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【3025】 | のほさま… 咲はお待ち申しておりました 咲(サキ)SAKI (2012年06月19日 23時52分) |
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―――― 横殴りの風雨、ずぶ濡れになった咲が家に戻る ―――― (咲) あなた、今、帰りました… 遅くなりました…もう凄い雨と風で大変でした。 (弾丸)それは大変だった、これで拭くがええと。風邪引いたらあかんよって。 (弾丸)そういえば・・・客人が見えとっと。 何でも…虎小政とかいいよったやけど… あれどう見てものほほんむらの親分の身内 やと思うんやが。立ち居振る舞いがそっくりなんや。 (咲) そ…そんなこと…あるはずないです、のほさんはほんの1ヶ月前から 暫く戦に出るうゆうて出たきりですよって。 (咲) のほさんのお身内はんが…? あの方、確か身寄りは無いはずです。おかしいです。それ… ひょっとしたら…? (弾丸)俺もそう思ったきい。そやからもうちっとゆっくりしてもらうようこぱんだに最高の お茶を煎れさせて様子見ぃをしてたんやが。ん〜や、あれは間違いない。のほさんやが! あの貫禄… あの風格… ん〜や!間違いねえ! (咲) 咲のこと…覚えてくれてるでしょうか? 咲に逢いに来てくれたんでしょうか? その客人様は何か言ってませんでしたか? (弾丸)咲姐さんはいまへんかぁ、言うてこぱんだに聞いてたみたいやったですが。 (咲) そ、それだけなんですの? 何か伝言とか文はお預かりしてませんの? (こぱんだ)咲様、これをお預かりしております。(と文を渡す) (咲) や、やっぱり… ――――一文を読んだ咲は、慌てて傘も持たず家を飛び出し畦道を駆け出していった―――― (つづく) |
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【3035】 |
虎小政 (2012年06月20日 21時11分) |
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これは 【3025】 に対する返信です。 | |||
――遠雷。 墨を掃いたような雲が西から東へ急ぐ。嵐は峠を越えていた―― ぬかるんだ畦道で足をとられそうになる咲。思わず胸元に忍ばせた付文に手をあてる 『咲姐さん 御別れを告げてからまだ一月余りですが、やつがれにとっては二年も三年もの長い月日に感じております。 寄せ場落ちも覚悟の喧嘩(でいり)の旅にでましたが、貸元さんへの祝い口上だけは、と寄らせていただきました。 お恥ずかしい話ですが、今でもあの日、絡ませた白い柔らかな指の感触にドスの先がにぶります。 どう、肩肘張ったところで所詮、あっしら渡世人は日蔭者。 逝きつく先は格子の中か無縁仏の石の下、でござんす。 しかし、どんな末路になろうとも咲さん、あんたの華の美しさは、あっしが見てます。知ってます。 野歩本無頼』 嵐が去り、黄昏の光が雨を包んでいる。咲の眼が雨に煙る人影を見つける。 (咲)「もし、旅のお方・・・」 足を止め、ゆっくりと振り返る虎小政。雨雫がおちる笠を静かに持ち上げる (咲)「あなたは、もしや、のほ・・・」 (小政、伏せ眼がちに)「姐さん、生憎ですがお人違いのようです」 (咲)「いえ、その声、やっぱり・・私です。咲です」 (小)「おっと、あっしの名は虎小政。道中、急ぎ旅のもんでござんす」 (咲)「虎小政さんなら、赤加速の貸元さんにお寄りになった方かと・・・」 (小)「へい、その通りで」 (咲)「ならば、私宛に付文を置いていかれた方では・・」 (小)「手紙なら、あっしの一家内の叔父貴のことづてでして」 (咲)「叔父貴さん・・・?」 虎小政、路傍に寄り、咲に脊を向ける (小)「咲さん、でしたね・・・ご覧なせえ。おとといからの雨であぜのせせらぎもまるで川のようだ。叔父貴が言ってました。渡世稼業にとっちゃ売れてる貸元さんほど清濁激流。一月はおろか、十日も足を運ばなきゃ、のれんも看板も草木同然ってね」 (咲)「・・・・」 (小)「あっしは今から故郷の安芸へ帰ります。叔父貴には姐さんにお会いしたこと、必ず伝えます」 咲、何かを言おうとするが、言葉にならない。 小政、懐を探って――「これ、厳島神社のお守りです。良かったら身につけておくんなせぇ」 小政の手が咲の指先に触れる。その感触を振り払うように 「弾丸さんと行く末、睦まじく。 では、御免なすって」 踵を返し、街道を逝く虎小政。後ろ姿が雨に溶ける。 涙と雨でほほを濡らす咲。乱れたほつれ毛を直しもせずにお守りを握りしめる。 その美しい横顔に ――――エンドマーク―――― 咲姐さん、勝手に引き取ってしまいました。 ご無礼、お許しください。 |
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