 そのワンピースと後方に見える薄いピンクの桜とのコラボレーションがまた良い

 「ね? かわいいでしょ これ」
 美香ははにかんだ表情で言った

 「まだちょっと肌寒いけど、上着も持ってきたし
  雄一郎がいつか好きって言ってたからね」

  僕は改めて美香が持つ独特の魅色を感じ取った
 「いいよ! 全然いい」

 僕はそう言って美香の手を握り、上野公園の方向に歩きだした


 さっき会ったときも少し思ったが
 歩きながら横目で見る美香の面持ちは
 ここ数週間会えていなかったとは思わせないくらい晴れ晴れとしていた


 「札幌はいつ頃になると桜が咲くの?」

 公園までの階段を上っている最中に美香が聞いてきた

 「そうだなぁ 今年みたいに早ければゴールデンウィークには咲いてるかな」

 「そっか じゃその時期に私、そっちに会いに行くね」

 「え?」

 僕は歩いていた足を止めた


 「どうしたの?」と首を傾ける美香

 「い、いや 僕は…もうてっきり」



 「私たちなら離れていたって平気よね」

 美香は一層晴れやかな笑顔でそう言った


 僕は 一瞬泣きそうになり
 湧いてくる涙をこらえるのに必死だった
【6056】

RE:レモン応援プロジェクト  評価

あちちち (2016年05月11日 08時48分)

第十四話   想いは離れず


 3月31日

 ついにこの日が来てしまった

 昨夜はいつもの池袋で遊んでから、渋谷区にある寮に二人で帰ってきた

 ほとんど朝方まで時間を惜しむように語り合い、触れ合っていた



 先に起きたのは美香の方だった
 僕が目覚めると、美香は窓から見える景色を眺めていた

 「もうここからの景色は見えないんだねぇ」

 美香は少しうつむきながら言った


 部屋は先日業者が来て 荷物を運んでしまったから見渡すかぎりガランとしている
 
 ベッドだけここで捨てるつもりだったので残っていたが、
 あとは必要最低限のものしかない


 ふとベランダに目をやると
 ひとつの鉢があった

 僕が上京してすぐ近くの花屋で買った”パキラ”の木だ

 幾度か面倒みるのをサボって枯れそうになったが、今日までなんとか生きながらえている
 「あ、その鉢 送れなくて置いといたんだ」

 「あ… これ」
 美香はじっと鉢を見た後に

 「これ もらっちゃおっかな」

 「おぅ いいけど、いるのかい?」

 「うんっ だって雄一郎と何年も一緒だったんでしょ? 私以上に付き合い長いんだもん
  何かわからなくなったら聞くんだ」

 美香はパキラに話しかけるように言った




 それから完成したばかりの大江戸線に乗って
 僕たちは羽田空港を目指した


 黙っているともうじき離れてしまう寂しさに押し潰されそうで…
 少し早いのはお互いわかっていたが



 実家や赴任事務所へのお土産を買い、食事を摂るなどをして搭乗時刻まであと1時間くらいを切ったと頃だろうか

 僕たちはロビーが上から見渡せるベンチに座っていた

 「あれ、飛行機はどこのだっけ?」
 「えーとね、あぁJALね」

 ひとつひとつの会話が心なしかぎこちない
 と、その時
 右にある階段から声が聞こえた

 「あ! いたいた! 美香ちゃんもいるぞ」

 その声の方を向くと

会社の同僚たち数名が勢いよく階段を駆け上がっているところだった



 瞬間
 僕の中でこらえていた熱いものが一気に流れ出た
【6055】

RE:レモン応援プロジェクト  評価

あちちち (2016年05月11日 08時52分)

