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【6289】 | 玉爺。さん映画紹介(本編) 玉爺。 (2009年08月28日 20時27分) |
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毒を喰らわば皿まで!てことで、映画話をもうひとつ。 外国映画にはつき物の「字幕」。それに関するお話を以下の映画に絡めまして。 「ドク・ハリウッド」 (1991 アメリカ) 主人公は若手の腕きき医者、ベン(マイケル・J・フォックス)。 ビバリーヒルズの整形外科医(超高収入)に就職するチャンスをつかんだ彼は 意気揚々とスポーツカーを走らせる。が、途中の辺鄙な田舎町でアクシデント から足止めをくってしまう。 ちょうど医者が不足して困っていた町の人々。なんとかベンをここへ 居つかせようと、あの手この手でベンを口説きにかかるが取りつく島もない。 が、田舎町には不釣合いな?キャリアウーマンのルーにベンは一目惚れ、 町長の娘には惚れられ、訳あって従事させられる羽目になった医者の仕事では てんやわんやの珍騒動続き、と想定外の日々に翻弄されるベン。 そんな田舎町の生活に馴染んできたような、やっぱり馴染めないような!? はたしてベンは当初の予定通り都会のリッチな整形外科医に収まる ことができるのか?それともドンデン返しでこの田舎町にとどまってしまうのか? この映画、世間では驚くほど評価が低い。 M・J・フォックスのラブコメ、というところからもっとテンションの高い ドタバタ劇を期待して、拍子抜けしてしまう人が多いのかもわからん。 しかし、ひとつひとつのシーンに実に味があって素晴らしく、ワシには かけがえのない映画のひとつとして胸に刻まれている。 さて、ワシャ趣味で英会話をやってそれがそこそこのレベルまで行ったので 映像翻訳の仕事に興味を持って専門学校を見学に行ったことがある。 幅広い知識と高い語学センスを求められ、仕事もハードな割には それほど高い収入を期待できない現実を聞かされ、断念したんじゃが、 やっぱり諦めず目指してみても良かったかなーという後悔もチビッと。 というのもプロになれるかどうか、金になるかどうか、ということは とりあえず脇に置いて、映像翻訳というのは実に!奥が深くて「面白い」のじゃ。 字数制限に引っ掛かるので、次のレスでその一端をば御紹介したい。 |
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【6290】 |
玉爺。 (2009年08月28日 21時28分) |
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これは 【6289】 に対する返信です。 | |||
「ドク・ハリウッド」のワン・シーン。 ベンを助手席に乗せ、緑豊かな森の道を車で走り抜ける町長。 「どうだ、素晴らしい景色だろ?副大統領夫妻だって、この地を 訪れたことがあるんだぞ」と誇らしげに話す町長。 それに対してベンが冷笑まじりに言ったセリフは「On Perpose?」。 ON PERPOSE ←これの直接的な意味は「意図的に、故意に」である。 この映画の翻訳者はこの世界の第一人者として名高い戸田奈津子氏。 戸田女史がここで訳した日本語字幕は→「道に迷って?」である。 ご覧の通り、元々の英文に「道」だの「迷う」だのといった単語は一切ない。 しかし、この場面でベンが言わんとしているのは「こんなところ来たくて 来たんじゃなくて、たまたま迷い込んじゃっただけなんじゃないの?」という 皮肉であり、そう考えるとこの訳は正に100点満点かそれ以上の出来である。 伊達に翻訳者として有名なわけではないと感心しきりである。 ワシがもし翻訳を請け負ったとして、この訳にたどりつく自信は正直ない。 かように、映像翻訳というのはまんま直訳してるようではお話にならず、 柔らかい頭と高い日本語センスが必要なのである。 と、誉めておいた戸田氏のアラ探しをしたいわけではないのだが、 映画翻訳の難しさを示す例をもうひとつ。 この映画の中でズッキーニ(野菜)が話題のひとつとして出てくるのだが、 これを女史は「お化けキュウリ」と訳している。 というのも当時の日本にズッキーニはまだ出回っていなかった野菜であった ため、女史はあえてそういう選択をしたのであろう。 が、ズッキーニがすっかり知られている現在、この訳は正直違和感がある。 翻訳の専門学校を見学に行ったとき、講師の人も同様の体験を語っておられ、 昔洋画の翻訳をした際、ベーグル(パン)をそのまま字幕にした時 翻訳を依頼された会社の担当者から「ベーグルなんて書いてもわかる人少ない んじゃない?無難に”パン”にしたら?」と言われたが「遠からずベーグルは 一般の人にも親しまれる存在になりますから、これでいいんです!」と 押し通し、事実はその通りになったわけじゃ。 また別の例じゃが、昔「イケメン」という言葉が出始めてまだ間もない頃 香港映画を観ていたら「イケメン」が早速字幕に使われていたんじゃが、 「1〜2年したら死語になってる可能性もあるだろうに」と人ごとながら心配に。 だってもし死語と化していたら「イケメンだって、ププッ懐かしいw」とか 後年笑われてしまうリスクを負っているわけじゃ。しかし”イケメン”は その後すっかり定着し今に至っており、訳者は賭けに勝ったてことじゃな。 パチンコ休業以来、すっかりサボッていた英語の勉強を映画のDVDを使ったり してボチボチやってることもあって、よもやま話を書かせて頂きました。 長文失礼〜。 |
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