| トップページ | P-WORLDとは | ご利用案内 | 会社案内 |
返信元の記事
【43】

檸檬のKISS  〜tear drops〜

咲(サキ)SAKI (2016年03月04日 18時44分)
檸檬のKISS 


〜涙の夜明け編〜



僕は、あの時。
君に言い出せないことがあったんだ。






夢の続きを見たくなったら。
それはね・・・
遠い遠い月夜の晩に、始まるんだ。



桜の花が咲く季節。
輝く光沢は眩しく、思わず瞬きするほどの
綺麗な檸檬色の満月の夜だった。



見慣れたはずの、月だった。
毎日通る道のはずだった。
ぼんやりと檸檬色の雫、
良く観るとその雫が結晶になって月に照らされ
少女の姿になって、佇んでいたんだ。

それはまるで、
出会った頃のきみに似て、
花の命に喩えては、
迎える明日を、羨むようだったよ。

もしかしたら、
少女はきみの生まれ変わりで、
少年としてぼくは、
少女を見つめていたのだろう。

途切れてしまった夢の続きを、
ふたり、紡ぐために
今宵一夜限りの夢の続きへ行かないか?

夢の続きに彩り添えて
西の夜空に眩しいほどに 




涙の再会を果たす夜を
心の片隅に 生きて欲しい


それがまるで 刹那であったとしても




〜花咲き君は美し〜



 僕は夢を見たんだ
 君の夢だったんだ
 僕はなぜか あの夜
 君にもう二度と会えない気がしていたんだ
 ▽
 ▽
 ▽
 
 それはね...
 遠い遠い月夜の晩に、始まるんだ
 ▽
 ▽
 ▽

 現実と錯覚するほどリアルな夢だったんだ
 君は元気でいるのかい?
 もう今は誰か別の男(ひと)と一緒なんだろうな
 ▽
 ▽
 ▽

 夢の続きを見たくなったら...
 ここに来ればいい
 ▽
 ▽
 ▽

 それはね...
 遠い遠い月夜の晩に、始まるんだ―――

■ 43件の投稿があります。
5  4  3  2  1 
【43】

檸檬のKISS  BLUE 第36話 白い潮風  評価

咲(サキ)SAKI (2016年04月17日 00時09分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。




coming soon...




後日編集します☆




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。
【42】

檸檬のKISS  BLUE 第35話 約束  評価

咲(サキ)SAKI (2016年04月17日 00時04分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。




coming soon...




後日編集します☆




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。
【41】

檸檬のKISS  BLUE 第34話 すれ違い  評価

咲(サキ)SAKI (2016年04月17日 00時00分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。




coming soon...




後日編集します☆




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。
【40】

檸檬のKISS  BLUE 第33話 秘めた想い  評価

咲(サキ)SAKI (2016年04月16日 23時58分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。




coming soon...




後日編集します☆




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。
【39】

檸檬のKISS  BLUE 第32話 広い背中と  評価

咲(サキ)SAKI (2016年04月16日 23時57分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。




coming soon...




後日編集します☆




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。
【38】

檸檬のKISS  BLUE 第31話 真夏のバイク  評価

咲(サキ)SAKI (2016年04月16日 23時56分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。




coming soon...




後日編集します☆




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。
【37】

檸檬のKISS  RED 第30話 レモネード  評価

咲(サキ)SAKI (2016年04月06日 23時50分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。




coming soon...




後日編集します☆




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。
【36】

檸檬のKISS  RED 第29話 寂寥感  評価

咲(サキ)SAKI (2016年04月06日 23時49分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。




coming soon...




後日編集します☆




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。
【35】

檸檬のKISS  RED 第28話 売られた魂  評価

咲(サキ)SAKI (2016年04月06日 23時41分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。




coming soon...




後日編集します☆




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。
【34】

檸檬のKISS  RED 第27話 彼氏の条件  評価

咲(サキ)SAKI (2016年04月06日 23時39分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。




coming soon...




後日編集します☆




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。
【33】

檸檬のKISS  RED 第26話 八方美人  評価

咲(サキ)SAKI (2016年04月06日 23時37分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。




coming soon...




後日編集します☆




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。
【32】

檸檬のKISS  BLUE 第25話 誕生日  評価

咲(サキ)SAKI (2016年04月06日 23時38分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。




coming soon...




後日編集します☆




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。
【31】

檸檬のKISS/INDEX I  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月27日 02時09分)

☆*。 。;*+ \ *。;。      ☆                  \
+。;。* \。;・* ☆・。; 。・・。 ☆。・;。・★ ・。; 。・・。 ☆。・;。・ 
\    ☆  ・。; 。・・。 ☆。・;。・☆'・:*;'・:*'・:*'・:*;'・:*'☆
 ☆・。; 。・・。 ☆。・;。             ・☆*。 。;*+    \ *。;。
      ,. \ :*
    \  + ☆
\ :* ' ☆




  涙の夜明け編 第一部 〜tear drops〜


    “THE INDEX”  



  檸檬のKISS(blue)  第1話 「家庭教師」

  檸檬のKISS(blue)  第2話 「家庭教師」

  檸檬のKISS(blue)  第3話 「家庭教師」

  檸檬のKISS(red)   第4話 「追悼」

  檸檬のKISS(red)   第5話 「追憶」

  檸檬のKISS(red)   第6話 「頬の雫」

  檸檬のKISS(blue)  第7話 「制服」

  檸檬のKISS(blue)  第8話 「ワンピース」

  檸檬のKISS(blue)  第9話 「美咲の部屋」

  檸檬のKISS(red)   第10話 「雫の刹那」

  檸檬のKISS(red)   第11話 「生きる」

  檸檬のKISS(red)   第12話 「大学ノート」





☆*。 。;*+ \ *。;。      ☆                  \
+。;。* \。;・* ☆・。; 。・・。 ☆。・;。・★ ・。; 。・・。 ☆。・;。・ 
\    ☆  ・。; 。・・。 ☆。・;。・☆'・:*;'・:*'・:*'・:*;'・:*'☆
 ☆・。; 。・・。 ☆。・;。             ・☆*。 。;*+    \ *。;。
      ,. \ :*
    \  + ☆
\ :* ' ☆
【30】

檸檬のKISS/INDEX II  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月27日 02時09分)

☆*。 。;*+ \ *。;。      ☆                  \
+。;。* \。;・* ☆・。; 。・・。 ☆。・;。・★ ・。; 。・・。 ☆。・;。・ 
\    ☆  ・。; 。・・。 ☆。・;。・☆'・:*;'・:*'・:*'・:*;'・:*'☆
 ☆・。; 。・・。 ☆。・;。             ・☆*。 。;*+    \ *。;。
      ,. \ :*
    \  + ☆
\ :* ' ☆





  涙の夜明け編 第一部 〜tear drops〜


    “THE INDEX”  





