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【5393】 | RE:駄小説 『オレンジ色をした花びら』 あちちち (2009年09月29日 21時21分) |
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外に出てみると、さっきまで降っていた雨が止んでいる 「あ〜〜 良かったね これだと公園に寄れるね」 二人の間では通学に交通機関を使わない僕と、片道2時間くらいかかる彼女との 時間をどうにか共有すべく、駅までの通り道にある小さな公園に寄るのが 一つの決まりごとになっていた 本当だったら彼女一人で駅まで高校専用バスに乗るはずのところを 歩いても30分 自転車で二人乗りすると15分くらいで着く距離だったので 一緒に帰るということで、うまく二人の時間を作ることができていた 公園に着くと、いつものように二人はベンチに腰を掛ける 「どう? 足の具合は」 磯里さんの言葉に僕は自分の足をさすりながら 「うん、順調に回復してると思うよ でも今の時期調子に乗って 動かしちゃ元も子もないからね」と答える その後は定番の今日お互いのクラスであったことなどを交換日記のように話し 「あ、もうこんな時間だね」 僕が言うと二人は同じタイミングでベンチから立ち上がった 公園と歩道の境には色鮮やかな花々が咲き並んでいた 「これ…すっごいキレイな色じゃない?」 磯里さんがそう言いながら一輪の花の匂いを嗅いでいる その花は恐らくユリの一種なのだろうか、数枚の花びらを大きく広げ オレンジ色の輝きを放っていた 「ホントだ キレイだねぇ」 僕は花もそうだけど そうやって磯里さんが花を見つめている姿にも目を奪われた 「でも無暗に採ったりしちゃダメよ?藤沢君ならしそうだから」 彼女はクスっと笑った 左足は相変わらず白いギブスが覆われていたが、自転車を使えるくらいに回復していた 松葉杖を抱える僕と、それの横に添いながら歩く彼女 二人はやがて駅に着いた 「じゃあ」 「うん、じゃあね」 このやり取りも定番になっていきている ほとんど毎日同じようなことの繰り返しだったが、僕は部活にしか精を出していなかったので 毎日が充実していた 彼女を駅まで送った後は家までは下り坂だったので、 自転車の運転に苦労することはない この時間がずーっと流れていてくれたらなぁ、思った瞬間 同じ部活の田澤が言った言葉が脳裏に蘇ってきた “彼女ができてすぐにケガだなんて、まったく幸か不幸かわからないな” 何度も何度も蘇ってきては その言葉を消す 左足が完治するのは、そう先のことではないことを僕はわかっていた |
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【5394】 |
あちちち (2009年09月29日 21時21分) |
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これは 【5393】 に対する返信です。 | |||
≪12≫ 監督からはしばらくは動きたくなるだろうから、 「練習の見学も自粛しなさい」と言われていた 僕は放課後になって勢いよく教室を出ていく連中に羨望の眼差しを投げかけながら ゆっくりと席を立つ 「ふーじさーわ君!!」 その言葉の方に振り向くと、今日も磯里さんが僕の教室に迎えに来ているのが見えた 「あ、あぁ 今すぐ行くよ!」 すぐさま机の上を片付け、後ろに立てかけていた松葉杖を取りに行く 僕の手が杖を掴もうとしたときに、誰かの手が先に伸びてきた 「ほいっ これ」 杖を僕に手渡したのは田澤だった こいつも同じバスケ部で、僕が試合でケガをした後すぐに出場し 大活躍をしたのをチラリと思い出した 「彼女ができてすぐにケガだなんて、まったく幸か不幸かわからないな」 田澤は皮肉たっぷりな表情でそう言った 「うるさいなぁ いいからもう一本の杖も取ってくれよ!」 僕はこのケガが完治する間にポジションを奪われる懸念を感じながら、 両手に松葉杖を携える 「フッ… 早く治せよ」 田澤がそう言ったとき、僕はもう背を向けていた 「ん、いいの?なんか田澤君が話しかけてたみたいだったけど」 磯里さんが僕の顔を覗き込むように言った 「いいの いいの!あいつと話してたら腹が立つから!」 僕はそう言いながら使いこなし始めた杖で歩き出した |
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