「あ〜 こいつ 泣いてるぞ!」
 「どれどれ あ!マジだよ」

 口々に茶化す同僚たち


 僕に釣られたのか、美香も笑いながら泣いている

 「うるせぇな この野郎〜 何しに来たんだよ」
 「当然だろうが 門出を祝うためだろ?」

 いつもの飲み仲間で、あの合コンにも行った佐々木先輩が
周りを同調させるように言った

 「もう時間ないだろ さっ 下に降りようぜ」
 嗚咽する僕は、数人に抱えながら搭乗ゲート前まで連れてこられた

  美香は相変わらず笑みを浮かべながら泣いている

  「せーの! いくぞ 3回な!」
  そう佐々木先輩が言ってから
 僕は人混みで溢れる中で宙を舞った

 さらに人生でこれ以上ないくらいの嗚咽が僕を襲う

 「よし、後は記念撮影して帰ろ」


 散々僕と美香の貴重な時間を費やして
 先輩たちは走り去っていった





 残される僕 と 美香

 「あはは、おかげで笑顔になっちゃったね」
 涙を拭きながら美香は言った

 僕はもう言葉が上手く話せないくらいの過呼吸に陥りながら

 「み、美香… あのね あのね」と
 ダダをこねる子供のように人目を憚らず呟いた

 「雄一郎も そんなに泣くんだねぇ また新しい一面を見つけちゃったかな」

 いつもの小悪魔的なニュアンスでそう言うと

 「ほーら もう時間でしょ!!」
 と美香は僕の胸を小突いた

 「う…うん」


 鼻をかもうと紙を探していると

 「また すぐに会えるでしょ」
 と言ってキスをされた


 「このままいると雄一郎の手を離せなくなっちゃうから…行くね」
 そう言って美香は人混みの向こうへ行ってしまった












 動き出した飛行機
 空は僕を送るかのように やけに澄んでいた

 
 窓の外を見てみる
 が、ぼやけてよく見えない

 視界を邪魔している物を拭ってから
 もう一度窓の外を見た



 すると
 
 展望デッキに
 両手を大きく振っている美香が見えた

◆第2部  に続く
【6050】

RE:レモン応援プロジェクト  評価

あちちち (2016年05月10日 10時19分)

第十話   脱 却



 美香ちゃんの視線は僕の全身に向けられていた

 どのくらいの沈黙だっただろうか

 十秒、いや二十秒  もっとあったかもしれない

 
 品定め?

 いやいや そんな視線ではない

 何ていうか…

 僕の体 というか 心の中を見られている、そんな視線だ



 「…他に彼女とか    いそうじゃない?」

 不意にさっき居酒屋行く前に見せた、独特さたっぷりな
 小悪魔的な横目でそう言われた

 「そ、そんなんじゃないよ! ただ…」

 「ただ?」

 「…うん、ただ今日一日会ってて、こう 湧いてくるものがあってさ…」




 「そっか、いいよっ」




 え?



 「えぇ?!」

 僕はあまりにも意外なタイミングで、意外な返答だったので
 思わず出したことがないような声を発してしまった


 「だから〜 いいよって言ったの」

 
 まただ
 また 夜の雑踏に一際映える笑顔を僕は見た

 (あぁ さっきこの笑顔を見てからだな)


 
 今朝新宿で再会してから何となくあった心の中の違和感

 コンサート中もそうだった

 いつもは誰といても自分の好きなことに没頭してるのに。。

 
 居酒屋でも ハッと気づいた自分の必死さ

 最近なかった 女性から小バカにされる感じ…


 

 僕は久しぶりに また 恋というものをしたんだな


 そう思った



 いつものように言葉が上手く出て、きっかけになったのはいいけれど
 一度バイバイした後のあの寂しさがトドメだったのだろう




 22歳の時に一度「恋愛」というものを自分の中から捨ててきたけど
 
 まさかこんな感じで現役復帰するなんて




 でも どこかで気づいてたはずだ

 だから「またね〜」と一度駅に向かおうとしていたのに

 「恋愛なんて、もうまっぴらだ」さえ思っていたのに
 

 あの時、何かに押されるように美香ちゃんに告白した僕は

 きっともう既に

 あのトラウマから解き放れられていたのかもしれない





 美香ちゃんが不思議そうな目で僕を見つめている


 「どうしたの?」

 そう言い終わるかどうかのタイミングで

 






 僕は彼女の唇にキスをした







 「じゃ もう時間ないから、後で連絡するよ」

 そう言って僕は池袋駅まで猛スピードで走った





 
 時折 歓喜の雄たけびをあげて
【6049】

RE:レモン応援プロジェクト  評価

あちちち (2016年05月10日 10時19分)

