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【2】

RE:笑え

(%) (2010年02月07日 00時24分)
三頭の象も、いよいよ殺されることになりました。
まず第一に、いつも暴れん坊で、言う事を聞かない、
ジョンから始めることに成りました。
ジョンは、ジャガイモが大好きでした。ですから、毒薬を入れたジャガイモを、
普通のジャガイモに混ぜて、食べさせました。けれども、利口なジョンは、
毒のジャガイモを口まで持っていくのですが、すぐに長い鼻で、
ポンポンと、遠くへ投げ返してしまうのです。
仕方なく、毒薬を身体へ注射することになりました。
馬に使う、とても大きな注射の道具と、太い注射の針が支度されました。
ところが、象の身体は、大変皮が厚くて、
太い針は、どれもぽきぽきと折れてしまうのでした。
仕方なく食べ物を一つもやらずにいますと、可愛そうに、十七日目に死にました。

続いて、トンキーと、ワンリーの番です。
この二頭の象は、いつも、可愛い目をじっと見張った、心の優しい象でした。
ですから、動物園の人たちは、この二頭を、何とかして助けたいと考えて、
遠い仙台の動物園へ、送ることに決めました。
けれども、仙台の町に、爆弾が落とされたらどうなるでしょう。
仙台の街へ、象が暴れ出たら、東京の人たちがいくらごめんなさいと謝っても、
もうだめです。そこで、やはり、上野の動物園で殺すことになりました。
毎日、餌をやらない日が続きました。トンキーも、ワンリーも、
だんだん痩せ細って、元気が無くなっていきました。
時々、見回りに行く人を見ると、よたよたと立ち上がって、
「餌をください。」
「食べ物をください。」
と、細い声を出して、せがむのでした。
そのうちに、げっそりと痩せこけた顔に、あの可愛い目が、
ゴムまりのようにぐっと飛び出してきました。
耳ばかりが物凄く大きく見える哀しい姿に変わりました。

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【3】

RE:笑え  評価

(%) (2010年02月07日 00時25分)

今まで、どの象も、自分の子供のように可愛がってきた象係の人は、
「可哀相に。可愛そうに。」と、
檻の前を行ったり来たりして、うろうろするばかりでした。
すると、トンキーと、ワンリーは、ひょろひょろと身体を起して、
象係の前に進み出たのでした。
お互いにぐったりとした身体を、背中で凭れ合って、芸当を始めたのです。
後ろ足で立ち上がりました。
前足を折り曲げました。
鼻を高く上げて、万歳をしました。
萎び切った身体中の力を振り絞って、芸当を見せるのでした。
芸当をすれば、昔のように、餌がもらえると思ったのです。
トンキーも、ワンリーも、よろけながら一生懸命です。

象係の人は、もう我慢できません。
「ああ、ワンリーや、トンキーや。」
と、餌のある小屋へ飛び込みました。そこから走り出て、水を運びました。
餌を抱えて、象の脚に抱きすがりました。
動物園の人たちは、みんなこれを見て見ない振りをしていました。
園長さんも、唇を噛み締めて、じっと机の上ばかり見つめていました。
象に餌をやってはいけないのです。水を飲ませてはならないのです。
どうしても、この二頭の象を殺さなければならないのです。
けれども、こうして、一日でも長く生かしておけば、戦争も終わって、
助かるのではないかと、どの人も心の中で、神様にお願いをしていました。
けれども、トンキーも、ワンリーも、ついに動けなくなってしまいました。
じっと身体を横にしたまま、動物園の空に流れる雲を見つめているのがやっとでした。
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