  檸檬のKISS(blue)  第13話 「笑顔」

  檸檬のKISS(blue)  第14話 「会話」

  檸檬のKISS(blue)  第15話 「心から笑う」

  檸檬のKISS(red)   第16話 「手紙」

  檸檬のKISS(red)   第17話 「魂」

  檸檬のKISS(red)   第18話 「蝶となり」

  檸檬のKISS(red)   第19話 「軋轢」

  檸檬のKISS(red)   第20話 「自己」

  檸檬のKISS(blue)  第21話 「日記帳」

  檸檬のKISS(blue)  第22話 「胸騒ぎ」

  檸檬のKISS(blue)  第23話 「カモミール」

  檸檬のKISS(blue)  第24話 「これが恋」



 




☆*。 。;*+ \ *。;。      ☆                  \
+。;。* \。;・* ☆・。; 。・・。 ☆。・;。・★ ・。; 。・・。 ☆。・;。・ 
\    ☆  ・。; 。・・。 ☆。・;。・☆'・:*;'・:*'・:*'・:*;'・:*'☆
 ☆・。; 。・・。 ☆。・;。             ・☆*。 。;*+    \ *。;。
      ,. \ :*
    \  + ☆
\ :* ' ☆
【29】

檸檬のKISS  BLUE 第二十四話 これが恋  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月15日 02時39分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*




 「どうしたの、先生。顔が真っ青よ?」




 息を切らし、走り込みで馴れていたはずの僕の心臓は
 驚くほど早く振動していた。

 しかし。
 鼻の奥いっぱいに広がるカモミールの香りを嗅いだ途端、
 僕は急に恥ずかしくなった。
 


 「どうしたの?じゃないよ。 何かあったのかって心配に...」

 そう言いかけた途端、後ろに現れたのは、僕の母親だった。
 僕は一瞬何が起こったか分らなかったのだ。



 「いいから、上がって。」


 美咲はいつもの明るい声で僕の腕を引っ張った。
 僕は投げ出したチャリンコのことなんて、頭から完全に消え伏せて
 汗だくでいつもの二階へと駆け上がっていった。



 「もう。せっかちなんだから。」

 「時間通りに来てくれたら、よかったのに。 ねぇ?」


 女が三人寄れば何とかと言うが、本当にかしましい。
 しかし何の祭りだ?


 花...生花、ハーブ...
 チキン...しかも丸焼きじゃないか。


 ケーキ...


 ???ケーキ???
 

 「もう。あせっちゃって、先生のせいで...
   そう。先生のせいで、デコレーションが上手く出来なかったんだから!」




 美咲は漫画に出てくるような、お茶目な顔つきで、
 ぺロっと舌を出した。





 この娘に何かあったら、僕はどうにかなりそうだった。
 それなのに... それなのに。



 今は、この娘の「ぺロっ」と出した舌に一瞬で脳天をやられてしまった。
 ものの30分も経っていないというのに、この心のアップダウンは
 どういうことなのだろうか...???






 男らしくないぞ、功輔。
 恥ずかしいぞ、功輔。
 それで男といえるのか...???








 当時は自分の心があまりに小さな出来事で
 揺さぶられるのが苦痛で仕方なかったが、
 あとで僕は、あの時初めて、心が揺さぶられたのを感じたのだった。
 はっきりとした変化だった。


 それは、今までとは全く違った感触だった。


 胸騒ぎがしたのは、何も美咲からもらったポケベルのせいだけじゃない。





 
 ――――19歳になった夏のある日。
      僕は5歳年下の、まだ幼い顔立ちの女の子を
       生まれて初めて“愛しい”と、
         感じたのである――――

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【28】

檸檬のKISS  BLUE 第二十三話 カモミール  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月15日 02時19分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 この胸騒ぎ。
 胸騒ぎだけじゃない時が多かった。


 別に霊感だとか、そういう類のものを信じたいわけじゃない。
 ただ、幼い頃からこの感触がある日は、必ずといっていいほど
 何かが起こった。



 僕は、駅に向かってとてもじゃないが普通でいられなくなった。
 駅員さんに、交番の場所を聞く。
 なぜか...交番だ。


 ――困ったときは交番に行きなさい。


 母親の口癖だった。


 先ずは交番に行った、あとは。
 ――あとは何をしたらいいのだろう。



 僕は念のため、美咲の家に電話した。
 そうだ、美咲からはポケベルで遅くなる連絡が来ていたが、
 美咲の家には連絡が来ているのだろうか...。



 「プルル...」ガチャ。


 出たのは美咲の母親だった。
 何となく気恥ずかしかったが、今の状況を伝えた。


 すると、
 電話口の向こうから、大きな笑い声が聞こえた。



 「功輔くん。ごめんなさいね。とにかく家に来て?」


 僕は乗ってきたチャリンコで、一目散に向かった。
 いつも通る道なのに、心臓がバクバクして止まりそうだった。


 約15分くらいかけて坂道を一気に駆け上がり、
 僕はチャリンコを放り投げるようにして
 玄関のチャイムを連打した。



 出てきたのは手に山ほどのカモミールを持った美咲だった。



・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
削除

(o^^o) (2016年03月07日 20時36分) ID:KbSpReZm

トピ主により削除されました (2016/03/08 08:14)
コメント:ご本人様であるかのようなお書込みは今後ご遠慮ください。(ご本人様より連絡を頂戴しました)
【27】

檸檬のKISS  BLUE 第二十二話 胸騒ぎ  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月06日 22時51分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 ある日のことだった。
 いつもは、時間を必ず守る彼女だったが、その日は帰りが少し遅くなると
 連絡があった。



 僕らは互いにポケベルで連絡を取り合っていた。
 僕の部活の都合や授業の都合、
 社長にお世話になっている他の曜日のアルバイトの
 欠員で、已む無く曜日を変更せざるを得ない日があったからだ。



 開始時間が遅れそうなときは、その時刻をサインで入れて送る。



 19時30分になりそうなときは「1930」
 了解なら「8181(はいはい)」
 駄目な日は「002440(またにしよう)」



 当時は携帯もまだ普及しておらず、
 このような形でポケベルでサインを送りあうのが流行っていた。



 大抵はこちらからの変更のお願いだったが、
 その日は彼女からだった。



 少し心配になった僕は、彼女の指定する時間までまだ1時間近く
 あったが、とりあえず彼女が通学に使っていた駅の方まで向かっていた。
 逢えるかどうかは分からない。
 違う道を使うかもしれない。 



 既に駅には着いていて、
 単に友人の家に遊びにいっているだけかもしれない。
 

 いや、待てよ。
 具合が悪くなって、家にはもう着いていて、寝込んでいるとかか?




