| トップページ | P-WORLDとは | ご利用案内 | 会社案内 |
返信元の記事
【162】

コピペ 41−2 彼女の死と彼女の父

真比呂 (2009年03月05日 20時18分)
276 名前: のら猫 投稿日: 02/04/30 06:32 ID:AcfeALCB

私は来るべき時が来たと思い、しばらく悩みましたが、思い切って上
司に掛け合ってみました。東北に転勤させてくれと。答えはNOでした。
しばらく会社と話し合いをしましたが、結局私は会社を退職し、故郷に
戻りました。荷物も売れる物は売り、出来る限り身軽にして彼女が入院
した病院の近くに、小さな部屋を借りました。離職票が出る前に契約し
たので、なんとか部屋を借りることが出来ました。

そして、彼女に会いに行きました。
彼女はかなり驚いていました。そしてひたすら「ごめんなさい」と謝っ
ていました。私は会社をリストラされたから故郷に戻ってきたと言い、
新しい勤め先も近くだから、仕事が終わったら会いに来るよ、とだけ伝
えました。

昼間は彼女の母親が居るので、私は病室に入れてもらえませんでした。
そして週末には父親も面会に来るので、もちろん病室に近寄ることも許
してもらえませんでした。ですので昼間や週末はコンビニでバイトして、
平日の夕方彼女の母親や父親が帰った後、残された僅かな面会時間に会
いに行くという日々を送っていました。

そうする間にも、彼女は目に見えて衰弱して行きました。
柔らかかった手は骨が浮き出て、頬はこけ、足はすっかり衰えてしま
い、ベッドから起きあがるのも難しいくらいでした。

彼女は私が会いに行くとよく泣いていました。元気じゃなくてごめん
なさい。ちゃんと両親に認めてもらえなくて、ごめんなさいと。私は、
そんな事気にしたことはありませんでした。

ほとんど食欲がなく、もっ ぱら点滴と、管で栄養をとる彼女でしたが、
時々大好物のリンゴを持って行き、すり下ろして絞って作ったリンゴジ
ュースをなめさせたりしました。
そのときに見せる笑顔で私は十分幸せでした。
私に出来ることは、そうやって彼女を元気づけることだけでした。
短い面会時間だったので、あまり話も出来ず、ただ彼女の手を握り、
帰り際にキスするくらいしか出来ませんでしたが、私は十分幸せでした。

■ 204件の投稿があります。
21  20  19  18  17  16  15  14  13  12  11  10  9  8  7  6  5  4  3  2  1 
【163】

コピペ 41−3 彼女の死と彼女の父  評価

真比呂 (2009年03月05日 20時19分)

277 名前: のら猫 投稿日: 02/04/30 06:33 ID:AcfeALCB

去年の3月の末くらいだったと思いますが、いつもの様に彼女に会い
に行きましたが、彼女は眠っていました。病室に響く規則正しい電子音
に私も睡魔を感じ、つい1時間程眠り込んでしまいました。

目が覚めるととっくに面会時間は過ぎており、あわてて病室を後にしました。
すると、エレベータの前のベンチに誰かが座っていました。別に気に
せずエレベータのボタンを押そうとした私に、その人が話しかけてきました。

 「話がある。」
 その人は彼女の父親でした。
 「何でしょうか?」
 「君はどうしてここにいる?」
 「あの娘のお見舞いに来ているのです。」
 「そんな事を聞いているのではない。」
 「と言いますと?」
 「会社を辞めて、フリーターになってまで、どうして帰ってきたんだ?」
 「ご存じでしたか。」
 「どうしてそこまで出来るんだ?」
 「どうして?好きな相手の側にいるのに、何か理由が必要ですか?」
 「・・・・。」
 「私の事を認めてくれとは言いません。ですから、せめてご迷惑をお
  かけしない様にと・・・。」
 「分かった。今度からは私たちに気兼ねすることなく、あの子に顔を
  見せてやってくれ。」
 「え?」
 「それではこれで失礼する。」

たしかこんな会話だったと思います。
それからは毎日彼女に会えるようになりました。彼女の母親も面会時
間の終わる1時間前に病院を出て、私が彼女と会える時間には席をはず
してくれるようになりました。
彼女の話によると、父親が母親にそうするように言ったそうです。
そ して、私とのことは彼女の好きにするようにとも言ったそうです。
21  20  19  18  17  16  15  14  13  12  11  10  9  8  7  6  5  4  3  2  1 
メンバー登録 | プロフィール編集 | 利用規約 | 違反投稿を見付けたら