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【21】

クリスマス 3

(%) (2010年02月18日 08時35分)
フォークなんてありません。
手で持って、がぶりと食らいつきます。
口の中に、何やら、ベタッとした甘さが広がりました。
もちろん、生クリームではありません。
安価なバタークリームでした。
それが、固まって口の中でもなかなか溶けません。

どうお世辞を言おうにも、美味しいとは思えない代物でした。
全員が口に含んで、とうとう黙り込んでしまいました。
それでも、誰一人「まずい」
とは口にしませんでした。

それは、
K村君の気持ちをわかっていたからです。

クリスマスの日に、仲間の前で、
ちょっとだけでもいいからいい格好をしてみたい。

そのために、きっとお母さんに無理を言って、ケーキを買ってもらった。
お母さんは、息子のためにも相当に思い切って買ったのでしょう。
先生からは、いつも冷たくされているけれど、
一緒に遊んでくれる仲間がいる。
その仲間に、ほんのちょっとだけでもいいから、お礼がしたい。

それは、いつも一緒にいたから、
何も言わなくてもわかるのです。

誰かが言いました。

 「公園行こう」

すると、また、誰かが言いました。

 「野球やろう」
 「いこう、いこう」

K村君の表情も急に明るくなりました。

 「僕のバット、持ってくよ!」
 「おう、貸しくれよな!」
 「うん♪」

実は、そのケーキをどうしたか覚えていません。
最後まで残さず食べたのか。
そのまま置いて公園に出かけたのか。

でも、「公園行こう」
の一言で、気まずい雰囲気が、
パッと明るくなったことははっきりと覚えています。

まだ、9歳か10歳の子供でしたが、
大切なものが何なのか、みんな知っていました。

物は溢れていませんでしたが、
心は豊かでした。

その公園は、少し整備されてキレイになりましたが、
今でも子供たちの遊び場になっています。
K村君の住んでいた家は、今ではコンビニが建ち、
24時間煌々と灯りが点いています。

クリスマスが来るたび、K村君のことを思い出します。
彼はこの聖夜の星の下、どこで何をしているのかな。

間違いないのは、私と同じ、
いいオジサンになっていることです。

メリー・クリスマス♪

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RE:クリスマス 3  評価

賭博堕天録アカギ (2010年02月18日 16時16分)

いい話を有難う。

メリークリスマス♪
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