第十一話   通 告



 それから一か月はまさに楽しい時間そのものだった

 お互い仕事の繁忙期がたまたま過ぎた直後だったのもあり、
 僕たちはほとんど毎日仕事帰りに待ち合わせをした

 上京してからあまり開拓していなかった池袋
 彼女の帰りの便もいいし、専らいろいろと店を変えながら時間を共にした


 あるビル4階のお好み焼き
 肉豆腐がウマい居酒屋
 クーポンが使えるパスタ屋…


 僕は瞬く間に池袋について詳しくなった

 あの立教通りも何往復しただろう



 「じゃあ ここで」
 「うん、またメールするね」

 またいつものようにT字路で軽く口づけをし、お互いの家に向かって歩き出す


 もちろんこの頃には数回家の前まで送ったこともあったのだが
 二人はここで少し話しをしてから別れるのが気に入っていた



 
 そんな二人の気持ちが早くも絶頂に達するかと思った矢先に
 僕は

 通告を受けたんだ




 

 2月…

 今日は金曜日だったこともあったことから
 一緒に映画を観に行こうと約束していた


 そして初めて僕の家、というか寮に泊まりに来る日でもあった

 朝から浮き足立つ僕



 終業前に、突然上司から声をかけられた

 「お〜い 所長がお呼びだぞ」
 「は、はい」

 高木所長は勤務先の理事も兼ねていて、普通の社員から見ると
 雲の上の存在のような人物だ

 が、僕にはよく酒を奢ってくれたり
 自分の昔話を聞かせてくれたり
 よくかわいがってもらっていた


 「また酒の誘いかな…  今日はマズイんだよな」
 僕は所長に言う口実を考えながら部屋のドアをノックした


 「おぅ 雄一郎君 ちょっと話があってな」
 「はい、なんでしょうか」

 僕は”風邪気味”という口実を喉の奥に用意していた

 「うん、他でもないんだが 来春から札幌に転勤になったんだ 君がね」


 …

 …

 …





 約束した映画は週末にしよう

 そう言って早めにレストランに入った僕らは
 歩道に面しているテーブル席に座っていた


 

 美香は大粒の涙を流した

 うなだれていた僕はグイっと水を飲んだ後に言ったんだ



 「僕のせいなんだよ」と
【6036】

RE:レモン応援プロジェクト  評価

あちちち (2016年05月09日 08時58分)

第七話   独りぼっちの夏目漱石


 
 発売するCDがことごとく初登場1位にランクインするGLAYは
 まさに飛ぶ鳥を落とす勢いそのものだ

 このコンサートのチケットもファンクラブに入っている知り合いを通して

 購入したものだが、抽選でやっと取れたものだった

 
 僕たちは既にヒートアップしている会場の二階通路から
 2席並んで座っていた

 「うわ〜 ドキドキするね ずっと立ちっぱなしなのかな」

 美香ちゃんが周りをキョロキョロしながら言った

 「そうじゃないかな ゲリラライブとかはあるけど、こういうコンサートって来たことないんだ

  きっと腕なんか筋肉痛になりそうだよね」

 僕も少し興奮して言った

 

 
 しばらくすると東京ドームの照明が落ちた
 観客一同は盛り上がる


 その刹那 ヒット曲”口唇”とともにボーカルのTERUがステージ中央に現れた

 さらに盛り上がる客席
 それから3曲たて続きに歌われたのだが 僕は美香ちゃんが楽しんでるかどうか
 半分横を気にして歌を聞いていた

 美香ちゃんは大声を出したり 飛び跳ねたりはしないが
 コンサートに観入っている様子だ


 …
 …


 アンコールの2曲が終わり

 僕たちはぞろぞろと帰途につく人ごみの中を、駅方向に歩いていた

 「やっぱり ラストのWinter againがいいよね!
  流行ってた時期を思い出して涙出そうだったもん」

 「あの あいのり の主題歌もいいよ〜」

 
 すっかり前からの顔見知りのように会話が弾む二人

 僕はもちろん、美香ちゃんも両腕がだいぶ疲弊したようだ


 ふと時計を見ると 時刻は21時を過ぎたところだった

 

