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【126】 |
綺華 (2014年11月21日 20時08分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) レストランのテーブルにつくと、ミヤギは俺の隣に座った。 俺は満足して、早く友人が来ないかとうずうずしてたね。 時計を見る。ちょっと着くのが早すぎたらしい。 友人が来るまでコーヒーでも飲んで待つことにした。 ウェイトレスが来ると、俺は自分の注文を言った後、 ミヤギに向かって、「あんたはいいのか?」と聞いた。 すると彼女は気まずそうな顔をした。 「……あの、最初に言いませんでしたっけ?」 「何を?」と俺は聞きかえした。 「私、あなた以外には見えてないんですよ。 声も聞こえてないし、触っても気付かないんです」 ミヤギはウェイトレスの脇腹を突っついた。たしかに、無反応だった。 |
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【125】 |
綺華 (2014年11月21日 20時07分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) この上なく情けない話なんだけどさ、 友人と会うにあたって、俺にはちょっとした下心があった。 このミヤギって子、見てくれはそれなりなんだよ。 愛想はないけど、ふるまいがかわいいんだ。 その子が俺の後ろをずっとついてくるわけ。 そりゃ、それが監視員の仕事だからな。 でさ、スーパーを歩いてる最中、俺は思ったんだよ。 周りには、俺たち恋人同士に見えてるんじゃないか、って。 むしろそれ以外の何に見えるって言うんだろうな? 俺は、友人がそういった勘違いをしてくれることを期待してたんだ。 かわいい子を連れてることを自慢したかったのさ。 聞いてる方が恥ずかしくなるような動機だろ? だが俺にとっては切実だったんだ。 |
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【124】 |
綺華 (2014年11月21日 20時06分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 割れたグラスを片付けたりなんかしていると、 俺の酔いはまずい感じに醒めてきた。 このまま完全にアルコールが抜ければ、 最悪の精神状態になるのが目に見えてた。 だから俺はある人に電話をかけたんだ。 思うに、これもまた最悪の選択だったな。 俺ってやつは、自分で自分の人生を 悪い方向に転がすことにかけては一流なんだ。 電話の相手は、高校の頃の一番の友人だった。 数か月間一度も連絡をとってなかったのに、 「今から会えないか」なんて無茶なことを言う俺に、 友人は「今からそっちにいくよ」と快く応じてくれた。 その時は、ちょっと救われた気でいたな。 まだ俺のことを気に掛けてくれている人がいるんだ、って思った。 |
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【123】 |
綺華 (2014年11月21日 20時05分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 俺は気を紛らそうとして、テレビをつけた。 番組ではスポーツ特集をやっているらしかった。 まずいと思ってチャンネルを変えようとした頃には、 弟の顔と名前がしっかり画面上に出ていた。 俺は反射的にグラスを投げつけてたね。 テレビが倒れて床に落ち、グラスの破片が飛び散る。 俺はふっと我に返り、ミヤギの方を見る。 彼女は明らかに警戒した様子で俺のことを見ている。 「弟なんだよ」と俺は努めて明るく言ったんだが、 それが逆に本格的にイカれてる人っぽくて笑えたな。 「……弟さんのこと、あんまり好きじゃないんですね?」 ミヤギは軽蔑するような調子で言った。 「あんまりね」と俺はうなずいた。 隣の部屋から壁を殴る音がした。 |
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【122】 |
綺華 (2014年11月21日 20時05分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) さらにミヤギが続けた話によれば、 俺は四十歳でバイク事故を起こすらしい。 その事故で顔の半分を失い、歩けなくなるとか。 かなり気のめいる話だったが、一方で、 それを経験する前に死ねることを考えると、 案外俺はラッキーなのかもしれないと思った。 そうなんだよな、半ば期待する余地があるから、 五十年も無意味な人生を送ったりしちまうんだ。 完全に良いことが何もないって分かってれば、 逆に何の未練もなく逝けるってもんだ。 |
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【121】 |
綺華 (2014年11月21日 20時04分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 「あなたは誰のことも好きになることができず、 そんなあなたを周りの人間が好きになるはずもなく、 相互作用でどんどんあなたと他人の距離は開いて、 最終的に、あなたは世界に愛想を尽かされるんです」 ミヤギはそこでちらっと俺の目を見た。 「『それでも、いつかいいことがあるかもしれない』。 そんな言葉を胸にあなたは五十歳まで生き続けますが、 結局、何一つ得られないまま、一人で死んでいきます。 最後まで、『ここは俺の場所じゃない』って嘆きながら」 「それって悲しいことだよな」と俺は機械的に繰り返した。 でも内心、やっぱりしっかり傷ついていた。 ただ、かなり納得できる話でもあったな。 |
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【120】 |
綺華 (2014年11月21日 20時03分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 俺はそこであることに気付いて、ミヤギに聞いた。 「なあ、あんた、もしかして、この先三十年かけて 俺の人生に起こるはずだったこと、全部知ってんのか?」 「大体は知ってますよ。もう意味のないことですけどね」 「俺に取っちゃ相変わらず有意味だよ。教えてくれ」 「そうですねえ」とミヤギは足を崩しながら言う。 「まず一つ言えるのは、あなたが売った三十年の中で、 あなたが誰かに好かれることはありません」 「それって悲しいことだよな」と俺は他人事のように言った。 |
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【119】 |
綺華 (2014年11月21日 20時02分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) でもミヤギはしらけっぱなしだった。「皆、同じことを言うんですよ」 「どういうことだ?」と俺は聞いた。 「死を前にした人は、皆、極端なことを言うようになるんです。 ……でもですよ、クスノキさん。よーく考えてください」 ミヤギは感情のない目で俺を見すえて言った。 「三十年で何一つ成し遂げられないような人が、 たった三か月で何を変えられるっていうんですか?」 「……やってみなきゃわかんないさ」と俺は言い返したが、 実際、彼女の言ってることは、どこまでも正しいんだよな。 |
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【118】 |
綺華 (2014年11月21日 20時01分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 完全に酔いが回った俺は、なんだか自分が 悲劇の主人公になったような気がしてきた。 で、落胆の反動っていうか、双極性っていうかさ。 急にポジティブになったんだよ。 得体のしれない活力が溢れてきたわけ。 俺はミヤギに向かって、高らかに宣言した。 「俺は、この三十万円で、何かを変えてみせる」 「はあ」とミヤギは興味なさそうに言った。 「たった三十万円だろうと、これは俺の命だ。 三百万や三億より価値のある三十万にしてやる」 俺としては、かなり格好良いことを言ったつもりだったね。 |
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【117】 |
綺華 (2014年11月21日 20時00分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
(その1は、【88】) 家に帰って、ウイスキーをちびちび飲んでいるうちに、 俺は久しぶりに良い気分になってきた。 こういうとき、アルコールってのは偉大だな。 部屋のすみでノートに何かを書いているミヤギに 俺は近づき、「一緒に飲まない?」と誘ってみた。 「結構です。仕事中なので」 ミヤギはノートから顔も上げずに断った。 「それ、何書いてんだ?」と俺は聞いた。 「行動観察記録です。あなたの」 「そうか。いま俺は、酔っ払ってるよ」 「そうでしょうね。そう見えます」 ミヤギはめんどくさそうにうなずいた。 実際めんくせーんだろうな、俺。 |
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