 ただ、なんだかその日は朝から妙な胸騒ぎがした。



・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【26】

檸檬のKISS  BLUE 第二十一話 日記帳  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月06日 22時49分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 僕は思いのほか、彼女に興味が湧いてしまった。
 今、思い返せば、あれを「恋」と呼ぶのだろう。



 当時は今時の女の子を「面倒くさい」と思っていた。
 金は掛かる、ろくにお礼も言わない。
 恋愛ごっこなどというのは僕には10年早い、コスパの悪い
 ただのお遊びだとも。



 それが彼女に出会い、
 何となくではあったが、自分の心が変わっていくのを感じていた。
 不思議な感覚。今までに味わったことのない、
 まるで現実感のない感覚だった。



 家庭教師に行く水曜日と土曜日が
 妙にワクワクするのを感じていた。
 悔しいほど――に。


 
 僕は小さな頃から常に大学ノートを日記帳代わりに
 持ち歩いていた。
 金のなかった貧乏暮らしだった僕は、何か買ったり、必要なことは
 全てここに書き綴る習慣をつけていた。



 もう...何冊くらい溜まったであろう。
 日記帳というよりは、落書き帳だ。



 しかし、面倒だった記帳も、家庭教師を始めてからは
 どこからどこまで教えたのか、彼女が質問してきた内容、
 梃子摺った内容...凡そを書き記すようにした。
 それは、僕がそうしたかったからだった。
 全てを――全てを書き留めたかった。今日の日を、その日の出来事を
 忘れたくなくなっていたからだ。




 授業と授業の間には、最近お互いが面白いと思っている話題を
 交換した。
 不思議とテレビや流行のタレントの話、トレンドドラマの話は
 ほとんど出てこなかった。


 好きな本の話や、学校で起こったことや感動した話。
 できるだけマイナスの感情を引き起こさない話題をお互いに提供し合った。


 僕は次第に彼女に惹かれていった。



・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【25】

涙の夜明け編 〜tear drops〜  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月06日 22時16分)

☆*。 。;*+ \ *。;。      ☆                  \
+。;。* \。;・* ☆・。; 。・・。 ☆。・;。・★ ・。; 。・・。 ☆。・;。・ 
\    ☆  ・。; 。・・。 ☆。・;。・☆'・:*;'・:*'・:*'・:*;'・:*'☆
 ☆・。; 。・・。 ☆。・;。             ・☆*。 。;*+    \ *。;。
      ,. \ :*
    \  + ☆
\ :* ' ☆




  涙の夜明け編 〜tear drops〜


    “THE INDEX”  



  檸檬のKISS(blue)  第1話 「家庭教師」

  檸檬のKISS(blue)  第2話 「家庭教師」

  檸檬のKISS(blue)  第3話 「家庭教師」

  檸檬のKISS(red)   第4話 「追悼」

  檸檬のKISS(red)   第5話 「追憶」

  檸檬のKISS(red)   第6話 「頬の雫」

  檸檬のKISS(blue)  第7話 「制服」

  檸檬のKISS(blue)  第8話 「ワンピース」

  檸檬のKISS(blue)  第9話 「美咲の部屋」

  檸檬のKISS(red)   第10話 「雫の刹那」






☆*。 。;*+ \ *。;。      ☆                  \
+。;。* \。;・* ☆・。; 。・・。 ☆。・;。・★ ・。; 。・・。 ☆。・;。・ 
\    ☆  ・。; 。・・。 ☆。・;。・☆'・:*;'・:*'・:*'・:*;'・:*'☆
 ☆・。; 。・・。 ☆。・;。             ・☆*。 。;*+    \ *。;。
      ,. \ :*
    \  + ☆
\ :* ' ☆
【24】

涙の夜明け編 〜tear drops〜  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月06日 22時17分)

☆*。 。;*+ \ *。;。      ☆                  \
+。;。* \。;・* ☆・。; 。・・。 ☆。・;。・★ ・。; 。・・。 ☆。・;。・ 
\    ☆  ・。; 。・・。 ☆。・;。・☆'・:*;'・:*'・:*'・:*;'・:*'☆
 ☆・。; 。・・。 ☆。・;。             ・☆*。 。;*+    \ *。;。
      ,. \ :*
    \  + ☆
\ :* ' ☆





  涙の夜明け編 〜tear drops〜


    “THE INDEX”  




  檸檬のKISS(red)   第11話 「生きる」

  檸檬のKISS(red)   第12話 「大学ノート」

  檸檬のKISS(blue)  第13話 「笑顔」

  檸檬のKISS(blue)  第14話 「会話」

  檸檬のKISS(blue)  第15話 「心から笑う」

  檸檬のKISS(red)   第16話 「手紙」

  檸檬のKISS(red)   第17話 「魂」

  檸檬のKISS(red)   第18話 「蝶となり」

  檸檬のKISS(red)   第19話 「軋轢」

  檸檬のKISS(red)   第20話 「自己」







☆*。 。;*+ \ *。;。      ☆                  \
+。;。* \。;・* ☆・。; 。・・。 ☆。・;。・★ ・。; 。・・。 ☆。・;。・ 
\    ☆  ・。; 。・・。 ☆。・;。・☆'・:*;'・:*'・:*'・:*;'・:*'☆
 ☆・。; 。・・。 ☆。・;。             ・☆*。 。;*+    \ *。;。
      ,. \ :*
    \  + ☆
\ :* ' ☆
【23】

檸檬のKISS  RED 第二十話 自己  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月05日 02時29分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 海外で仕事をして初めて気づいたのであるが、「YES」「NO」の境目が
 ハッキリしていた。



 現地で一番指摘をされたのが、
 「understand/理解したのか?」「doing/行動」の二つだった。




 厳しい研修を受けて来たはずなのに、最初の頃、何故その指摘を受けるのかを
 まったく理解できなかった。



 それほど、日本では「ファジー」で「曖昧」な意識でも通用してきたことが
 多かったのだ。外に出るまで一度も意識したことがないことだった。


 
 海外ではモロッコ、ケニアにそれぞれ3ヶ月ずつ派遣された。
 言語の壁はあったが、それより上記のマインドの違い、慣習の違いで
 精神的にハードな時を過ごした。



 考え方が180度変わったのは、この国際ボランティアに参加してからが
 最も大きなきっかけだった。





 「八方美人」が大嫌いな理由。

 ―――――――それは、かつて若かりし頃、
 私自身が八方美人だったからだった。



 誰からも愛されることが良いことであると思っていた。
 ぽっかり穴が開いた、その心を埋めるものは、
 誰からも「愛されること」だった。



 クラブで勤めていても。
 また、病院で働き始めたときも。
 まず「敵を作らないこと」を念頭においていた。





 相手の気持ちに沿うことを優先した。
 その結果、今となっては何かとてつもなく
 “大切なもの”を失った気がするのではある――。



 それは確固たる「自分」というもの。


 「自分の意思」



 私は自分の意思を押し通すことよりも、
 常に周りに合せている、自分に気がついた。



 私はあの日。魂を失い、自分を見失ったのか。
 いつしか、八方美人になり、
 いつしか、敵を作らないように努力している自分に気づく。



 主張。


 主張って...なんだっけ。


 自分は...どこにあるの?