 少しの静寂が二人を包む

 普通ならこれからご飯を食べて、さらにコンサートの話で
 盛り上がるんだろう


 だが
 僕の財布には 夏目漱石が1人しかいない

 
 僕はとっさに少し先に歩いている美香ちゃんを呼び止め

 こう言った

 「あのさぁ まだもう少し一緒にいたいんだけど
  ちょっと持ちあわせがなくて…
  ご飯おごってくれたり    する?」


 よくもまあこんなことが言えたもんだ 半ばダメもとだったのだろう


 「ははっ  まったく〜 見栄張っちゃって
  だからさっきチケット代払うって言ったでしょ!
  いいよ、それぐらい」

  彼女は夜の光景に一際映える笑顔でそう言った

  「ご、ごめんね あと千円しかなくてさ」

  「いいってば  で、どこ行くの?」

  「近くにたまーに行く居酒屋があるんだ」

  「居酒屋?  …まったくもう」

  
  美香ちゃんは少し小悪魔っぽく横目で僕を見て

  「そこの居酒屋は高くないところでしょうね」
  
  そう言って僕の手を握ってきた
【6035】

RE:レモン応援プロジェクト  評価

あちちち (2016年05月09日 08時57分)

第八話   家までの送り道

 
 高架下近くの居酒屋はいつもように混んでいた
 入ると少々待ち時間あるとのことで、僕たちは待つことにした

 「賑わってるねぇ」

 美香ちゃんは店内を見渡しながら言った

 「ひょっとしたら同じコンサート帰りの客も来てるんじゃないかな」

 少し経った後に僕たちは奥のカウンターの席を案内された
 席に座るまでは店の外からつないでいた手は握りっぱなしだった

 
 それから1時間くらいだろうか
 僕は堰を切ったかのように喋りつづけた

 生い立ち、趣味、好きな食べ物
 勤務先のこと…

 「よく飲んで よく話すねぇ」

 そう美香ちゃんに言われるまで、僕はこの場を楽しんでもらおうという自分の必死さに気がつかなかった

 僕の右隣りで美香ちゃんは頬杖ついて
 こちらをニコニコと眺めている

 「あ、ゴメン つい楽しくなっちゃって  喋り過ぎたね」

 「え、いいよ全然 もっと聞きたいな」

 気づけば店内の客は半分以下になっていた

 必然的に騒音もほとんどない

 「あ、そういえば家は池袋の近くだったよね  まだ時間大丈夫かい?」

 「…うん 今日は土曜日だしね」

 美香ちゃんは時計を見ながら言った

 僕たちはその後以降はお互いのことについて語り合った

 

 「もうこんな時間だ 近くまで送るよ」
 「ありがと〜 でも送ると帰りの電車に乗れなくなるかもよ?」

 「大丈夫、 大丈夫だって」

 少し心配そうに僕を見つめる美香ちゃんに
 不安のカケラも見せないように言う

 「さあ 行こう」


 美香ちゃんの家は池袋から歩いて行けるらしい
 僕は駅について案内されるがままついていった

 さっき手をつないだからか、もう触れたとき感じた
 独特のギクシャクさは無くなっていた


 「ここをね 左に曲がるの」
 
 東京に移り住んでから数年が経っていたが
 池袋はイマイチよく分からない 
 
 僕がいろんな方向へ視線を配っていると
 「ほら ここわかる?」

 顔を左に向けると目の前には大きな建物がそびえている

 「ここ、立教大学だよ 聞いたことぐらいあるでしょ?」

 俄かににイタズラっぽく僕を見ながらそう言ったので
 「バカにすんなよな 知ってるよ、それぐらい」
 ちょっとムッとした表情で言った

 「はははっ かわいい そんな表情もするんだね」

  …すっかり小バカにされているようだ。。


 どうやら歩いてる道は見たまま”立教通り”というらしい

 
 大学の敷地を通りすぎて少し行ったところで
 美香ちゃんは静かに立ち止まった

 「送ってくれてありがとう あとはここをまっすぐ行けば帰れるから」


 『これ以上は…』 僕は咄嗟に感じ取った
 そりゃそうだろう  いきなり家までは教えないよな…

 そこは立教通りの途中で、角に自販機が置いてある
 いわゆる T字路 だ

 美香ちゃんの家はそこから住宅地の方向にあるらしい

 僕は今日来てくれたお礼を言い、今来た道を引き返すことにした

 
 ・・・がこの瞬間に思いついたことがあった
 また会えるだろうか

 また連絡をくれるだろうか


  
 途端に不安というか、寂しくなった


 
 20メートルくらい引き返していただろうか
 180度方向転換し、小走りで美香ちゃんの前に再び立った

 彼女は驚いた表情をしている







 そして僕は、ここで自分でもビックリするようなことを言ったんだ
【6034】

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あちちち (2016年05月09日 08時56分)

