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【53】

社長 30

ゑびす5 (2006年08月30日 21時51分)
 『社長 vol.30』

 それは真夏のある夜の出来事だった。
 我々は強かに酔っていた。
 そして,大学に向かう道を徘徊していた。
 この通りはあまり大きくはないが,バス路線の通りで,ちょっとした街並であった。

 突然,いつもの「いっひっひっひっひ」という奇声が後方から聞こえてきた。
 我々は,いつもの不安を隠しきれなかった。
 この時間にこの場所での笑い声はまずい。
 誰もがそう思っていた。
 後ろを振り向くと,社長が電柱に立ててあった看板に蹴りを入れていた。
 「この店の看板は弱いですね。すぐに折れちゃいましたよ。いっひっひっひ」
 「ああ,たいした悪いことはしていなかったんだ」と我々は安堵の表情を浮かべた。
 「どうですか。先輩。先輩達もこの違法な広告に蹴りを入れてやりましょうよ」
 「いっひっひっひっひ」
 
 我々はちょっと躊躇した。
 が,真夜中である。
 酒の勢いもある。
 もう,全員がいたるところにある立て看板に蹴りを入れた。

 その時である。
 後方からスピーカーを通した声が響いた。
 「そこの酔っ払い! 何をしている!」
 「やばい。警察だ」
 我々は誰もがそう思った。
 全員が一目散に逃げようとした。
 しかし,後ろを振り向くと・・・

 不遜にも社長はその車に立ちはだかっていたのである。
 さすがは社長。
 警察権力ごときに恐れを抱かないのである。
 しかし,その車は警察ではなかった。
 我々のゼミの先輩だったのである。
 我々は警察のご厄介になることは避けられた。
 その先輩は車にマイク・スピーカーを付けていて,我々をからかったのである。
 
 凛々しい社長の姿を見た我々は,ほんの少しだけ社長を見直した。

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【57】

へぇ〜  評価

Tom (2006年09月09日 19時43分)

でも後ろ暗いことがなければ別に警察なんて怖くないのでは…。(微笑)

以前、友人の山さんと名古屋に行ったときにドンキホーテの近くにメタル系のあやしいステッカーのチラシが貼ってあり、山さんが『こんなところに貼ってあるのは違法行為だ。』と言ったため私が冗談で「南斗水鳥拳。」と言って指先で破ろうとしたら山さんが『いくらなんでも破れないでしょう。』と言うと同時ぐらいに真っ二つに破れました…。(微笑)
【54】

社長 31  評価

ゑびす5 (2006年09月08日 17時32分)

 『社長 vol.31』

 実際,警察権力に恐れをなさぬ社長の姿を確認できた出来事があった。
 それは,社長の住む寮から友人のNのところに行った時のことである。
 時間帯は夜の10時頃。
 前回に書いた大学の通りでの出来事である。

 社長はその頃スクーターを持っていた。
 勿論只で手に入れたものだ。
 寮の先輩が卒業するときに社長に残していってくれた代物である。
 大体,金の無い社長がスクーターを買えるわけは無いのである。
 それでなくたって借金まみれなのだから。

 俺と社長は,スクーターに違法な二人乗りをしてNのところに向かった。
 社長が運転をし,俺はその後ろに乗った。
 そして,Nのアパートが目前になったところで,
 「そこのバイク,止まりなさい。そこのバイク,止まりなさい」
 とスピーカーを通した声がした。
 そう。日本の治安を守るポリスメンたちであった。
 そのまま,俺と社長は近くの交番まで連れて行かれた。
 交番の中で取調べが行われた。
 俺は初めての警察のご厄介に身震いがした。
 俺は只,親鳥と逸れたヒナのように震え,縮こまっていた。

 (ポリスマン) 「はい。免許証見せて」
 (社長)    「無い」
 (ポ)     「どういうこと,無免許?」
 (社)     「免許証無くした」
 (ポ)     「いつ無くしたの?」
 (社)     「忘れた」
 (ポ)     「住所,名前は?」
 (社)     「A市K町○丁目,『つきがおか寮』○○号室。○○○○(社長の本名)」
 (ポ)     「寮ってことはA大学?」
 (社)     「そう」
 (ポ)     「『つきがおか』の『つき』ってどんな字?」
 (社)     「『築山(つきやま)』の『築(つき)』」
 (ポ)     「ん? どんな字だっけ?」
 (恐る恐る俺) 「『建築』の『築』です」
 (ポ)     「ああ,なるほど」

 どこまでも無愛想に権力に歯向かう態度を振舞う社長。
 そして,この場を逃れるために卑屈になってる俺。
 正に月とすっぽんである。

 青切符を切られて,ちょっと説諭を受けて我々は解放された。
 「O先輩。警察なんて馬鹿だから,あんな丁寧に教えてやる必要は無いんですよ」
 「でも,やっぱり警察だし・・・」
 「大体あいつの肩には星が一つしか付いてなかったじゃないですか。下っ端ですよ。下っ端」
 「『築山』の『築』が分からないなんて馬鹿の証拠ですよ。いっひっひっひ」

 器の違いを見せ付けられた俺だった。
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