 ――もう遅いのかもしれない。




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【22】

檸檬のKISS  RED 第十九話 軋轢  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月06日 22時19分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 彼を追いかけ、一緒に旅立とうと何度想ったか。



 しかし、私はいつしか夢中でアルバイトで働く時間の中で、
 この魂を誰かの為に費やしたいと考えるようになった。
 私は医療の路を目指すと決めた。



 少しずつではあったが、大学時代の接客業のおかげで、
 必死で尽くせば“誰かが喜んでくださる”と、体感し、
 知ることとなった。




 “置かれた環境が人の人生の礎を作る”


 ...とはまさにこのことだと知った。



 そんな繁忙な大学生活を終えての国家試験。
 勉強嫌いだった私は不安があったが、何とか
 初年度で合格した。



 就職した病院の国際ボランティアのインターンシップ制度を利用し、
 半年間という短い期間ではあるが海外に単身で渡航した。



 その病院の医療法人が、海外に資金を注入し、設立した病院が
 世界各国の所謂“途上国”と言われる国に存在していた。



 当時は無我夢中だったが本当に良い経験をさせてもらった。
 それがご縁で、今でも数年に一度、海外でお仕事をさせてもらうこともある。

 医療は治療方針は違えど、全世界共通である。


 薬についても成分さえ分かっていれば、薬名が分からなくても添付文書を
 見れば大体網羅できた。

 大変だったのは、「マインド」の違いだった。


 海外旅行でしか国外に出たことが無かった私にとって、
 まさにカルチャーショックだった。



 「文化の違い」「言語の壁」...いや、それよりも、日本人独特の「曖昧力」が
 業務を遂行する上で大きな軋轢となった。




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【21】

檸檬のKISS  RED 第十八話 蝶となり  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月05日 02時53分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*


 あれから6年後、私は気付けばケニアの小さな病院にいた。



 **


 その後、抜け殻となった私は、
 心は完全に折れたまま、何かにしがみつくように生きた。


 いや、生かされていたという方が正確だろう。



 看護師、そして保健師両方の国家試験受験資格を取得できる
 大学の医療系学部に進み、
 大学時代の4年間はとにかく働いて...働き続けた。




 母の友人が新地にクラブを経営しているからと、
 スカウトしたことがきっかけで、美咲は学生時代、
 接客業というアルバイトについた。


 どうせ一度は無くなりかけた命。
 何でもやってみようと思うようになった。



 そしてどうせやるなら、命を焦がすほど
 必死でやってみようと思った。


 「死に物狂い」


 その言葉を探求し、体感してやろうと。


 **



 勤めだしてまず驚いたのは、客層・客筋のグレードの高さだった。
 市会議員・官僚は勿論、芸能人も多く通うお店で、マナーや接客の教育は
 それはそれは厳しきものであった。


 BOX席、当時おひとり50,000円を下らなかった。
 とにかく座るだけで50,000円。勿論、ここにボトルキープ代・ミネラルに
 フルーツ代などが乗るので、平均客単価は80,000〜100,000円程度だった。


 時給はここでは伏せるが、恐らく月に20日稼働すると、今の大手企業の
 常務クラスの月給に相当したであろう。



 しかし、出て行く金額も相当なものだった。
 「真のものを身につけなさい』というオーナーの教えどおり、
 身につけるものにはこだわった。



 ドレス代、セット代は勿論、アクセサリーや時計、靴、バッグ、
 お客様へのプレゼントは全て自腹だった。
 お給料の『約半分』は軽く消えていった。


 
 接客マナーについては専任のマナーコーチがいた。
 毎日読む新聞、株価を始め、経済のこと、教養のこと、毎日のニュース、
 言葉遣い、話し方、お手紙の書き方、贈り物の仕方など
 全てを厳しく叩き込まれた。
 


 ▽


 学業との両立で、毎日がいっぱいいっぱいだった。
 しかしそんな繁忙な毎日で、辛かった過去の日の気持ちを
 少しずつ、また少しずつ紛らせるようになっていた。



 
 そうして気付けば私は、ただただ

 「誰からも愛されること」



 を念頭に、生きていた。
 自分の意思なんてどうでもいい。
 愛されればそれで満たされるとさえ。
 それが間違いだとも気づかぬまま――。


 
 私を愛してくださる人に寄り添うこと。
 その方が望むように振舞うこと。
 それが幸せだと思い込み、信じ込むようにした。



 もう、真実の愛とか純愛だとか存在しない単語となっていた。
 そんなこと、私にとっては、もうどうでも良かった。
 人のことなんて、二度と愛せないと思っていた。




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【20】

檸檬のKISS  RED 第十七話 魂  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月05日 02時10分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 20年前のあの日。



 阪神淡路大震災が起こる。



 命より大切にさえ想っていた初恋の人を失った。
 心はまだ未熟な時に。





 私をとても可愛がってくださっていた叔母や、
 幼馴染だった一番の大親友さえも...。




 私の中で何かが壊れ、私はもう生きて行けないと思った。
 生きていきたくないと。
 なぜ...?




 
 なぜ私だけが
 生き続けなければならないの...?
 神様は、どうしてそんなに冷酷なの...??





 私は、もう二度と、誰も愛さない、と決めた。
 私の魂は、あの日に彼と一緒に死んだのだ。




 たとえ誰かに身を預ける夜があっても、
 心を預けたりはしない。
 預ける心なんて、もう、どこにも存在しない。




 あんなに心が傷ついたなら。
 これ以上、傷つく出来事は起こりえないと。




 操なんて必要ない。




 自分がたとえ愛していない人に抱かれようとも、 
 誰に咎められようか。



 生きろ、というなら、生きてやる...




 ただし、誰にも私の生き方を
 指図させない。



 傷つくことはもう二度と無い。



 ――――だって、もう誰も愛さないのだから。


 ――――もう――――、誰も愛せない。


 いっそのこと、地の果てまで堕ちて生きたい。




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【19】

檸檬のKISS  RED 第十六話 手紙  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月06日 22時22分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*




