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【28】

社長 16

SBX (2006年05月14日 14時26分)
 『社長 vol.16』

 1985年4月,そんな社長も大学を卒業し,とある中学校へ赴任して行った。
 そう,彼は教師になったのである。
 こんな彼を採用したのは,北海道教育委員会である。
 おろかなお役所仕事である。
 面接で,彼の本質の一端でも見出すことはできなかったのであろうか?
 やはり,講釈垂れるのがうまい社長の方が一枚上手だったのだろう。
 面接官を責めるのは忍びない。

 彼は晴れてR町へ赴任して行った。
 R町は漁師町である。
 社長のずぼらな性格は,きっぷのいい男と勘違いされ,漁師の父ちゃんたちのハートをがっちりと掴んだらしく,PTAの飲み会では,甚くもてたらしい。
 「こっちの町では,PTAの飲み会でお金を払わないんですよ。いっひっひっひ。馬○な父ちゃんたちがみんな払ってくれるんですよ。いっひっひっひっひ。」
 電話の彼の口調はいつにも増して明るかった。
 それはそうである。
 彼は,「ただ」が大好きなのである。
 借金も「ただ」で貰ったお金と思い込んでいる男である。
 しかし,その何倍もの負債を背負い込むことになる破目になるとは,社長とて,思いつきだにしなかったのである。

 先ほども言ったようにR町は漁師町である。
 漁師はみんな,普通の船の他に「特攻船」を持っている。
 「特攻船」とは・・・違法に他国の領海内に入り,ささっと密漁をしては,疾風の如く逃げ出せる突拍子もないスピードを持った船のことである。
 そんな父親を持った子供たちを相手に教師を行う社長は哀れだ・・・
 そう,彼も他国のようにやられたのである。
 陸の上の「特攻船」に・・・
 
 ある日,彼は部活の関係で生徒たちを車に乗せた。
 そして,エンジンを掛けたまま書類を取りに学校内に戻った。
 その時,DQNな親を持つDQNな生徒が車を動かし,そのまま学校に特攻してしまった。
 社長のHONDAシビックは大破した。
 社長は一瞬にして600000円を失った。
 数回の飲み会代が600000円掛かったのも同様になってしまった。

 数日後,社長は新たに借金をしてまた,中古のHONDAシビックを買った。
 PTAの飲み会はその後も「ただ」だったらしい・・・

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【29】

社長 17  評価

SBX (2006年05月14日 14時27分)

 『社長 vol.17』

 DQNな学校に勤務する社長。
 それでも。それなりに楽しくやっていたみたいである。
 そこでは,『社長』とは呼ばれていなかった。
 そうである。新しい渾名が付いたのである。

 それは6月下旬の頃のことである。
 社長は修学旅行の引率に着いていった。
 修学旅行の行き先は札幌方面だった。
 R町は道東に位置するため,修学旅行先は毎年札幌だった。
 もちろん社長は喜んで引率した。
 大好きなススキノに近づくことができるのであるから,進んで引率になった。
 普通は嫌がる。
 やはり社長である。

 修学旅行一行は無事見学を終え,ホテルに到着した。
 社長はススキノでの巡回補導に向けて,臨戦態勢を整えるべく風呂に入ることにした。
 しかし,問題が一つあった。
 ススキノ巡回の時間に間に合わせるには,生徒と一緒に風呂に入るしか,入浴時間が無い。
 彼は逡巡した。
 しかし,どう考えても身体的欠陥を生徒から隠すよりも欲望が優先であった。
 生徒と風呂に入るも止む無し。
 社長は不本意ながらも風呂に入る決意をした。
 
 脱衣所で,社長は何気なくタオルを腰に巻いた。
 自然な流れである。
 しかし,社長の周りにはいたずら好きで人の弱みを見つけるのが大好きな厨房がうようよいる。
 当然の如く社長のタオルは毟り取られた。
 毟り取られたタオルに隠れていたのは,社長の愛らしい方形である。

 厨房は一斉に囃し立てた。
 「○○は,方形だ〜!」
 ススキノに行きたいがために厨房から『方形』呼ばわりされてしまった。
 そして,中の一人がこう叫んだ。
 「形がシューマイだ〜!!!」

 そう,社長はこの日から渾名が「シューマイ」になった。
 そして,絶望に打ちひしがれた社長はその日は,ススキノに行かなかった。
 今でも,R町では,「シューマイ」と言えば,社長のことを表しているらしい。
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