第九話   22歳のトラウマ


 高校3年の初冬から縁あって付き合っていた麻衣子と別れたのは
 22歳の夏のことだ

 高校を出て就職した僕は、田舎の札幌と東京という
 俗にいう遠距離恋愛をしていた

 盆、正月はもちろん 約2か月に一度は帰省し
 離れていても会ったときにはどこのカップルにも負けないくらい
 触れ合う… そんな関係が続いていた

 麻衣子が勤めている会社の本社が東京ということもあって
 二人が会うための交通費などは よく出張だとかで工面していたものだ


 お互い両親には付き合っていることも承諾済で
 特に彼女の両親にはお世話になった

 高価なネクタイをもらったり
 実家に泊めさせてもらったり…

 そんな公に認められている二人の仲が

 急に壊れたのはホントにあっけなかった

 
 珍しく5日間ほど連絡が途絶え、僕からの電話も
 「ちょっと疲れているから」と一方的に切られ、 今思えば よくある末期症状だったのだろう


 シビレを切らして家にいつもいるはずの時間に
 麻衣子のPHSを鳴らしてみた

 
 プルルル  プルルル… …
 プルルル  プル…

 切ろうとしたときに 電話に出る音がした

 「あ、もしもし?雄一郎だけど」

 「…お前さぁ いいかげん連絡してくんなよ!」


 知らない男の声が電話の向こうから聞こえてくる

 「は? ていうか何方ですか?」

 「麻衣子はよぉ もう別れてほしいんだとよ!」

 よく理解ができない
 頭の思考回路をフル稼働しても 整理がつかない



 何度か問答を繰り返して

 麻衣子が電話に出た

 「あのね、そういうことなの 今取り込んでるから」

 

 電話は一方的に切れてしまった

 部屋の中で立ち尽くす僕

 「こ、これって。。」

 
 …
 …
 それから1時間くらいは記憶に残っていない
 いや、人間は本能的に嫌な過去の記憶は消し去ってしまうと聞いたことがある

 きっとそうなのだろう

 僕の両拳は真っ赤に染まり、原形をほとんど留めてなかった

 


 その頃からか、僕に異性を好きになるときに
 独特な自己防衛本能が働くようになったのは…

 
 少しでも興味が沸くと つい声をかけ
 
 ある程度一定のラインを超えるようなかわいいコだと

 「付き合っちゃおっか」

 と言葉を安く売る


 だって。。 
 その方が

 

 期待を裏切られたときに負う傷が、浅く済むから


 

 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜



 角に自販機があるT字路の真ん中に立つ二人

 
 僕は美香ちゃんの左肩に手を置いてこう言った

 
 

 
 「ねぇ 僕と付き合おうっか」
【5985】

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あちちち (2016年05月06日 08時50分)

第四話   思わぬ口撃


 「おはよう」

 
 僕の耳の横で声がした

 あわてて起き上がるとそこに亜里沙がいた


 「ごめんね 昨夜はお世話になりました
  今日お昼から用事があるので、これで帰るね」

 「あ、ちょっと」

 そう言い終わるかどうかのタイミングで、亜里沙はドアの向こうに行ってしまった

 
 よく頭の整理がつかず、なんとなく時計を見ると午前8時を過ぎていた

 亜里沙が寝たベッドは、キレイに整頓されている


 ふと横のテーブルに目をやると
 そこには一枚のメモ用紙があった


 「おはよ! 昨日は楽しかったね  また機会あったら飲みに行こうね〜」




 僕は昨日の出来事をトレースしてみた


 交差点…
 横断歩道…

 オシャレなバー
 カラオケ…


  
  !!!