 ――柔らかなオレンジの光。
 冬空の下、暖炉の温かさを感じた空気は
 思わず、眠気をも誘う。


 ふと私は――手に持った重みでハッと我に返った。
 そのときだった。


 ひらひらり...と零れた茶封筒。
 無記名ではあったが、糊付けのあとが施された封筒。


 功輔のお母さんと目が合うと同時に、
 小さく、「うん」と頷いたかのように見えた。


 ――美咲は息もつかず、糊をほどき、ゆっくりとしなびた封筒に
 手をかけ、ぴり、ぴりり、と音を少し立てて親指を差込み、
 開けた。




 「美咲へ



 美咲、今こうして手紙を読んでいるということは
 僕はもうこの世にいないということだと思う。


 君と一緒に居れなくなった事を最初に詫びておきたい。
 本当に――本当に、すまない。


 君は今、元気なのか。
 君は今、もう誰か好きな人と一緒になっているんだろうか。

 
 僕は、恋をした。
 そして僕は、人生で初めて人を心から愛し、
 その人を命をかけて守り抜きたいと思った。


 何も生きがいが無かった僕に生きがいを与えてくれたのは、
 美咲、君だったよ。


 貧乏で、ろくなデートも連れて行ってあげれなかったのに
 いつも笑ってくれた君。


 僕の買えない様な高いもの 
 何も君は 欲しがらなかったけど
 本当は 何か一つぐらいは 買ってあげたかったんだよ。



 僕の胸の中には、いつでも君の姿があったよ。
 僕の脳裏には、いつでも君の笑顔があった。

 
 どうしてこんなことになったんだろう...
 それは僕にだって分らないんだ。

 
 今から書くことは、
 どうしても君に話せなかったことだ。


 僕は、あの日。君に伝えたいことがあったんだ。


 
 ただ、君には生きて欲しい。



 生きて、生きて、生き抜いて欲しい――――。」



 その先、幾重にも連なっていた古びた、湿った便箋。
 私は、涙で気を失うほど泣きじゃくれてしまった。



 ただ、その日は、その場に蹲(うずくま)り、
 もう、あとは気を失ったかでもしたように、
 なにも覚えていなかった。

 

 「 功輔... おかしいよ... おかし過ぎるよ...

  なぜ... 今なのよ... 今手紙で、なのよ...」




 私の頭には、誰の声とも分らぬ声が
 響き渡るかのような音を立て、
 幹が割れるように、しきりに木霊(こだま)していた。 




 ――それはいつまでも。



 ――まるで、永遠に――。



・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【18】

檸檬のKISS  BLUE 第十五話 心から笑う  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月05日 01時52分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 ――そうだ。


 社長に話せといわれたのは、
 本題の家庭教師に纏わる話の方じゃなかったのか?
 僕は彼女の成績、実力を知らない。


 よくある、謙遜で「うちの子は全然駄目で〜」のような話かもしれないし
 簡単なテストをしてみようか。


 当時、僕はコミュニケーションの取り方というものをほとんど知らなかった。
 特に年頃の若い女の子にどう接したらいいか分らなかった。
 要するに――所謂――ど真面目人間だった。


 僕は、持ってきた大学ノートを引きちぎり、幾つかの図形を描いた。
 面積を求める問題、
 それと立体的な図形を当てはめる問題だった。


 今から選択肢を書こうか、という頃、彼女が上から覗き込んできた。
 本来は近い数字を4択か5択にして選んでもらうつもりだった。


 彼女は、ものの3分もしないうちに

 「先生♪ この長辺を何cmにするか早く決めて!」


 参った。
 もう答えは出ているようだ。



 もう一問の方も、問題を書いてる途中に、
 「う〜ん。この形なら ここにぴったり当てはまるよね」


 ...と指で形を作って、言って来た。
 完全に読まれている。



 ▽



 僕は数字を入れ、さらには二問目の図形の選択肢を描いた。
 彼女はすかさず指を差し、正解を当てた。



 レベルが低かったか...?



 いや、問題は確か1学年上の問題だったはずだ。
 数学は問題ないようだった。



 出来が悪いと社長が言うのは、他の教科かもしれない。


 しかし――




 僕はなんだか難しく考えていた自分自身になのか、何に対してかよく
 分らないが、兎に角、至極拍子抜けしてしまい、


 彼女と... 顔と顔を見合わせ、
 思わず、手を叩くほど、笑って、笑って、
 大笑いしてしまったのだった。



 テレビを観ても、映画を観ても、
 「作られた世界」はまるで、
 僕には全てが白黒の映像にしか見えなかった。



 なのに、彼女とは、腹の底から、大声を出して
 笑いが止まらなかったのだ。



 ――あんなに大きな声を出して笑ったのは
 生まれて初めてかもしれない。




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【17】

檸檬のKISS  BLUE 第十四話 会話  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月05日 01時43分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 しかし、会話をしろと言われても、思いつく話題が無い。
 何を話せと...???


 そうこう考えていたら、彼女の方から、そぉっと顔を覗きこんで
 話しかけてきた。


 「ねぇ... せ〜んせ。 大学に好きな人はいるの?彼女は?」


 な、なんてストライクな。
 ど直球じゃないか。


 僕は思わず飲んでいた珈琲を溢しそうになった。
 今時の中学生は、こんなにおませなのか?


 それとも、この娘は、なにげなく聞いてきただけなのか?
 どちらにしても、侮れない。


 侮れない、今時の中学生。


 僕は思わず口を開き、べらべらと話し始める。
 
 
 部活のこと、苦学生であること、今まで好きになった女性は
 ほぼいなかったこと、
 去年もらったチョコレートの数、
 高校卒業のときに、他校生からせがまれた制服のボタンの数。



 なんでこんなにべらべら喋ってるんだ・・・僕は。



 彼女に乗せられているのか、
 それとも僕は、いつか、誰かに話を聞いてもらいたかったのか。


 いずれにせよ、自分がこんなに喋る人間だと初めて気づいた。



・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【16】

檸檬のKISS  BLUE 第十三話 笑顔  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月05日 01時41分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 僕は年頃の女性を、年頃らしい女性というものを 
 あまりよく知らなかった。


 彼女は中学生ではあるが、時に子供で、時に大人びた
 表情をした。


 しかし笑っているときは、全くの子供であった。
 僕は今はやりのアイドルというものには全く興味が湧かなかったが、
 何故か、彼女に興味が湧いてしまった。


 彼女は元気よく挨拶をする。
 人見知りをしない。
 人を疑う表情をしなかった。


 どんな人生を歩み、どんな人に囲まれたのか
 その育ちのよさから安易に想像が出来た。


 僕とは全く育ってきた環境、畑、土や水が違うことだけは。


 彼女の屈託の無い笑顔を見ていると、
 幾ばくか腹だたしくも感じたのだった。


 僕は、なんて嫌な奴なんだ。



 自分の苦労、貧乏を恨んだ。
 今から世話になる、しかもバイト先の社長の娘さんに。



 でも、仕方が無かった。
 環境は人格をも変える。



 僕は自分の育った環境を今さら変えることはできなかった。




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【15】

檸檬のKISS  RED 第十二話 大学ノート  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月04日 19時38分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 功輔のお母さんは、私の手をギュっと握り、
 小雪で少し白くなった私の髪から雪を払ったかと思うと
 か細い体で、私を抱き寄せてくれた。




 母のでもなく、姉のでもない。
 カモミールの香りがした。




 私はその香りでハッとした。

 功輔と一緒に贈った、お母さんへの誕生日祝い。
 功輔は私がカモミール好きなのを知って
 私に小苗を買ってくれたことがあった。



 私はそれらを鉢三つに分けて育て、
 うち一つをお母さんへ贈ったのだった。



 功輔のお母さんに恐る恐る尋ねてみた。
 季節はカモミールの季節から外れていたので
 生苗はあるはずも無かった。




 すると、

 「美咲さんに頂いたカモミール、全て乾燥させて

  今、お部屋いっぱいに飾ってあるわよ。」と。

   あれからずっと育てて増やしてくれてたんだ… 


 
 聞くと、ハーブティーのお店とプリザーブドアレンジの教室を
 細々だけど経営しているらしい。
   お店には天井一面にカモミールが吊るしてあった。 




 「丁度良かった。美咲さんに渡したいものがあったの。」



 私の手を引くと、直ぐ近くだからと
 功輔のお母さんに連れられ、そのショップにと向かった。





 ****





 店内はカモミールとラベンダーの香り、それに少し
 檸檬グラスの香りがする薔薇園のようなとても素敵なお店だった。




  

