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【36】

鈍感なわたし

ベンガル (2012年12月18日 23時32分)
 妻と付き合っていた頃の話。


 ある日、彼女から「今度の土曜日、パチンコ終わってから会いたい」と連絡があった。


 ・・・「んっ?」


 何か違和感を感じた。


 そうだ、付き合ってから今まで、彼女から「会う約束」をしたことはなかった。


 付き合い始めた当初、私は彼女に、「オレには借金があるから、多分ほとんど会えないと思う」と言った。


 だから彼女は自分から誘うことはせず、いつもずっと「待っていた」のだ。


 何かある・・・


 鈍感な私でもさすがにそれだけはわかった。


 でも一体何だろう。心当たりを片っ端から当たってみるが、全く見当が付かない。


 やましいことは何もない。誕生日でもない。付き合った日は覚えていないが、こんなに肌寒い季節ではなかった。


 「じゃあ一体何だ?」


 結局予想もつかないまま当日を迎え、パチンコも終わった。


 彼女を迎えに行き、ファミレスに行った。いつになく緊張しているのがわかる。


 私は今日のパチンコの話を、彼女は最近のことについて話した。


 ・・・痺れを切らしたのだろうか、彼女は言った。


 「何か言うことないの?」


 全く見当が付かない私は、ちょっとキレ気味にこう言った。


 「オレはやましいことなんか何一つない」


 しばらくの沈黙のあと、彼女は言った。


 「そんなことわかってる。鈍感、バカ」



 聞けばなんてことはない。髪を切ったというのだ。まぁよくある話。


 一気に緊張がほぐれた私は、


 「なんだ、そんなことか、んなもんわかる訳ないだろ、ちょっと切ったぐらいで」


 と笑いながら言った。



 本当に恥ずかしい。女心を全くわかっていなかった。彼女の気持ちなんて考えたこともなかった。頭の中はパチンコでいっぱいだった。



 ・・・と、そんなことを最近思い出した。そして、なぜ「あの時」だったのか気になった。


 色々考え、今やっと、私なりの結論を出すことができた。


 彼女はずっと待っていた。先が全く見えないのに、何年間もずっと「待っていた」のだ。


 不安でいっぱいだったと思う。不安に押しつぶされそうなときが幾度となくあったに違いない。


 だから、自分の『些細な変化』に私が気づくことで、「心は離れていない、ちゃんと気に掛けてくれてる」と実感したかったのだろう。安心したかったのだろう。


 そんな彼女の気持ちを、ひとつも理解してあげられなかった・・・


 実は、あの日の帰りのことや、その後のことは全く覚えていない。


 多分、帰ったあと泣いていたんじゃないかと思う。「もう別れよう」と思ったと思う。


 でも彼女は、そんなことを口に出したことは一度もない。私が気づいてないだけかも知れないが、そんな素振りを見せたこともない。


 私はそれまでに、何人もの女性に愛想を尽かされ続けてきた。


 私の過去の「行い」を振り返れば、それは当然だし、賢明な選択だと思う。


 でも彼女は違った。


 最終的には、親の反対を押し切ってまで私に付いてきてくれた。感謝の言葉もない。


 多分、一生かかっても私にはその理由がわからないのだと思う。



 私が言うのもおこがましいが、


 「皆さん、どうでしょうか?奥さんや彼女の『些細な変化』に、ちゃんと気づいてあげれてますか?」

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【37】

たまには砕けた話でも。  評価

パチ屋の狼 (2012年12月19日 01時00分)

昔の言葉に、

「お金なんか無くったって、愛があれば平気。」

というのがあったのを、ふと思い出しました。

奥さんは、あなたという人間を愛していたからこそ、一生添い遂げる覚悟をしてくれたのだと思います。

「お前100まで、わしゃ99まで。共に白髪の生えるまで。」

アニメ「キテレツ大百科」のOPテーマの一小節に、こんな文句があります。

「何さ、あなたなんて嫌い。女心が解んなきゃ、お嫁さんにはなってあげないぞ。奇妙奇天烈、男って、どこか鈍くて謎めいて。かないっこない夢ばかり見てさ。」
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