  
 思い出した

 家に着いてから僕は洗面台でずっと吐いていて
 寝室に行くと亜里沙はもう寝てたんだっけ

 それで仕方ないからリビングのソファで横になって…



 あ〜 なんてもったないことをしたんだ

 きっとあの濃いめのスプモー二が効いたんだろう


 数少ないチャンスを物にできなかった後期思春期の僕は
 「チッ」と舌打ちをした


 
 ♪〜♪〜♪〜
 
 不意にメールの着信音がシンと静まりかえった部屋で鳴り響いた

 「あ、そうそう 覚えてるかどうかわからないけど
  合コンは来週以降でいいかな」


  メールは亜里沙からだった



  合コン?

  そんな約束してたっけ



  僕は昨夜から何か夢を見ているような感じになり

  最近少し多忙気味で疲れていたのでベッドに転がり込んだ





 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜


 「そうなの〜  雄一郎の部屋って
  いかにも独り暮らしーみたいな 殺風景っていうか…」

 亜里沙の独演がまだ続いていた


 「え? でもその時はコイツ何かしたりしなかったの?」
 先輩がさらにまくしたてる


 「それがひっどいのよー   吐いちゃって 吐いちゃって」

 
 もういいだろ。。  ここは合コンだぜ


 「い、いや 別にオレの部屋なんてどうでもいいじゃん
  それよりさ…」


 僕は必死に話題を変えてみることにした

 「いいから黙ってて 
  コップなんかに埃かぶってるんだよ〜」


 もうやめてくれ

 僕は恥ずかしい気持ちから、憤りに変わっていく自分に気づいた

 「ちょっとトイレ」

 いいかげんキレて場の空気を汚してしまいそうだったので
 頭を冷やすために席を立った
【5984】

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あちちち (2016年05月06日 08時49分)

第五話   灯台下暗し



 席に戻ると思った通りまだ亜里沙のトークはつづいていた
 いいかげん周りも聞き飽きてきているように見えるのは僕だけだろうか


 僕は ふぅ と息を吐いて
 目の前の飲みかけのビールを飲んだ  

 しばらく口をつけるのを忘れていたんだろう
 真夏の蛇口から出る水道水のように温かった


 とんとん、と不意に肩を叩かれた


 見ると隣に座っていた女の子がこちらを見ている

 「ごめんね? 亜里沙って酔うとストップがきかなくて…」

 
 フワフワした白い服を来たそのコは少し恥ずかしそうにそう言った

 「い、いや いいんだ  場が盛り上がればさ」

 それを開始に 僕はやっと亜里沙の空気から逃れられた気がした


 隣の女の子は”美香”ちゃんというらしい

 田舎に降る雪を思い出させるように色白く、
 また細長い首はまるで鶴のようだ


 「雄一郎〜〜」

 向かえの席からほとんど誰の相手にもされなくった亜里沙が声をかける


 が、僕は聞こえないフリをして美香ちゃんと話し続けた

 彼女も僕より亜里沙に近いのに
 反応はなかった


 さっきのトイレが功を奏したのか、ガラリと雰囲気が変わり
 目を配ると各々がペアになって話し始めている


 「何 ニヤついてるの?」

 はっと我に返った

 幹事という任務を全うした充実感からか
 僕は気味悪く微笑んでいたらしい


 「いやさぁ やっと亜里沙から解放されてね」

 「そうだね、よかったね  あれは…ちょっとね
  あっ ここの時間だいじょぶ?」


 時計を見ると20時を過ぎている

 僕は急いで会計をし、店を出た


 店の外に出ると何やら揉めている


 「だーかーら! もう帰るって!!」

 そう大声で言っているのは亜里沙だ


 どうやら飲み会の後半で、ほとんど誰にも相手にされなかったのが影響したらしい

 「帰るからね!  じゃ」

 そう言って踵を返し駅の方へ行ってしまった
 それに続いて他の3人も後を追う
 


 やれやれ… 勝手な女だ


 あ!