  お母さんは、今ハーブティーを入れるからと、 
 座ってこれを見ていて欲しいと私に太い1冊のアルバムと、
 20冊はあったであろうか、古びた大学ノートにしたためられた
 記録のような、メモ書きの様な、なにやら分からなかったが
 そのノートの束を渡してくれた。





 それは紛れも無い、功輔が私の家庭教師をしていたときの
 どこまで教えて、どこまでを理解してもらったかの詳細な記録と、
 そして毎日の日記帳だった。




 「 こんなに... 」




 知らなかった...
 功輔...




 あんなに時間が無い中で。




 いつ?
 こんなに沢山...

 いつ書いていたの??




 ****




 ――そのとき
 私はまた、不思議な感覚を感じた。
 



 “あの日 あの時 功輔が私に伝えたかったこと”
 




 文字で、確認する前に
 はっきりと背中に感じた気がした。

 



 既に年月を重ねて、
 痛みの酷かったその大学ノートは
 ふいに落とされた 生温かい檸檬の雫で、
 更に滲んで柔らかくなっていった。





 部屋には暖炉の暖かいオレンジの光が差し込んでいた。



・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【14】

檸檬のKISS  RED 第十一話 生きる  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月04日 19時35分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 私は20年間、その苦しみと共存してきた気さえしていた。
 時には、その悪夢から全身をシャワーで浴びたような汗と涙と共に
 目が醒める事もあった。




 しかし悪いことばかりではなかった。




 虫の知らせとよく言うが、
 それに近い“胸騒ぎ”“何か感じる悪い予感”で
 大きな事故から自分が守られたことも多かった。



 勝負を行う際にも、何か嫌な予感がして台をやめたり
 自然と引き寄せられたりして恩恵を授かることが多かった気がした。
 そういう“見えない何か”を感じることが数え切れないほどあった。



 違うかもしれないが、そうかもしれない。



 私は震災で大切な親戚の叔母、親友、そして功輔を亡くし
 それからというもの、ことあることに彼らに自分を守ってもらって
 生きている気さえしていた。




 例えそうでなくとも、
 私は精一杯生きていくことしか出来ない。
 彼らのために。
 彼らの分まで。




 それが残された私たちに出来る最大の供養であると
 自分に言い聞かせ、生きてきた気がする。



 

 ――――――――――――


 もう、いつ死んだっていい。
 

 ――――――――――――




 そう思いながら生きてきた。
 だって、私、生かされてるんだもん。




 生きているだけで幸せ。
 生きていたら、なんだって出来る。




 生きなきゃ。
 生きて、生きて、生きなきゃ。




 あぁ――。
 胸が痛い。




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【13】

檸檬のKISS  RED 第十話 雫の刹那  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月04日 19時33分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 それはあの日から丁度20年経った、
 小雪が舞い散る1月のことだった。




    私の頬には、今も尚、
 気がつけば冷たい雫が流れていた。
 最近、こういうことが多かった。




 ****




 不思議な感覚が残っていた。 
 功輔が亡くなって20年も経つのに、
    過去の思い出になかなかならない。
 いや、なってくれないのだ。
 リアルに甦る感覚。
 刹那。




 それは恋とか愛とかという恋愛感情ではもはやなかった。



 喪失感。



 他に例える言葉が無いので、色々説明する言葉を考えてみたが、

 “喪失感”

 これが一番近い感覚のような気がした。




 そしてもう一つ。


 頬を伝う涙を感じるとき、
 必ずと言っていいほど、不思議な感覚に捉われていた。



 この20年、一度もその感覚から解放されたことが無かった。



 それがいいのか悪いのかさえ分からない。
 例えるなら、時間旅行。タイムマシン。



 そんな感覚だった。
 頬を涙が濡らす度、あの頃の感覚、思い出が甦る。
 思い出すとかという感覚ではない。



 自分があの頃の自分に立ち戻る感覚だった。
 その都度、拷問のような激しい吐き気さえ覚えた。





 ――胸が痛む。





 ――忘れたい。


 

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【12】

檸檬のKISS  BLUE 第九話 美咲の部屋  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月04日 19時31分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 『 功輔くん。ちょっと美咲と二人で話してみてくれないか。』




 僕は唐突にこの父親は何を言い出すのだろうと思った。
 ...僕の男の部分が一瞬、顔を覗かせた気がした。




 何でも、僕が女性苦手なことをパートの従業員さんに聞いていて
 知っていたらしい。




 社長の配慮がありがたかった。
 正直、僕の両手は、暑さのせいではなく、
 冷たい、脂の混じった冷や汗でびっしょり濡れていた。




 僕は階段を上り、彼女の部屋へと案内された。




 木目の壁に、真っ白い机と真っ白いベッドカバー。
 カーテンは薄いベージュで、いかにも品が良い大人の階段を上りかけた
 清潔で大人っぽい香りがした。





 『 カモミール...?? 』





 彼女はにっこり笑って、


 「 先生、どうして分かっちゃったの? すごい♪」


 ...と答えてくれた。




 僕の緊張の太い糸は、いつしか根元からぷっつりと
 彼女の笑顔にやられていた。
 自然といったらいいのか、何も考えず、何も構えない会話。

 


 こんなに年下の女性に僕が初対面からリラックスできるだなど、
 全くもって、とても意外なことだった。




 家庭教師の約束は、
 僕の部活が早く終わる水曜日と土曜日でいいかい?と
 社長の承諾も無く、進めている僕が居た。




 僕は毎週水曜日と土曜日に
 彼女に会えるのが楽しみになっていた。





 心を洗われるとはこういう気持ちだと、
 生まれて初めてこういう気持ちになったのだった。


 


 

 彼女の笑顔は屈託無く、
 純真無垢で、とてもチャーミングに見えた。



・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【11】

檸檬のKISS  BLUE 第八話 ワンピース  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月04日 19時28分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*




