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【412】 | ちょっとイイお話♪【特別出張Ver】 たいちょ。 (2006年09月07日 08時47分) |
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384 :名無しさん :04/03/04 01:08 ID:4QgsxWgR 私は吹奏楽部でクラリネットのパートリーダーをやっている。 高校三年で最後の定期演奏会が学校の体育館であった。 私は演奏会のことを両親に話してはいなかった。 当時のうちの家庭事情は悪いほうで、普段の生活でも両親との会話はまったくなかった。 むしろ私は家が嫌いだった。 演奏会当日、少し緊張しながら音出しをする教室に向かった。 教室にはすでに多くの仲間がいて、それぞれ音出しをしていた。 そのほとんどは両親から楽器を買ってもらっていた。 私はおじさんから借りている楽器にマウスピースをさした。 いよいよ本番。 演奏会はポップスステージまで進み、いよいよ私のソロが迫った。 ステージの前まで行くとそこには両親の姿が! 私は驚いてうまくソロに入ることが出来なかった。 今までになかった大失敗。 演奏会が終ってから両親が私の元へ来た。 「一人で吹くとこは残念だったけど、 とても素晴らしい演奏会だったわ」 少し申しわけなさそうな顔で母が言った。 「あんた達がいたからだからね! なんで勝手に来るのよ!」 なんだか母は酔っているかのように、ロレツがまわっていなかった。 385 :名無しさん :04/03/04 01:08 ID:4QgsxWgR 数年後私は東京の大学にいた。 もう楽器はやめた。 あの時の恥ずかしさが忘れられなくて。 ある日講義の合間に友達と話しているとケイタイが鳴った。 番号を知らないはずの父からだった。 「母さんが死んだよ…」 私は電車に揺られ、実家に帰った。 そこにはシワだらけの父と、真っ白な母がいた。 他に誰もいなかった。 母は鼻に脱脂綿を詰められて少し苦しそうに見えた。 「お母さんこんな顔だった?」 東京へ出てから一度も実家には帰っていなかった。 「母さんなぁ、耳の癌だったんよ。 もう聞こえなくなってずいぶん経ってたんよ。 普通は猫の病気らしいんだけど、母さん運悪かったんだなぁ」 じゃあ、あの演奏会のときも聞こえてなかったの? 聞こえてないのにソロ入れなかったのわかったの? 母には聴こえていたんだ。 私達の音楽が聞こえていたんだ。 私は改めて母の顔を見た。 ふと目を横にやると棺には、おじから借りっ放しだった私のクラリネットが添えられていた。 私の耳にはあの時失敗したソロが聴こえている気がした。 私は泣いた。 母の耳元で泣いた。 . |
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