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【31】

10年後のクレ●ンしんちゃん(3)

たいちょ。 (2006年09月08日 17時35分)

14 : ◆たいちょ。:2006/04/07(金) 01:46:14.94 ID:60VRmiQN0



僕はしんちゃんを追いかけている。
しんちゃんはいつものあかいシャツときいろいズボン。
小さな手は僕と同じくらい。


シロ、おて
シロ、おまわり
シロ、わたあめ


『ねえしんちゃん。僕はしんちゃんが大好きだよ。』

『オラも、シロのこと、だいすきだぞ。
    シロはオラの、しんゆうだぞ!』



わたあめでいっぱいのせかいは
いつもふわふわでいつもあったかで
いつまでもおいかけっこができる



いつまでも…
いつまでも… 



そうず〜と
ず〜〜っといつまでも。。。




20 :◆たいちょ。:2006/04/07(金) 01:48:48.90 ID:60VRmiQN0



また朝がきた。
でも、その日はいつもと違っていて。
しんちゃんのお母さんが、僕を車に乗せてくれた。

しんちゃんのお母さんの顔は、気のせいか苦しそうだった。

車はまっ白なお家の前で止まって、僕は抱きしめられたまま下ろされる。
そして一回り大きなふくろの中につめられた。
まっくらだ。どうしようか。

昔なら、びっくりしてあばれてしまったかもしれない。
でも今は、そんな力も出ない。

とりあえず丸くなると、体がゆらゆらとゆれた。
それがしばらく続き、次にゆれが収まって、
足もとがひんやりとしてくる。




21 :◆たいちょ。:2006/04/07(金) 01:49:20.46 ID:60VRmiQN0



いきなり辺りがまぶしくなった。
目をぱしぱしさせていると、変なツンとした匂いがする
手につかまれ、持ち上げられる。

いっしゅんだけ体が宙に浮いて、すぐに冷たい台の上に下ろされた。
まっ白い服を着た人が、目の前に立っている。
そばには、しんちゃんのお母さん。

二人が何かを話している。
白い人が、僕の体をべたべた触る。
しんちゃんのお母さんが、泣いている。

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【32】

10年後のクレ●ンしんちゃん(4)  評価

たいちょ。 (2006年09月08日 17時42分)


22 :◆たいちょ。:2006/04/07(金) 01:49:54.03 ID:60VRmiQN0




どうして泣いているのか解らないけれど、なぐさめなくちゃ。
でも、体が動かない。またあの眠気がおそってくる。
起きていなきゃいけないのに。

なんとか目を開けようとしたけれど、ひどく疲れていて。
閉じていく瞳を冷たい台に向ければ、そこに映るのはうすよごれた毛のかたまり。

なんて、みすぼらしくなってしまったんだろう。





24 :◆たいちょ。:2006/04/07(金) 01:50:16.79 ID:60VRmiQN0



ああそうか、僕がこんなになってしまったからなんだ。
だからなんだ。。。

だからしんちゃんは、僕に見向きもしないんだ。
おいしそうじゃないから。
あまそうじゃないから。

僕はもう、わたあめにはなれない。




26 :◆たいちょ。:2006/04/07(金) 01:50:52.84 ID:60VRmiQN0



わたあめ。
ふわふわであまあまの、くものかたまり。

いちど地面に落ちたおかしは、もう食べられないから。
どんなにぽんぽんはたいても、やっぱりおいしそうには見えないよね。

だけど、君はいちど拾っててくれた。
だれかが落として、もういらないって言ったわたあめを。
だから、もういいんだ。




28 :たいちょ。◆TmK8dn3Gxg :2006/04/07(金) 01:51:12.89 ID:60VRmiQN0



何かにびっくりして、僕はまた戻ってきた。

見なれた僕のお家。
いつもの匂い。
少しはだざむい、ゆうやけ空。

口の中がしょっぱい。




     「なんで!!!1!」




いきなり、辺りに大声が響いた。
びりびりとふるえてしまうような、いっぱいの声。

重たい体をひきずって、回り込んで窓からお家の中をのぞきこむ。

しんちゃんのお父さんとお母さん、ひまわりちゃん。
そして、僕の大好きなしんちゃんも。
みんなみんな、泣いていた。


     〜〜つづく〜〜

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