 「こんにちは。」





 彼女が着替えて、社長さんの隣に座った。
 やはり14-15歳だろうか。



 しかし、制服を着ている姿とは全く違い、
 真っ白いコットンのワンピースを着た彼女の第一印象は、
 清潔感のある清楚な女子学生といった感じだった。



 少し日に焼けているが、元は肌が白いのだろう。
 首元やノースリーブのワンピースから見えた、
 ほっそりした腕はうっすらピンク色に焼けていた。




 社長が、中学1年から2年の夏までの
 彼女の成績表を見せてくれた。




 可もなく不可もなく、
 生徒数400名くらいの進学校の中等部で
 彼女の学力テストの成績は100番台後半だった。





 『...で、彼女には何を教えたら?』





 そういうと、社長、つまり彼女の父親は
 彼女を理数系に進ませたいので、兎に角、成績の極端に悪い
 英語を教えて欲しいということだった。





 『1科目でいいんですか?』




 社長は、あと出来れば1〜2科目を教えて欲しいがと言ったので
 彼女にどの科目が好きかを尋ねた。



 彼女は数学が好きだといった。
 なるほど、数学だけはずっと90点台をキープして
 学内でも一桁成績だった。




 しかし、高校受験となると
 問題は受験用の問題となる。頭が良いだけでは、
 ましてや勘では解けなくなる。




 彼女は通期での数学の成績はさほど良くないのに、
 学力テストや、県内での模擬試験の成績はズバ抜けて良かったのだ。





 おそらく、彼女は勉強嫌いなのだろう。
 数学のノートを見せてもらったが、
 殆ど何も筆記していない。




 授業中はあまり聞いていないのに
   全国レベルでの模擬試験問題は解けている。
 頭は良いのに、試験慣れしていないだけだと感じた。




 僕は、じゃぁ、数学を教えましょう。
 と一瞬も迷うことなく矢継ぎ早に答えていた。




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【10】

檸檬のKISS  BLUE 第七話 制服  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月04日 19時26分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 彼女がきっと。生徒なのだろう。
 



 ****




 僕は女性が苦手だった。
 特に若い年頃の今風の女性。女子学生。
 女性と名前のつくものに拒否反応さえ示していた。




 高校生の頃に父親を亡くした僕は
 母や兄の手で育てられた。




 気がつけばいつも生活は困窮し、
 生活が苦しいことを分かっていたので
 大学への進学を半ば諦めていた僕は、
 バイトに明け暮れ、ろくに勉強もしなかった。




 本来なら、予備校に通い、
 国公立大学の受験に勤(いそ)しむ時期、
 僕は毎日高校の部活を終えたその足で
 バイト先に向かった。




 バイト先では、自分の贅沢品を買うためなのか、
 金を貯める年頃女子を嫌と言うほど見てきた。



 モテナイワケではなかった。
 いや。自分で言うのも気恥ずかしいが、非常にモテた方なのだろう。


 しかし何度か数え切れないデートをして、
 女性はこれほどまでに金が掛かるのか...と正直幻滅した。


 食事代は勿論、映画代や遊園地、
 ショッピングに行けば洋服やアクセサリーを強請(ねだ)られる。




 自分で働いて買えばいい。
 その1万円でどれだけのことが出来るか、この娘(こ)たちは
 知っているのだろうか?




 世の中には、パン一つ買えず、
 腹を空かせて餓死してゆく沢山の子供たちがいるのに。


 
 僕は、いつも洒落たイタリアンレストランを予約する女子の隣の席で
 腹の中で悶々とそんなことを考えていた。


 


 大事な思春期をバイトに明け暮れ、
 家計をやりくりするために少しでも節約したかった僕は
 大学に入る前に、

 “自分は女性と付き合う男には、まだ早い”

 と、人生を諦めるかのように
 たかを括った。




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【9】

檸檬のKISS  RED 第六話 頬の涙  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月04日 19時24分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*




 『 やっぱり美咲さんだったのね。

   綺麗になって。いいお嬢さんになったのね... 』





 私は頬をつたう冷たい雫を無意識にハンカチで拭い、
 振り返り、じっと瞳を見つめた。





 微笑みたかったが、なぜか微笑むことが出来ず
 無表情に近い顔で、じっと見つめていた。





 続けて功輔のお母さんは言った。








 『 もう いいのよ。

   早く幸せになって欲しいの。

   毎年、欠かさず送ってくれているお花も。




   もう十分だから。功輔のことは早く忘れて、

   ううん。忘れることはできないわよね。

   美咲さんは情の厚い人ね...

   でも、早く前をお向きなさい。


   功輔の分まで、幸せにおなりなさいね。  』








 なんて言ったらいいのだろう...
 ずっとその言葉を...




 直接その言葉を、誰かに言って欲しかった。









 それはあの日から丁度20年経った、
 小雪が舞い散る1月のことだった。




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【8】

檸檬のKISS  RED 第五話 追憶  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月04日 19時23分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*




 『 美咲...さん...??』




 気のせいなのか、その時、私を呼ぶ女性の声がした。
 優しく、懐かしい声のような気がした。



 御影の土地で、しかも墓前...
 呼びかけられるはずが無い。




 功輔のことは、親にも、家族にも、殆ど話した事が無い。 







 ****






  私の頬には、気がつけば冷たい雫が流れていた。
 最近、こういうことが多かった。




 ****




  人の気配を感じたかと思うと、
 隣から献花をしようとする、
 少し皺のある、しかし真っ白く品の良い手が伸びてきた。
 ...とともに
 生まれ、暮らした田舎町の山花の香りが突然臭覚を刺激した。




 私は『 はっ 』とした。
 どこか異国から急に引き戻された気がしたと同時に、
 その女性と目が合った。




 最後の追悼――あの日からおよそ15年ぶりに会う
 功輔のお母さんだった。



・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【7】

檸檬のKISS  RED 第四話 追悼  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月04日 19時19分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*




 あれから早いもので丁度今年で20年が経った。
 今年の冬、私は久々に功輔に逢いに行った。



 毎年欠かさず献花用のお花を郵送していたが、今年はどうしても
 自分に節目をつけたかった。



 




 ...笑う人もいるだろう。




 何年前の話だよ?と。







 「 いい加減、忘れなよ。 」

 功輔が頭をぽんぽんっと叩いて
 言ってくれそうだ。





 ***





 いったい、あれから何人の男が私と出逢い、
 通り過ぎただろう。






 それぞれの出逢った男の人たちに、
 私が心を突き動かされなかったといえば嘘になる。




 まぁ。『 い い わ け 。』
 言い訳に過ぎないのかもしれない。




 
 私はいつもそれを後回しにしてきたかもしれない。
 それの優先順位。 



・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【6】

檸檬のKISS  BLUE 第三話 家庭教師  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月04日 19時14分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*


 僕は早く社会に出たかった。
 早く社会に出て、母を、家計を助けたい。




 今の大学生活も、それなりに楽しい。
 しかし、周りの連中が騒ぐような合コンにも全く興味が無く、
 飲み会やサークルの誘いも全て断っていた。




 アルバイトもようやく馴れて、毎月一定の収入が出来たことで
 家計も安定した。




 奨学金の申請も、高校から続けてきた部活の成績を評価され、
 また母子家庭ということで、すんなり通ったから、今はそれだけで
 毎日が楽になり、
 病弱気味だった母の仕事も軽くしてあげられるようになったからだ。







 ***






 「はい、どうぞ。功輔くん。」


 品の良い、明るく気さくそうな女性が出てきて
 僕に三笠とジョアヨーグルトを出してくれた。


 (あれ?僕の名前を知っているってことは...やはり社長の奥さんなのだろうか?)



