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【3758】 | RE:駄小説 『オレンジ色をした花びら』 あちちち (2009年08月25日 19時42分) |
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≪6≫ 「…来てくれたんだぁ」 エリは半分作ったような笑顔でそう口を開いた 「うん で、話しあるんだろ? 何?」 「…早いね。 もっと”最近元気してるか”とか言ってくれてもいいのになぁ」 エリは口を尖らせている だいたいこういう態度をするときは、決まって本心とは反対なことを考えている 付き合っていた頃も、『街に買い物に行きたい』と言い出したことがあった 僕が部活があるから週末は行けない、と断ると口を尖らせ 「嘘ウソ! ちょっと言ってみただけだよ!」 と勝ち気なところも見せているつもりでも 僕にはエリの心情がよくわかっていた 「別に〜 こうして改まって言うことじゃないんだけど〜・・・」 「・・・だけど、 何?」 「・・・だけど〜 あたしね? 彼氏できたんだ」 「…ふぅ〜ん、 良かったっしょ 相手は何組のヤツ?」 「うぅん うちのガッコじゃないの」 「・・・・・そ、そっか」 「だからね、藤沢君も 早く磯里さんに告白したら?」 エリは唐突に、今一番僕が意識するその名前を切り出してきた 「な、何言ってんだよっ 僕は僕のタイミングで図ってるんだから」 僕は少しうろたえながらそう答える その仕草を見てエリの悪戯心に火が点いたのか、 「いっそのこと、あたしが取り入ってみようか?」 そう畳み掛けてくきた 「いいってば! 話しは終わりだろ? じゃあ僕 体育館行きたいから!」 踵を返そうとする僕に、エリは僕の右手を掴んでくる 「待ってよ、 あたしが呼び出したんだから そっちから先に行っちゃわないでよ あたしはあたしで楽しくやってくから、藤沢君はちゃんと頑張ってね!」 エリは珍しく真顔でまっすぐ僕を見つめて言った そして 「じゃね・・・」と言うと 顔を両手で覆って講堂から出て行ってしまった 「なんだよ 手紙まで忍ばせといて、彼氏ができただけの報告かよ」 僕はしばらく講堂の真ん中で突っ立って 今あったことを思い直していたが、いつもの早い気持ちの方向転換をして 何事もなかったように教室へと戻った 時刻はもう昼休みの終わりを告げている 「よぉ 今日はバスケに来なかったな」 そう田澤に声をかけられたが、僕は窓から見える新緑を眺めていた |
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【4318】 |
あちちち (2009年09月01日 11時50分) |
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これは 【3758】 に対する返信です。 | |||
≪7≫ 毎朝欠かさず見る朝のテレビ番組を、今日は寝坊して見逃してしまっていた 朝食を手短かに済ませ、家を出て自転車に跨(またが)る 窓から母親が顔を出していた 「そういえば今日の占いは、あんた星座1位だったよ!」 その声を背中で聞き、僕はサドルに座らず自転車をこぎ始めた 寝坊といっても学校に遅刻するぐらいの時間ではなく 朝練の時刻に遅れる寝坊だった 着替えを済ませ体育館に入ると、案の定女バスの部員らが先入りしている 「おぅ 今日は遅いんだな!」 女バス顧問の清水先生は、してやったりの顔でそう言った 僕はほとんど毎日1番に体育館に来ていたので 脇のゴールではなく、2個しかないオールコート仕様の片方のゴールを いつも占拠していた それは市内でも強豪で通っている女バスと、弱小男バスとの いわば暗黙のルールであり おいしいゴールを先取りすることで、 大勢にも負けず僕はいつもそこで練習できていた 僕は優越感に浸る清水先生の視線を尻目に 端っこの余ってるゴールに向かい、ボールを放り投げてみた …なんとこれが気持ちのいい音を立ててスパっとゴールに吸い込まれる (今日はツイてるな、そういえば占いも良かったんだっけ) その後も面白いようにアウトサイドのシュートが次々と決まっていく 手首の感覚が抜群だ 膝の使い方も左右偏らない 結局この朝練で僕は、自己新記録となる3Pシュートを11本連続決めることができたのだった (な、なんかいいぞ 今日のオレ・・・) この原因不明な快進撃は、放課後までその勢いを止めなかった |
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