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【425】 |
さオ (2017年06月19日 19時41分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
「ホームレスにギター教えてもらった思い出」 ジジイは俺の涙に気付いていたのか気付かなかったか。まあ気付いていただろうな。それでも話を続けた。 ジジイ「酷かったのはよしのだった。あいつは息子の名前をただ呼ぶのみ。見てられなかったわ」 ジジイ「…それでも俺は仕事をした。息子を忘れたかったんだろう」 ジジイ「それからだんだんよしのも立ち直った。戦争後の日本を支えた二人だからな。やわじゃあない」 ジジイ「時代は俺らを置き去りに進んだ。その間も多くの生徒から慕われた。俺は幸せじゃった」 泣き続ける俺。なんてジジイに声をかけよう。そんなこと思えなかった。ただジジイに同情した。 ジジイ「よしのが還暦になった年よしのは病気になった。もう助からん。そう言われた」 俺「…は?」 ジジイ「よしのは余命半年と言われた。今から思えばあの医者はヤブじゃな」 ジジイは笑った。 |
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【424】 |
さオ (2017年06月19日 19時41分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
「ホームレスにギター教えてもらった思い出」 ジジイ「よしのに俺はよくギターを聞かせた。ブルースじゃあねえ。イーグルスとかドゥービーとかだ」 イーグルスもドゥービー(ブラザース)もほとんど知らなかった。 でも今なら…なるたけ明るい、気さくな音楽を届けようとしていたのが伝わる。 ジジイ「あいつはスタンド・バイ・ミーをよく歌えと言った。あげな簡単なやついくらでも聞かすわw」 笑ってはいるが、もはやジジイも、限界だった。 ジジイ「よしのは…よしのは余命半年ながら3年も生きた。俺が還暦の誕生日、あいつは死んだ」 ジジイは泣いていた。俺も泣いていた。浅い湯船に湯を増やすかの如く涙は流れた。止まる気配もない。止める気も…無かった。 ジジイ「…すまんな。こんな…」 俺「いいから…続けろ」 ジジイ「ふん!」 手で顔を拭った。ジジイはやっぱり若く見えた。 |
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【423】 |
さオ (2017年06月19日 19時40分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
「ホームレスにギター教えてもらった思い出」 ジジイ「周りも良くしてくれた。特に生徒は花束をよくくれた」 ジジイ「でももう…そこにはおれんかったわ」 ジジイ「それで…ホームレスや」 俺「おかしいだろ。別にホームレスなる必要ないじゃろ」 ジジイ「…よしのはほとんど東京から動いたことが無かった。だから俺は使命を感じたんじゃ」 ここで使命という言葉を使ったのをよく覚えている。もう12年も前なのになw ジジイ「俺はよしのに日本を見せるんじゃ」 ジジイは涙を流しながら笑った。俺は少しおかしくて、笑った。 俺「あんなに叩き付けて弾いてええんか?」 ジジイ「アホ、あれは音楽じゃ。しゃあないわ」 俺「…そうか」 言い返しはしない。ジジイがそういうならそうなのだ。 |
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【422】 |
さオ (2017年06月19日 19時39分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
「ホームレスにギター教えてもらった思い出」 ジジイ「…そうだ」 ジジイはもう泣いてなかった。顔をバシャバシャさせて、俺に聞いた。 ジジイ「お前、あのめくらの娘、好きか?」 いきなりの問いに俺は本当に溺れるかと思った。なんでさくらさんを?この流れで? ジジイの目は…また真剣だった。 俺「…ああ。好きだ」 ジジイは立ち上がって湯船を出た。そして振り替えって俺を笑った。 ジジイ「…曲を作るぞ」 帰って風邪なんてひかなかった。それから俺は彼女に隠れて初の曲作りをしていた。ジジイはとても、とても嬉しそうだった。 それから受験が終わった。家から一番近い公立に合格した。 まあ別に勉強は出来たしランクも落として受験したしな。親父には不思議がられたが特に何も言われなかった。 |
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【421】 |
さオ (2017年06月19日 19時39分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
「ホームレスにギター教えてもらった思い出」 高校では部活を始めた。これは親父との約束だったからだ。 入る部活も決められそうになかったからこれも親父に決めてもらった。 そこではいったのは弓道部だった。そこで二人の友達が出来た。音楽のジャンルが結構似通ってたし二人とも楽器をしてたからな。 ぼっちの俺はもういなかった。すげえ嬉しかった。 しかしある時事件が起こった。姉貴にジジイと会っているのを見つかった。 姉貴「…なにしてんの?俺?」 正直いつもの公園ならばれないと思った。トレーニングの為にランニングを始めた初日だったらしい。 ジジイは全然動じてはいなかった。 ジジイ「おりょ?知り合いか?俺」 一方の俺は汗だくだった。姉貴は怒るとメチャクチャ怖い。さらに親父はもっと怖かった。 二人とも普段は温厚なのに怒ると怖いんだ。それは今も変わらない… |
