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【4614】 | RE:駄小説 『オレンジ色をした花びら』 あちちち (2009年09月08日 12時00分) |
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≪10≫ 彼女はなんとも表現のし難い、愛おしい微笑みを僕に向けている 僕が告白してからどのくらいの時間が過ぎたのだろうか 1分…いや 5分…… もっと経っていたのかもしれない 余計な言葉は妙な切迫さに捉えられるだろうと、僕はただ 彼女の唇が動くことを待っていた また太陽が彼女の背中から現れたとき 再度表情が見辛くなってしまったが 確かに彼女は言ったんだ 「いろいろね、聞きたいこともあるけど… … いいよっ」 この瞬間、僕の頭の中に今まで過ごした磯里さんとの記憶が蘇ってきた 初めて交わした会話 文化祭で一緒に絵具で遊んでいたとき 自転車置き場での挨拶 そして、クラス替えが決まったときの彼女の涙。。。 すべての思い出が今、この場面のために用意されていたんだな 僕は嬉しくて飛び上りそうな衝動をなんとか堪え 「ありがとう」 とだけなんとか言えた 数分前まで友達同士だった二人は 今この場をもって恋人同士になれたのだ それが例え第三者に促されようとも 結果オーライ 僕のハイスクール初っ端の告白は、見事「大成功」ということになった 「せっかく藤沢君が告白してくれて、付き合うことになったばかりなのにね でも、もう最終バスの時間が・・・」 互いが次に出す言葉を選んでいる中 磯里さんは教室に掛けられている時計に目をやりながら、そう切り出した 「あ、あぁ そうだね 遠いもんね、家」 僕もその歩調に合わせる 彼女の自宅は前から知っていたけれど、 片道2時間近くかかる遠く離れたところにあった それなのに他の生徒より比べると、遥かに早い時間に登校してきていた まぁ 優等生たる由縁だろう 僕は少し汗ばんだ手をTシャツで拭き、その手を彼女に差し出した 「玄関まで送ってくよ」 彼女は少し戸惑った様子だったが、すぐに僕の手を握ってきた |
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【4889】 |
あちちち (2009年09月15日 11時56分) |
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これは 【4614】 に対する返信です。 | |||
≪11≫ 「ごめん! 5分過ぎちゃったねっ 掃除がなかなか終わらなくてさ」 A組教室の外で待っていた磯里さんに、僕は頭を掻きながらそう近づいた 「ちゃんとキレイに掃除できたの? 藤沢君ったら誤魔化しそうだからね」 彼女は僕を試すように言った 「ちゃんとやってきたよ! 女子がうるさいしさぁ」 きっと僕の目はこの時、斜め上の方向を見ていただろう いつも人に対して誤魔化したり、冗談を言ったときに出る悪い癖の一つだ 彼女はクスっと笑って「じゃ 帰ろ」と僕の右腕に絡んできた 「まぁ その足じゃあ 掃除が遅くなってもしょうがないよね」 そう付け加えて言うと、またクスっとした笑いがこぼれた あれは僕がタカに告白をした週末の出来事だった 春季リーグ戦の会場に来ていた僕は、下馬評通り接戦になっていた 対 東高校との試合に手に汗を握る 前半を終え、スコアは42−39でかろうじてウチの高校が勝っていた いつもクールで確実なプレイで定評のある小山内先輩が、その日5本目となる 3Pシュートを外したときに 僕の出番は訪れた 「よし、行ってこい!!」 監督である南場先生の手が、僕の尻を勢いよく叩く ウォームアップもしていなかったが、出場して間もなくボールが回ってきた 3Pラインより少し離れたところから、 相手のマークが付くのを少し遅れたことを瞬時に悟った僕は リングに向かってシュートを放った シュパ! 「いいぞ いいぞ!藤沢! いいぞ いいぞ!藤沢! 」 チームのベンチから、僕の名前が連呼される バスケットボールはスポーツの中でも特に攻守の切り替えが早い種目なので 得点を決めた余韻に浸れることは少ない 僕もすぐさま小山内先輩がマークしていた背番号6番に密着しようと 相手に近づいた その時・・・・ サイドステップをしていた左足の足首から下を捻ってしまった グニャリ 正にこの言葉通りの感覚 捻挫は何度も経験したことはあったが、今までにない痛みが僕を襲う 僕がコートに突っ伏せたままでいると、審判が笛を鳴らしながら近寄ってきた 「レフェリータイム!!」 グレーの制服を着た審判がそう言うと、ベンチに向かって即座に交代を促した 出場して わずか1分後出来事だった その後、病院に行くと 「足首の靭帯損傷ですね、松葉杖が必要でしょう」 医者はレントゲンの写真を見ながら、そっけなく言った 磯里さんは靴を履き替えるときも ドアを開けるときも 僕を気遣って手を貸してくれていた 「すぐ良くなるといいね」 彼女はそう言ってニッコリ微笑む 一旦斜め上を見た後、僕も笑顔で答えた |
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