 社長は奥に入っていったと思ったら、
 先ほどの女性とひそひそ話をしだした。



 下から階段を駆け上がる音が聞こえてきた。


 セーラー服を来たお嬢さんが帰宅したようだ。




 「ただいま!お母さん、あ!お客さん?こんにちは。」



 あどけなさが残る、年齢で言うと14-15歳くらいだろうか?
 僕はずっと男子校だったので、この年代の女の子とあまり話す機会が無い。
 

 バイト先も今の社長の倉庫は男子学生は僕一人で、
 あとはかなり歳の離れた目上の女性と社員の方たちだったからだ。


 同世代の女の人とは最近ようやく話せるようになった。



 そんなことをボ〜っと考えてたら、社長がお嬢さんに

 「美咲、制服を着替えたらこっちに来なさい。」と言った。


 僕は凡その展開が読めてきた気がした。



・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【5】

檸檬のKISS  BLUE 第二話 家庭教師  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月05日 02時37分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



 面接に来てくれと言われた場所は、いつも働いている美容商品の卸し倉庫だった。
 そこからどこかに移動するか案内されるのだろう。
 


 お世話になっている社長が、僕に「やぁ。」と言って目配せをした。
 凛凛しく、仕事には厳格な少しシルバーグレイの髪が似合う背の高い社長だった。
 父が亡くなったとき、随分世話になったと母や兄から聞かされていた。



 そういう僕も、受験を控えた高校生だった頃から進学の件で悩み、
 色々相談に乗ってもらった。
 


 所属高校からエスカレーターで受験し、なんとか無事合格した。
 大学に入ってからというものは、高校から続けてきたラグビーに明け暮れた。
 ラグビーに力を入れている高校、大学だったから部活に割く時間も相当で、
 やはり時間の無い中でのアルバイトは難しい。




 だから今回の割のいいアルバイトの紹介は本当に有難かった。




 社長が目配せをして少し離れた家に連れて行ってもらい、
 3階に通された。



 「普通の家じゃないか。会社じゃないのか…」



 一応僕は書いてきた履歴書を手渡した。
 今の会社のアルバイトで面接に来たのは高校生の頃だったからだ。



 今は大学生となった。
 写真も新しいものを撮って来た。



 馴れないポロシャツ。



 一応面接だと“襟付きシャツ”と書いてある。
 夏はくたびれた白のへインズのTシャツにリーバイスしか持っていない。




 そういえば就職活動も数年後には開始しないといけない。
 スーツ・・・
 金が掛かる世の中だ。



・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【4】

檸檬のKISS  BLUE 第一話 家庭教師  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月04日 19時12分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*




 その日も暑い夏の日だった。




 いつものように部活を終えた僕は、シャワー室で誰より早くシャワーを浴び、
 まだ着慣れない、ラコステのポロシャツに袖を通し、足早に部室を出た。






 高校のとき、父親が旅立ってからというもの、
 母親と兄の稼ぎだけでは、それまで通った私学の授業料の支払いは到底払えず、
 夏休みはアルバイトに明け暮れた。





 
 今日はいつも夏休みになると働かせてもらっている会社の社長さんが、
 割のいいアルバイトを紹介してくれる日だった。






 面接場所も、アルバイト先も、聞かされていなかったが
 どうやら家庭教師をお願いしたいらしい。
 科目は中学の英語と数学だそうで、簡単なアルバイトだけど
 やってみないかと言う。







 時給を聞くと、まぁ悪くない。
 というか、かなり高給だ。






 兎に角、1円でも稼ぎたかった僕は、二つ返事で引き受けた。



・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【3】

檸檬のKISS  序章  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月04日 19時08分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*



  『 生きていること 』

  『 命を与えられて 生かされているという意識 』

  『 どれだけ辛いことがあろうとも 

    生きているだけで幸せだと思えること 』



* * * * * * * * * * * * * * *


  
  『 明日は 無限ではない 人はいつか召される 』

   辛く飲み込めなかった現実






  今日を生きていることへの感謝、

  彼の分まで生きていこうと

  自分の人生に責任を持ちたい 

  そう やっと思えた 近年の夏






  未だ幼かった未熟な私と出会い、

  生きることの大切さ

  今日一日を精一杯力の限り 悔い無く生きること

  を 教えてくれた

  彼への感謝の気持ちを込めて贈ります












  美咲目線で綴られるSTORY...red,

  功輔目線で綴られるSTORY...blue,




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。*
【2】

檸檬のKISS  序章  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月04日 18時54分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。




  いいかい。
  落ち着いて 良く聞いて欲しい。



  僕の話を...聞けるね?


  
  明日という日が無限にあるわけじゃないんだ。
  だからこそ、今、君といるうちに伝えたいと思う。




  なぜ僕が、今、こんなことを話すのか...
  理由は、君が大人になったら分る時が、きっと来る。




  夢?




  夢じゃないんだ。




  今、君が一緒にいる、僕は僕であって、僕じゃないんだ。
  僕は君に、あの時 言い出せないままだったことがあるんだ。
  だから、今は分からなくてもいい。
  






  思えば僕の魂は、


  あの瞬間に終り、


  そして始まるんだ。




・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。
【1】

檸檬のKISS  〜tear...  評価

咲(サキ)SAKI (2016年03月05日 02時49分)

・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。


 ■香川県の皆様、はじめまして。
 この神聖なる地域の場を一部屋お借りしますこと、
 どうか...お赦しくださいませ。



 香川に生まれ、香川を愛する咲と申します。
 現在、談話室内に「檸檬のKISS」というトピックを
 建てて活動しております。


 そもそも、書き綴ってまいりたい
 「檸檬のKISS」本編のみを、純粋に、
 私自身が生まれたこの香川に残させて頂きたいと思いました。



 パチンコのお話とは当初少し離れた序盤にはなりますが
 主人公・美咲が、なぜ“勝負の世界”に身を焦がすようになったのか...?

 その辺りのお話も、
 出来る限り本編に交えて綴ってまいります。


 パチンコ・競馬・麻雀などの勝負ごと。
 釣り・お酒・独り飲み・お洒落・お料理など大好き女子でございます。


 どうぞ皆様、キリの良いところまで
 温かい目で最後までお見守りいただけますと幸いでございます。




 ※本編に関するご感想、レス、ご意見などは、全て
 談話室 内「檸檬のKISS」にて承ります。
 ご足労をお掛けいたしますがご協力宜しくお願いいたします。


 ※編集の可能性がございますので、
 返信などもなさらないよう、何卒よろしくお願い申し上げます。


 敬具
・*:..。o○☆゜+。*゜¨゜゜・*:..。o○☆゜+。
5  4  3  2  1 
メンバー登録 | プロフィール編集 | 利用規約 | 違反投稿を見付けたら