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【32】

10年後のクレ●ンしんちゃん(4)

たいちょ。 (2006年09月08日 17時42分)

22 :◆たいちょ。:2006/04/07(金) 01:49:54.03 ID:60VRmiQN0




どうして泣いているのか解らないけれど、なぐさめなくちゃ。
でも、体が動かない。またあの眠気がおそってくる。
起きていなきゃいけないのに。

なんとか目を開けようとしたけれど、ひどく疲れていて。
閉じていく瞳を冷たい台に向ければ、そこに映るのはうすよごれた毛のかたまり。

なんて、みすぼらしくなってしまったんだろう。





24 :◆たいちょ。:2006/04/07(金) 01:50:16.79 ID:60VRmiQN0



ああそうか、僕がこんなになってしまったからなんだ。
だからなんだ。。。

だからしんちゃんは、僕に見向きもしないんだ。
おいしそうじゃないから。
あまそうじゃないから。

僕はもう、わたあめにはなれない。




26 :◆たいちょ。:2006/04/07(金) 01:50:52.84 ID:60VRmiQN0



わたあめ。
ふわふわであまあまの、くものかたまり。

いちど地面に落ちたおかしは、もう食べられないから。
どんなにぽんぽんはたいても、やっぱりおいしそうには見えないよね。

だけど、君はいちど拾っててくれた。
だれかが落として、もういらないって言ったわたあめを。
だから、もういいんだ。




28 :たいちょ。◆TmK8dn3Gxg :2006/04/07(金) 01:51:12.89 ID:60VRmiQN0



何かにびっくりして、僕はまた戻ってきた。

見なれた僕のお家。
いつもの匂い。
少しはだざむい、ゆうやけ空。

口の中がしょっぱい。




     「なんで!!!1!」




いきなり、辺りに大声が響いた。
びりびりとふるえてしまうような、いっぱいの声。

重たい体をひきずって、回り込んで窓からお家の中をのぞきこむ。

しんちゃんのお父さんとお母さん、ひまわりちゃん。
そして、僕の大好きなしんちゃんも。
みんなみんな、泣いていた。


     〜〜つづく〜〜

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【33】

10年後のクレ●ンしんちゃん(5)  評価

たいちょ。 (2006年09月10日 10時38分)


◆たいちょ。:2006/04/07(金) 01:54:02.21 ID:60VRmiQN0



「母ちゃんの行った病院は、ヤブだったに決まってる!! オラが、他の病院に連れてくぞ!!!」
しんちゃんが、ナミダをぼろぼろこぼしながら、怒っている。
ひまわりちゃんも、うつむいたまま顔を上げようとしない。

   「しんのすけ、落ち着け。仕方ないんだ。」

しんちゃんのお父さんが、ビ−ルの入ったコップを
にぎりしめたまま呟いている。

「仕方ないって、父ちゃんは…
  ホントにそれでいいのか!!!???」


     「良いわけないだろ!!!1!」

しんちゃん以上のその大きな声に、だれもなにも言わなくなった。
その静かな中に、しんちゃんのお父さんの低い声が、ゆっくりひびく。




33 :◆たいちょ。:2006/04/07(金) 01:54:26.96 ID:60VRmiQN0



「しんのすけ、良く聞け。いいか、生き物は何時かは死ぬんだ。
 それは、俺たちも同じだ。……もちろん、ひまやお前の母さんもそうだ。
 それが今。その時が、いま、来ただけなんだよ。解ってたことだろう?」

しんちゃんは、なにも言わない。
しんちゃんのお母さんも、続ける。

「あのね、ママが最初ペットを飼うのに反対したのはね、
そう言う意味もあるの。
 しんちゃんに辛い思いをさせたくなかったから…ううん。
 私自身が、そんな辛いお別れをしたくなかったから。
だから、反対してたの。
 でも、もうこうなっちゃった以上、仕方ないでしょう?
 せめて、最期を看取ってあげることが、私たちに出来る一番良い事じゃないの?」


「最期って!!!」


しんちゃんが泣いている。ぼろぼろ泣いている。
手をぎゅっとにぎりしめて。
僕よりもずっと大きくなってしまった手を、ぎゅっとかたく。




34 :◆たいちょ。:2006/04/07(金) 01:55:04.41 ID:60VRmiQN0



僕の体のことは、たぶんだれよりも僕自身が一番知っていて。
でも、いいと思っていた。
このままでもいいって。
だって夢の中はあんなにもあったかくてあまくって。

だからずっとあそこにいても、かまわないと思ってたんだ。
それじゃだめなの?


しんちゃんがこっちを見た。
しばらく目をきょろきょろさせたあと、
僕を見付けて、顔をくしゃくしゃにさせる。


「シロ。♪」


名前を呼ばれた。本当に、ひさしぶりに。

わん。♪♪

なんとか声が出た。本当に小さくて、ガラスごしじゃあ
聞こえないかと思ったけれど。

でも、たしかにしんちゃんには届いた。
しんちゃんが近付いてくる。
窓を開けて、僕に手をのばして。

「大丈夫、オラが、何とかしてやるぞ。」

やっと抱きしめてくれたしんちゃんの胸は、いっぱい
どくどく言っていて、夢の中の何十倍も、とってもあったかかった。


ねえ、よごれたわたあめでも…

途中で言葉を飲んだ。
このまま、しんちゃんにこうされていたかったから…
そうずっと…

ず〜〜っと。。。

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