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【8471】 |
まきりと (2017年07月16日 11時03分) ID:DxWkMuMm |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
ぴわるど内某所。 前下がりボブの妙齢の女がやや前のめりの姿勢でため息をついていた。 (どーして当たらないかなー) 女が毎日のように奉納している台の名は 「つくつくぼうしの鳴く頃に」 某超大物演歌歌手「ヤシロさま」が大当りの鍵を握る人気機種だ。 エヴァ・ハラショーの報告では回数は少ないが毎回ヤシロさまから褒美を頂戴したとある。 室内の効きすぎた冷房と長時間固定された姿勢による身体への負担は大きく、見た目より長く生きる彼女へのダメージはそろそろ限界値に達しようとしている。 (チョックはすげえよなー。 こんくらいの稼動なんてモノともしやしねぇ。 シャーンにしたってさ。 あぁ、惜しむらくは見た目だけじゃなく中身も変わらない仕様に出来なかったかねぇ。) 女の名はマキリト・イレイバー ある秘密組織の手により「見た目年齢止まって手術」を施されたナンチャッテアンドロイドだ。 「あっ。いたいた。センパーイ」 知っている声にのっそりと振り向くと、 そこには花のような笑顔が。 「またその台売ってるんですか? ダメですよー。もう、その台は。 諦めて下さいー。 指令がお呼びなんですからね?」 びくっ イレイバーの右手がハンドルから離れる。 (指令が…) 「アオト、行くよっ」 イレイバーの動きは早い。 途中何度か積まれた他人のドル箱に躓きながらも出口へと突き進んで行く後ろ姿にアオトは圧倒されていた。 |
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【8470】 |
まきりと (2017年07月16日 10時52分) ID:DxWkMuMm |
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これは 【トピック】 に対する返信です。 | |||
小一時間と経たぬ間にイレイバーは指令の前に立っていた。 「で。封書は発送したんだね?」 よく通る張りのある声。 したたかでしなやかな女丈夫。 イレイバーが憧れる指令からの詰問だ。 彼女の名は、サウジィ・シャーン 今回のプロジェクトにおける最重要人物の一人であるギギィ・シャーンの奥方その人だ。 「はい。発送済です。ご報告が遅れて申し訳ありません」 昨夜はサウジィとギギィの何ヵ月振りかの対面の日であると知るイレイバーは、企画書の最終チェックを指令室に直接持ち込まずメールでの報告とした。 これは何かヤバいミスがあった予感が。 「いーんだけどね。 アマノシタハジメって誰よ?」 「…はィ?」 「んで、舞踏会だったか? 踊るのか?自分」 「……………」 ま、マズい。 アマノシタハジメじゃなかったのか、 あの漢字。 舞踏会て。変換間違いしかねぇし。 見た目年齢止まって手術には、オツムの中は逆方向に進んじゃう場合がありますけどね的な注意書きがそっと添えられていた。 ヤバい。 とてつもなくヤバい。 こうなったらこれで行くしかねぇし。 「仰る通り。踊る方のヤツです。 私こう見えても若い頃はマハジャラの お立ち台で踊ってましたのでご心配は 無用にて。 アマノシタハジメ氏についての情報は サプライズとさせて頂きたく。」 永遠とも思える沈黙の後、指令が手を打った。 「りょ。後は好きにやんな」 セーフ。 いや、セーフなのか? ヤバいぞ、私。 がんバレ、私。 その頃ヌペインではエヴァ・ハラショーが問題の封書に手を伸ばそうとしていた。 |
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