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【420】 |
さオ (2017年06月19日 19時38分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
「ホームレスにギター教えてもらった思い出」 姉貴「どうみてもホームレスでしょ?なにしてんの?」 俺「…ギターを」 姉貴「聞こえない。はっきり喋って」 ジジイは笑っていた。 俺「ギターを教えてもらってた」 俺と姉貴の尋問は続いた。 姉貴「…いつから?結構前からなんでしょ?」 俺「えーと…1年くらい前から」 姉貴「1年!?受験だったのに!?」 ジジイはまたガッハッハッと笑った。俺はそれどこじゃない。 俺「で、でも高校はちゃんと受かったし」 姉貴「ランク落としてたでしょ!」 俺「…」 |
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【419】 |
さオ (2017年06月19日 19時37分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
「ホームレスにギター教えてもらった思い出」 ジジイは立ち上がって姉貴の肩を叩いた。姉貴はすぐその手をはたいた。 ジジイ「ふーん。姉ちゃん、楽器は?」 姉貴はとても冷たい目をして言った。 姉貴「関係ないでしょ。近づかないで」 ジジイよりも俺のほうがぶちギレそうだった。 俺「あのさ、ギター教えてもらった、いわく先生なんだよ。失礼すんなよ」 姉貴「うるさい。家に帰るよ。その人も一緒だよ」 ジジイは気にせずまた座ってギターを手に取った。俺は内心焦った。親父の元に連れてかれるのは勘弁だったからだ。 ポロロン… 俺「あっ…」 ジジイはリトル・マーサを弾き出した。さくらがよくしていたので覚えていた。 姉貴「…うま」 この時だけ少し姉貴の目が優しくなった。でもすぐに俺を向いて 姉貴「行くよ」 (参考) Little Martha - Duane Allman https://www.youtube.com/watch?v=44m6YMHsxWo |
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【418】 |
さオ (2017年06月19日 19時37分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
「ホームレスにギター教えてもらった思い出」 俺「…お、うん。じゃあジジイ頼むよ」 ジジイはふうっと溜め息をついてしゃあないわと立ち上がった。 そうして3人で重い足取りで家に行った。ジジイは俺の家が見えると俺にいい家だなと呟いた。それに誰も返事を返さない。 家に入ると親父はコーヒーを飲んでた。姉貴はすぐに親父に向かって話した。 姉貴「こいつホームレスなんかにギター教わってたから高校のランク落としたんだよ!」 明快にしかも単刀直入に切り出した。親父はゆっくりこっちを見て「なんだと?」と言った。ドスが効いてて凄く怖かった。 だけどすぐに親父の態度が変わった。驚いた顔でこっちに来た。 親父「…ジジイ、先生?」 俺と姉貴は頭に?を浮かべて親父を見つめた。ジジイも誰だか分かってない様子だった。 親父「やっぱりだ!先生でしょう、ゼミの親父ですよ!」 |
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【417】 |
さオ (2017年06月19日 19時36分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
「ホームレスにギター教えてもらった思い出」 ジジイはまだ覚えていないふうだった。それに見かねて親父は本棚をガタガタいじって1冊の本を出した。 親父の大学のアルバムだった。 親父「ほら!これですよ!」 ジジイ「うーん…ああ、親父君か!久しぶりだなあ」 親父「…お久しぶりです!」 そういって親父は泣き出した。親父が泣いた回数はホントに少ない。だからとても印象深い。姉貴もそうだった。 ジジイ「何も泣くこたあねえじゃねえか。久々じゃ」 親父「だって…旅に出たと聞いて、それで」 親父は涙のせいでポツポツとしか話せなかった。俺も姉貴もどうしていいか分からなかった。姉貴が気をきかせて全員テーブルにつかせた。 ジジイ「親父、おかんさんと付き合ってたろ?どうなった?」 笑ってジジイはおかんの名前を出した。俺が4つの時に死んだおかん。いや母さんと言ってた…気がする。 |
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【416】 |
さオ (2017年06月19日 19時36分) |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
「ホームレスにギター教えてもらった思い出」 親父「おかんさんは…結婚出来ましたよ?10年少しに亡くなりましたけど」 ジジイは少し悲しい顔をした。ジジイは一言「そうか」とだけ。 親父「約20年ぶり?ですかね?」 ジジイ「お前いくつだ?」 親父「42です」 ジジイは親父の肩を叩いてまだ若いわと笑った。 親父「その肩を叩くのも懐かしいです」 親父はやっと涙が止まった。姉貴がそこで切り出した。 姉貴「…こちらの方は?」 親父が言った。 親父「俺の大学の先生だ」 姉貴は意外という顔をしてジジイを見た。俺は親父がジジイの教え子という事実に驚いたがそれよりは嬉しかった。 親子2代で同じ師をもつという不思議な感覚。そのことに喜んでいた。 |
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