 僕は重大な失念に気づいた


 「ねぇ これ 俺のアドレスだから」

 女性群の一番後ろを歩いていた美香ちゃんに名刺を渡した

 「う、うん ありがとう」


 そう言ってまもなく彼女らは駅の人ごみの中に消えた


 「あー あのコもうちょっとだったのにな」

 後ろにいる連れは口惜しそうにさっきまでの宴を省みていた


 「ちょっと 反省会でもしましょうよ」

 僕は先輩を引き連れ、彼女らが向かった方向と反対の方向に歩きだした
【5983】

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あちちち (2016年05月06日 08時48分)

第六話   初デート


 
 高揚しているのか、約束の15分も前に待ち合わせ場所に着いてしまった

 あの 合コンのようで合コンではなかった宴から2週間後、僕は美香ちゃんを
 いわゆる”デート”に誘った

 口実は「コンサートのチケットがあるから一緒に行こう」というものだった

 元々GLAYのファンの僕は、一度は行ってみたいという願望から 見栄を張ってチケットを2枚購入していた

 当日まで誰も一緒に行く人がいなければ同じ寮に住む同僚に売ればいいと…

 その漠然とした購入理由がこんな形で実を結ぶなんて

 
 約束の時間がきた
 ここ、新宿駅東口は相変わらず週末の混雑さをまざまざと見せつけている



 遠くに美香ちゃんが見えた


 
 僕は彼女に向って手を振る

 するとすぐ気づいてくれたようだ


 「あ、おはよう  けっこう待った?」

 「い、いや 僕も今来たとこ」
 オーソドックスな会話を交わし、僕たちは歌舞伎町方面へ歩きだした


 …
 …

 多少会話はするものの、何というかデート的な会話にはまだならない

 
 そりゃそうだ
 だって、直接会うのは2度目なのだから

 初めて会ってから連絡が来るのを半信半疑で待っていたところ

 思いのほかその日中に来た

 「今日はお疲れさまでした あの後は男性群で飲みなおしたのかな?
  早めの解散になっちゃって亜里沙以外は残念がってたよー」
 と

 それがきっかけで今日まで毎日メールをしていた

 コンサートの誘いも

 「え GLAYのチケットあるの? 絶対行きた〜い」
 という返事で即決だった


 これは

 かなり感触がいいかもな


 僕は信号待ちしながらまたニヤニヤしていた


 ちょうど昼過ぎだったので、僕たちはコマ劇場前にある
 ファーストフード店に入った


 実はというと財布に2千円ちょっとしかないのだ

 給料日直前だから無理もない

 僕は幾ばくかの危機感を携えながら、

 「まぁ なんとかなるだろう」と楽観視していた


 ファーストフード店を出た頃

 財布の中の夏目漱石は1人になっていた

 
 「そろそろ向かわないとね」

 コンサートは17時からだ

 僕たちは東京ドームがある水道橋駅を目指した
【5929】

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あちちち (2016年05月02日 08時59分)

第一話   4対4


 今日は午後からずっとテンションが上がりっぱなしだ
 仕事にもほとんど集中できず、ただ周りに迷惑をかけない程度に働いている

 時計を見ると16:30

 終業は目前

 「あ〜 今日はこのスーツで良かったかな」
 と日が暮れてきた空を見上げながら思った



 会社の同僚らを連れ、待ち合わせの銀座4丁目に予定通りに着く
 今日のお目当ての彼女らはまだ来てないようだ

 「たぶん白いコート来て、ブーツとか履いてるんだよなー」

 「網系のストッキングとかもいいよな」

 先輩らが口々に今日の予想を話している

 「あっ」
 
 後輩が指した方向から、4人の女性が近づいてきた

 「こんばんわー」

 そう口を開いたのが唯一の知り合い亜里沙だ

 「おう お疲れ  店はこの上だから」

 僕は女性群を店へ案内し、後から先輩らも続いた
 互いにかなり品定めをしているようだ

 「いやー 合コンなんて久しぶりだからな! な?」
 
 先輩のその発言で少し空気が冷えたが、この程度の発言はよくするので
 「一応飲み放題にしといたから」
 と慣れたように軽く雰囲気を変えてみる

  男 4人       女 4人


  ワリと自然にミックスして着席した
【5928】

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あちちち (2016年05月02日 08時59分)

第二話  交差点


 酒宴が始まってからちょうど一時間くらい過ぎただろうか
 このくらいまでくると、さっきまで緊張していた面持ちが
 個々によって和らいでくるのが垣間見れる


 この一時間はほとんどマニュアル通りの話しばかりだった

 名前、出身地、血液型など・・・
 その辺の会話の中から、無理やりに共通点を見出し
 ときには面白トークへと発展させていく

 それが今日まで合コンと言われる飲み会だ


 僕は一応この席を設けた張本人であるから、
 ある種幹事役として
 「グラス空いてるよ、次何頼む?」

 「トイレは突き当りを左ね」

 こんな感じで進行の妨げにならない程度に 役割をこなす


 「ちょっと雄一郎!しっかり飲んでるの〜」

 不意に亜里沙が少し紅潮した顔で話しかけてきた

 「お、おう 乗り遅れない程度にな」

 皆一様にこちらを向いたので、視線のやり場に困った

 「この間さぁ 雄一郎の部屋見たんだけど・・」
 「はあ!?」
 数人が一斉に声を発した 

 そりゃそうだ

 ”合コン”という場において一瞬目を丸くするような
 発言が亜里沙から放たれたのだから


 

〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

 亜里沙と出会ったのは10日前のことだ


 会社で行われた師走のよくある飲み会が、思いのほか
 早く終わったので
 僕は有楽町の駅前近くでフラフラと人間観察をしていた

 この時期はやけに賑やかだ

 きっと賞与などで、皆懐に余裕があるんだろう

 陽気とも取れるような人たちで交差点もいっぱいになる


 そんな中、歩行者信号が青だというのに
 横断しない女性を見つけた

 明らかに時間を持て余している

 言ってみればこちらと状況が同じようだ、と感じたときに
 僕は声をかけていた

 「信号・・・ 青だけど渡らないの?」

 僕を見上げる女性

 「ちょっとさ、暇してたんだ 飲みなんか行かない? 東京っていまいちわからなくて」


 いつもの文句が今日はスムーズに出た

 その女性は少しその場でメールを打った後

 「近くにオシャレなバーならあるけど」

 と問いに答えてきた




 しばらくして、僕たちは点滅する信号を駆け足で渡った
【5927】

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あちちち (2016年05月02日 08時58分)

第三話   スプモー二   


 「あたしね ありさっていうの
  アジアの『亜』に 『里』で、さんずいの『沙』ね」

 「ふぅーん」

 「ちょっと〜  名前聞いたらそっちも名乗りなさいよ!」


 やけに勝気な女性だな
 「オレ 雄一郎、オスメスの「雄」で 雄一郎な」
 
「…なんか「オス」って感じだもんね」



 天井に大きな扇風機みたいなものが回っているバーの中の
 少々薄暗いカウンターで二人並んで座っていた


 「実はさ、会社の飲み会が早く終わって暇してたんだ
  そしたら亜里沙…  あ、呼び捨て  でもいい?」

 「いいよ  それで?」

 「あぁ そしたら亜里沙が急に視界に飛び込んできて
 気づいたら声かけてた みたいな」

 「それって、ナンパでしょ?  しかも一人で
 よくするの?」

 「い、いやいや なんとなく こう 勢いっていうか」

 「ふぅーん まっ いいや 飲も!」
 
 さっきもしたのにまた乾杯をした

 静かな店にグラスとグラスがぶつかる
 いい音色が響き渡った

 
 亜里沙は友達との用事がキャンセルされたばかりだったらしく
 いわば僕たちは暇人という同士で出会ったらしい


 しばらくするとラストオーダーということで
 お互い一杯ずつスプモー二を頼んだ

 「ねぇ グイっと飲んじゃお」

 亜里沙が好奇心に目を光らせ言った

 「いいのかい? 酔っても知らないぞ」

 「酔わないもーん」


 二人ともほぼ同時にグラスを空け、店を後にした


 「久々にカラオケ行きたいなぁ〜」

 「いいねぇ 行こ」


 …
 …
 …

 
 カラオケから出てきたときには

 亜里沙は千鳥足になっていた


 カラオケの途中で聞いた話しによると
 家は埼玉県の草加らしい

 ここからは乗り継いで裕に1時間以上はかかる

 「雄一郎の部屋に行っちゃえ〜」

 「おいおい 今日会ったばかりだぞ?」


 もう亜里沙はタクシーを呼んでいた


 すぐにタクシーは捕まった

 25時もとっくに過ぎただろうか



 僕の家の前に着いた
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